狭山差別裁判5・24 不当逮捕から59年市民集会
東京高裁は鑑定人尋問・再審開始を!
石川一雄さん
の無実は明白
5月24日午後1時から、東京・日比谷野外音楽堂で「不当逮捕から59年! 東京高裁は鑑定人尋問・再審開始を!」狭山事件の再審を求める市民集会が同実行委の主催で開かれた。さわやかな薫風が吹くなか、部落解放同盟をはじめ、共闘会議の仲間たちが全国からかけつけた。12時半から島キクジロウ&No Nukes Rightsの歌のプレイベントが行われた。
組坂繁之さん(部落解放同盟中央本部委員長)が「狭山事件は部落差別に基づくえん罪事件だ。石川さんの無実を証明する証拠が出てきている。今年こそ第3次再審闘争の道を切り開き、石川さんの見えない手錠をはずさなければならない」と開会のあいさつを行った。
次に参加した福島みずほさん(社民党党首、参議員議員)は次のような連帯あいさつを行った。
「石川さんの『私はやっていない』という取り調べ官への答えが印象に残っている。その後開示された取り調べの録音テープや脅迫状の字体、万年筆が被害者のものと違う点など、石川さんの無実を証明している」。
「再審法の改正を求める動きが国会である。再審が制度化されていない。証拠開示の条文がない。検察官の抗告を禁止する条文がないなど。狭山事件だけではなく、あらゆるえん罪事件をなくしていくように奮闘していく。石川さんに無罪を」。そして、れいわ新選組の大石あきこ議員も連帯表明のためにかけつけた。
再審請求で
新しい証拠
続いて、石川一雄さん(再審請求人)が「第3次再審請求で新しい証拠が出ている。これを見たら寺尾裁判長は有罪判決を出せなかっただろう。水平社結成百年の今年、無罪を勝ち取るつもりだったがそれはかなわない。司法に対して、要請はがきなど直接行動をしてほしい。私は現在83歳、元気に闘っている」と無罪を勝ち取るために奮闘していく決意を述べた。
連れ合いの早智子さんは「5・23狭山集会が3年ぶりに開催された。事件発生から59年になる。運動は大きく動いている。光が見えている。それを確かなものにしてください。191点の証拠が開示され、246点の新証拠が弁護団から提出された。3者協議は50回開かれた。石川は31年7カ月獄にいた。文字を知らなかったが勉強して、文字を力にして訴えた。苦しいだけではなかった」と現状を話した。
さらに「2年あまり、コロナで苦しい闘いを強いられた。しかし、いつも前向きで、明るく希望を失わず闘ってきた。石川は59年前の5・23を思い出し、眠れなかった。取調官に机をバンバン叩かれた。無念でいっぱいだった。今は前進あるのみ。闘いに終止符をうちたい。裁判所を動かして鑑定人尋問を実現させる闘いが重要だ。全国で狭山スタンディングが行われ、激励のメッセージがきた。狭山の闘いは熱と光がある。このままで終わらせるわけにはいかない。狭山闘争には正義がある。そのような人生をまっとうさせたい」と石川さんの気持ちを紹介しながら、再審の実現への思いを語った。
鑑定人尋問が
絶対に必要だ
中山武敏さん(狭山弁護団主任弁護人)が「石川さんは逮捕1カ月後ににせの自白をした。裁判所は自白に信用性があると認定している。なぜそのような自白を石川さんはしたのか。これを分からせるには、部落差別の実態を裁判所に認めさせる必要がある。再審闘争は大きな山場にきている。鑑定人尋問を実現させなければならない」と話した。
中北龍太郎さん(狭山弁護団事務局長)は最初に、参加している4人の狭山弁護人を紹介した。そして、新証拠によって石川さんの無実が明らかになった点を紹介した。誘導されたウソの自白、殺害方法について、捨てられたカバンの位置、被害者の使っていた万年筆のインクと石川宅から発見された万年筆のインクの色が違っていたことなど。鑑定人尋問は再審開始のためにどうしてもくぐりぬけなければならない。「再審実現の突破口にしよう」と訴えた。
人権取り戻す
闘いへ前進だ
片岡明幸さん(部落解放同盟狭山闘争本部長・副委員長)が3点に絞った基調提起を行った。
①鑑定人尋問の請求を近々提出する。鑑定をやった人に直接裁判所が話を聞いてほしい。これが認められれば最新の道が開かれる。裁判所がどんな回答をするか。認める、却下、一部認める。絶対に実現させたい。
②再審で大事な争点が10余りある。筆跡、殺害方法、録音テープ・自白、地下足袋、血液型。一番大事なのは万年筆のインクの成分。下山鑑定にしぼって訴えたい。被害者の万年筆と発見された万年筆が別であった。このことは狭山裁判はひっくり返ったということだ③最後の決戦の時。狭山闘争の原点に立ち返って闘うということ。狭山事件は部落差別に基づくえん罪事件。「悪いことをするのは部落民」という濡れ衣、レッテルをはがし、人権を取り戻す闘いだ。
「2022年は全国水平社結成百年の節目の年だ。百年のうち60年狭山闘争をやっている。差別をなくしていくには狭山闘争を勝ち抜くことだ。最終場面を迎え、最後の闘いを進めていきたい」。
山崎俊樹さん(袴田さんを救援する清水・静岡市民の会)が「5月23日の3者協議によって、東京高裁は鑑定人尋問を行うことを決めた。事件後1年2カ月経ってから味噌樽から発見された衣類に付いていた血液の色が赤すぎた。通常、血液は黒くなっていく。弁護人の2人の専門家の実験では黒くなっていくことが明らかにされた。検察側専門家の実験は赤みが顕著に感じられるとした。これまでの実験でも黒くなっていくことは明らかになっている。再審にむけて大きく進んでいる」と再審請求が進んでいることを報告した。
そして「袴田さんは86歳。釈放から8年経っているが、毎日ただひたすら歩いている。死刑判決は人格を壊した。無罪判決によって救われる。巣鴨刑務所で石川さんと袴田さんはいっしょだった。袴田さん、石川さんの無罪を勝ち取ろう」と訴えた。
市民の会の鎌田慧さん(狭山事件の再審を求める市民の会事務局長)の発言、そして集会アピール、閉会あいさつ、デモ行進が行われた。重大な局面を迎えている狭山闘争の勝利にむけて奮闘しよう。 (M)
集会アピール
59年前の5月23日、警察は当時24歳だった石川一雄さんを別件で逮捕し、女子高生殺害の取調べを連日おこなった。警察、検察は別件逮捕、再逮捕というやりかたで1カ月以上におよぶ厳しい取調べを続け、無実を叫ぶ石川さんに、弁護士や家族との接見を禁止し、兄を逮捕すると脅しウソの自白に追い込んだのだ。この59年前の不当な自白強要の実態、虚偽自白による冤(えん)罪の真相が証拠開示された取調べテープによって暴かれた。
石川さんは逮捕直後から、字を知らないから脅迫状など書いていないと訴えたが、自白直前の取調べテープには、警察官らが「脅迫状を書いたことに間違いない」「なぜ書いたか供述する義務がある」と決めつけて自白を迫る場面が録音されていた。石川さんが警察官に手助けされながら字を書き、すべてひらがなで書いているにもかかわらず、正しく書けていないことも明らかになった。
当時の石川さんは部落差別によって教育を奪われた非識字者であり、脅迫状を書いていないことは明らかだ。また、犯人でないがゆえに犯行の内容を語れない石川さんに対して、取調官が誘導して自白させていることも取調べテープから明らかになった。「矛盾なくスラスラ自白した」「本人が言った通りに自白調書を作成した」などという警察官の法廷証言はまったくウソだったのだ。
狭山事件の有罪判決が、警察官の証言を根拠に、自白は信用できるとしたことは誤りだ。弁護団は、先日、警察官の偽証が有罪判決の根拠になったとして、再審請求理由の追加申立てをした。東京高裁の大野勝則裁判長は、違法な取調べと警察官の偽証が冤罪を作り出したことを厳しく受けとめるべきである。
コンピュータを用いた筆者異同識別によって石川さんが脅迫状を書いていないことを科学的に明らかにした福江鑑定、当時の石川さんが部落差別によって教育を受けられなかった非識字者であり、脅迫状を書いていないことを明らかにした森鑑定、蛍光X線分析によるインク元素の分析によって、有罪の証拠となった万年筆が被害者のものとはいえないことを科学的に明らかにした下山第2鑑定、物を探す心理学実験によって万年筆の発見経過のおかしさを明らかにした原・厳島鑑定などの新証拠によって、有罪判決は完全に崩れている。東京高裁の大野勝則裁判長は、鑑定人尋問をおこない再審を開始すべきである。
狭山事件の第3次再審請求は、いよいよ大きな節目をむかえる。弁護団は万年筆インクなどについて検察官主張の誤りを明らかにした新証拠を提出し、次回3者協議の開かれる9月までには鑑定人尋問を請求する書面を提出する予定である。わたしたちは、あらたな署名運動をすすめ、東京高裁に鑑定人尋問、再審開始を求める声を全国で大きくしていく。
狭山事件で石川さんは59年も冤罪を叫び続け、44年以上も再審の請求が続けられているが、これまで一度も事実調べがおこなわれていない。わたしたちは、東京高裁が鑑定人尋問をおこない、狭山事件の再審を開始するよう強く求める。
この間の再審無罪や布川事件・桜井昌司さんの国賠勝利判決の教訓をふまえ、再審における証拠開示や事実調べを保障し、再審開始決定に対する検察官による抗告を禁止する法改正が急務である。わたしたちは、再審法改正を強く国会に求める。
同じ東京高裁で差し戻し審理がおこなわれている袴田事件も鑑定人尋問が決まり大詰めをむかえている。石川さんも袴田さんも無実だ!再審開始と無罪判決にむけてともに闘おう。すべての冤罪犠牲者や支援運動と連帯し、冤罪根絶にむけた司法改革、再審法改正を実現する闘いを全力ですすめる。
石川さんの「みえない手錠」をはずすために狭山事件の再審を実現しよう!
2022年5月24日
狭山事件の再審を求める市民集会 参加者一同
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