沖縄報告 復帰50年日本政治の無能こそ議論の焦点
沖縄K・S 5月29日
5・15その後の沖縄各地の動き
「平和の島」「非武の島」へ闘い続ける以外ない
5月15日の「沖縄復帰50周年記念式典」をテレビ中継でご覧になった方も多いだろう。首相、沖縄県知事、天皇、衆参両院議長、最高裁判所長官、駐日米大使、全国知事会会長等のあいさつが続く中で、日本政府の狙い通り、式典は祝賀ムードに包まれた。式典に続くレセプションではさらに、泡盛の古酒仕次の儀や舞踊、サンシン、空手の演武、歌謡が披露され、祝賀ムードは一層高まった。テレビを見た多くの国民は「沖縄が復帰して良かったね」と改めて思ったことだろう。
多くの沖縄県民もまた「復帰して良かった」と考えているが、同時に、広大な軍事基地とそこから派生する事件・事故・騒音、米軍犯罪、環境汚染、教育・こどもの貧困、辺野古新基地建設・自衛隊基地建設に反対し、その解決を強く求めている。それゆえ、「復帰して良かったね」で終わってはならない。復帰50年を経てなお、沖縄の基地問題を解決することのできない日本の政治の無能こそ関心と議論の焦点とならなければならない。自国政府の沖縄政策に自国民は責任を負っていることを自覚する復帰50年であってほしい。
玉城デニー知事は5月10日、岸田首相と会談した席で「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」を提出した。5・15の当日は、宜野湾市のコンベンションセンター周辺の各所で、数百人にのぼる抗議行動が行われた。
普天間・嘉手納両爆音訴訟の原告が行政訴訟
5月16日、普天間・嘉手納両爆音訴訟の原告ら30人が、米軍基地からの違法な騒音を放置し続ける日本政府の責任を問う行政訴訟を起こした。これまでの爆音訴訟で裁判所は、「違法な騒音」を認定しながらも、「米軍機の飛行差し止めを米国に求める地位にない」という第三者行為論で日本政府の無策・怠慢を容認してきた。「自国に駐留する外国軍隊の行為を規制する権限がない」とは、いったいいかなる政府なのか。厚顔無恥にも程がある。この日提訴された行政訴訟は、日本政府の責任を真正面から問うものであり、具体的には国内航空法に基づいて米軍機を管制することを求めている。
5月23日の日米会談に来日したバイデン大統領は、訪日の際、米軍横田基地に専用機で降り立ったのち、ヘリコプターで麻布の基地に移動し、そこから乗用車に乗り換えるというルートをたどっている。まるで占領軍だ。このような異常な状態を異常と感じない「米軍の治外法権の日常化」に終止符を打つべきだ。
5月16日にはまた、辺野古埋立設計変更申請を不承認処分とした沖縄県に国交省が出した「是正の指示」に対して、沖縄県は「国地方係争処理委員会」へ申し出する方針であることを国交省に通知した。
係争委は内閣の方針に従順な総務省の一機関であり、結果は目に見えている。そのあとは裁判になる。日本政府が沖縄県行政に対し有無を言わせず従わせる合法的な支配構造が出来上がっている。
全県各地で反米軍基地反自衛隊基地の行動
辺野古ゲート前、辺野古・大浦湾の海、土砂を積み出す琉球セメント安和桟橋と本部塩川港、普天間飛行場ゲート前など沖縄島内各地で、石垣で、宮古で、「辺野古埋立ストップ」「普天間基地閉鎖」「自衛隊ミサイル基地反対」と訴える行動が続いている。「平和の島・沖縄」「非武の島・沖縄」を求める行動が根気強く、決して屈することなく展開されている。
宮古島の陸自千代田基地前では、ピース旗を掲げて、定例デモが行われている。
辺野古ゲート前は、5・15の翌月曜日、沖縄平和運動センターが主催した平和行進の参加者などが合流し500人の参加者で埋まったが、火曜日からは、再び普段通りに戻った。ここでも我慢強い行動が続いている。平和市民連絡会によると、5月25日、辺野古工事用ゲート前での座り込み行動には1回目の朝9時に28人、正午に22人、午後3時に20人が座り込んだとのこと。ハワイからの参加者が数人いて、10月の世界ウチナーンチュ大会にはもっと来るとのことだったという。
連日少人数での土砂積み込み監視と抗議が続く琉球セメント安和桟橋では、5月27日、ベルトコンベアが雨のせいか1時間30分ずつ2回も止まったとのこと。1隻目が130台積んで出港し、2隻目は93台積んで出港したとのこと。5・15のあと、梅雨のせいもあるが、安和桟橋では構内への仮置きのストックがなく、積み込みが順調ではない。本部塩川港でも雨でベルトコンベアがとまり、予定のノルマが達成できていないようだ。
決してあきらめない海上行動
海上では、梅雨のためコンディションの悪い日が多いが、海上行動ができる日にはカヌーと抗議船が現場での監視と抗議を続けている。5月26日(木)には、時々小雨の降る中カヌー4艇が大浦湾開口部、K9護岸、K8護岸で行動しぬいた。平和丸に乗って抗議したカヌーチームのTさんの報告をお届けしよう。
カヌーチームTさんの報告
抗議船平和丸に乗った。カヌーの動き、海上保安庁GB(硬質ゴムボート)の動きなどがよくわかった。しかし、このようにして見ているのは精神的にも疲れる。カヌーを漕いだ方がよほど楽だ!!
8時半、大浦湾開口部(大型船の入出港するところ)の沖に赤土輸送船が7隻見える。航路から次々と入ってくるガット赤土輸送船に対してプラカードを挙げて抗議するもむなしい、しかし誰かがこのようなことをしなければ、防衛局、国はやりたい放題なことをするのは目に見えている。
大浦湾を埋め立てることに手を貸している海上保安官はどのような気持ちで“仕事”をしているのか?
その後、抗議船に乗りK9護岸に向かったが、ランプウェイ台船は見当たらない。今日湾内に入った赤土輸送船からの積み替えが始まったばかりである。これには2時間以上かかるのでK8護岸に向かった。
4月11日から始まった護岸延長工事は50mほど伸びている。直ちに抗議活動に入る。カヌーは4艇、GBは8艇である。戦車みたいに機動性がありスピードもある海保の艇でガジガジに固めて、フロートをこえるとすぐに拘束される。何をそんなに恐れているのか。
5・24機動隊住民訴訟控訴審
(福岡高裁那覇支部)
即日結審・判決は8月31日(金)
2016年の北部訓練場内のヘリパッド建設工事に際して日本政府は千人もの機動隊を高江に動員して反対運動を力で排除したが、その際の県外機動隊への県費支出の違法性を問う機動隊住民訴訟は昨年8月20日、那覇地裁で「原告請求棄却」の判決が出された。原告団・弁護団はこの不当判決に対し8月31日、福岡高裁那覇支部に控訴した。控訴審第一回口頭弁論が5月24日(火)午後3時から201号法廷で開かれた。
法廷には、平和市民連絡会の高里さん、北上田さんら原告のうちの6人、4人の弁護士が入り、傍聴席は満席。相手の沖縄県警も弁護士・職員など8人が席に着いた。裁判官は3人(裁判長=谷口豊、下和弘、吉賀朝哉)。
原告を代表して意見陳述に立った岡本由希子さんは、亜熱帯の森・ヤンバルの大切さ、オスプレイ基地の不当性、欺瞞に欺瞞を重ねた工事強行、機動隊配備の不法性を力強く訴えた(陳述書は別紙添付)。裁判官たちは神妙な顔つきで、発言する岡本さんと手元の資料を交互に見ながら聞いている様子だったが、本当に耳を傾ける気があるなら、「控訴棄却」などという判決は出せないはずだ。
閉廷後、城岳公園で総括集会が開かれた。進行は平和市民連絡会の城間勝さん。はじめに日高弁護士が控訴審の焦点として、中央からの指示による機動隊派遣ありきの中での沖縄県公安委員会の形骸化を鋭く批判し、判決期日には多数結集してほしいと呼びかけた。三宅弁護士も「このままの公安委、警察では市民の人権が守れない」と述べた。
高江から参加の清水さんは、6月5日の「高江座り込み15周年報告集会」への参加を訴えた。北部訓練場の米軍廃棄物の放置を糾弾し続ける宮城秋乃さんは「不発弾が残り廃棄物で汚染されている返還地の現状を多くの人に知ってもらいたい」と話した。北上田さんは、「2016年から全国で機動隊派遣に異議を申し立てる住民訴訟が闘われた。名古屋高裁判決が警察本部長に専決処理の違法性と賠償命令を出したことは画期的だ。7月にオンライン・シンポジウムを開催する。注目してほしい」とのべた。
意見陳述した岡本さんは、「5分という限られた時間の中で、マスク越しの陳述は息苦しかった。途中、当時のことがよみがえり、涙ぐみそうになった」と話した。最後にガンバロー三唱で集会の幕を閉じた。
機動隊住民訴訟 控訴審 2022年5月24日(火)15時〜(福岡高裁那覇支部)
原告意見陳述
岡本由希子(編集・出版業)
那覇市民の岡本と申します。山原・東村平良出身の母と宮古島・平良出身の父の間に「復帰」前の1967年に那覇市に生まれました。幼い頃より毎年夏を東村の祖父母の家で過ごした私にとって、山・森・海が一体となり人々の暮らしと共にある山原・東村は、沖縄の「原風景」となっています。「山んはぎねー、海んはぎーん」、山が禿げてしまったら海も荒廃するという沖縄の諺です。母やその親きょうだいを通して私は、山原の森が島に生きる人間にとっていかに大切なものであるかを学びました。
県民の「命の森」である山原の東村高江周辺への米軍ヘリパッド建設は、たくさんの不正義、正統性の欠落の積み重ねの上に強行されたものです。
まず、戦後の米軍占領下で山原の広大な森林が米軍基地として接収され、戦後77年、「復帰」50年を経ても今なお米軍がジャングル戦闘訓練場として使用し続けていることの不当性は、強調してもしすぎることはありません。
米軍ヘリパッド建設は、北部訓練場の過半の土地を返還するかわりに残された部分に移設するのだと喧伝されていますが、実際は、老朽化し使い勝手の悪いヘリパッドを返すかわりに、米軍が新たに導入する航空機「MV22オスプレイ」の訓練に対応し、海・川・山をつないだ演習に都合のいい場所に、上等な発着所を、日本政府に作らせる(お金も日本持ち)というものです。沖縄県民の負担軽減ではなく負担増大です。
そして日本政府・防衛省は、オスプレイの沖縄配備計画を隠し続けてきました。ヘリパッド建設の環境アセス調査は従来の機種のみで、オスプレイ使用による環境影響は調査や評価もされずに進められました。
那覇防衛施設局(のちの沖縄防衛局)は、環境アセスの際の説明で嘘や欺瞞を重ねました。私も参加していた環境保護団体の要請の際、森林伐採による環境破壊の懸念を問いただした私たちに、防衛施設局の担当者は「工事には旧林道を使用するので、木は一本も斬りませんよ」などと大嘘を吐いたのを昨日のことのように思い出します。適当な言い逃れでその場をしのぐ、真摯さもなく不誠実で非科学的かつ非現実的な防衛施設局の数々の言動は、私たち市民の信頼を失わしめるに十分なものでした。
高江の区長さんをはじめ住民のみなさんは区の総会で反対決議を何度も上げ、住民の会をたちあげてヘリパッド建設反対の声を届けようと様々に努力を重ねていらっしゃいましたが、その声は「米軍の要望だから」とことごとく拒否され、せめて集落に直近のN4地区だけでもやめて欲しいとの区長さんの最低限の訴えも虚しく、工事が容易なN4地区は真っ先に作られてしまいました。また、住民の会の代表が数万筆の署名を持参して上京し防衛副大臣に面談する機会を得た際、これから来る住民の会は「過激派」だなどの虚偽を副大臣に吹き込んだというエピソードもあります。農家やカフェを営みそれまで市民運動等にまったく関わったこともなく、ただただ自分たちの命と暮らしを守りたい人たちのいったい何を恐れているのか、スラップ訴訟まで仕掛け、4歳の子どもまで裁判にかけようとしたことは、沖縄防衛局の歴史に残る大きな汚点となっています。
東村高江への米軍ヘリパッド建設に関して沖縄防衛局および防衛省、日本政府が犯した問題、数々の不正義をひとつひとつ挙げるときりがありませんので、この先は、私たちがこの訴訟で問うていることについて述べたいと存じます。詳細は私たちの代理人より訴状や書面にてお伝えしております。私がここで強調したいのは、2016年の米軍ヘリパッド建設強行の際に沖縄県警が公安委員会の「持ち回り決裁」という無理を通して行った他都府県への「援助要求」こそが、大規模な抗議行動を惹き起こしたという事実です。
被控訴人は、援助要求を行ったのは、大規模な抗議行動が予想され沖縄県警の人員体制では十分な警備を遂行することが困難だからだ、実際にあのように大規模な抗議行動が行われたではないか、と言いますが、それは本末転倒の主張です。もともと高江の抗議行動(座込み)は参加したい思いがあってもなかなか行けるものではなくて、那覇から車で3時間かかる奥山に住民の皆さんが交代で座り込み、そこに退職者や自営業者、仕事をやりくりしながら各地から駆けつけた人々によってなんとか維持されていたもので、平穏な抗議活動、非暴力不服従の粘り強い運動が続けられておりました。そうした状況は沖縄県警もとっくに把握しています。
要するに、防衛局の工事再開のために全国から何百人もの機動隊が派遣されると大きく報じられ、実際に県外のナンバープレートを掲げた機動隊車両が次から次へと何十台も連なって沖縄島北部に大集結するという異様な事態が先にあり、私たち県民の恐怖、そして憤りを掻き立て、抗議行動が大きくなる引き金となったのです。もとよりヘリパッド建設に反対する高江住民の皆さんへの共感の輪が広がっており、在沖米軍基地の機能強化に邁進する防衛局・日本政府への疑問や怒りが噴出しているなかで、さらに島の外からこれだけ大勢の機動隊が押し寄せてくる、「これは平成の《琉球処分》だ!」との声も各所で上りました。故郷の島を、命の森を、守らなければ、との一心で大勢の人たちが高江の森へと向かったのです。
なぜ、この2016年に沖縄県警は、自分たちの人員体制では困難だからと大規模な援助要求を行ったのでしょう。そこに沖縄の住民運動を知悉した公安・官僚組織の気配を感じるのは私の穿った見方でしょうか。いずれにせよ、大規模な全国からの機動隊の動員には「何としても建設工事を進める」という日本政府・防衛省の強い意志と住民運動弾圧の意図が反映されていることは明らかです。
公安委員会に一方的な情報を鵜呑みにさせて、十分な議論のための時間も場所も与えずに「持ち回り決裁」で援助要求にGOサインを出させたことは、警察の「民主的運営」と「政治的中立性の確保」の役目を担う公安委員会を骨抜きにして、その存在意義を根底から失わせしめました。そうして沖縄県警の「民主的運営と政治的中立性」はあえなく潰え去ってしまったのです。
米軍ヘリパッド建設強行のために他都府県から派遣された機動隊のガソリン代や修繕費を支払うことの不当性かつ違法性を、私は、ここに強く訴えます。
【訂正】かけはし前号(5月30日号)5面SMさんの投書の2段目右から23行目「2021年5月3日」を「2016年5月3日」に。
5月30日の拙文の冒頭の部分に誤りがありましたので、以下のように訂正しお詫びします。「2020年2月以前の世界63ヶ国」を「2021年2月28日以前の63ヶ国」に訂正。「日本でワクチン接種が始まったのは2020年2月17日です」を「日本でワクチン接種が始まったのは、2021年2月17日からで医療従事者からです」に訂正。(たじまよしお)
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社