5.28被ばく労働を考えるネットワーク春闘集会
福島第一原発事故から11年
被ばく労働問題の現状とこれから
5月28日午後2時から、東京の文京区民センターで「福島第一原発事故から11年――被ばく労働問題の現状とこれから 被ばく労働を考えるネットワーク5・28春闘集会」が開催された。主催は「被ばく労働を考えるネットワーク」。集会には約70人が参加した。
渡辺つむぎさんの司会で始まった集会は、被ばく労働ネット活動報告(川本浩之さん)、「なすび」さんによる「あらかぶさん裁判報告」、猪狩忠昭さん裁判報告、3・11子ども甲状腺裁判の意義(鴨下全生さん)、そしてこの日のメインゲスト黒川眞一さん(高エネルギー研究機構名誉教授)の講演「放射線防護はどうあるべきか――知っておかなければならないこと」と続いた。
被ばく労働を考えるネットの1年間についての報告では、約20人の原発関連労働者ユニオンの労働者たちに対する東京電力など原発関連企業側の団体交渉拒否が、原発労災被害の当該である「あらかぶさん」への団交拒否など一貫して不当極まるものであることが強調された。2017年10月に福島第一原発構内で死亡したいわき市の自動車整備士・猪狩忠明さんの原発過労死(致死性不整脈)についても仙台高裁は東電などの過失を認めず、賠償請求を棄却したのである。
過労死容認の
驚くべき判決
猪狩さんの原発過労死については、2018年10月にいわき労基署が忠明さんの死を「過労死」と認める決定をだしていた。2021年3月に福島地裁で、被告・会社(いわきオール)と役員に「安全配慮義務」に違反したことに関し、2500万円の賠償を命じる判決も出されていた。しかし同判決は東電の賠償義務は認めなかった。
2022年5月19日の仙台高裁判決は、「忠明さんが1F構内で致死性不整脈を起こして死亡するという結果が生じた後に、当時において控訴人らが主張するような対応をとるように要求することは、被控訴人東電が1Fの廃炉作業と作業に従事する労働者の安全のために有する責任を踏まえて検討しても、なお相当とは認められず、被控訴人東電に、緊急医療体制の構築にあたり速やかに救急医療を受けられるようにするために必要な措置を講じなかった注意義務違反ないし結果回避義務違反の過失があったとまでは、認められない」(控訴審判決)というもの。
「過労死」はやむを得ない、というに等しいこうした控訴審判決の論理は、「忙しかったのだから人が死ぬのもしょうがない」ということにほかならない。よくこんなことが言えるものだ。
現状の東電では
労災は消えない
全国一般全国協宮城合同労組の星野憲太郎委員長は、厚労省が2015年に定めた「福島第一原発における安全衛生管理政策のためのガイドライン」において「東京電力の第一義的な責任のもとに、本社等、発電所及び元請事業者の実施事項を明確にした安全衛生管理体制を構築する必要がある」と書いていることを当日配布された資料の中で指摘している。星野さんは「東電がガイドラインを軽視しているのは明らか。1Fで起きている様々な傷病事案に対して、東電が自分の責任をその都度認めていく。東電側にその姿勢がない限り、1F内で亡くなったり負傷したりする人は今後も出てきてしまうのではないでしょうか」と、資料の中で述べている。
放射能被曝で
専門的講演も
この日のメイン講演は「高エネルギー加速器研究機構名誉教授」で物理学者の黒川眞一さん。「放射線保護はどうあるべきか――知っておかねばならないこと」というテーマで講演した。講演内容は「セシウム137のγ(ガンマー)線のエネルギー ジュールとeVそして累乗計算」というところから始まるやや「専門的」な内容であり、紹介する能力は筆者にはない。
タイトルだけ引きうつせば「セシウム137のγ(ガンマー)線のエネルギー ジュールとeVそして累乗計算」、「応用問題:100万kwの原発が1年間運転した時に作り出す電気エネルギーは何eVか」と続き「低線量被曝(◦200~300mSv以下の被曝)においては、臓器の中で放射線に実際被曝する細胞の割合が、被曝線量に比例して増加する。
◦被曝した個々の細胞は、ある一定の確率でがんを発生させる。◦それゆえ、がんのリスクは被曝量に比例し、しきい値(それ以下ではリスクがゼロである線量値)はない。◦これをLNT(線形しきい値なしモデル)と言い、正しいことが世界的に認められている)……。
ともに学習と行動を!
(K)
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