投稿「れいわ」を投票先に加えるべき
参議院選における投票行動について
S・T
参院選の投票呼びかけについては「かけはし」読者内でも議論があり、「れいわ」も加えるべきとの見解は少なくないと思われる。特に国際主義労働者全国協議会周辺でその声が強い。今後、共に討論を進める必要があり、それに向け以下の投稿を掲載する。 (「かけはし」編集部)
なぜれいわを排除するのか?
この選挙の結果次第でその後3年間は国政に関する選挙はないかもしれないという重大な選挙である参議院選挙の公示はすぐに迫っている。
「かけはし」の紙面でも参議院選挙をめぐる課題について報道が組まれているが、政治同盟にとっては参議院選挙についての投票行動の方針が一番大事なことであろう。われわれは候補者を出す力がない。ならば立候補しているどの政党と候補者に投票するのがこれからの社会にとって一番いい選択であるかを示すことが政治同盟にとっての一番の任務である。
昨年の衆議院選挙においてはかけはし編集部という制約があるものの10月25日号で「比例区は共産・社民に、選挙区は野党統一候補と共産党へ」と一面で投票行動の方針が提示されている。
去年の総選挙においてはほとんどの選挙区において野党統一候補が立てられた。そのほとんどは立憲民主党に所属する候補者であり、また今参議院選挙においては野党共闘に敵対した国民民主党所属の候補者もいた。この意味するものは選挙区ではほとんど立憲民主党候補に投票せよということであった。比例区においては野党共闘の中において比較的われわれの主張に近い候補者として共産党、社民党に投票せよということであるが、れいわ新選組は入っていない。政策的には私の見るところによるとれいわよりも共産党、社民党のほうが近いというわけではないと思う。それならばなぜ比例区においてれいわは除かれているのであろうか。そこが不思議である。
かけはしのれいわ除外について政策的な検討が掲載されたことはないように記憶しているが、もし根拠として思いつくことがあるとしたら「れいわはポピュリズム政党である」という評価であろう。左翼勢力の中によくある政党の名前が天皇制を容認しているようなアナクロニズムであるということを主張した文章が載ったわけではないし。
政党の成り立ちについては様々な状況に応じて様々な在り方があるだろう。その政党の組織の形態や世代構成、意思疎通の在り方などが自分たちと近いからいいというわけでもないであろう。結党以来無誤謬を強弁する政党もあるし、かつての労働者階級からの支持を無惨にも裏切ってその後名前を変えた政党もあるし、長い党の歴史によって評価されるのではなく現在における政策によって政党は評価されるしかないのであろう。その点からみるとかけはし編集部の「ポピュリズム」であるとして切り捨てるやり方は全く理解できないのである。
私は3年前れいわ新選組ができて参議院選で2議席獲得した時から、新しい勢力として注目し応援してきました。もちろん天皇制について不十分だ、安保政策について不安だ、組織の在り方について違和感があるなどとの年配の左翼が感じるものを抱えながらである。よく考えると、憲法が規定しているから象徴天皇制については反対しない、九条と言えども自衛権を否定しているわけではないから国を守るために自衛隊は有用だ、党の意思形成についてかなり独自の方法論を一貫して通してきた、かけはし編集部が投票せよと主張する政党と構成員の数字以外どの位違うというのだろうか。
参議院選投票日が近づいている今、政党の組織の在り方、規模、構成について云々するのは参議院選の後でもいいだろう。今は令和の参議院選政策を取り上げてわれわれの投票行動方針について「かけはし」はれいわへの投票を呼び掛けるべきだと主張したい。
政権交代ではなく「左派」結集がかかっている
1人選挙区については野党共闘が成立して候補の1本化がされたところはその統一候補の所属政党がどの政党であるかに関わらず統一候補に投票せよということであるが、野党から複数の候補者が出ている場合にはわれわれが相対的に政策として支持できる候補者に投票せよということになる。比例区についても同じということだ。政党によって強調したい政策については当然違いが出てくるのであるが、そのような違いは相対的に捨象できる場合には現実的には地域、職場などにおける大衆闘争との兼ね合いからそれは判断されよう。その点で候補者を擁立する政党としては現時点で共産、社民、れいわがその対象となろう。
そこで3党の政策について検討してみよう。その際、昨年の参議院選の敗北で総括されていた「別個に進んで共に撃て」(11月8日号)と「大衆運動の復権を通して新たな『左派』結集に挑戦しよう」(1月1日号)という視点が基軸にならなければならないであろう。この視点は「まぼろしの政権交代」の雰囲気の中で行われた衆議院選とは今度の参議院選は、今後3年間国政選挙がなしで自民、維新政治による改憲を阻止する重大な選挙であるとしても、明確に違うものであり、これまでの野党共闘路線の限界を突き破る「左派」結集を目指すことが焦点になるとの視点である。
それならば「左派結集」とはなんであるのか。かけはし論文の中には「資本主義は問題を解決することはできない」「日本資本主義をぶっ壊す」という主張がしょっちゅう登場する。もちろんその主張に私は大賛成である。
かけはし紙上にだけではなく最近はここ30年ばかり途絶えていた資本主義の限界を指摘する書籍がさかんに出版されている。資本主義そのものではなく、少なくても「新自由主義資本主義の克服」を主張することはスタンダードになりつつあるのだ。その新自由主義の克服が岸田の「新しい資本主義」であったり、ノーカーボン事業やAI開発での新たな利潤蓄積を目指した投資であったり、国家行政権の強化による経済安保を含んだ資本のグローバリズム規制であったりするのが現在世界の主流である。
共産党、社民党の政策の中でも新自由主義資本主義の克服がうたわれている。社民党は目指す社会は市場経済であると規定しているが共産党は社会主義・共産主義の社会であると綱領では謳いその変革の中心は生産手段の社会化であると述べている。しかしそれは将来条件が整ってからの話であり、当面の課題は民主主義革命であるからとして自己を厳しく自制し資本主義における経済民主主義の政策要求にとどめている。
私たちは二段階革命の戦略を取らない。民主主義的要求は資本主義から脱却の過渡的要求を通して実現していくという永続革命の立場を堅持している。そのような方向性を持った政策要求が私たちの目指す「左派結集」に必要であろう。
その点から野党共闘に結集する政党の政策要求を検討していかなければない。
共産党はなぜ民主主義的要求に政策をとどめるのか?
共産党の「新しい日本をつくる五つの提案」(20年12月)によれば、提案の1は新自由主義から転換し、格差をただし、暮らし・家計応援第一の政治をつくるとして、(1)政府の責任で医療・福祉の充実 (2)8時間働けば普通に暮らせる社会 (3)中小企業・農林水産業の振興 (4)給付奨学金 (5)消費税を緊急に5%減税(6)被災者の復興、を重点的に挙げている。以下2、憲法を守り、立憲主義・民主主義・平和主義を回復する。3、覇権主義への従属・屈従外交から抜け出し、自主・自立の平和外交に転換する。4、地球規模の環境破壊を止め、自然と共生する経済社会を作る。5、ジェンダー平等社会の実現、多様性を大切にし、個人の尊厳を尊重する政治を。
社民党の基本政策(社民党HPによる)では1,新型コロナウイルス禍からの生活再建をめざしてとして、医療への最大限の支援、検査・治療・ワクチン体制拡充と聖価値困窮防止、自粛、時短、休業補償の充実、コロナ対策財源確保のための内部留保課税を含む税制改革、2として格差・貧困の解消を目指して、3として地球環境と人間の共生をめざして、4としてジェンダー平等社会をめざして、5として多様性に富む社会の実現と差別の根絶をめざして、6として日本国憲法が活きる社会をめざしてとして、最後を「四半世紀にわたる新自由主義改革によって疲弊した日本社会を再生します」と結んでいる。
詳細については違うのであるが共産党と社民党の政策の類似性は共産党が野党共闘による政権交代のための政策要求として提示しているためであろう。社民党の政策は社民党の綱領である「社会民主党宣言」と大差がない。
れいわは再公有化を検討・実現を掲げている
それではれいわの政策要求はどうなんだろうか。
まず2党と違うところは反緊縮積極財政をその政策の基本軸として訴えていることだろう。そして消費税減額ではなく撤廃を政策として掲げていることである。この2点については山本代表の街頭演説で繰り返し語られているので、れいわの難病ALS当事者船後靖彦、重度障碍者木村英子両議員に象徴されるものとともにれいわの政策と言えば積極財政と障害者が活きやすい社会の実現を指すかのように浸透している。しかしその他については意外とれいわがどのような政策を掲げているか国民は知らないのではないか。
れいわは昨年の衆議院選挙に当たって衆院選挙マニフェストとして「れいわニューディール」を発表している。それを見てみよう。もちろん国民のためにやらなければならない政策は3党とも共通しているものが多いのでそれについていちいち検証していく必要はないだろう。そこで3党共通して「新自由主義の克服」を謳っているので、その点から見てみよう。
日本における新自由主義政策の根幹は国鉄・電電公社・郵政・医療・自治体など公的事業体の民営化に象徴される。70年代日本経済はジャパンアズナンバーワンと言われる生産性を実現していたが、80年代に入ると意識していたか否かを問わず新自由主義の中に引きずり込まれていった。その結果が30年にわたる「停滞」と格差拡大である。これをどう克服していくかが一番の課題である。
共産党の22年分野別政策では交通、流通、通信など主要インフラなどについてその課題について詳しく述べられている。その中に流れているものはこの間強行された民営化に対する総括が述べられていないということであろうか、基調は政府の責任において企業を監視し、補助金を出していくという民営化の現実を前提とした政策の提案である。社民党の政策は民営化された事業体にほとんど触れていない。
この点において「れいわニューデール」(衆議院選挙を前にして発表された)の政策の視点は少し違うのではないか。(3)の社会的インフラは公的に守り育てる、では「これまで進められてきた鉄道、病院、郵政、保育所等の公的インフラの民営化は、その多くが非正規雇用の増大や安全基準の緩和、地方のインフラの損失を生み出してきました。これまでのこの流れを変え、再公有化を検討、民営のままであっても社会的インフラとして公的に守り育てます」と基本的考え方を述べている。鉄道については「クリーンな交通手段としての重要さから継続的な運営・復活のために再公有化も検討します」。さらに郵政事業については「検討」ではなく再公有化を政策として掲げている。3年前参議院選にれいわが登場した時は公務員の増員やこの間民営化が進められてきた公共・福祉事業の公営化が部分的に主張されていることはいわゆる福祉事業ではない公益部門での再公有化に繋がっていくものだと注目したが、それは進化しているのではないか。
この視点は資本主義的な生態系破壊を明示する地球温暖化をくい止めるために今すぐ要求する政策と密接な関係を持っている。エネルギー産業やインフラの公有化・公営化の要求は民主連合政府ができてからしか出されない政策ではない。今すぐ要求し追求されなければならない政策ではないだろうか。「資本主義ではできない」と確認し「資本主義をチェンジせよ、脱却せよ」と叫ぶだけでなくそのための過渡的政策を提示することが必要である。それが新たな左派結集を進め、新自由主義に対する闘いの社会主義的発展を促進するのではないか。
れいわの国会ロシア非難決議反対の言い分
今回の参議院選はロシアのウクライナ侵攻の暴挙によって事実上「戦時下」の選挙の様相を呈している。この戦争を利用してロシア、北朝鮮、中国を仮想敵国として日本をいかに守るかのキャンペーンがアメリカと結ぶ支配層によって展開されている。戦争は民族排外主義に乗っかり現政権の支持を押し上げる作用を持つ。いかに守るかではなくいかに戦争を防ぐかの立場を今こそ堅持しなければならない。共産党の志位委員長は綱領を改定した時から急迫不正の日本の主権侵害に対して自衛隊の活用をすると言うことは変わっていないと発言している。綱領では「いま、アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威となっている」と明確に記している にもかかわらず当面の政策として出されている5では提案の3ではアメリカの名は出していないが「中国による覇権主義・人権侵害にきっぱり反対し、国連憲章と国際法を順守させる立場で毅然とした外交対応を行います」と書かれているのは何となく意味深である。
国会のロシア非難決議に対してれいわは反対した。他の野党共闘参加政党は賛成した。その際のれいわの声明(2月28日)では「やってる感を演出するような決議ではなく、真にロシアを撤兵させるための決議でなければならない」と主張している。ロシア非難に便乗してではなくこの戦争の背景にあるNATOの東方への拡大、唯一の戦争被爆国としての日本政府の問題にも言及して平和のために実効性のある決議を要求している。そのことは立憲民主党も含めて、現安保体制の下で軍備増強に賛同しアメリカの中国封じ込め戦略に基づいて日本を戦争できる国へと国民総動員が始まっている中で極めて大事なことではないだろうか。
かけはしは複数選挙区、比例選挙区においてはれいわ、共産党、社民党の候補者に投票せよと呼
びかけるべきである
今参議院選挙において、共産党、社民党ではなくれいわに投票せよとかけはしは書くべきだと要求しているわけではない。少なくともその政策の先進性を検討し、そしてその支持層が組織されていない一般庶民であることに注目し、しかも共産党・社民党と全く違って若年層の支持を得ている現実にかけはし編集部は正面から向き合っていただきたい。
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