6.3リニア中央新幹線南アルプストンネル工事の県内区間の工事差止めを求めた訴訟の第6回口頭弁論

命の水と南アルプスの自然をこわすな
リニア工事を直ちに中止せよ
大井川の水が涸れてしまう

農業にたずさ
わる立場から

 【静岡】6月3日、リニア中央新幹線南アルプストンネル工事の県内区間(10・7km)の工事差止めを求めた訴訟の第6回口頭弁論が静岡地裁(増田吉則裁判長)であった。原告・支援者・弁護人など65人以上が参加した。
 口頭弁論では、菊川市で米や野菜を作っている原告の鴨川登さんが意見陳述を行った。鴨川さんは農業団体職員を定年退職した後、週の半分を非常勤職員として働く一方で、兼業農家として農業に携わっている。

不誠実な対応
をすぐやめろ


 鴨川さんのお宅は、江戸時代から続く農家で、米作りには大量の水が必要なため水の確保に百姓は苦労したという。菊川地区は小さな河川しかないために日照りに備えて溜池を沢山作り農業用水を確保したという。鴨川さんが小学4年生の時に「大井川右岸土地改良区」の事業によって、現在の大井川農業用水が利用できるようになり(受益面積3512ha、組合員約9000人)それ以来、水不足で苦労することなく、安心して農業を営むことができるようになり周囲の大人たちが大変喜んだことを自身の体験として陳述した。
 リニア工事について何より心配なのは、工事によって大井川の水が涸れてしまうこと、涸れてしまえば大井川農業用水を使えないし、農業を営むことができないと訴えた。
 リニア工事期間中にトンネル湧水が県外(山梨県)流失する問題で、JR東海は、東京電力田代ダムの大井川からの取水を抑制することで流失量と「相殺」させる対策案を静岡県有識者会議に提示した。しかし、トンネル工事の影響で大井川の流量減少が見込まれる中、渇水時に「相殺」するだけの水量があるのか甚だ疑問だ。田代ダムの取水量を巡って、大井川の渇水対策で流域自治体の粘り強い交渉によって水量を取り戻した経緯がある。水利権更新時に協議する「大井川水利流量調整協議会(国、静岡県、山梨県、流域市町、東電で構成)」で東電が提示した資料では、1991年~2000年の10年間の渇水期の1~2月の平均河川流量の大半は毎秒2~3トン。
 JR東海は環境影響評価準備書で上流部の河川流量がトンネル工事の影響で毎秒2トン減水すると予測していてトンネル工事期間中も河川流量が減少する可能性がある。田代ダムの最大取水量は毎秒4・99トンだが、冬の渇水期ではそれだけの流量がない。県、流域自治体、東電との取り決めで、渇水期でも維持すべき流量として毎秒0・43トンが定められており、さらに、ダム配管の凍結防止のために毎秒1・62トンの取水が必要となる。したがって河川流量が毎秒2・05トンを下回ると、東電がJR東海に譲るような水がないことになる。ところがJR東海は「理屈上は渇水期でも(対応)できる」(4月26日の県有識者会議)と説明しているが根拠を示していない。静岡県も「根拠となるデータや手法を早期に示すべきだ」と主張している。

次回口頭弁論
は9月9日に


 口頭弁論終了後に持たれた進行協議において裁判長から原告側に対し、①原告の主張である権利侵害について具体的に一覧にまとめて欲しい。②大井川の減水の蓋然性について原告の側で説明を③大井川減水問題で学者証人を尋問する考えがあるか④具体的な候補者がいるかといった質問があった。原告代理人は①については裁判官が示した形式で提出することに同意。③④は裁判の過程の中で考えているし人選についても検討している。
 ②についてはJR東海が減水すると言っているし基礎となるデータを持っているので被告の側が説明をしてくれないと判らないのではと応じたところ、JR側は県の有識者会議できちっと反論ができていると主張。原告代理人は有識者会議ではすべての疑問が十分に解決されていないと認識しているので不安は払しょくできないから有識者会議の議論を踏まえて次々回までに説明をするとした。
 次回口頭弁論は9月9日(金)次々回は11月25日(金)          (S)

リニアの工事差し止めを求めて提訴した

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