宮城県での参院選結果
野党共闘を再出発させるための課題とは
2023統一地方選勝利に向けて
自民、宮城
で議席奪還
【宮城】宮城選挙区は自民党公認の現職候補が勝利した。立憲民主の新人候補は及ばなかった。参院宮城選挙区では前々回と前回、「野党共闘」の候補が勝利した。今回、当初から知名度の圧倒的な差が指摘されていた。しかも与党が「一本化」を果たしたにもかかわらず、野党は乱立した。さらに立民を中心とする「共闘」そのものが混迷し、最後まで不協和音が指摘される選挙戦となった。
両候補の票は47万と27万、20万票の大差だった。前回参院選、激戦を勝ち抜いた立民新人候補は47万票を獲得していた。
直前に安倍元首相が銃撃された影響もあり、得票率は前回より3ポイント近く上昇した。一方、宮城選挙区では前回を2・37ポイント下回り50%を切った。盛り上がりに欠ける、手ごたえのない選挙だという声が聞かれていた。
現職候補の変節と
「与党の一本化」
自民党の桜井充候補は98年の初当選(民主党)以降、連続4期の実績がある。民主党政権では財務、厚労の副大臣であり、党の役職も歴任してきた。民進党の分解と再編を経て国民民主へ、さらに無所属となり、政策実現のためには与党でなければならないと自民党に行きついた。安倍元首相から誘いがあったとされる。選挙でも安倍元首相がかけつけ熱烈な応援演説を行った。
6年前、宮城選挙区が減員で1人区になり、与党との正面対決が焦点となった。民進党の桜井議員は共産党はじめ野党との選挙共闘によって自民党現職に勝利した。政策協定には安保関連法、アベノミクス、税制、原発、沖縄・辺野古基地が列記され、「安倍政権の打倒をめざす」と明記された。全国に先駆けての「市民・野党共闘」の成立だった。今回の桜井議員の寝返りに対して、野党共闘の議席を返せという抗議の声が上がったのは当然だ。
桜井議員を自民党公認とすることには地元の自民党から異議が飛び出していた。自民党県連は独自に候補者擁立を模索、これに対して中央が主導して「世論調査」による候補者決定という異例の事態になり、桜井議員が公認候補に指名された。中央主導の決定はすんなりと受け入れられたわけではない。しかし、自公与党はわだかまりを抱えつつも、ともかく事態を収拾し、県内首長の大多数の支持もとりつけ、選挙戦に突入した。重点地域として安倍、岸田首相らが駆けつけた。
野党の分散と
「共闘のもつれ」
野党の状況は過去2回の参院選とは大きく変わった。
今回、自民と立民以外に3人が立候補した。維新、参政、N党の獲得票の合計は立憲候補の半数を上回った。維新は今年1月に県組織を立ち上げ、参院に初挑戦した。得票率は1割だったが、比例での伸長(県内比例票の衆院選からの倍増)につながった。突然の立候補だった参政党は5万3千票、維新票の半数を超えた。
野党第一党としての立民を中心に、諸勢力のさまざまな連携によって与党との対峙を展望することは非現実的なものとなった。野党共闘の拠点とされた宮城でも、国政状況がストレートに反映されることになった。
さらに影響が大きかったのは立民と国民、立民と共産との選挙共闘が困難をきわめたことだった。立民からの新人候補者の擁立は早い段階でニュースになっていた。立民と国民は連合みやぎが橋渡しして選挙共闘を確認した。それは連合中央が具体的方針は地方組織に委ねるとしたことを受けてのことであろうが、宮城での共闘の歴史が背景にあったことも確かだろう。
実際には立民と国民の関係は過去2回から後退した。マスコミ調査によれば国民支持層の支持は自民党候補と立民候補とに割れ、ほぼ同程度の投票だった。
市民連合、共
闘実現の努力
連合中央の一連の言動は選挙共闘を大きく制限した。そのため「市民・野党共闘」のスタートは遅れ、選挙戦での協力関係もダメージをこうむった。共闘成立を確かなものとするために配慮や慎重な対応が求められ、「共産党排除」「共闘見直し」の圧力をかいくぐるような努力が様々な場で続けられたのだろう。
6月6日になってようやく「市民連合@みやぎ」の努力が実を結んだ。この日、立民と共産の県組織代表に別個に同一の「政策要望書」を手渡し、それぞれから承諾を得るという方式によって事実上の共闘が成立した。市民連合が発表していた4項目要請が要望書となった。
こうして6月16日、「市民連合@みやぎ」は参議院選挙に向けた「キックオフ集会」を開催した。司会の「ようやくこの日がきた」という開会の言葉に万感の思いがこめられていた。両党代表、支援する県議の会など支援者たちが初めて一堂に会し、候補者も「ようやくこの日を迎えることができた、闘う準備がようやくできた」と応じた。
最終盤、仙台駅前で両党の代表、県議の会などが集まり、候補者とともに支持を訴えた。「市民・野党共闘」は制約のなか、最後まで奮闘した。しかし、接戦に持ち込むにはあまりにも時間が足りず、現職の厚い壁に迫ることはできなかった。
朝日新聞は「戦略ちぐはぐ/20万票減らす」と書き、河北新報は「中央の事情に振り回された末の敗北」「共産が表に出られず、連合も立民、国民で割れる。すべて中途半端な状態で闘わざるを得なかった」という関係者の苦悩を紹介している(7月12日「大差の裏側」/共闘変質)。
過去の共闘では党派をこえた交歓が生まれ、話題になった。共産党議員が立民の候補者を連れ、自分の選挙区を細かく案内して支持を訴えることもあった。選挙を担う地元の支持者たちは「生きた共闘」の手ごたえをつかんでいった。地域に浸透して共闘の成果を広げ、圧倒的な保守地盤に対抗した。そのような共闘の再構築が可能なのか、大きな課題が突きつけられた。
問われる
再出発
もちろん共闘の内容やスタイルだけが問題であるわけではない。運動そのものが後退、分散してきたことの影響は大きい。選挙共闘と運動は両輪だ。6年前、宮城全労協ニュースは次のように主張していた。
「全1人区で政権野党(民進党、共産党、社民党、生活)の4党が候補者を一本化して闘った。初めての試みだった。『市民運動』が重要な役割を果たした。昨年来、安保法制に反対する運動の中で、『野党は共闘』の要求が全国に広がっていった。若者たちはその言葉に『立憲主義』破壊への危機感と、変革への希望をこめた。政権野党はこれに応えた」。
県南と県北で参院選に向けた大きな地域集会が開催された。安保法制廃止とともに地域の要求が掲げられた。「この地域の幾つかの自治体では、原発推進政策に反対する取り組みが継続している。大崎市に隣接する加美町では、環境省の強圧的な指定廃棄物処分場建設計画に反対して、住民が立ち上がった。県北農業地帯では『放射能汚染』への不安に加えて、TPPへの不信が広がっていた」。
このような運動が野党共闘を押し上げ、画期的な1人区での勝利をもたらす原動力になった。また3年前には、安倍政治との対決を前面に押し出し、立民の新人候補が野党共闘によって勝利した。その後、衆院選を契機に「選挙共闘」が攻撃され、立民中央は「対決型か提案型か」などと混迷を深めている。
共闘と運動の双方で大きな課題が残された。来春には統一地方選がある。沖縄につづく福島と岩手の知事選も迫っている。再出発が問われている。
(7月17日/仙台・八木)


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