福島県の参院選結果について

岸田政権に反対する政党と
市民運動の統一戦線に向けて

問われている課題の取り組みを開始しよう

 【福島】投票率は53・40%で、選挙戦は盛り上がりに欠けた。野党候補小野寺あきこは32万票で自公推薦の星北斗に約10万票引き離されての敗北であった。得票も2016年の野党共闘候補増子の48万、2019年の水野さち子34万5千から後退した。「市民と野党共闘運動」の不成立が敗因であることは衆目の一致するところだ。

野党共闘不発、政策見えず

 野党共闘潰しをはかる自公政権と連動した連合などの「共産、市民連合」排除姿勢が貫かれる中、これまで野党候補が訴えた「原発ゼロ」が消えるなど、自公候補に対抗する鮮明な旗幟を示せなかった。
 ラジオ・パーソナリティーであった小野寺あきこ候補は、市民の声が政治に届いていない社会の現状に「あなたのこころを届ける」というスタンスで臨んだことは好評であったが、その内容、具体的政策は不透明であった。そのため、最後の段階に至っても、各支援市民が「何を中心に訴えるべきか」を話しにくかった。
 小野寺選対は、「連合・立憲・国民・社民・県議会県民連合」の5者協の枠組み厳守が基本とされた。「県民党」を標榜して政策の対立軸を立てず、県民の重要課題である原発汚染水の海洋放出問題をはじめ憲法改悪について態度を表明しなかった、今選挙での5者協の基本は「保守票取り込み」とされ、共闘も政策もその方針に沿わないものは排除されたのだ。最終盤の街頭演説会には、京都で維新と組んだ国民民主の前原を登壇させた。しかし、こうした5者協の保守向けとりくみがうまくいったという話を聞くことはなかった。

市民連合、ミナセン等
のとりくみも規制

 市民と野党の共闘運動も不完全燃焼に終わった。市民連合と各党、候補者との政策協定は拒否され、政策要望書を渡すだけだった。全県的な野党と市民の統一集会も開かれることもなく、共産党及び県市民連合、ミナセンなかどおり、農民連等の市民団体が、バナーやプラカードを掲げて街頭に立ったことにさえ小野寺選対側からクレームが入ったという。
 昨年衆院選ではできた市民と野党の合同の街頭演説会も開けなかったし、「ミナセンなかどおり」が郡山市で開いたウクライナ取材講演とリレートーク集会にも小野寺候補が顔を見せることはなかった。選挙中、県内マスコミは“実質野党共闘”と表現し、一定の期待もあったのかもしれないが、広範な反自民層、無党派層を引き付けるには至らず、支持は広がらなかった。
 『福島民報』は、 ①原発処理水、改憲、安全保障など、5者協の「保守票取り込み」「野党間で温度差」のため、具体的政策に踏み込まず」②中盤戦で猛追、しかし、安倍事件で「浮動票が引いた」、③共同通信・投票日出口調査「共産支持層2割弱、立民支持層1割弱が与党候補に流れた」と報じた。
 こうした状況にもかかわらず、県市民連合とミナセンなかどおりなどの地域組織は、倦まず弛まず「投票に行こう!」「女性候補を国会に!」「比例は野党に!」と訴える街頭スタンディングとSNS配信、集会では必ず小野寺候補の名を挙げるなど懸命に支持を訴え続けたが、情勢を変えることは出来なかった。

共闘不発で野党票も大幅減少


 野党共闘+市民運動の不発は、各野党票を減少させた。昨年秋の衆院選からわずか9カ月で立憲民主の比例票は22万7千から11万票と半分以下になった。しっかりした共闘ができた2016年参院選では、野党政党票自体が、39万票と今回より12万票多く、そこに無党派層の7・5万票積みあがっていた。その逆が今次選挙であり、野党共闘の成否が各野党の支持・不支持に大きく影響を与えていることをデータは示している。
 各野党の比例票を見てみると共産が減少、れいわが停滞した中で社民が1・5倍となった。議員の大半が立憲に移り党員も激減、選挙活動もさえないものであったが「社民党をなくすな、みずほがんばれ」の動きが周りから沸き出たことの反映だ。社民党がこれをどう受け止めるのか、従来の「主体強化」にとどまれば、未来はないと思われる。

無党派、参政、N党.……


 
 選挙区ではほかに立候補した無所属の元教員佐藤早苗3万余、参政の窪山2万3千、N党の皆川2万弱を得票。決して侮れない数字だ。参政やN党は組織的とりくみであったが、佐藤候補はほぼ単独決起でありポスターも見ることはなかった。そのスローガンは「自分がされたくないことは他人にしない」とシンプルで、今日の社会の問題を鋭く突いていたことが支持につながったと思われる。
 他方、大きなみこしに担がれた小野寺あきこ候補が、ジェンダーや女性の深刻な課題、環境問題についてきちんと主張しなければ、票は3人に流れると指摘されていたがその通りとなった。

資本への従属を打ち破る運動を

 国、地方自治体、企業・職場まで貫いている資本への従属体制、労働組合、各種団体の独立性の喪失が長年続いてきたことが、選挙活動と結果に如実に反映された。公的部門でも民間でも、労働者は正規と非正規で元請けと下請けで完全に分断されている。
 福島県での連合を核とする「5者協議会」が内堀県政与党体制の一部であり、様々な点で自公側と違いはなく、社会の上層に位置づいている。これらと一線を画した勢力の共同の闘い、政策を共有する政党・労働者市民運動の塊の形成とパワーの発揮なしにはもはや野党共闘の前進はない。
 共産・れいわ・社民・新社会、緑の党など岸田政権の軍拡・改憲、原発政策、増税と生活破壊に反対する政党と市民運動の統一戦線運動を粘り強く進める中で広範な労働者大衆の立ち上がりを期待しよう。(世田)

原発汚染水の海洋放出に反対する会などが抗議のスタンディング
(4.10郡山)


週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社