沖縄報告:辺野古基地即刻断念を──

岸田内閣は県民民意に従い

沖縄 K・S 7月31日

 7月30日、オール沖縄会議が主催して、復帰50年!新たな基地負担を許さない県民大会~設計変更不承認支持!遺骨混じりの土砂採掘・PFAS汚染を許さない!~が開催された。元々は奥武山運動公園で1万人以上の参加で行われる予定だったが、コロナの急速な拡大のため急きょユーチューブによるネット配信に切り替えられた。
 午後3時、司会の翁長雄治(たけはる)県議(会派=おきなわ南風)が、「ハイサイ、グスーヨー。みなさん、こんにちは」とあいさつしてスタートした。
 はじめに、主催者を代表して、稲嶺進さん(オール沖縄会議共同代表)が、埋め立て工事現場が見渡せる瀬嵩の浜から、次のように開会あいさつを行った。
 「埋立工事は美しい大浦湾にはふさわしくない。県民の人権と地方自治と民主主義を否定する現場そのものだ。沖縄は50年前と何も変わっていないどころか、より酷くなっている。子や孫に負の遺産を引き継ぐようなことは許されない。辺野古は絶対止める。これ以上基地被害や人権侵害を許さない強い決意で結集し、訴えていこう」。
 続いて、先の参議院選挙で沖縄選挙区から当選した伊波洋一さんが、普天間飛行場を見渡すことができる宜野湾市嘉数高台から、沖縄選出国会議員の集まりであるうりずんの会を代表して次のようにスピーチした。「普天間飛行場は77年前の沖縄戦で米軍が占領し造ったものだ。1995年、少女暴行事件が起こり、県民の怒りが爆発したことに対し、SACО合意で普天間飛行場の5年ないし7年内返還が決定された。20年前に返還されていなければならないものが未だに返されていない。放置され続ける危険性は日米両政府の責任だ」。
 そのあと、玉城デニー知事が「県民は復帰により米軍基地が本土並みになると期待していた。しかし、依然として全国の米軍専用施設の70%が沖縄に集中している。私は県民の負託を受けた知事として、辺野古新基地の断念と普天間飛行場の一日も早い危険性の除去・県外国外への移転の公約を果たすため全身全霊で取り組んできた。その力の源は県民の多数の民意だ。県民の強い意志がある限り辺野古新基地はできない」と述べ、「ぐすーよー、まきてーないびらんどー」とこぶしを握り締めた。
 翁長県議が「玉城知事の設計変更不承認を支持し、辺野古反対の民意を示すため、最後まで団結して頑張ろう」と述べた後、糸数慶子さん(オール沖縄会議共同代表)が声明文を読み上げた。
 閉会のあいさつとガンバローは、資材搬入抗議行動中の辺野古のキャンプ・シュワブゲート前から、高里鈴代さん(オール沖縄会議共同代表)が行い、次のように述べた。「SACО合意から26年経過した。新基地反対運動も26年続いてきた。ゲート前では、毎日抗議行動が続いている。復帰50年は県民の苦難の50年。新基地は絶対に阻止。県民の総力を挙げて違法工事を止めよう」。
 オンライン大会はオール沖縄会議ウェブサイトから視聴することができる(21分)。
 なおこの日、オンライン大会に先立ち、全県各地で辺野古新基地反対!埋立ストップ!を訴えるブルーアクションが行われた。

国地方係争処理委が県の審査申し出を却下

政府が一人三役、内閣による政治の私物化


 国地方係争処理委員会は7月12日、防衛省の辺野古埋立設計変更申請に対し不承認とした沖縄県の処分を取り消した国交相の裁決について、沖縄県の審査申し出を却下した。簡潔に図式化するとこうである――大浦湾の軟弱地盤により当初の計画のままでは辺野古埋立を行うことができなくなった政府は埋立設計変更申請を県に提出した(防衛省)。県は不承認とした。政府は県の不承認処分を取り消した(国交省)。それに対し県が申し出た審査を国地方係争処理委員会が却下した。
 政府が一人三役を演じている。その都度役所は違えど実体は同じだ。法律に則った手続きを装いながら都合のいいように法律を解釈し利用する。一言でいえば内閣による政治の私物化である。玉城デニー知事は「不承認処分は公有水面埋立法に基づき厳正に判断したものであり、非常に残念で納得できない。係争委は法律の本旨に基づいた判断をして欲しかった」と述べた。
 また、県の不承認処分に対して、国交相はもう一つ「埋立変更申請を承認せよ」との是正の指示を行っていたが、これに関しては、7月21日、国地方係争処理委員会が東京の総務省において、沖縄県と国交省の両当事者の意見を聞く手続きを行った。沖縄県からは、池田竹州副知事と加藤裕・松永和弘両弁護士が出席し、池田副知事が次のように意見陳述した。
 「今回の設計変更は工期も3倍、費用も3倍となり、最初に承認を得た工事とはおよそ別物の工事だ。変更を承認する正当な事情はない。沖縄防衛局ははじめ5年で埋立が完成するという説明で承認を得た。これからまた10年以上のちにしか完成しないという本当の内容で申請していれば、普天間飛行場の一日も早い危険性除去に責任のある知事は承認できた筈がない。民意を無視した新基地建設の強行は許されない」。
 国地方係争処理委員会は8月29日までに結論を出す予定だが、また、県の審査申請を却下するのか。

7・14国家賠償請求裁判
千葉さん側が準備書面提出


 ヘリ基地反対協カヌーチームの千葉和夫さんは、昨年4月、K8護岸のフロート付近で海上保安庁の高速GB(硬質ゴムボート)2艇により追突され負傷した。しかし海保が一切責任を認めようとしないため、昨年7月、千葉さんは国家賠償を求めて那覇地裁に提訴した。
 7月14日午後、第5回口頭弁論が行われた。傍聴席は支援のメンバーでほぼ満席、原告側は千葉さんと弁護士4人、海保側は弁護士、職員合わせて7人が出廷した。この日、原告側は準備書面を提出した。次回期日は10月4日(火)午後3時。
 準備書面の構成は、①「本件加害行為当日の海上保安官による本件事件現場付近の取締状況」、②「本件加害行為における加害態様及び被害状況」、③「本件加害行為直後の状況」となっており、④「本件被害について」で、「GB28及びGB27による衝突により、原告は、訴状記載のとおり、前胸部打撲、頸部打撲、頸椎損傷、頭部挫傷の傷害を負い、かつ後遺障害(14級)が残った」と記されている。
 閉廷後、控室で開かれた支援者の集まりで、弁護団は「裁判は事実関係の確認をする大事なところに差し掛かっている。来年の早い時期に証人調べに入るのではないか」と述べ、裁判勝利の決意を示した。千葉さんの裁判を支援する会の鈴木公子さんは裁判への結集・支援を訴えた。千葉さんの裁判を支援する会(共同代表:金井創/鈴木公子)連絡先=chibasannosaiban@yahoo.co.jp。

7・21内田弁護士を囲む会
花岡、西松、三菱マテリアルの和解から学ぶこと


 7月21日夕、那覇市おもろまちで、「花岡事件と和解」をテーマに、内田雅敏弁護士を囲む会が開かれた。内田弁護士は2、3カ月に一度来沖し辺野古・安和の現場に通っている。この日も、辺野古帰りの疲れも見せず、元気に参加いただいた。テキストは池田香代子さんによるインタビュー集『花岡の心を受け継ぐ』(かもがわ出版、2021年)。
 はじめに、テキストの補章に収録された池田さんと内田さんの対談「花岡、西松、三菱マテリアルの和解から学ぶこと」の読み合わせが行われた。対談の構成は「戦後はじめての和解となった花岡和解の意味」「法律の壁を乗り越えた西松建設の和解」「日本政府も事実上後押しした三菱マテリアルの和解」「三つの和解が現代に問いかけるもの」となっている。
 1942年11月、東条英機内閣は「華人労務者内地移入に関する件」を閣議決定し、1944年8月から1945年5月までに、約4万人を強制連行し全国35社135カ所の事業所で劣悪な環境下過酷な労働を強いた。その結果、6800人以上が死亡したとされている。中国人986人が連行された秋田県の花岡鉱山では、鹿島組(現鹿島建設)の下での過酷な労働と虐待・暴行・飢餓による死に耐えかねて、1945年6月30日に一斉蜂起・集団逃亡が起こった。
 『秋田県警察史』によると、鎮圧に動員した延べ人数は、銃で武装した憲兵隊200人をはじめ、警察官494人、警防団7544人、民間人13654人にのぼるという。最終的に全員が捕まり、後ろ手に縛られて共楽館の前で3日3晩ひざまずかされ、殴る蹴るの暴行を受け多数が殺された。大館市営十瀬野(とのせ)公園墓地入口に立つ「中国殉難烈士慰霊碑」には419人の名前が刻銘されている。
 私は約10年前、花岡平和資料館や慰霊碑と共に、旧共楽館跡の広場を訪れたことがある。現場に立ち、中国人労働者が捕まり、虐待・拷問された当時のありさまをできる限り想起してみた。天皇の軍隊、天皇の警察だけでなく、一般国民が天皇の臣民としてアジアに対する暴力の当事者となっていた歴史の事実は否定しようがない。また、この事実をごまかさず受け止めたからこそ、花岡町―大館市が中国人犠牲者に対する慰霊式をやり続け、被害者・遺族との交流を続けることができたのだろう。
 内田さんは、2000年に成立した花岡和解にふれて、何より大事なことは被害の実態に目を向けることであり、①まず加害の事実を認め責任を認めて謝罪する、②謝罪の証として何らかの和解金を支給する、③被害者に対する追悼式を行うなど、後世への歴史の教訓とする、の三つが不可欠だと指摘する。そして、和解案を携えて北京に行き、中国人被害者団体の聯誼会(れんぎかい)の幹部たちに意見を聞き、全員一致の賛成を得た、と体験を語る。さらに「花岡和解があったからこそ、のちの西松建設和解があり、西松建設和解があったからこそ、三菱マテリアル和解があった」と述べ、それぞれの和解の内容を詳しく説明する。
 現在、日韓両政府の間で、徴用工問題をめぐって抜き差しならない対立が続いている。日本政府は「1965年の請求権協定で解決済み」と、相手の一方的な屈服ばかりを求めており、多くのメディアも政府に加担している。日本は加害者なのだ。日本が被害の実態に真摯に目を向け、内田さんの指摘する3条件を実行することこそが、日韓和解に至る道筋を拓く。

やんばるシネマ『Ushiku 牛久』上映

 7月16日(土)午後、名護市立中央図書館で、やんばるシネマが主催して『牛久』の上映が行われ、約30人が集まった。『牛久』は、入管施設に強制収容されている入所者の姿を描いたドキュメンタリー映画で、トーマス・アッシュ監督が自ら撮影・編集し、2021年公開されたものである。
 日本には、在留資格のない外国人、更新が認められず国外退去を命じられた外国人を“不法滞在者”として収容する施設が17カ所あり、特に規模の大きい所が茨城県牛久市にある東日本入国管理センターと長崎県大村市にある大村入国管理センターである。今年3月に死亡したスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんは名古屋市にある入管施設に収容されていた。
 監督は、長期間牛久に通い、入所者との面会を続け、その様子を“隠し撮り”の手法で記録した。映像は入所者のありのままの姿、心の叫びを伝え、日本の入国管理行政の実態を浮かび上がらせる。映画は最後の方で、立憲民主党の石川大我参院議員による国会質問と森まさこ法相の答弁を映したが、日本の入管行政の問題を突き出す一場面となった。
 やんばるシネマでは、8月に韓国映画『タクシー運転手』、9月に『米軍が最も恐れた男カメジロー』の上映を予定している。連絡先=090-9081-1597(豊島)、979-16296072(稲葉)。

声明

復帰50年!新たな基地負担を許さない県民大会

~設計変更不承認を支持!遺骨混じりの土砂採掘・PFAS汚染を許さない!~

 玉城デニー知事は昨年11月、軟弱地盤に関わる設計変更を法に基づき厳正に審査し、「不承認」とした。しかし、国は国民の為の救済措置である不服審査請求を国が国に申し立て、今年4月知事の権限である不承認を取り消す「裁決」をした。さらに、県が設計変更を承認しないのは法令違反だと「是正の指示」で承認を迫っている。
 沖縄県は国地方係争処理委員会に、「裁決」と「是正の指示」は国の不当な関与だと審査を申し出たが、係争委は7月12 日「裁決」は審査対象となる「国の関与」ではないと県の申し出を却下した。現在、「是正の指示」について審査が続いている。全国の行政法学者らは国が審査制度を使う手法は不適切で間違っていると批判している。
 2015年の埋め立て「承認取り消し」も2018年の「承認撤回」も、県と国の対立した主張は、裁判では審議されていない。
 今回は、軟弱地盤の存在で当初の設計書では工事ができなくなり、国が新たに設計変更の承認を求めている。しかし、地質や環境の専門家は、新たな設計変更書でも震度1以上で護岸崩壊の恐れがあると指摘し、ジュゴンを始めとする多様な生物を育む自然環境も守れないと警鐘を鳴らす。
 沖縄は、戦後27 年間米軍の施政権下で、人権も自治権もなく基地の負担に苦しめられてきた。復帰後も軍人・軍属が関わる事件・事故の他、軍用機の墜落や部品落下、不時着などの事故は826 件(2020年12月末現在)発生している。ヘリの部品が保育園の屋根や小学校の運動場に落ちた2017年の事故は、教育現場も安心・安全ではない事を示した。保育園に落ちたヘリの部品について、米軍はその所有すら認めていない。今月、キャンプ・ハンセンの射撃場近くの民家で見つかった銃弾も米軍は関与を否定している。
 昼夜を問わない航空機騒音、排気ガスの他、基地が汚染源と疑われるPFAS等が飲料水を含む生活環境全般を蝕んでいる。しかし、日米地位協定は基地への立ち入り調査を拒み、県民の人権や自治権は置き去りのままだ。政府に国民の生命・財産を守る意思も能力も感じられない。
 この国は、日米安保条約に伴う基地の過重負担を復帰の前も後もずっと沖縄に、さらに沖縄の未来へも押し付けようとしている。そして今、日米安保で台湾有事になれば沖縄が真っ先に戦禍に巻き込まれると言われている。
 辺野古新基地を争点とした2 度の知事選や県民投票の民意は建設NO!だ。設計変更を法に基づき不承認とした知事判断を沖縄県民は支持する。この地で生命をささげた多くの霊を慰めるために、基地建設への遺骨混じりの土砂採掘を許さない。沖縄を平和な島として次世代に引き継ぐために、私たちは辺野古新基地建設NO!を訴える。

宛先 内閣総理大臣 沖縄及び北方対策担当大臣
外務大臣 米国大統領
防衛大臣 駐日米国大使

2022年7月30日

辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議

2022.7.30 オール沖縄会議のズーム配信県民大会。④玉城デニー知事のあいさつ。
石垣市。衆院沖縄・北方問題特別委員会の視察に対し、自衛隊基地建設反対を訴え。 (7.14)
琉球セメント安和桟橋出口ゲート。土砂搬入阻止の闘いによって、ダンプがストップしている(7.27)

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