神戸製鋼石炭火力発電所の新設差し止め民事訴訟
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江守正多さんが気候変動への影響について証言
喜多幡佳秀(ATTAC関西グループ)
気候変動と
火力発電所
神戸製鋼石炭火力発電所の新設差し止め民事訴訟の第16回公判が7月19日に神戸地裁で行われた。今回は原告側証人の証人尋問で、江守正多さん(東京大学未来ビジョン研究センター教授)と、原告の1人で発電所の近くに住むTさんの証言。
江守さんは国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が昨年8月に公表した同第1作業部会第6次評価報告書「気候変動2021・自然科学的根拠」の主執筆者の一人。この訴訟の大きな焦点の一つである気候変動と火力発電所の影響に関連して最新の科学的知見を基に詳しく説明して、原告側の論点を補強した。神戸製鋼側は同社の石炭火力発電所が気候変動に及ぼす影響や、そのことが原告の周辺住民に及ぼす影響を評価することはむずかしいという一般論に逃げようとしてきたが、江守さんは温暖化対策が緊急を要するものであり、化石燃料の利用を今すぐ停止しなければならないときに、裁判所はしっかりと判断するべきであると迫った。
Tさんは子どもたちの健康を守るために娘といっしょに原告になった経緯を話し、被告側弁護人の意地悪な質問にもしっかりと答えた。この裁判でこれまで一度も発言しなかった被告・関西電力側の弁護士が「Tさんが40人の原告を代表して証言することになったのはなぜか?」、「Tさんのご主人が原告になっていないのはなぜか?」など、証言を萎縮させることを目的としているとしか思えない反対尋問を行って傍聴した人たちからも顰蹙を買った。こんな尋問は裁判官が注意してやめさせるべきだろう。
火力発電所か
らの撤退へ!
いつものように公判終了後は近くの会場で期日報告会。今回は弁護団からの説明のほかに、江守さんと弁護団の浅岡美恵さんのミニ対談もあり、終盤を迎えたこの裁判の意義がますます明確になった。裁判の勝敗に関わりなく、この裁判で明らかにしてきたことを広め、火力発電所からの撤退を実現するのはこれからの運動にかかっているという思いが共有された。この裁判に関心を持ち、傍聴に参加する若い人たちが増えてきている印象だ。
次回公判は10月18日で、最終準備書面を基にした弁論。これで結審となり23年初めには判決の見込み。
以下は前回の投稿(本紙2021年2月14日号)以降の動き。
2021年3月15日、神戸製鋼所の環境影響評価(環境アセスメント)を認めた国の「確定通知」は違法として、通知の取り消しを求めた行政訴訟の判決で、大阪地裁は原告の訴えを却下。
本年2月1日、神戸製鋼所は新設石炭火力発電(神戸発電所3号機)の営業運転を開始。神戸の石炭火力発電を考える会の抗議声明によると、3号機の営業運転開始によって年間346万トンのCO2排出増加となる。
4月26日、行政訴訟の控訴審(大阪高裁)で控訴却下。原告側は上告および上告受理申立て。「控訴審判決は、大気汚染に関しては原告適格を認めつつも、原審の判断をそのまま追認し、大量に排出される CO2 の環境影響については、原告らの個別利益に関わるものではなく公益に関わるものだとしてそれを争う原告適格を認めず、原告らに、CO2についての本件アセスの適正さを争う地位を認めませんでした」(原告団の声明より)。
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