8・6ヒロシマ平和へのつどい2022 (上)

被爆・敗戦77年 ウクライナ侵略戦争・世界的軍事緊張・日本の軍拡をやめさせよう!

 今年の「8・6ヒロシマ平和へのつどい2022」は、「被爆・敗戦77年 ウクライナ侵略戦争・世界的軍事緊張・日本の軍拡をやめさせよう!」とのタイトルで8月5日開催された。広島市中区の会場には、110人が結集した。
 司会の新田秀樹さん(ピースリンク広島・呉・岩国 広島世話人)が開会あいさつも行った。

西岡由紀夫さんの問題提起
ウクライナの停戦と平和回復
復興人道支援の取り組み

 最初の問題提起は、「被爆・敗戦77年 ヒロシマから─ウクライナ侵略戦争に、平和都市ヒロシマに先立つ軍都・加害基地廣島をみる」と題して、西岡由紀夫さん(広島県高等学校被爆二世教職員の会会員、ピースリンク広島・呉・岩国 呉世話人)が行った。
 「ロシアによる隣国ウクライナ侵略を広島と重ねて考えてみたい。山田朗さんによれば、ロシアがウクライナへの公然たる侵略戦争に踏み切った背景には、コロナ対策と経済危機に主要な国家が忙殺されていて、また米国はアフガニスタンから撤退したばかりで、東欧の問題に介入しにくいのでは、という判断がロシア側にあった。このウクライナ戦争は、歴史的に考察すると、日中戦争と3つの点で類似している。①「成功事例」の再現をねらった軍事大国による隣国への侵略戦争という点である。1931年の「満州事変」と「満州国」の成立、1937年「盧溝橋事件」の勃発で全面的な日中戦争へ突き進んだ。2014年のクリミア併合が「成功事例」と受け止められて、ウクライナ東部の占領・併合をめざす。
 ②最初の一撃で相手を屈服させるという軍事大国側の目論見が大きく外れた点である。日中戦争では、国共合作が成立して中国側は一丸となって日本軍に抵抗し長期戦となった。諸外国が中国を兵器・物資・財政面で支援し「援蒋ルート」が設定された。今回の戦争でも、侵略された側が団結し、隣接諸国を通じての軍事援助が大規模化した。一般民衆を長期間にわたって生命の危険にさらすという、極めて深刻な状態をもたらしている。
 ③戦争への対応(どちらの側を支持・支援するか)めぐって世界が二分されているという点である。日中戦争では、日本は欧米諸国の中国援助を封ずるためにドイツ・イタリアと手を結んで、英米陣営に対抗し、結局、世界戦争にまで突き進んだ。今回も反ロシアと親ロシアに分裂しつつあり、軍事と経済が相まってさらに大規模な対立を生みかねない。このように日中戦争が三国同盟を経て対英米戦争に進展していったことを知っている私たちは、これを念頭に、外交努力によって停戦と平和回復、復興人道支援のためのとりくみにあたる必要がある。

国際平和都市
ヒロシマとは
 広島を考えるとき、私は、いつからか父母の歴史的経験(生活)が広島の歴史的意味の両側面を表現していると認識するようになった。父は1939年現役兵となり、1940年3月宇品から日本軍兵士として中国に渡り、同年4月宜昌作戦(湖北省)をはじめとする侵略戦争に従事し、1945年8月四平(吉林省)で武装解除、シベリア抑留(チタ)を経て日本(舞鶴)に戻ってきた。他方で、広島で生まれ育ち原爆被爆した母、即ち「軍都廣島」から原爆被爆を経て「平和都市ヒロシマ」という両面である。その両面は欠くことができない。
 母には18歳年上の姉、8歳上の兄(後に父の戦友)“大きいにいちゃん”と4歳上の“小まい兄ちゃん”がいた。妹の母にやさしかったという“小まい兄ちゃんは、北天神町、現在の平和公園の中にあった呉服問屋「清水」で働き、大久野島の毒ガス製造にも従事し、宇品からフィリピンに渡りルソン島で21歳で戦死している。それは1945年20万人以上が戦死・戦病死した激戦地であったというが、実際、戦死か、戦病死か、餓死か。いわば、死を「運命」づけられた伯父ではなかろうか。「陸軍桟橋とここを呼ばれて還らぬ死に兵発ちにき記憶をば繋げ」(芳美)。広島にある墓には名前、死亡年月日は彫られているが、遺骨はない。沖縄・南部で遺骨を掘る人「ガマフヤー」の重い指摘に改めて自らの不認識を反省したい。
 18歳年上の姉の子ども(私からいうと従兄)は、母と歳が近く丁度姉弟のように育った。当時県立商業学校(現広商)2年生で、建物疎開の学徒動員で爆心地から2㎞離れた校庭に集合中であったが、左半身火傷を負い、現在もその痕は残っている。
 ヒロシマの周囲をみると、海上自衛隊と米陸軍秋月弾薬廠からなる呉周辺の基地群(広島から直線距離
で20㎞)、米軍岩国航空基地を中心とした岩国の基地群(35㎞)があり、その先には計画中の上関原発(70㎞)、伊方原発(100㎞)、島根原発(130㎞)が存在しています。そのことも「国際平和都市ヒロシマ」のあり様を問う課題である。昨年「黒い雨」訴訟は全面勝訴した。確定後、約3000人が県市に手帳交付を申請したが、約50人の胎内被曝者(4号)の審査が中断している課題も報道された。これまで無視され続けてきた放射性降下物、残留放射能、内部被爆については、その転換を進めていかなければならない。
 また、私も原告の一人である被爆二世裁判は、2017年2月、広島と長崎でそれぞれ提訴され、被爆の遺伝(継世代)的影響などを争点に、先日7月27日結審となった。地裁判決日は長崎が12月12日、広島は2月7日である。被服支廠については現存する4棟の保存は決まった。昨年明らかになった広島・中央公園のサカスタ用地の第五師団補充隊の原爆遺構は、旧陸軍輜重隊の兵舎や厩舎など、最大級の規模であったが、ほんの一部を「馬碑」の側に移設するなど切り取り保存に決まった。地下遺構は無視するのかという指摘に保存で応えていくよう、歴史的にも貴重な価値を指摘し続けたい。
 2017年採択された核兵器禁止条約は、核兵器の開発・実験・製造・備蓄・移譲・使用・威嚇としての使用の禁止を定め、昨年1月発効して、今年5月に締約国会議がウィーンで開催された。「戦争被爆国」の日本政府は、オブザーバー参加さえしなかったが、広島・長崎両市長、被爆者、若者は参加して論議を重ねた。一方、この8月、コロナのため2年延期されたNPT再検討会議がニューヨークで開催され岸田首相も演説した。
 詩人・栗原貞子が「ヒロシマというとき」を発表したのは1976年であった。また、1996年末に原爆ドームが世界文化遺産になって、本島等長崎市長が「広島よ、おごるなかれ」と言葉を発したのは、翌1997年であった。46年たっても、25年たっても、わたしたちは今なおその課題に応えられないでいる。
 何よりも〈いのちとうとし〉「ヒロシマの心」で一日も早くウクライナ戦争の停戦を強く訴える。

尹康彦さんの発言
危機の朝鮮半島
平和に向けての課題とは


 次に「2022年 朝鮮半島をとりまく情勢」と題して、尹康彦(ゆんがんおん)さん(在日韓国民主統一連合広島本部)が以下述べた。
 3月9日の韓国大統領選挙で尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が0・73%、25万票弱の僅差で誕生した。
 大統領就任演説―「自由民主主義」を強調したようにアメリカ主導のグローバル包括的戦略同盟に乗っている。バイデンの訪韓・訪日、「新冷戦」下の南北関係、アメリカの対朝鮮政策の変化、韓米日の軍事同盟強化となっている。朝鮮の「強対強、正面対決」政策。光復77周年8・15自主平和統一大会推進委員会によって、8・15自主平和統一大会が開催される。「危機の朝鮮半島、平和のために行動すべきときです。戦争を招く対決政策と韓米日軍事協力をやめて止めよう 8月13日!集まれソウルに!」。最後にドキュメンタリー映画「私はチョソンサラムです」を紹介したい。

武藤類子さんのメッセージ
世界の被爆者と繋がり
原発・核兵器廃止を


 次に、武藤類子さん(福島原発告訴団団長)からの「福島からのメッセージ」を大月純子さん(福島原発告訴団・中四国)が代読した。
 「原爆投下から77年の月日が経ちますが、核のもたらす被害は、今も福島へと続いています。廃炉の最終形がどんな状態を示すのかすら提示できていません。原子力規制委員会も「安全な状態ではない」と言っています。高い放射線量に阻まれ、遠隔操作でも思うように作業は進まず、結局人が放射線量の高い非常に危険な場所での作業に駆り出されています。避難区域の解除は、事故前の許容被ばく限度の20倍の放射線量で行われ、そこで子どもを含む住民が日常生活を過ごすことが促されています。事故から10年を契機に、行政による避難者の切り捨てが顕著になり、提供された避難住宅をさまざまな事情で出ることができない避難者に対し、福島県が損害金としての2倍家賃を請求したり、裁判に訴える事態にもなっています。
 戻らない避難者の代わりに県外からの移住者支援に予算を付けて力を入れ、故郷はもはや違う人が住む違う町へと変わって行きます。原発事故の被ばくによる健康被害は事故直後から徹底的に否定され、事故後多発している小児甲状腺がんさえ因果関係は認められていません。今年3月に当時6歳から16歳の甲状腺がん当事者が裁判を起こしました。
 そのような重荷を背負わさざるを得なかったことに心が痛むと同時に、大人としてできる限りの支援を呼びかけたいと思います。原発構内に貯められているALPS処理汚染水を薄めて海洋放出する計画は、漁業者をはじめ農林業、観光業界なども反対をしていますし、福島の7割以上の地方自治体議会も、反対の意見書を国に送っています。多くの県民も反対し、さまざまなアクションを起こしていますが、東電は一部の工事を「認可が必要ない箇所だ」と言って強引に工事を始めています。
 除染で集められた汚染土は「再生資材」と名を変えて、農地などで再利用する計画が進められています。汚染された樹木を、除染を兼ねると謳って木質バイオマス発電所で燃やすなど、本来閉じ込めて管理すべき放射性物質を意図的に環境に拡散しようとしています。
 事故当時の東京電力経営陣の刑事責任は、強制起訴裁判で明らかにされた多くの証拠にも拘らず、東京地裁で無罪判決が下され、つい先日控訴審が結審したところです。判決は来年の1月に下されます。

原発再稼働・汚染
水海洋放出やめろ
 6月17日の民事の損害賠償裁判の最高裁の統一判断は信じがたいことに国の責任が認められませんでした。
 司法までもが、原子力行政に飲み込まれているのかと思わざるを得ません。原発事故の被害はより見えなくされ、「復興」へと邁進する姿だけが取り上げられ、人々は事故の被害や不安について口をつぐむようになり、放射線防護への関心や対策は大きく後退しています。これが現在の福島の姿です。原発は原爆と同じ技術を使った発電方法であり、原爆が抱えてきた「圧倒的な力のためには犠牲を厭わない」という冷酷な思想が受け継がれていると感じています。ロシアのウクライナ侵略戦争により、原発が核兵器になり得ることを世界中の人が認識できたにも関わらず、この国の首相は、この冬に原発9基を再稼働する方針を発表しました。
 今、世界中に核分裂による放射性物質が生成され、残され、放置され、漏れ出し、知らぬ間に命を脅かしています。
 人類は本来共存できないものと、ともに暮らしていかなければならなくなりました。
 私たちは、今こそ世界の被ばく者と繋がり、力を合せて、この状況を少しでも良い方向に向けていかなければ、子どもたち、未来の人々に更に重い荷物を背負わせることになります。
 広島で、長きに渡り大変な闘いをされ、少しずつ少しずつ道を開いて来られた皆さまと繋がり、ともに闘っていきたいと心から願っております」。

清水早子さんから
 (ミサイル基地はいらない宮古島住民連絡会事務局長)
「沖縄からのメッセージ」

 次に、清水早子さん(ミサイル基地はいらない宮古島住民連絡会事務局長)からの「沖縄からのメッセージ」を土井桂子さん(広島と沖縄をむすぶドゥシグヮ)が代読した。

 「北緯24度、沖縄島から300キロ南、人口550
00人のサンゴ礁の島に、2019年3月、陸上自衛隊ミサイル基地である『宮古島駐屯地』が開設され、2020年には警備部隊、ミサイル部隊総勢約800人が200台近い軍事車両と共に配備され、家族など含めると2000人に上る関係者が入島、島の暮らしを脅かしています。2021年11月14日、いよいよミサイル弾頭弾薬が、海上自衛隊の輸送艦によって運ばれ15台の大型コンテナを載せた軍用トラックで港を出ようとするとき、早朝から待機していた私たちは雨で濡れた路上でトラックの前に身を投げ出して、ミサイル弾薬が島に搬入されるのを阻止する行動を行いましたが、沖縄島から派遣された大勢の機動隊警察官に実力で排除されました。
 弾薬の搬入と同時に、大規模な陸自10万人総出の訓練や日米共同の軍事訓練が始まり、昨年来今に至るまで切れ目なく続いています。
 基地建設の工事着手の2017年11月より開始した私たちの抗議と監視の行動は1700日を超え、今は週2の定例で継続しています。
 2022年6月には基地開設3周年の記念式典が行われ、基地内で、様々な戦場を走る車両の軍事パレードがあり、私たちは正門ゲートの前で、『私たちは祝わない!基地は撤去!訓練するな!』と抗議行動を行いました。
 安倍―菅―岸田と引き継がれた自公政権は、擦り寄る維新や国民民主などに補完され、全野党が翼賛体制へと舵を切る中で、改憲策動と共に、戦争に向かう国作りの法整備を進めています。中でも、稀代の悪法であるいわゆる『重要土地調査規制法』がこの9月全面施行されるのを待たず、宮古島ではすでに反戦・反基地運動を行う私たちの周辺で、個人情報を収集される
動きや自衛隊内の住民敵視の事態が起こっています。駐屯地開設以来3年間、正門ゲートの門衛の複数の隊員は銃など携行していなかったにも拘らず、この4月からライフル銃を携行、引き金に指をかけ、民間人が出入りするゲートで対応しています。再三の止めるようにという私たちの要請に、一度も回答しません。4月下旬には陸自隊員の家族が、私たちの仲間である高齢者に暴力を振るう事件も発生、被害届は受理され、検察送致になっていますが、進展がなくウヤムヤにされないかと注視しています。
 警察法も改悪され、サイバー警察の新設、警察機構がこれまでの自治体警察から国家警察化へ向かっています。そして、海の警察とも呼ばれてきた、海上保安部が宮古島では、巡視船がこれまでの2隻から12隻に、職員と共に増強されたのですが、整備中に20ミリ機関砲から実弾8発が陸側へ誤射され、大きなニュースになっています。
 海保の海上自衛隊の肩代わりが進み、軍事訓練が行われていますが、私たちは7月23日、『海保は軍事行動を自粛するように』と声明を出しました。航空自衛隊のレーダー基地も増強され、陸海空の軍事訓練が近隣諸国に緊張を生み出しています。
 米軍と一体となった防衛戦略も、専守防衛の枠を超える『反撃能力』だの、唯一の被爆国でありながら『核の共有』などと言い始めています。世界の核保有国も『核の小型化』などを進めようとしています。
 沖縄の『本土復帰』50周年の今年2022年、敗戦後宮古島に駐屯していた米軍から空自に引き継がれたレーダー基地は強化され、今や国内有数の高機能のレーダー基地となっており、そのレーダーから出る電磁波による地域住民の健康被害が心配されます。
 2022年12月11日、空自の『ブルーインパルス飛行』、そう、東京オリンピックの際にも飛んだあの展示飛行が宮古島で予定されています。復帰50年の年の締めくくりに、宮古島を『基地の島』として全国に認知させようとする試みでしょう。私たちは大抗議行動の取り組みを予定しています。
 琉球弧の島々と全国からぜひ宮古島へ結集し、共に抗議行動を闘いましょう!」。

(久野成章)
         (続く)

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