8.19緊急企画：大椿ゆうこを推す会

統一教会とは何か

―安倍晋三元総理の暗殺事件の背景
実態は準軍事組織で他国籍企業

　【大阪】参議院投票日の２日前７月８日に発生した安倍元首相銃撃事件を契機に、次第に明らかにされつつある統一教会と自民党をはじめとする政治家の深い関係。統一教会とはいかなる団体なのか。今もっとも関心が持たれている問題について８月19日、大阪ＰＬＰ会館で有田芳生さんの講演会が開かれた。大椿ゆうこを推す会が主催し、会場は満席の参加者だった。
以下講演の要旨と質疑応答をまとめてみた。

有田芳生さんの講演（要旨）

私は参議院選に立憲民主党全国比例候補として選挙戦を闘っていた７月８日、三鷹駅にいるとき選対本部から直ぐ戻れと指示があったが、これを拒否。事件について語らねばならないと思った。落ちる気がしなかった選挙の結果は落選で、辛い思いをしている最中の11日、64回も電話がかかった。その要件が、安倍暗殺事件と統一教会のことであった。
　容疑者の山上氏は、殺害事件を起こす直前岡山から親しい人物に手紙を送っている。それによると、本当は文鮮明をたたきたかったが無理だった、安倍は教団のシンパの一人だが、誰か一人には死んでもらう。自分は、安倍が死んでもその結果について考える余裕はない、と書いていた。山上氏のお父さんは自殺、お兄さんは難病、それに悩んだお母さんはなんとかしなければと統一教会に救いを求め、お母さんは遺産を売却し１億円の寄付をし、これからの生活の幸せを求めた。

世界キリスト教統一心霊協会
（略称・統一教会）
世界勝共連合・非公然軍事部隊

　
　この統一教会は、後継者をめぐる三男と七男が対立し「分裂」しているが、独特の教義を持っている。旧約聖書のアダムとイブの時代、リンゴを食って人間の堕落が始まった。正常に復帰させるためには祝福することが必要、韓国がアダムで日本がイブ。日本の信者は女性が多い。信者は韓国に行って日本の植民地支配の歴史と再臨のメシアのことを教えられる。メシアは教祖の文鮮明だと。教えに反対する者はすべてサタンとみなされる。
　この統一教会は１９５４年に韓国で創立され、１９５８年に日本に入ってきた。統一教会は、長い空白を経て現在は世界平和統一家庭連合と呼んでいる。それは表の顔、裏の部隊は国際勝共連合だ。現在も存在する勝共連合は、１９６８年４月１日にできた。岸信介が顧問、笹川良一が会長だった。勝共統一をめざす朴正熙（韓国大統領）や統一教会の文鮮明なども関係していた。勝共連合結成に関連して、世界反共連盟、アジア反共連盟がつくられ、フィリピンや南米の反政府ゲリラ支援をやった。１９７３年文鮮明は米国に行き、ニクソンの大統領選を支援し、米共和党とも親しくなった。

オウムの次は……
年の空白はなぜ
　１９９５年にオウム真理教が地下鉄サリン事件を起こす。私は警察庁や警視庁の捜査当局幹部からレクチャーを頼まれた。そのとき、幹部の一人が、オウムの次には統一教会をやるといっていた。その後何の動きもないので聞いてみたら、政治の力で出来なくなったと言われた。勝共連合は裏部隊だが、その裏に非公然の軍事部隊がある。朝日新聞の阪神支局を銃撃した赤報隊との関係が疑われている。

様々な工作
豊富な資金
　統一教会は、様々な工作を非公然にやっている。政府機関や組織の中枢にも、また新左翼内にも工作員が潜入している。工作資金は、毎月１億円。工作には警察・裁判対策も含まれる。北朝鮮平壌のホテル前に、統一教会の礼拝所がある。ここには、毎月16億円ものお金が送られている。今も、平壌では平和自動車が入っている。中国ではパンダ自動車が走っている。これらのタクシーは皆統一教会のものだ。
　統一教会は嵐山の嵯峨亭でチャームコンテスト（実際は秘書養成講座）と称して、91人の女性信者を選抜し、英会話・お茶・名刺づくり、マナーなどの研修をやった。彼女たちはその後、政治家の秘書として政治の世界に入り込んだ。このやり方は今も続いていると思う。この点は、マスコミでもっと掘り下げてほしい。
　統一教会は世界の５大国を支配すれば、世界を支配できると考えている。そのための資金の七、八割は日本で集めている、信者からの献金として。現在、信者は一人当たり１８３万円（文鮮明と妻の年齢の合計が１８３才）を献金するように言われている。お金がないものはカードローンで払えとも。

安倍派とは
根深い関係
　テレビのコメンテーターで、統一教会と安倍のつながりは、第二次安倍内閣以降からだという人がいるが、そうではない。１９７３年岸信介が勝共連合本部で講演をした。この頃から関係が深まった。１９８６年中曽根政権下でＷ選のあった頃、中曽根の後継をめぐって自民党内で対立があった、安倍晋太郎か竹下登かで。米国にいた文鮮明が脱税で逮捕され、日本に入国できなかったので、信者が文鮮明を日本に入国させるため、岸系の安倍を推したという。安倍晋三が自民党幹事長のときは、統一教会はよく来た。晋三の母親の安倍洋子さんは、統一教会とは付き合うな、と注意していたようだ。安倍晋三が総裁のときは、選挙の祝電をよく送った。安倍は統一教会にビデオメッセージを送った。山上さんはそれを見たのだろう。メッセージの中で、家庭の大切さを２回言っている。
　今年の春以降は、安倍晋三は統一教会の広告塔になってしまった。７月の参議院選で安倍は、現職の宮島喜文に渡していた統一教会の票を信者の井上義行に回した。そのため、宮島は立候補を辞退し、井上が当選した（８月20日付朝日新聞に詳しい）。統一教会は日本人信者高々６万人の組織だが、信者一人ひとりは滅私奉公的に頑張るので、その三、四倍の力を発揮するし、教会自身が自分を大きく見せるやり方を使う。子ども庁をつくるときも、実際は日本会議などの力もあったが、自分らの力で子ども家庭庁ができたと宣伝をした。

本当は何ものか
広く伝える必要
　統一教会のニュースは集団結婚式があった後のオウムの事件頃からマスコミに出なくなった。蛇足だが、結婚相手は、送られてきた女性の写真を見ながら文鮮明が選んでいたが、数が多いので最後は写真をばらまき、それを韓国にいる男性が競って拾ったということだ。結婚後の女性信者は、韓国の田舎の農村で辛い生活をしながら頑張っている人もいる。米国では、統一教会は韓国ＫＣＩＡがつくったと言われていた。霊感商法で評判になったが、日本ではそれから30年の空白がある。でも、統一教会の活動は続いていた。マスコミに出ない空白の30年間に、統一教会は地方議員に手を伸ばした。ここまで広がるとは思われていなかった。荻生田さんは傷口を広げた。統一教会がどんな組織かについて、多くの人に知らせていってほしい。

質疑応答でも
問題掘り下げ
１．信者は選挙支援では無償で働く。山谷えり子の選挙では、前回は西日本の対応だったが、今回は全国で援助した。彼らは、電話かけなどの他、対立候補のポスター破りもするし、相手の家庭に入ったりもする。もっとも票が出たのは、埼玉県だ。信者が多いのだろう。統一教会は、霊感商法だけやっているわけではない。日本人信者には、植民地時代に日本はいかに悪いことをしたかを徹底的に教える。日本では教えないことだから、信者は新鮮に受け止める。
　統一教会の思想には、韓国ナショナリズムがある。統一教会は、世界が韓国語で統一されることをめざしている。信者が辛くて教会を脱退しようとすると、それは信仰心が弱いからだと言われ、なかなか辞められない。信者はみんな真面目だから、頑張ることを選択する。右翼団体とのつながりは結果としてはあるが（例えば、新党議連推薦の山谷えり子の選挙を支援する）、本来つながりはない。日本の教会の会長は飾りで、責任者は韓国の総会長。
２.　江川紹子さんも指摘していたが、議員との関係についても、過ちははっきりさせながらも、一律ではなく、つながりの深さで区別すべきだ。荻生田・山谷・下村博文らと、一回機関誌に載せただけの者とは違う。日本では宗教団体とみられているが、韓国では財団とみられている。１９９７年、米国下院が統一教会を調査したとき、多国籍企業のような存在で、準軍事組織だと見なした。
３.　自民党の衛藤晟一議員（生長の家系）などは、自民党と統一教会とのつながりを許せないという。これが本来の自民の立場だ。統一教会の儀式では、上段の教祖に下段の日本天皇（役）がひざまずく儀式がある。日本信者にとっては、教えが新鮮に受け止められているが、日本の保守からすれば怒らなければいけない。マスコミのアンケートに応えず、自分の立場を明かしていないたくさんの議員がいる、稲田朋美や杉田水脈もそうだ。彼らは無関係だと分かったわけではない。
　統一教会系でも名前だけ聞くと、どんな団体か分からないものも確かにある。世界平和女性連合などは分かるが、国際釣学会などもある。みんなが注意深くしていくこと、これから地方議員とのつながりをあぶり出していこう。　（Ｔ・Ｔ）