東京都品川区合同総合防災訓練反対

「防災」色薄め自衛隊の総合機能をアピール

 9月3日(土)4日(日)、品川区で東京都・品川区合同総合防災訓練が行われた。昨年はコロナ禍で中止となったので1年ぶりの開催である。
 石原都知事(当時)が「三国人が震災時に『騒擾事件』を起こすのを抑え込む」ための訓練を行うと陸上自衛隊練馬駐屯地祭でぶち上げ、「銀座に装甲車!」と話題になった、2000年の「ビッグレスキュー2000首都を守れ」以降、毎年実行委員会が組織され、反対運動・監視行動が取り組まれてきた。
 近年では自衛隊や米軍の参加は徐々に少なくなっており、自衛隊の宣伝やリクルート活動の場として利用しているというのが実態である。これは20年かけて自衛隊は防災訓練の時に突出する必要がないほどに行政に日常的に食い込んできているということだろう。

退職自衛隊員
が果たす役割
 2012年には練馬駐屯地から都内各区役所への夜間歩行訓練が行われた。災害時に車両などが動きづらくなっても自衛隊員が徒歩で各区役所に向かい、そこを抑えるという、この訓練は今年3月にも行われ、第1師団(練馬)から迷彩服の自衛隊員が江戸川役所へ4人1組、4組が移動する訓練が行われ、練馬でも区役所本庁舎アナトリウムでの地方協力本部・練馬地域事務所の「募集展示会」開催中に練馬駐屯地から区役所までの歩行訓練が行われた。また、区役所など自治体の防災危機管理部門に退職自衛隊が採用されるという事例も増えているのだ。
 「東京都の防災部との交渉によると、今年も米軍は陸海空のヘリコプターの乗員十数人のみとのこと、自衛隊は府中、横田から3日の展示、4日の救出救助訓練に参加。交渉では自衛隊の展示ブースで隊員募集のリーフレットが配られたりすることに対して問いただしたのに対して防災部は「自衛隊も参加する調整会議で防災訓練の趣旨にそった対応や展示をしてくれと要望した」と答えていたが、3日当日、都立林試の森公園(小山台)での展示では陸海空自衛隊の募集パンフ(やりがいがある、隊の食堂は美味しい、福利厚生が充実している、子育てもしやすい、再就職の支援も手厚いなど)や、航空自衛隊の戦闘機のファイルなどのグッズが配られていた。
 以前はブースでも震災時の救助の様子など「防災」を全面に出していたり、キッチンカーを出してカレーライスの炊き出しを近隣の高校生と一緒に行うなどしていた(コロナ禍の今はそれもなし)が、今回は熱海の土砂災害への出動の展示ぐらいで、全体としては「かっこいい自衛隊」を全面に打ち出したリクルートのブースとなっており、他のブースから見ても完全に浮いている感じであった。
 車両の展示では警視庁がパトカーと白バイ、消防庁がオフロード用のバイク、消防車、東京都水道局が給水車、清掃局がパッカー車、他に献血車やライフラインの復旧関係の作業車などが展示されていたが、自衛隊車両の展示はなし、これはスペースの関係だったと思われる。

8.20

東京都総合防災訓練反対集会
田中一郎さん(「赤旗」日曜版副編集長)が講演


 米軍・自衛隊・東京都による防災=戦時訓練に反対する実行委員会は防災訓練に先立ち、8月20日、「米軍・自衛隊参加の東京都総合防災訓練に反対する8・20集会」を行った。講演は「『反戦デモは敵』─陸上自衛隊文書を暴く」と題してしんぶん赤旗日曜版副編集長の田中一郎さんが行った。

「反戦デモ」と
テロを同列に
 今年3月30日衆議院外務委員会で共産党の穀田国対委員長が行った質問で陸上自衛隊が2020年2月に行った記者向け説明会で配布した資料で「予想される新たな戦いの様相」としてテロやサイバー攻撃と並んで「反戦デモ」を例示していたことが明らかになった。
 「陸上自衛隊の今後の取り組み」と題する文書だが反戦デモやサイバー攻撃が武力攻撃の一歩手前である「グレーゾーン事態」に当たるとの記述があるのだ。自衛隊は穀田議員からの質問に対して、参加した記者から不適切ではとの指摘を受け、翌日には「反戦デモ」を「暴徒化したデモ」と改めたとし、さらに文書は「誤って廃棄してしまった」(行政文書は公文書管理法に基づき保管されなければならないはずだが)としていた。松野官房長官は会見で「誤解を招く表現でありその意味において不適切だった」と釈明した。
 田中さんたちは廃棄したとされる文書が本当に廃棄されたのか?「反戦デモは敵」という自衛隊の認識は本当に改められたのか?を丹念に調べていく。すると同じ資料がこれ以降も使われていることを発見する。
 釧路ロータリークラブの会報で報じられていることを突き止め、釧路まで取材に向かったという。
 さらに陸上自衛隊のウェブサイトの「新たな次元へ進化する陸上自衛隊〜多次元総合防衛力の構築に向けて〜」という動画の中で「反戦デモ」の写真がテロやサイバー攻撃とならんで使われていた。アメリカの反戦団体ANSWERがイラク戦争時に行った反戦デモの写真で、同団体のウェブサイトに掲載されていたものだということまで突き止めた。
 田中さんは国民敵視は今回だけではないとして、60年安保の時にも自衛隊の治安出動が検討されていたことや、情報保全隊によるイラク派遣反対運動の監視の実態などを指摘した。
 記者向け勉強会で想定されていた戦争の相手はロシア、中国、北朝鮮、そして「台湾有事」などが喧伝され敵基地攻撃能力の保有が国民監視の強化と並行して進められている。
 そして田中さんは日本の外交・安全保障政策の長期指針となる国家安全保障戦略(NSS)など「戦略3文書」の改定について政府は年末までに閣議決定を目指すとしており、安全保障をめぐる問題は実は正念場を迎えていると訴えた。

「武力攻撃災害」
の意味とは何か
 続いて池田五律さん(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)が「『防災』の関わる自衛隊の動き─国民保護を中心に」と題して問題提起。
 自衛隊にとっての災害派遣とは治安維持がメインであり、国民保護法の中で武力攻撃災害という概念が使われていることに注意喚起した。
 国民保護をめぐる最近の動きとして、松野官房長官が原発警備について一義的には警察で対応、自衛隊の治安出動で対処可能と発言(3・23)、自民党・高市政調会長は国内の原発警備に関し、「自衛隊法を改正して平時から自衛隊にも原発を警護する任務を付与することは十分に議論の余地がある」との認識を示した。ロシアがウクライナの原発を攻撃したことを踏まえ、「平時から備えを講じておく必要性は格段と高まっている」と強調した。
 松野官房長官が4月15日の記者会見で国が自治体と共同で実施する弾道ミサイル飛来を想定した住民避難訓練を約4年ぶりに再開する方針を表明した。
 東京都は109の地下施設(内105は地下鉄駅)を避難所に指定。
 陸上自衛隊トップの吉田圭秀陸上幕僚長が5月19日、記者会見で沖縄県では先の大戦の地上戦で多数の犠牲者が出たことを念頭に、南西諸島防衛における沖縄県の国民保護について「特別に優先度の高い任務だと思っている」との認識を明らかにした。
 このようにロシアのウクライナ侵攻や中国の海洋進出に便乗して国民保護の名目で軍拡、自衛隊の浸透が進められようとしている実態を明らかにしていった。
 「南西諸島の防衛を名目に自衛隊の進出が行われているが、ハイブリッド戦争なのであれば、現地でだけ戦争が行われるわけではない、真っ先に陸上総隊司令部のある朝霞駐屯地にミサイルが飛んでくるだろう」。
 二人の提起の後、質疑応答が行われ、続いて実行委員会の仲間から東京都防災部との交渉の報告、そして9月3日、4日の訓練当日の監視行動の呼びかけ、さらに9月1日の関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への参加の呼びかけなどが行われ集会を終えた。    (板)
*戦略3文書・国家安全保障戦略(NSS)、防衛計画の大綱(大綱)、中期防衛力整備計画(中期防)

「新たな戦い」として治安にも乗り出す自衛隊の動きを学習(8.20)
自衛隊は「かっこいい自衛隊」宣伝に精を出す(9.3~4)

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