9.21女川原発2号機差止訴訟

再稼働阻止へ大詰めの攻防

沈黙に終始する東北電力

原発事故での「人格権侵害」

 【宮城】第4回口頭弁論期日が9月21日仙台地裁で開催された。原告石巻市民17人が昨年5月、東北電力を相手取り全国でも初の「避難計画の実効性の不備」を問い、原発事故での「人格権侵害」を争点に女川原発2号機の再稼働差止を求めた訴訟である。
 9月21日第4回の口頭弁論を迎え、被告東北電力は、8月9日に最終準備書面を提出し、原告側も主張を出し尽くしたとして「被告が反論しないのであれば、結審しても差し支えない」としていたが、「裁判自体は、今回で結審する考えはない」と通知があり、次回口頭弁論期日(11月28日)までに裁判所が、疑問点などがあれば、原告・被告双方のそれぞれに問い合わせるとして、次回で終結することとなった。

放射性物質放出はない! 原告が立証しない限り、避難計画不備を問う必要ない!


 東北電力の反論(最終準備書面)は、これまでの主張「人格権侵害による被害が生じる具体的危険の存在が必要で、その立証責任は原告にある」とし、「主張立証していないので、避難計画に関する原告らの指摘の当否を論ずるまでもなく、請求を棄却すべき」と、これまでの主張を繰り返すだけで、原告らが指摘している「避難計画の実効性審議」に全く踏み込もうとしていない。
 また、「設計段階から安全確保策を講じ、最近の知見を採り入れ安全性を有しているので放射性物質放出はない」「避難計画は、『女川地域原子力防災協議会』(内閣府が主導し原発立地地域ごとにある協議会:以下協議会)で具体的、合理的に確認された」を繰り返し「国からのお墨付き」を根拠としている。
 原告が指摘している「避難退域時検査場所」(避難者の被ばく線量を測定する場所:以下「検査場所」)や「避難先受付ステーション」での交通渋滞については、「地域への周知、防災訓練が実施されており、一斉避難などなく段階的避難なので極端な交通渋滞が発生することは考えにくい」と非現実的な反論をしている。

事故が起こることを前提に避難計画はある!


 原告は、8月19日に「検査場所」が開設出来ないことに絞った準備書面を提出し、9月14日には、被告の最終準備書面への反論と検査場所における諸課題についての回答と認否を求める「求釈明」を提出したが、被告は法廷で回答を拒否すると答弁した。最後まで「沈黙」する戦術をとるようだ。実効性審議に踏み込めばその杜撰さが明らかになるからである。
 被告東北電力は、宮城県の要請を受け入れ、検査場所に600人を派遣することにしているが、これに同意したのは、原発事故が起きることを前提にしていることであり、避難計画を「確認」した協議会へは毎回参加していたわけで、原告の質問に答えられないわけがない。
 答えない(られない)ことは、逆に原告が指摘しているように、協議会で検査場所の開設条件やバスの確保など全く検討されていないことを裏付けるものであるといえる。
 村井知事が8月末、「避難所受付ステーションを見直す」と発言した。2月に原子力防災訓練が住民不参加のなかで実施されたが、それでも検査場所、受付ステーション等各所で「交通渋滞」が発生した。それを受けて、宮城県は、マイナンバーカードと紐付け、スマホのアプリを使って受付業務の見直しをするという。この点も協議会でしっかり検討、検証していれば事前にわかることであった。
 宮城県は、9月22日、県庁で市町村長と県議らを集め、避難先受付ステーションにおける受付方法とアプリを使った方法の説明会が開催された。従前の方法とアプリを使った方法を対比するというもので、結果はアプリでやった方が早いのは明らかだが、これは国が進めるDX(ディジタルトランスフォーメーション)をいち早く進める宮城県の一環で、裁判で避難計画の実効性が指摘されている状況を横目に、避難計画の見直しをやっているという実績作りでありパフォーマンスでしかない。参加した議員からの情報では、受付ステーションは「廃止」の方向のようだ。

争点を「検査場所が開設されない」
        ことに絞った弁論


 原告は、「交通渋滞」で「検査場所が開設すらできない」ことを主張してきた。避難指示が出され、住民が一斉避難すれば、検査場所に向かう住民の渋滞で「検査物資」「放射能防護資材」「安定ヨウ素剤」が運び込まれないこと、さらに検査場所の要員である被告社員600人、県職員320人(※)がたどり着けないことで開設は困難を期することになると指摘している。
 検査場所が開設できなければ、広域避難のスキームが出発点で崩れる。当然、避難所受付ステーションの実効性を問う必要がなくなり、避難者は、長時間30㎞圏内に足止めされ、放射性物質を浴び、人格権が侵害されることになる。
 裁判所も600人の派遣と検査場所に関心を持っていること含めて、争点を「検査場所が開催されない」ことに絞って弁論を展開してきた。
 東北電力は、2023年11月まで「安全対策工事」を終了し、原子炉に燃料体を挿入、2024年2月再稼働、4月商業運転する計画を公表した。再稼働を許さない女川原発再稼働差止訴訟は次回で結審を迎え大詰めを迎えている。支援と注目を! (m)
 ※「調査嘱託」で、宮城県の回答で明らかになった検査場所に派遣される県職員数

裁判の現状を確認し、さらなる闘いを確認(9.21)

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