10.28狭山事件の再審を求める市民集会

東京高裁は11人の鑑定の証人尋問と鑑定の実施を!

 10月28日午後1時から、東京・日比谷野音で、狭山事件の再審を求める市民集会「東京高裁は11人の鑑定人の証人尋問と鑑定の実施を!」が開かれ、部落解放同盟をはじめ支援共闘会議などが全国から集った。最初に、小室等さんとそのバンドによる演奏のプレイベントが行われた。小室さんは、石川一雄さんらを描いた金聖雄監督の「獄友」の挿入歌も作っていてその歌をも披露し、石川さんの無実を訴えた。
 西島藤彦さん(部落解放同盟中央本部委員長)が開会のあいさつを行った。
 「狭山闘争は最大の正念場を迎えた。8月29日、弁護団は東京高裁第4刑事部に、11人の鑑定人の証人尋問の請求とインク鑑定の実施を求めた。9月3日三者協議で検察庁に請求したことを通告した」。
 「運動を盛り上げるために、『事実調べを求める署名』を 開始し、9月からの1カ月余で、10万余を超える個人署名、1024の団体署名を実現した。今回これを裁判所へ届ける。さらに、年内に20万筆を達成したい。11人の鑑定人の請求は個々の状況を分析し、石川さん無実の新証拠としてまとめた。寺尾判決は事実と違うもので成り立っている。尋問を認めさせることが決定的だ。10月31日から、ヤフーやGoogleに署名の広告を出す。そして、石川無実のネット署名も始めている。説明サイト「狭山事件59年目の新証拠」(https://sayama-jiken.jp/)署名サイト「狭山事件」万年筆の鑑定と11人の鑑定人尋問を求めます。ぜひ、達成したい」。
(https://www.change.org/sayama-shiminnokai)
 次に参加した吉田忠智さん(立憲民主党、参議院議員)、福島みずほさん(社民党党首、参議院議員)、大石あきこさん(れいわ新選組、衆議院議員)がそれぞれ連帯のアピールをした。福島さんは「再審開始決定に対する検察官による抗告の禁止、再審における証拠開示を保障する再審法改正の国会での実現に向けて尽力する」と語った。

石川一雄さん
のアピール
 請求人本人・石川一雄さんが登壇し「59年前の石川ではない。元気で闘っている。私が自白しなかったら、こんなことになっていなかったと思う。多くの署名が集まった。現地調査に大勢の人が来てくれた。朝4時に起きて3万5千歩歩いた。勝利するまで倒れない。自分の健康に気をつけて闘っている。3次再審で無罪を勝ちとる」と力強く訴えた。
 石川早智子さんが「鑑定人尋問を請求した。事実調べを開始させる。そのための署名を12月末に予定している。何としても20万筆を集める。全国で取り組みが行われている。私の所に手紙で署名を送ってくれる人たち、102歳の父が署名してくれたとの手紙、カンパや切手も入っていた。送ってくれた人たちを想像すると涙が出てきた。今日までどれくらい集まっているか心配で本部に電話した。10万筆を超えたということで、本当にうれしかった」と報告し、「2年余り、コロナ感染で集会や現地調査も中止になった。その中でも創意工夫して行動が取り組まれた。今回、マスコミも取り上げてくれている。狭山に風が吹いている。来年は事件から60年になる。来年こそ再審開始の時にしたい」と語った。

「有罪証拠」は
すべて崩れた
 中北龍太郎さん(狭山弁護団事務局長)が 弁護団報告を行った。
 「鑑定人の事実調べの請求を行った。大きな山場にさしかかった。これは再審の入り口だ。弁護団と検察が対立している。事実調べが必要だ。有罪判決に新証拠によって疑いが生じている。11人の鑑定人の尋問を要求するものだ。有罪証拠のすべてが崩れていることを明らかにしてきた。4人の鑑定人にしぼって述べる。①取調べテープ。刑事がひらがなの文字を石川さんに教えている。それでも石川さんが書いた文章は誤字だらけだった。読み書きの能力が低い。脅迫状は書けない。②土の分析。死体を埋めるために使ったとされるスコップについていたのは赤土。死体の所にあったのは黒土。成因の異なる赤土(ローム層)と黒土(黒ボク土)を類似するとしたが、まったく別のものだ。スコップは死体を埋めたものではない。③インクの成分の違い。石川さん宅から発見万年筆は被害者のものではない。④自白分析テープ。首を絞めた方法は手ぬぐいで絞めた、いやタオルだ、最終的には手だと変遷している。警察の誘導であることがテープから明らかになっている。自白はまったく信用できない。寺尾判決は状況証拠と自白の総合判断で有罪判決になっている。それを総合的に崩していかなければならない。すべての論点をくつがえしてきた。事実調べによって真実を明らかにすることだ。最大の山場を迎えている。あついご支援をおねがいしたい」。

裁判所が自ら
直接に鑑定を
 片岡明幸さん(部落解放同盟中央本部副委員長)が基調提起を行った。
 「2点にしぼって述べたい。①鑑定人尋問の実施。8月29日に請求を行った。石川さんの無実を裏付けるものだ。万年筆の下山鑑定。裁判所の職権で鑑定実験をやってもらいたい。万年筆のインクが有罪の決め手になっている。石川さんの実家の捜査を2回やっても万年筆は出てこなかった。3回目に3人の刑事が『鴨居の上にあるという自白があったので』と万年筆を発見した。しかし、この万年筆には指紋がついていない。午前中に学校で被害者が使っていた万年筆のインクの色と違っていた。インクの成分の鑑定をやったがまったく別だとはっきりした。どこで鑑定してもいいから、裁判所に直接鑑定をやってほしい。これが一番の肝になる。裁判所が鑑定すれば絶対に勝てる」。
 「②事実調べの実現のための20万人署名をやっている。すでに今日までに10万人の目標を立てた。委員長などが36県にわたって訴え、10万筆を超えた。それを年末にかけてさらに、拡大したい。石川さんは83歳だ。最後の決戦になる。必ず裁判所に鑑定をやらせよう」。

袴田事件再審
請求の現状
 山崎俊樹さん(袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会)が「年度内に再審可否決定~袴田事件再審請求の現状」を報告した。
 「差し戻し審の審理を終えた。2020年、最高裁の差し戻し決定。味噌樽に漬かっていた5点の衣類に付着した血液の色が1カ月で黒くなる。それなのに証拠として出したものは赤みが残っていた。メカニズムをはっきりさせよと最高裁が求めた。弁護団は味噌漬け実験を昨年9月に着手した。1~2カ月で黒く変色する。無罪を証明するに値する鑑定結果が出た。検察も実験をやっている。最終の結果が来週中にでるだろう。酸素を供給しない、味噌が少ないなどの違いがあるが、赤みはなくなって、黒くなっている。裁判所が立ち会う。黒くなることが分かれば再審を決定するだろう。12月に弁護団が最終意見書を出し、年度内には裁判所は判断を下すだろう。袴田事件は56年、巌さんは87歳になる。再審請求で、検察の抗告権をなくすことが決定的に重要だ」。
 鎌田慧さん(狭山事件の再審を求める市民の会事務局長)が「狭山解決なしに日本の民主主義はない。部落差別なくす。部落差別があったから石川さんは逮捕された。石川さんには家族と家にいたというアリバイがあったのに家族のアリバイは通用しないとされた。字を奪われた人が脅迫状を使ってカネを奪うか。荒唐無稽だ。警察の見込み捜査も警察の差別感の表れだ」と石川さん無罪の実現と部落差別の解消を指摘した。
 集会アピール、閉会のあいさつ、プラカードによるアピール、団結がんばろうを行って、霞が関を一周するデモで再審開始、石川無罪を訴えた。20万人署名をやりきり、狭山再審を実現しよう。   (M)

狭山全国集会(10.28 日比谷野音)
「事実調べを求める」10万余の署名を前に再審実現を勝ちとると決意を示す石川一雄さんと石川早智子さん(10.28 日比谷野音)

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