10.25優生保護法問題の全面解決をめざす全国集会

いのちを分けない社会へ優生保護法問題の全面解決を求めます

日比谷野音に
1300人が
 10月25日に都内で開催された「優生保護法問題の全面解決をめざす10・25全国集会」に参加した。会場の日比谷野音には主催者発表で1300人が参加、YouTubeライブ配信は1200人余りが視聴した。ステージの大きな液晶モニターには発言の文字起こしが映され、全国各地に動画配信を視聴するサテライト会場も設けられた。
 集会は開会あいさつ、全国連絡会の紹介につづき、全国7地裁(*)の裁判の状況やメッセージなどが紹介された。3月11日に東京高裁で勝訴判決をかちとった北三郎(活動名)は、このときに平田豊裁判長がかけてくれた次の言葉が忘れられないという。「原告の男性は憲法が保障する平等権、幸福になる権利を侵害され、子をもうけることのできない体にされました。しかし、決して人としての価値が低くなったものでも、幸福になる権利を失ったわけでもありません」。
 続いて、元宮城県知事の浅野史郎さん、LGBT情報センター代表理事の尾辻かな子さん、作家で活動家の雨宮処凛さんが連帯あいさつを行った。浅野さんは1993年から2005年まで知事を務めたが2018年1月の提訴までこの問題に気付かなかったと昨年10月の仙台高裁で証言、集会ではそのことを原告と家族に謝罪した。尾辻さんは現在でも強い優生思想が根付いていることの例として、第二次岸田政権の人事~杉田水脈(みお)総務政務官、簗(やな)和生文科副大臣~を取り上げた。相模原事件などを取材してきた雨宮さんは、そのきっかけが障害のあるきょうだいとの関係であったことを紹介した。なお、宮城県議会ではこの10月19日に早期の全面解決を国に求める意見書を全会一致で可決している。全国初の提訴は2018年1月に仙台地裁で行われている。
 集会の後半は藤井克徳さんをコーディネーターにした特別シンポジウム「優生保護法問題の全面解決にむけて」、集会アピール(別掲)の採択が行われた。シンポジストは新里宏二さん、松浦恭子さん(福岡訴訟弁護団)、利光恵子さん、藤原久美子さんの4人が務め、大きな2つの課題などについてそれぞれ発言した。また、及川智さん、山本秀樹さんが「指定発言」を行った。それぞれの肩書は本紙10月17日号を参照してほしい。
 閉会あいさつは全日本ろうあ連盟の大竹浩司さんが行った。同連盟は2018年3月から旧優生保護法に基づく強制不妊手術、断種手術、中絶手術の実態調査を続けている。アピールにある「25人の原告」のうち11人が聴覚障害を理由に強制手術された原告(うち3名が死亡)だ。大竹さんのあいさつは集会全体の発言やアピールをまとめるもので、あらためて参加者に早期の全面解決に向けた決意を促すものであっただろう。
 デモ出発までの時間で協賛金やカンパの報告があった。本紙でもよびかけた協賛金は400万円を超え、集会の会場カンパは30万円をこえたという。10月20日正午までに賛同団体は241を数えている。
 集会終了後、衆参両院に向けた請願デモが行われ、立憲民主党、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組、社民党が出迎えた。

*地裁名と原告数(〇囲み数字)は、札幌③、仙台⑦、東京②、静岡②、名古屋②、大阪⑤、神戸⑤、福岡③、熊本②。これらの原告のうち、札幌、仙台、福岡で各1人、神戸で2人が亡くなっている。
    (10月28日 KJ)

10月25日_優性保護法問題の全面解決を全国集会(日比谷野音)

優生保護法問題の全面解決をめざす
10・25全国集会アピール

 優生保護法は、1948年から1996年までの48年間存在し、障害のある人たちを中心に強制不妊手術や中絶手術を強要された被害者は、厚生労働省の公表で約8万4千人といると言われています。
 原告の多くは、2018年にはじまった仙台地裁の裁判報道や全日本ろうあ連盟の実態調査で、自分が受けた手術が優生保護法によるものだったと知りました。2022年9月26日には、25人の原告に加え、新たに6人が提訴しています。原告らは、裁判で、すさまじい過去を語り、「元の体に戻してほしい」「同じ過ちを二度と繰り返さないで」と訴えました。原告らの憤り、差別や偏見の中で生きてきた苦しみが、裁判を通じて明らかになりました。
 津久井やまゆり園の殺傷事件をはじめ、障害のある人に対する虐待事件や心無い差別は後を絶ちません。このことは、優生保護法の条項「この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」と無関係だとは思えません。優生保護法は、障害のある人たちの人権を奪っただけではなく、社会に誤った障害観を植え付け、優生思想を根付かせてしまったのです。
 この法律をつくった国会議員それを運用し強制手術に関わった行政、医療関係者、そして地方裁判所の裁判官たちは、どんな思いで原告の訴えを聞いたのでしょう。福祉、教育、メディア関係者、市民の多くも、ここに集う私たちもどこまで真剣にこの問題に向き合ってきたでしょう。
 被害者は高齢になり、原告のうち5人が亡くなりました。解決に向けて一刻の猶予も許されません。私たちは、今日の集会で「優生保護法問題は終わっていない」こと、障害のある人への根深い差別や優生思想を、自分の問題として考える大事さを、改めて確認しました。
 私たちは優生保護法問題の全面解決のために、過去の過ちを見直し、原告と被害者の人権と尊厳を取り戻し、「いのちを分けない」未来を創るために、国に以下のことを求めます。
1.国の責任を認め、被害者すべてに謝罪と補償、そして人権と尊厳の回復を求めます。
2.優生保護法の被害実態の調査・検証、再発防止策の確立を求めます。
3.国は2022年2月22日大阪高等裁判所、3月11日東京高等裁判所の判決に対する上告を直ちに取り下げ、すべての裁判で原告の訴えを認め、裁判の終決を求めます。
4.改正後も被害を生み出している優生保護法問題の解決をめざし、差別のない、いのちを分けない社会をつくる施策の検討のため、被害者、障害当事者、関係団体及び弁護団等との継続的な検討協議の場を求めます。
2022年10月25日
優生保護法問題の全面解決をめざす10・25全国集会参加者一同

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