11.6大阪ロックアクション講演

文政権退陣後の韓国は今
北朝鮮と統一教会

 【大阪】大阪・戦争あかん!ロックアクション主催、ヨンデネット大阪協賛の講演会が11月6日、PLP会館で開かれた。
 服部良一さん(元共同代表)が開会のあいさつをし、政府が年末までに予定している防衛3文書の改定問題にふれ、大きな関心を持ってほしいと述べた。
 金光男さん(在日韓国研究所代表)が「文政権退陣後の韓国は今、北朝鮮と統一教会」と題して講演をした。講演に先立って、尹大統領退陣を要求し、道を占拠した集会とデモの動画が映された。この動きは、数年前朴槿恵大統領を退陣に追い込んだキャンドル集会と同じ動きで、今後さらに広がっていくことが予想される。
 講演の冒頭は、急きょ北朝鮮のミサイル発射問題についての話から始まった。
以下要旨。

危機的な朝
鮮半島状況
 朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)の対韓・米政策は、ハノイ米朝首脳会談の決裂(2019年2月)を転機に変化した。朝鮮労働党第8回大会(2021年1月)では兵器システム開発5カ年計画(戦術核・原子力潜水艦・水中発射核戦略兵器・多弾頭個別誘導技術・極超音速滑空飛行戦闘弾頭の開発)が決定した。2022年1月に入ってICBМ発射の一時停止が解除され、3月と11月に発射され、戦術核運用部隊の訓練も始まっている。
 このような北朝鮮の行動は、今年9月に始まった韓米軍事演習に反発した行動であるという側面もある。原子力空母ロナルド・レーガンを中心に韓国海軍と日本の海上自衛隊が参加した日本海での訓練、韓米空軍の合同演習(ビジラントストーム)では、戦闘機や空中給油機など240機が参加する大規模なものであり、韓米に比べ格段に劣勢な空軍力しか持っていない北朝鮮には脅威を与えただろう。
 韓米合同の軍事訓練に反発した北朝鮮がミサイルを発射し、それに対抗して韓国が戦闘機からミサイルを発射するという、かつてない緊張した状況がつくられている。軍事境界線での軍事衝突を防止する9・19南北合意が南北双方によって破られている。

ウクライナ事態
後の朝鮮半島
 東アジアは[北朝鮮・中国・ロシア]対[韓国・米国・日本]の陣営対立になり、韓国でも日本でも核武装論が台頭している。盧泰愚・金大中・盧武鉉・文在寅の時代は平和だった。韓国の三軸体系(敵基地攻撃システム)と敵基地攻撃論は非現実的だ。北朝鮮全域を監視できることが前提だが、現時点ではそれは完成していない。ミサイルは地下や移動式発射台や列車や貯水池から発射される。音速の5倍の速さで飛ぶため、迎撃が難しい。日本の敵基地攻撃論でも、自民党の安全保障調査会は、(標的は)相手国のミサイル基地に限定されるものでなく、指揮統制機能も含むと提言している。これはピンポイント攻撃ではなく全面戦争になる可能性がある。
 だから、朝鮮戦争を終結させ、停戦協定を平和協定に転換して、米日が北朝鮮と国交を正常化し、朝鮮半島を非核化する平和プロセスを推進することが重要だ。

 (ここから、文在寅政権後の韓国の話に移る)

尹錫悦大統領
の支持率は低い
 韓国ギャラップ調査では、7月の4週以降は支持率20%が続き、9月に少し回復したがそれでも20%台だ。安保危機状態でも変わらない。北朝鮮ミサイルは韓国にとって[極めて脅威的]が41%だが、それでも尹大統領の支持率は変わらない。支持しない理由のトップは、はじめは[人事の失敗]だったが、それが[無能]に変わった。しかもその割合がどんどん上がっている。支持する理由のトップは[分からない、応えたくない]だ。さらに、支持する人は年齢70代以上で、それより低い年齢では支持しないが支持を断然超えている。
 支持しない理由を具体的に見ると、ひとつは青瓦台(大統領府)移転と迎賓館建設だ。
 文在寅時代に青瓦台を市民に開放し、大統領府を光化門に移す政策が実現不可能であることが分かったのに、再び同じ政策を持ち出した。大統領府を龍山の国防省に移す、国防省は合同参謀本部に移すというように玉突き的に次々移転することが問題を起こしている。そもそも(部分的には実現しているので)市民は青瓦台を解放してくれとは要求していない。問題は建物ではないのだ。また、迎賓館新築でも問題が出ている。さらに、エリザベス女王の葬儀のときでも失態を演じ、首脳会談は不発に終わった。この過程で尹大統領が言った低俗語発言を隠すためにウソをついて報道や民主党のせいにしたことが問題を一層深刻にしている。(この後、尹政権による文在寅前政権の政策の批判、文在寅前政権に対する捜査の開始については時間の関係で講演省略、北朝鮮と統一教会の話に移った)

 統一教会の歴史

 文鮮明は1920年平安北道(現在は北朝鮮)に生まれ、1946年平壌で宗教改革運動を始めた。朝鮮戦争勃発とともに越南し、(本人は国連軍によって解放されたと主張)、釜山で布教を再開した。そして、1954年5月1日、ソウルで世界基督教統一心霊協会を創立した。
 1955年、ミッションスクールである梨花女子大と延世大で教授と学生(計22人)が統一教会の信仰を理由に退職・退学になった。メソジスト教団は統一教会を異端(邪教)と規定した。統一教会の宣教師が密航し日本に来て(1959年)、笹川良一が保護したと言われる。
 1963年日本で宗教法人の認可を受けた。韓国では、1961年のクーデターで朴軍事政権ができ、KCIAが創設されると、統一教会は宗教団体として登録される(1963年5月31日)。統一教会は国際勝共連合を結成し(1968年)、日本の政界に進出し、米国の共和党保守派に接近していった。資金援助や選挙の実働部隊、秘書という形で政治家の事務所に人員を派遣した。
 フレイザー米国下院国際機構小委員会は1977年11月に報告書を発表し、朴政権・中央情報部と統一教会の関係が明らかにされた。韓国では統一教会はビジネス集団と見なされている。 統一教会本部天正宮には病院・中髙等学校・神学大学院・修練院・シルバータウンがあり、龍平スキー場を経営している。ソウルの汝矣島の地上69階のパークワン高層ビルの土地は統一教会が所有。80年代、米国で寿司ブームを起こした水産物流通会社をもっている。
 ところが、韓国では軍事政権が終息して民主化されると、統一教会の政治的立地は縮小していく。国民の30%がキリスト教徒の韓国では、異端の統一教会とどのような形であれ関係を持つことは、自分の政治活動の助けにならないという雰囲気がつくられた。
 2008年統一教会は平和統一家庭党をつくって全国に候補者を立てたが、1議席も得ることが出来なかった。日本では、カルト集団で霊感商法を行っている。

北朝鮮に進出
した統一教会
 文鮮明と金日成主席との会談が1991年12月6日に行われた。これを仲介したのは、韓国生まれの在米韓国人、金剛山国際貿易開発会社社長の朴敬允(パクキョンユン)だった。文鮮明は日産自動車の組み立て工場をつくり、車を販売した。
 統一協会の目標である「勝共」の対象が韓国で消滅し、反共独裁政権が崩壊したことで、1996年頃文鮮明は、米国ワシントンDCで「平和」・「家庭」という新しい価値により「世界平和家庭連合」を創設した。そして、その翌年1997年に世界基督教統一心霊教会と世界平和家庭連合を1つに統合して、「世界平和統一家庭連合」に変えて勢力を拡大した。[文鮮明と韓鶴子が真の父母様]論が全面化した。
 第2のメシアとして再臨した文鮮明によって、朝鮮半島に統一教王国が建設されるという原理講論の教理を実現するとし、文鮮明の生まれた平安北道定州の生家一帯を聖地化した。2003年4月から、5000人余りの信者が訪朝して、文鮮明の生家を訪問している。社会主義圏の崩壊によって孤立した北朝鮮にとって経済協力する統一教会は援軍である。北朝鮮は文鮮明を世界平和連合(1991年8月創立)総裁として受け入れた。南北融和に変化した韓国との関係改善にとっても好都合だった。その後、統一教会は文鮮明の後継をめぐって母の韓鶴子と3男と7男の3つに分裂し、7男はサンクチュアリ教会を創設した。
 統一教会が北朝鮮と行った経済協力は、平壌市の平和センター竣工(2007年8月)、普通江ホテルと安山館ホテル・高級食堂の安山館、統一教会が70%・北朝鮮が30%出資で南浦市に建設される平和自動車工場の建設(2002年)などだ。平和自動車は、イタリアのフィアットから部品を輸入して組み立てた。2006年までに、年間1万5千台を生産する計画だったが、2008年には650台を販売したという。2012年に普通江ホテルと安山館ホテルそして平和自動車は北朝鮮に譲渡された。

北朝鮮の核・ミ
サイル問題の答

 冒頭で危機的な南北の対立に触れたが、韓国ギャラップの調査[北朝鮮の核・ミサイル挑発にどう対処すべきか]に対する回答で最も多い(67%)のは[平和的・外交的解決に向けた努力を続けるべきだ]であり、[軍事的解決をすべきだ]は25%だ。日本の共同通信の調査(10月8、9日)では、[敵基地攻撃能力保持]賛成が53・5%、反対は38・4%だ。産経新聞とFNNの調査(10月21、22日)でも、[敵基地攻撃能力]必要が64・7%だった。韓国市民の考えと真逆である。
北朝鮮のミサイル問題に対して、解決策はあるのか。それは次のような内容だ。①尹政権は9・19合意を遵守すると明言する。②米国バイデン政権は経済制裁を部分的に緩和し、シンガポール米朝共同声明の履行を具体化すると提案する。③岸田政権は朝鮮戦争の停戦状態が持続することを望むのか、恒久的平和体制への転換を支持するのかを明らかにすべきだ。④北朝鮮は敵視政策撤回などの前提条件をつけずに、対話のテーブルに着き、率直に交渉すべきだ。答えは外交交渉以外になく、核心は朝鮮戦争の終結である。
 金光男さんは講演の最後に、核開発は北の防衛のためだが、一方核廃絶は人類を守るためだから、北朝鮮にとってはそれぞれ大義があるはず。敵基地攻撃では国民を守れない。日本は今正念場に立っている。韓国では尹大統領退陣要求デモが続いている。韓国と日本の民衆は連帯しよう、と訴えた。     (T・T)

講演する金光男さん(11.6)

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