11.20福島原発刑事訴訟
高裁は弁論の再開を!
1審判決破棄し、公正な判決求める集会
弁護団による
詳細な説明
11月20日、東京・神楽坂にある研究社英語センタービル地下2階の大会議室で、福島原発刑事訴訟支援団が主催する「高裁は弁論再開を!一審判決を破棄し、公正な判決を求める集会」が開催された。JR飯田橋駅から会場までの辻々に支援団のスタッフが集会チラシを掲げ、道案内をしていた。
司会の蛇石郁子郡山市議が定刻通りに開会を宣言。佐藤和良いわき市議が支援団団長としてのあいさつに続いて弁護団の報告とあいさつが行われた。海渡雄一弁護士は11月21日に、新たな上申書を高裁に提出することを報告した。上申書には、地裁判決は公正な判決ではないので①破棄差し戻しすべき、もしくは②破棄して高裁で自主判決(自判)すべきなどの内容を盛り込んだと話した。河合弁護士、甫守弁護士、北村弁護士は海渡弁護士の考えに同調するいっぽうではなく、それぞれの見解や展望を披露した。
海渡弁護士はこの後、大河弁護士とともに、6月に勝訴した東電株主代表訴訟(株代)判決についてわかりやすく解説した。大河弁護士は判決文に「我が国そのものが崩壊につながりかねない」とまで書かせたのは現場検証を行ったことで、そのノウハウを福島地裁で続いた生業訴訟から学んだことなどを説明した。海渡弁護士は、株代判決は上級審での被告側の反論を予測して綿密に構成されていると報告。自公政権や財界に背を向けたこの裁判長は左遷されることもなく、順当な人事で新部署に移ったことが付け加えられた。
各地の原発訴
訟からの連帯
東電株主代表訴訟原告の木村結さん、新潟避難者訴訟原告の大賀あや子さん、生業訴訟弁護団の馬奈木厳太郎さん、子ども脱ひばく裁判の水戸喜世子さん、東海第二原発差止訴訟原告団共同代表の大石光伸さんが順に演壇に立った。木村さんは「7月27日の判決後、13兆円を得たように勘違いした人もいるが決してそんなことはなく、裁判費用は持ち出しで今日もカンパのよびかけを配布しています」などと話した。東電株代は、原発事故を防がずに株式会社に損害を与えた経営者の責任を問うべき法人がそれを行わなかったので、株主がこれを行ったもので、判決で被告に命じた13兆円余の支払いは会社に対してで、訴えた株主には支払われない。
馬奈木さんは、6月17日の最高裁判決の多数意見は、その後の岸田政権による原子力エネルギー回帰の姿勢を先取りしたものとなり「司法は死んだ」とも言われたが、司法が死んでは「裁かれない悪」と対峙できないと、ともに法廷で脱原発を実現するための連携をとろうと訴えた。また、被害者訴訟はこれからも次々と高裁判決が行われ上告審に移る、今回の最高裁の多数判決は覆せると訴えた。大石さんは差止訴訟を続ける意味に「福島事故などの反省もなく再稼働や原発新設を許すことはやがて戦争につながるのではないか」が加わってきたと話した。
5つのビデオ
メッセージ
続いて、次の5つのビデオメッセージが流された。
県内鏡石出身でベトナムで日本語教師をする山内尚子さん、三春出身でフランス在住のボアグリオ治子さん、311子ども甲状腺がん裁判原告団の「原告2・3・7」は声のみで、シカゴのデュポール大学で教鞭をとる宮本ゆきさん、そしてシカゴ大学で日本文化論などを教えるノーマ・フィールドさん。
山内さんは、2016年に経済的理由で原発計画を廃棄したが、実際は日本での脱原発の拡がりが政府にも伝わり、建設への反発を回避したことも理由であることはベトナム国内でも知られたことであると、日本での運動の重要性を訴えた。宮本さんは、長崎原爆のプルトニウムを分離したハンフォードでは長期にわたって周辺への汚染が問題となり住民訴訟も行われてきたが、いわゆる復興事業が行われ、これが福島のイノベーションコースト構想のモデルにもなっていることを紹介してくれた。フィールドさんは、自身が住むイリノイ州の全米の中で原発の電力構成比率が高いこと、福島刑事裁判では地裁判決を傍聴して司法への期待は地に落ちたが、決して「司法は死んでいない」と、馬奈木弁護士どうように司法も活かした行動の重要性を語った。京都へ避難している宇野朗子さんによる閉会のあいさつで集会は終了した。 (KJ)
福島原発刑事訴訟について
東京電力福島第一原子力発電所の事故により被害を受けた住民1万数千人は2012年6月、原発事故を起こし被害を拡大した責任者たち40人余りを刑事裁判を求めて福島地方検察庁へ告訴、移送された東京地検は全員不起訴処分とした。これに対して検察審査会へ申立てを行い、2度目の起訴議決によって原発事故時の東電会長と原発担当役員ら3人は「福島県の入院患者など44人を原発事故からの避難の過程で死亡させた」などとして「強制起訴した。
2017年6月の初公判から37回の公判を経て、19年9月に東京地裁は3人全員に無罪を言い渡し、検察官役の指定弁護士が控訴した。
控訴審は2021年11月に初回の公判が開かれ、東京高裁は今年6月の3回目の公判で審議を打ち切った。後日の進行協議で「判決日」が23年1月18日と確認された。支援団は「一審判決を破棄し、公正な判決を求める署名」を集め、これまで数度にわたって提出、3次集約を12月15日としている。さらに署名を広げてほしい。支援団の弁護団も、年内に弁論再開を求める上申書などを提出してきた。
署名用紙は次の支援団ホームページからダウンロードができ、ネット署名サイトChange.orgの情報も掲載されている(重複しないよう注意を)。https://shien-dan.org/
(編集部)
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