11.20さよなら原発1000人集会実行委員会

やっぱりあかん! ぜったいあかん! どうしてもあかん!原子力発電
原発利用をSTOPさせよう!

 【大阪】第11回さよなら原発1000人集会実行委員会主催の集会が11月20日、兵庫県伊丹市のいたみホールで開かれた。武井雅和さん(実行委員)の司会で進行。難波希美子さん(実行委員)があいさつをした。
 二つの講演、初めは今中哲二さん(京都大学複合原子力科学研究所研究員)が「日本の原子力と付き合って50余年、なぜ私は原発に反対か」と題して講演をした。以下要旨。

今中哲二さん(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
日本の原子力と付き合って50余年、なぜ私は原発に反対か今中哲二さん(京都大学複合原子力科学研究所研究員)

不始末を記録
しておこう!
 今中さんは、広島生まれ。お母さんは原爆投下時、3・5 km離れた山の陰にいて直接被曝を免れたが、被曝したおばあさんを探しに市中に入り被曝。それから5年の1950年に今中さんは生まれた。1950年代、原爆は悪いが原子力は良いもの、という刷り込みが始まった。1969年東大入試がなかった年、大阪大学原子力工学科に入学、卒業後東工大大学院に進学し、卒業後京大熊取の原子炉実験所に就職。その3年後スリーマイル島の原発事故が起きた。原発を進める研究は積極的にはやらないと決めた。その後1986年チェルノブイリ原発事故、1999年東海村JCО臨界事故が起きるが、原子力の専門家として、20世紀の原子力開発がしでかした不始末の数々を、きちんと記録しておきたいと思った。そう思っていたら、2011年福島第一原発事故が起きた。

原発事故で
学んだこと
 伊方原発の炉心溶融事故が起き、伊方原発設置許可取消訴訟(1973~92年)では、裁判所が炉心溶融は想定不適当という国の主張をそのまま認めた。この訴訟は、国側の学者が弁護士の反対尋問に答弁できないお粗末なもので、国側を勝たせるための八百長だった。スリーマイル島事故では、冷却水がなくなると炉心は溶けることを学んだ。安全神話は崩壊した。4号炉が爆発炎上したチェルノブイリ事故では、はじめの3年間、汚染の情報はほとんど隠され、1999年春になって数100 km離れたところにも深刻な汚染のあることが判明。この事故では、原子力の専門家として解明できることは被害全体の一側面にすぎず、災難の大きさは放射線測定器では測れないということを学んだ。JCО事故の直接の原因は作業員の行為にあるが、責められるべきはJCО・動燃サイクル機構・安全規制当局の安全文化の欠如だ。福島事故のきっかけは地震・津波だが、事故は人災だった。

どう折り合い
をつけるのか
 私たちはこれから50年、100年にわたって放射能汚染と向き合わざるを得ない。汚染地域で暮らすとは、余計な被曝はしない方がいい・ある程度の被曝は避けられない。この二つについてどう折り合いをつけるかだ。リスク(危険性)の見積もり・リスクコミュニケーション(個人の判断と社会的な合意に向けての話し合い)・リスクマネージメント(危険度を減らす政策)において、それぞれの人が、自分で納得した判断をする手助けをすること、これが自分の役割だと考えている。どこまでの被曝を我慢するのか?一般的な答えはない。一方、国や自治体は、原発事故が終わったかのように見せかけ、被災者を汚染地域に無理矢理戻す施策を進めている。

原子力は利用
すべきでない
 誰が何のために日本の原子力を進めているのか。原子力ムラと呼ばれる、特権と利権に群がる利益共同体が存在する。電力会社・霞ヶ関の官僚・永田町の政治家、この三つに地元自治体・マスコミ・学者がくっついている。日本の核政策は、原爆は持たないが、いざとなったらいつでもつくれる能力(プルトニウムを扱う技術)を備えておくということだ。そのために必須な核燃料サイクル。しかし、現在プルトニウムを取り出す[再処理工場]は完成せず、燃やした以上に燃料を生み出す[高速増殖炉]もんじゅは廃炉になった。
 事故が起きたら周り30 kmで人が住めなくなるようなものまで使って電気をつくる必要があるのか。何が本当に大事なのか、もう一度考えてみよう。原発の抱える事故の危険性と、放射性廃棄物の厄介さを考えると、私たちの社会は、エネルギー源として原子力を利用すべきではない。ウクライナ戦争につけこんで、原発再稼働や新建設を考えるのではなく、ウクライナに平和を!

おしどりマコ・ケンさん(芸人)

原発事故が続いて11年
 設備も人も劣化が進行中

 二つ目の講演は、「原発事故が続いて11年―設備も人も劣化が進行中」と題したおしどりマコ・ケンさんの講演。以下要旨。

原発事故の
取材始める
 マコさんは神戸生まれ。ケンさんは大阪生まれ。横山ホットブラザーズの弟子で、吉本所属の芸人だったが、2018年吉本をやめる。福島事故が起き、その取材を始めた途端に、圧力がかかってきた。吉本だけではなく、電力会社や広告会社の電通とかスポンサー企業からも。婦人公論の編集部がおしどりマコ・ケンの取材記事を載せる企画をしたときも、載せるならスポンサー契約をやめるぞとおどされた。
 事故が起きたとき、有名な言葉「直ちに影響はありません」という言葉が繰り返された。でも、テレビ局はスタッフが大阪に逃げ、大阪でつくっておきながらあたかも東京でつくっているように、「直ちに影響はありません」を流していた。このことが、取材をする理由の一つになった。
 東電は毎年記者会見を開いた。はじめは、100人ぐらい詰めかけたが、年を追う毎に人が減っていった。日本テレビが、おしどりの取材をSNNドキュメンタリー番組としてつくったときもものすごい圧力がかかったが、編集スタッフが最終的に説得に使った言葉は、「深夜なので誰も見ませんから」だった(爆笑)。今日は二つの取材をお話しする。

農家の方々(福島
農民連)の闘い
 農家の方々は年に2回東京に出てきて交渉をしている。会場は議員会館。要求は、風評被害をなくすことかと思ったが、そうではなく、国は農民の体も守ってくれ、電磁放射線障害防止規則(電磁則)を適用してほしいだった。事故が起きてから国の指示で、農作物がセシウムを取り込まないように、同族のカリウムを土に撒くように言われた。
 確かにカリウムを撒くとセシウムの吸収は極少ないが、その代わり土にはセシウムがそのまま残るので、農作業をしていると、セシウムの混じった土埃を吸ってしまう。だから電磁則で自分らも守ってくれと要求する。自宅や農地は確かに除染されて汚染度は低くなったが、山道などを車で通るときは、セシウム混じりの土埃を吸うが、除染されない所がどのぐらいあるか、把握しているか。
 これに対する回答は、【電磁則は、除染をする作業員のためにあるもので、農家は自営業だから自己責任だ】・【山道などは線量が高いから、できるだけ息を止めて走り抜けるように】・【土埃を吸うと体内被曝の可能性がある。だから帰宅したらできるだけ早く鼻をかんで、うがいをするように】・【みなさんはセシウムと共存し、工夫しながら生活してほしい】というもの。これを聞いていた人たちは驚き、あまりにもひどい答弁にあきれて笑いが起きた。
 また、農民連の人たちは、放射線管理区域の基準は空間線量になっているが、農作業をするものにとっては、kg当たりでなく、㎡当たりの土の表面の線量をはかってほしいと要求。どこか1カ所でもいいから測ってほしいという要求も、当局は完全に無視した。
 しかし、農水省の試験栽培のときは、表面線量を測るという。そこで、農水省なら聞いてくれると思って頼んだら、食の安全安心が目的で、自営業農家は自己責任だと。農民連の人たちは、立腹して席を立った。

電通のメディアコ
ントロールなど
 もう一つは、電通のやったこと。電通は事故の起きた3月11日の直後の3月15日から動いていた。例えば、メディアコントロールを目的とする事業でも情報公開請求したら、たくさん出てきた。この資料だけでも87億円のお金が政府から出ている。福島県農水部に対し電通が月に1回レクチャー。
 資料を見ると、電通の委託事業がいかに成果を上げたかが書かれている。電通は、事業としてツイッターなどのSNSを監視し、その中で原発事故の不安をいうネガティブコメント、復興ガンバローならポジティブコメントとし、ポジティブコメントが増えるようにしていく。復興相、環境省、経産省なども電通に委託している。番組誘導・取材誘導という言葉が何回か出てくる。
 放射線アドバイザーとして、事故後直ぐ山下俊一・高村昇・神谷研二氏の3人が選ばれているが、人選したのは電通だ。指示したのは、調べていくとどうも官邸ではないようだ。事故の直後は、官邸は混乱していて、とてもそのような余裕はなかった。福島の線量は3月15日から急に上昇した。
 官房長官が3月16日、放射線医療総合研究所の酒井センター長を呼びつけ、助言を頼んだときの、手書きのファックス原稿も情報開示で出てきた。この直後から、「直ちに影響はありません」という言葉が使われ出したので、酒井センター長が助言した言葉だったと思える。
 3人のアドバイザーの1人高村昇さんの講演を、3月30日に若いママを集めて聴かせ、講演後感想を知り合いにSNSで発信させている。高村さんは講演で、『毎時10マイクロシーベルトでも、子どもは外で遊んでいいです。ここの野菜も食べられます』と発言した。ママたちは、事故は心配するようなことでなかったと発信しただろう。この場面の動画は7月23日、NHKドキュメントでも放映された。
 アドバイザーを任命した福島県知事に、人選の経緯を問い合わせたが、分からないと。引き続き調査を要求している。除染作業員の線量基準は毎時2・5マイクロシーベルトだ。大人が低くて子どもが高い。根拠がでたらめだ。高村昇さんは現在も、県民健康調査の座長である。このような人選を電通がやったのだ。

 講演後、滝沢厚子さん(関電の原発マネー不正還流を告発する会)、木原莊林さん(老朽原発うごかすな実行委員会・若狭の原発を考える会)、3・11子ども甲状腺がん裁判ビデオアピールがあった。
 閉会のあいさつは谷正充さん(実行委員)が行った。      
 (T・T)

今中哲二さんの経験に裏打ちされた訴え(11.20)

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