オンライン署名のよびかけ
被差別部落をさらす動画を Yоu Tubeは削除して!
11月12日にはじまった「被差別部落をさらす動画をYouTubeは削除して!」のオンライン署名は、11月28までに約2万7千人が賛同している。15~16日に米子市で開催された部落解放研究第55回全国集会の参加者2500人にチラシを配った効果が大きく、この1週間はペースが落ちているようだ。チラシは、オンライン署名のやり方を2次元コード(別掲)やスマホ画面の画像などを載せ、紙の署名になれた活動家を意識したていねいなものだ。
この署名は、本紙2698号記事「『鳥取ループ』による『全国部落調査』復刻版事件 東京地裁が出版差し止め命令」の訴訟(裁判は双方が控訴して東京高裁で係争中)ではネット動画は含まれていなかった。資料の【署名の趣旨】のように、問題の動画が「鳥取ループ」らによってネット上に晒されており、増え続けている。晒された住民らは自治体や法務局を通じて動画の削除を求めてきたが、YouTubeでの削除は実現されていない。
署名サイトの「お知らせ・最新情報」にある【ネット差別解消に向けた基礎知識①】では、昨年4月、「インターネット上の誹謗中傷をめぐる法的問題に関する有識者検討会」(総務省、法務省、最高裁、学者が委員)が設置され、ネット上の誹謗中傷やヘイトスピーチ、「同和地区の識別情報の摘示」などに対するプロバイダの削除判断の基準や法的問題についての検討がおこなわれ、今年5月に「取りまとめ」が公表されているという。
その中では、「インターネット上の特定の地域を同和地区であると指摘する情報は、通常、プライバシー侵害を理由とする差止めにより削除することができる」とあり、人格権の侵害として違法性を認めている。プロバイダに対しては、「特定の地域を同和地区であると指摘する情報について削除依頼等を受けた場合には、差別を助長・誘発する目的があるかどうかにかかわらず、約款等に基づき、削除を含む積極的な対応を採ることが期待される」と自主的削除を求めている。NTT傘下の goo blog は「人種、民族、出身地、社会的地位、性的指向、性別、性同一性、信仰している宗教、年齢、障がい、深刻な疾患に関する差別的発言や、これらを理由にして他者への暴力を助長したり、脅迫または嫌がらせを行ったりする発言は行わないでください。なお、同和地区に関する識別情報の摘示については、『インターネット上の同和地区に関する識別情報の適示事案の立件及び処理について(依命通知)(法務省権調第123号)』を参考にした対応」をとっているという。
署名のあて先は、YouTube を傘下とする Google合同会社だが、法務省と総務省にも提出を計画している。パソコンならば「被差別部落をさらす動画をYouTubeは削除して!」でキーワードで検索、スマホならば紙面のQRコードを読み取ってオンライン署名サイト〝change.org 〟から。
(11月28日 斉藤浩二)


資料 【署名の趣旨】
YouTube上では被差別部落(以下、部落)を撮影して晒す動画が多数みられます。部落の地名(所在地)や人名、個人の家や車、墓石や地図までが晒されており、私たちが数えただけでも200本以上の動画がYouTube上にアップされています。動画で晒された地域に住む人たちは不安や恐怖を覚え、「平穏に安心して生きる権利」(「差別されない権利」)が脅かされ続けています。
「身元調査に利用され結婚や就職における差別を受けるのではないか」
「職場や学校の友人などに部落出身であることが知られるのではないか」
「次は自分の住む地域が晒されるのではないか」
「学校の子どもたちが動画を観ていた」──など、悲痛な声が各地で報告されています。
このような住民からの相談を受けて法務省人権擁護局や全国の自治体、個人などがYouTubeに削除依頼をしていますが、動画は削除されず放置されたままです。
悪質なチャンネルとして全国の部落を特定し、ネット上で晒す差別扇動を繰り返す人物がいます。この人物は、部落の地名リスト(『全国部落調査・復刻版』)を出版しようとして2016年4月に部落解放同盟から出版禁止・ネット上への掲載の差し止めと損害賠償を求める訴訟を起こされている人物です。
2021年9月、東京地裁は部落の地名リストなどの出版・インターネット上への掲載は「プライバシー侵害」にあたり違法であるとして、『全国部落調査・復刻版』の出版差し止めとネット上への掲載の禁止、被告に対して約480万円の損害賠償を命じる判決を下しました。
しかし、判決後もYouTube上で全国の部落の動画を掲載し続けています。さらに、彼らの行為を模倣し、同様の行為をおこなう人たちもYouTube上で増えています。
この間、YouTubeに対して、法務省や全国の自治体や団体・個人などから何度も削除要請がおこなわれてきましたが、いまだにYouTubeは削除していません。早急にYouTubeは部落差別を扇動する動画に対して削除対応を行う必要があります。
そのために私たちは、下記の事柄をGoogle合同会社(YouTube)に要望します。
①YouTubeの約款(利用規約等の投稿の禁止規定)に「同和地区の識別情報の摘示」(部落の所在地を暴露する投稿)を明確に位置付けること。
②YouTubeのガイドライン違反(「ヘイトスピーチに関するポリシー」)に規定されているマイノリティに「被差別部落/部落出身者」を位置づけること。
③プロバイダの責任として差別投稿を放置せずに、約款に基づき積極的に削除していくこと。
呼びかけ人 ABDARC(アブダーク)
ABDARC(Anti-Buraku Discrimination Action Resource Center)
全国の被差別部落の地名や関係者の個人情報をインターネット上で晒し、部落の地名リストの本までを出版しようとする人たちがいます。ABDARC は、彼らにNOを突き付けるために起こされた裁判(「全国部落調査」復刻版裁判)の情報を中心に、部落問題の基礎知識などを提供するための情報発信やイベントなどをおこなう有志のグループ。
https://www.abdarc.net/
【続報】
11月30日までに、鳥取ループらが運営する「神奈川県人権啓発センター」名のアカウントで YouTube にアップされていた「部落探訪」動画約190本が削除された。署名運動による成果が早々と表れた一方、同アカウントの「部落探訪」以外の被差別部落などを晒す動画は残されたままであり、YouTube サイトには他者による差別動画は残されたままだ。加えて、鳥取ループらの示現舎ホームページでもYouTube にリンクした「部落探訪」動画は閲覧できなくなっているが、動画からつくったスチール画像と解説文はそのまま公開されている。
「神奈川県人権啓発センター」名は過去に川崎市行政が〝公認〟したと鳥取ループらは語り、YouTube や示現舎HPの〝信頼性〟を高めるためのキーワードでしかない。今年は水平社宣言100年目の年で、同じく100年を迎えた『文藝春秋』誌でさえもノンフィクションライターの西岡研介による「部落解放同盟の研究」が連載された。西岡さんは部落解放同盟の幹部らのほか鳥取ループにもインタビューしており、YouTube や示現舎HPによる広告収入は月間10万円程度であり、本業は別にあると語らせていた。YouTube による削除は広告収入の一部でしかないが、さらに巧妙な手段で被差別部落を晒す動画を作るのではないだろうか。
―すべての部落を晒す動画を削除させるためにも、YouTube はガイドラインに明確に「同和地区の識別情報の摘示」を違反として位置付けさせることが必要です。
―YouTube 以外でも同様の行為が行われています。SNS事業者の自主規制だけでなく、国は「部落差別解消推進法」を改正し、同様の行為を禁止する差別禁止規定を盛り込む必要があります。
ABDARC は、change.org サイトの「お知らせ・最新状況」欄で、さらなる署名をこのように呼びかけている。
(12月2日 斉藤浩二)
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