12・4 23けんり春闘発足・学習集会
すべての労働者の賃上げを要求獲得へ 大衆的
闘い軸に政府と資本への連帯した対抗構築を
生存のための闘いへ
誰もが安心して暮らせる社会を
23けんり春闘全国実行委員会(全労協、全港湾、全造船関東地協、民間中小労組懇談会、大阪ユニオンネットに結集する労組で構成)は、12月4日午後6時半から文京区民センターで23けんり春闘発足・学習集会を開催し、「誰もが安心して働ける職場・暮らせる社会の実現を!」をメインスローガンとする闘争方針を決定、これをもって23けんり春闘をスタートさせた。
集会は二部構成。まず第一部として発足総会が行われ、各労組から結集した代表によって闘争方針が採択され、その後第二部として立正大学特任教授の金子勝さんが講演した。テーマは「カタストロフが来る 生存のためのプランBが必要だ」。日本の支配層が推し進める政策の破滅的な性格を解き明かし、根本的な政策転換を求めることが必要、と呼びかけた。なおこの集会全体は、全国に向けズームで発信された。
戦争と環境危機を止めよう
発足総会は同委員会共同代表のひとりである渡邉洋全労協議長のあいさつで始まった。そこでの強調点はまず、押し寄せる物価高騰がこの20年続いた実質賃金低下に追い打ちをかけ労働者の生活が追い詰められている現状の中で、かつてなく全労働者の賃上げが不可欠になっていることだ。そして最低賃金再引き上げ運動が始まっていることにふれつつ、けんり春闘を最低賃金をめぐる闘いと結びつける重要性を提起した。
第二に、連合が昨年を上回る5%要求を決定したことを取り上げて、問題は要求引き上げそれ自体ではなく、それを職場の隅々で団結の要にし獲得する態勢を築くことだと指摘し、特に大民間労組が経営に依存する企業内取引にしか関心を示さず労働者全体への波及を端から放棄するなど、連合にその構えが全くない現実を批判しつつ、意識してそれに対置した闘いを突き出す重要性を訴えた。
そして23けんり春闘ではメインスローガンを22けんり春闘での「8時間働けば生活できる賃上げを獲得しよう!」から前記のものに変えたことに特にふれ、すべての労働者の生活保障を追求する決意を込めた提起だとして、全体でその趣旨を共有して闘いに臨もうと結んだ。
この訴えを受けて野中保夫同委員会事務局長から、「雇用/賃金/労働時間/労働環境/社会保障の要求をストライキで闘い取ろう!」「軍備増強・改憲阻止!労働者・市民の力で戦争を止めよう!」をサブスローガンに添えた23けんり春闘方針が議案書にそって提起された。そこでは特に、労働者民衆の生活困窮を前にしながら岸田政権が、貧困と格差の進行を進めた安倍政権を踏襲し、なおかつ改憲と軍拡にのめり込んでいることに真っ向から立ち向かうことが力説され、あらためて団結と連帯の形勢に全力を挙げ、23けんり春闘を、貧困と格差をなくす闘いとして、また世界に広がる戦争の危険性や地球環境の危機を押しとどめる社会的闘いとして展開しよう、と呼びかけられた。
具体的に提起された中心的な柱は以下の闘い。
◦貧困と格差の拡大を許さず、生活防衛と権利の向上、大幅賃上げ実現へ。ここでは、どこでも誰でも時給1500円以上、月額25万円以上の賃金保障に全力を挙げ、月額2万5000円以上、時給150円以上の賃上げを要求とし、特に公務公共サービスを担う労働者、会計年度任用職員、エッセンシャルワーカーの労働条件改善と技能実習生や外国籍労働者の処遇改善に向けた闘いの強化などが強調され、それらを通して、労働者総体で闘いを繰り広げる春闘の再構築に結びつけようと提起された。
◦8時間労働制の破壊を許さず、裁量労働制の適用拡大、解雇の金銭解決方式導入を許さない闘い。
◦改憲・軍拡を許さず、原発再稼働を許さない闘い。特に辺野古の新基地建設や先島へのミサイル配備など沖縄全体の軍事化と沖縄差別を許さない闘い、岸田の原発回帰との徹底対決への取り組みが提起された。
そしてこれらの闘いに向け、コロナ禍による失業・貧困に対処する全国労働相談や最賃引き上げ全国キャンペーンへの独自的取り組みと他団体との連携協力を組み込んで、正規―非正規、官―民が連携してすべての組合員が参加する大衆的な闘いで要求実現をめざす、とする行動方針と組織体制が提起された。行動の具体化はさらに検討されるが、当面の確定として日本経団連前での要請・抗議行動(2月17日)が、さらに予定として、3月の外国籍労働者総行動(マーチ・イン・マーチ)、各職場でのストライキ、脱原発闘争、沖縄闘争への取り組みが提起された。そしてこれらの方針は満場の拍手で採択された。
地域分散型経済への転換を
第二部では、金子さんがまずさまざまな図表も示しながら、日本の現状に「カタストロフが近い」との厳しい診断を下した。経済・社会指標の上では戦争末期のような状況にあること、その上に財源なき軍備増強を勝手に決めるなど政治の劣化が重なっていること、が具体的にえぐり出される。
特に注目された論点は、「アベノミクス」が日本経済をプーチン型のオリガルヒ経済に変質させ、それが岸田政権の下で一人歩きを始めている、との指摘だ。そこではその変質の特徴点が次の4点にまとめられている。
1.公益企業や巨大国家プロジェクト中心。
2.民営化企業の経営者や天下り官僚が仕切る(公文書や統計改ざんの忖度官僚がトップに)。
3.政治家=天下り官僚=公益企業のトライアングル→政権党を軸にした利益の結びつき(縁故主義の横行)+メディアの抑圧体制。
4.ジャブジャブの日銀金融緩和で支える(ロシアの場合は石油ガス資源収入が財源)。
そしてこれらの項目を解説しつつ、特にこの4点目はどちらの場合も破綻の道が約束されていると指摘、その破滅的な行く末をいくつもの指標で解き明かした。確かに日本の政治経済に対する極めて刺激的で類例のない特徴付けであり、日本が直面する危機の捉え方にひとつの切り口が提示されたことは間違いない。
金子さんはこの現状に対し、オリガルヒ解体を含む一からやり直す政策転換が必要と力説、結論的に「地域分散ネットワーク型経済への転換」という処方箋を提起した。そして地域から底堅く新しい物語を作り上げよう、労働組合運動もその重要な一翼になることをめざしてほしい、と結んだ。
運動の再生かけて全力を
労働組合運動のへ深い危機の認識に立った新しい展開を求めたこの講演を受けて、3人が決意表明を行った。まず自治労大田区職労の藤村妙子さんが、自治体の非正規問題として会計年度任用職員の現状を報告、その低処遇・無権利との闘いに挑む決意を述べた。次に国労の瀧口良二さんが、公共サービス部門での労働条件劣化に対抗し職場から全員参加の闘いを再構築すると決意表明。そして移住労働者と連帯する全国ネットワークの安藤真起子さんは、移住労働者が直面する困窮を示しつつ、日本の外国人管理至上主義を変えることの不可欠さを強調し、誰もが生活できる社会をめざす取り組みを呼び掛けた。
最後に同委員会共同代表の平賀雄次郎さん(民間中小労組懇談会代表)が、今集会をもって23けんり春闘はスタートした、生存のための闘いの必要をしっかり確認し、要求実現に全力を挙げようと集会を集約、全体の団結ガンバロウでその決意を確認し合った。
生活が多方面から締め付けられていることを誰もがひしひしと感じている。その上岸田政権は大軍拡に踏み込もうとしている。それは明らかに、戦後の平和主義への挑戦、憲法逸脱としての生活破壊であるだけではなく、財源をめぐるドタバタが明瞭に示すように将来にわたる直接的な生活破壊の宣言にほかならない。まさに労働者民衆の生存のための連帯し団結した反撃が必要であり、労働組合運動の再生が切実に求められている。
他方岸田政権もそこに身構え、労働者の注意をそらすかのように経営側に賃上げを求めるポーズをとっている。しかしその下敷きはあくまで「構造的賃上げ」論、つまり「成長分野への労働力移動」を通じた賃上げ、という使い古した論理にすぎない。
貧困と格差を深刻化させた安倍の経済・社会政策の根底には一貫して同じ理念に基づいた「雇用の流動化」が据えられ、その下で雇用の規制緩和が進められたこと、なおかつ岸田政権自身安倍が積み残した規制緩和(裁量労働制適用拡大、解雇の金銭解決)をそのまま継続していることを思い起こそう。また1995年の日本経団連「新時代の日本的経営」から始まる雇用流動化の下で、日本の実質賃金が諸外国とはかけ離れた低落を続けたことを思い起こそう。「構造的賃上げ」論が何を生み出すかにはもはや十分すぎる証拠が積み上がっている。
岸田政権には労働者民衆の幅広い連帯に基づいた全面的な対決が必要だ。その連帯形勢への挑戦を柱に据えた23けんり春闘にはこれまで以上の奮闘が求められている。それはまたわれわれ自身に突きつけられた課題でもある。 (神谷)
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