南西諸島を非武装中立地帯に!

沖縄報告 12月18日

中国との戦争に備えるミサイル基地はいらない

沖縄 K・S

岸田内閣が安保関連3文書を閣議決定

 岸田内閣が12月16日、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保関連3文書を閣議決定した。来年度から5年間の軍事費総額は43兆円、最終年度の2027年にはGDP(国民総生産)比で2%に到達、軍事費の規模は米国・中国に次ぐ世界第3位の軍事大国が出現する。「反撃能力」(敵基地攻撃能力)保有を明記し、日米軍事一体化の下で、継戦能力の向上、弾薬庫など米軍・自衛隊基地の相互使用、米国製巡航ミサイル「トマホーク」や地対空誘導弾パトリオット・システムの配備、宇宙・サイバー・海洋・電磁波分野の部隊新設などが明らかにされた。
 すでに、F35ステルス戦闘機をはじめオスプレイ、電子偵察機、対潜哨戒機、無人偵察機など米国製各種軍用機の大量購入は進行中だ。これまで曲がりなりにもGDP比1%程度にとどまっていた軍事費は今後、天井知らずに急拡大していく。財源はどこにあるか。限られた国家予算の中で、それは必然的に増税と非軍事部門の縮小になる。岸田は「今を生きる国民の責任」と、増税による軍事費負担の拡大を押し付けようとしている。厚かましいにも程がある。

安保関連3文書は米国のアジア軍事戦略の追随


 日本列島―琉球列島―台湾―フィリピンをつなぐ「第一列島線」に中国を抑え込み太平洋への進出を阻むというのは米国のアジア軍事戦略だ。米国による、米国のための戦略に彼らは皮肉なことに「自由で開かれたアジア太平洋を守る」という聞こえのいいスローガンをくっつけている。かつて帝国主義列強の植民地とされた中国は今や軍事・政治・経済的にアジアの大国となり、世界の生産基地となった。日中の貿易総額は日米の貿易総額の2倍近くにまで拡大した。日中が協力すればアジアは安定し発展する。どうして米国の独善的な対中封じ込め政策に加担するため、軍拡と増税、南西諸島のミサイル要塞化に突き進むのか。日本は米国の属国なのか。岸田首相の会見後、アメリカが「歓迎」の談話をいち早く発表したことにも、今回の決定が誰のためなのかということが端的に示されている。
 戦後日本の軍事外交政策の基本であった「専守防衛」から、米軍とともに対中国戦争の準備に乗り出すという軍事外交政策の大転換を、岸田内閣は閣議決定という内輪の方法で行った。国会の議論も経ない、国民の同意も得ない、閣僚とその周辺だけで立案・審議・決定するという安倍・菅・岸田と続く自民党政権の独善そのものだ。

沖縄を中国との軍事対決の最前線にしてはならない!


 「国家防衛戦略」は冒頭、「策定の趣旨」として、「国民の命と平和な暮らし、領土・領海・領空を断固として守り抜く」と述べる。これほどラベルと内容が乖離していることはない。米軍と一体となった自衛隊の増強・軍拡のもと、脅かされるのは国民の命と暮らしだ。とくに沖縄に対して、那覇空港に隣接して駐屯する陸自第15旅団の師団への格上げ・増強、長射程化した地対艦ミサイルの各部隊への配備、ミサイル攻撃に耐えられるよう師団司令部の地下化、南西諸島の海上・航空輸送力の強化、民間空港・港湾の整備・利用などが盛り込まれた。奄美・沖縄・宮古・石垣とミサイル基地が連なる南西諸島は丸ごと軍事対決の最前線へと押しやられ、島々の150万の人々の命と平和な暮らしは脅かされる。
 軍隊のある所に戦争が起こる。戦争を起こそうとするから軍隊を配備する。沖縄にミサイル基地はいらない。南西諸島に自衛隊はいらない。南西諸島を非軍事化し、非武装中立地帯とすることが沖縄県民の命と生活を守り、日本を中国との無意味な対立から守る道である。沖縄の非軍事化については、元自民党幹事長の河野洋平さんや沖縄派兵を拒否した元反戦自衛官で軍事評論家の小西誠さんも提起している。日本と沖縄の行く末を決める重大な岐路に立っている。南西諸島を非軍事化し、中国との安定した平和共存体制の下でアジアの発展を展望しよう。万国津梁の沖縄は、戦争の基地ではなくアジアの平和の架け橋となるべきだ。

12月11日ブルーインパルスに抗議する集会・デモ


 1972年の沖縄の本土復帰に伴い米空軍から施設を受け継いだ空自宮古島分屯地は今年、開設50年を迎えた。空自の「展示飛行」ブルーインパルスの所属部隊は、宮城県松島基地にある。当初、那覇基地を離着陸する案も検討されたが、最終的に宮古島の県管理民間空港である宮古空港から飛び立つことになった。ブルーインパルスの宮古空港利用は離島の民間空港・港湾の軍事利用の先鞭をつけるのにうってつけだったからだ。
 宮古空港を使用した曲芸飛行の実施に反対する抗議行動が、12月11日(日)10時半から宮古空港横の広場で行われ、全国から約150人が結集した。広場からは、ブルーのT4練習機6機が眼下に見下ろせる。自衛隊機のすぐ近くには、ジンベイザメが描かれたJAL機など民間機が駐機し、滑走路に向かう姿が確認された。沖縄の各地、石垣などに加え、全国から集まった参加者は、「さらば戦争・原発 ピースサイクル」「南西諸島の自衛隊配備に反対する大阪の会」「AWC アジア共同行動日本連絡会議」などのノボリや「宮古空港の軍事利用反対」などのプラカードを手に、抗議の声をあげた。
 11時半に、ブルーの1番機が滑走路へ移動を始めた。シュプレヒコールが一段と激しくなる。「ブルーインパルス反対」「宮古島を戦場にするな」「沖縄を戦場にするな」「飛行を止めて松島へ帰れ」「自衛隊出て行け」と、こぶしを突き上げ、声をはりあげた。南京・沖縄をむすぶ会の有志数人も「日中友好不再戦」「南西諸島に自衛隊不要」など手作りのプラカードを掲げて抗議した。
 小休止を挟み午後1時から、小雨の降る中、宮古島市役所前から旧市役所まで約2・5kmを、横断幕・ノボリを掲げ「ミサイル基地を撤去せよ」などと訴えながらデモ行進した。沖縄選出国会議員で構成する「うりずんの会」からも、赤嶺政賢、伊波洋一、高良鉄美さんが参加した。前日まで国会の日程があったため、土曜日の夜遅く那覇に着き午前の便で急ぎ駆け付けたとのことであった。元議員の糸数慶子さんも行進した。
 旧市役所前で開かれた総括集会では、はじめに赤嶺さんがあいさつを行ったあと、全国各地から参加した各団体の発言が続いた。手作りのバナーを持参した「辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動」のメンバーは、2004年の沖国大米軍ヘリ墜落をきっかけに活動をはじめて以来18年、沖縄の闘いに連帯する行動を続けていることを報告した。
 沖縄県は今回、「軍事利用を認めない」とする屋良覚書のある下地島空港の使用には難色を示したが、同じ県管理の民間空港である宮古空港の使用を「他に影響を与えないならやむを得ない」として容認した。自民党政府の圧力は今後一層強まる。日本政府の中央集権支配にたいし県行政が抵抗し打破して行かない限り、沖縄県全体が戦争の最前線に立たされていくことを食い止めることはできない。沖縄を二度と戦場にさせない県行政をもっと強化しなければならない。

12月10日 伊勢崎賢治さんの講演と全国反戦平和交流会

 12月10日(土)午後、宮古島市立未来創造センター大ホールで、「琉球弧を平和の緩衝地帯に」と題する伊勢崎賢治さん(東京外大大学院教授)の講演が行われた。
 伊勢崎さんは、アフリカでの開発援助に長年従事し、東チモールで国連PKO暫定行政府の県知事を務め、シエラレオネで国連PKOの幹部として武装解除を担当した。著書に、『主権なき平和国家』(集英社)、『非戦の安全保障論』(集英社新書)などがある。
 伊勢崎さんは、パワーポイントの映像を使って、サイパンの地上戦と国民総動員から話しはじめ、二度とこうした戦争の愚をくり返してはならないと述べた。2時間以上にわたる講演の内容は多岐に及んだ。第一次大戦中、イギリスで平和主義を貫いたアーサー・ボンソンビーがはじめに提唱した「戦争プロパガンダ10の法則」、NATO憲章第5条の集団的自衛権の規定、1979年の旧ソ連軍の侵攻に始まるアフガニスタンのその後の経過とタリバン政権の誕生、米軍がむすぶ各国の地位協定の比較、裁判権・環境権・基地管理権を失った日米地位協定、朝鮮有事には自動的に〝交戦国”になる日本、など。
 まとめに、ウクライナ以後の日本の安全保障戦略として、「日本は典型的な緩衝国。ボーダーランドを非武装化し戦争回避のための信頼醸成が必要」と、非戦の安全保障を提起し、講演を終えた。
 引き続き、第二部「全国反戦平和交流会」に移った。石垣市の花谷史郎市議、宮古島市の下地茜市議のほか、大阪、神奈川、辺野古の島袋文子さん、ノーモア沖縄戦・命どぅ宝の会の山城博治さん、統一連の中村司さんらが発言した。

12月12日 保良訓練場ゲート前の抗議

 道路わきから保良(ぼら)訓練場内を見渡すと、弾薬庫は、用地購入の遅れで1棟が未着工だが、2棟はすでに完成。射撃訓練場とされる建物は長さ360m出来上がり堅牢な姿を見せている。保良公民館から基地のフェンスまで200m、一番近い民家まで160m、弾薬庫からは300m。この弾薬庫は単なる小火器の弾薬庫ではない。ミサイル弾薬庫だ。距離にして約20kmの千代田の陸自基地から兵士・車両が行き来しミサイル運搬・発射・撤収の作業を行う。有事には、保良の集落だけでなく島全体が戦場になり、壊滅的な被害を受けることは明らかである。
 ゲート前の抗議は連日続く。最近はゲート前を通過する観光バスも多くなっており、手を振りミサイル基地反対をアピールしているとのことだった。

沖縄県が反ヘイト条例案を作成
1月6日まで、パブリック・コメント募集中


 那覇市役所前のヘイトスピーチを阻止し続けている「沖縄カウンターズ」が12月9~10日、糸満市の新川公民館で、ヘイトの実態と背景、条例などについて説明する企画展を開催した。展示は簡潔で分かりやすく丁寧。スタッフが来場者一人ひとりについて説明する。会場の暗くした一部屋の三面の壁いっぱいに、実際のヘイトスピーチの数々をそのまま展示。いくつか拾うと、
「中国人になりたい人は玉城デニーに」
「沖縄県は売国奴」
「沖縄ってもう日本じゃないだろ 土人の国だよ」
などという、なんの根拠もない浅はかで低俗な言葉が並ぶ。
 沖縄県は、ヘイトスピーチをなくすために、「沖縄県差別のない人権尊重社会づくり条例(仮称)骨子(案)」を作成した。1月6日まで意見を募集している。県の条例案と意見提出の手続きは、沖縄県HPで確認することができる。県の条例案をめぐる論点の一つは罰則がないことである。県内外から誰でも意見を出せる。意見のあて先は、〒900-8570 沖縄県那覇市泉崎1丁目2番2号 沖縄県子ども生活福祉部女性力・平和推進課。

県庁前。最高裁の上告棄却に抗議する緊急集会の200人 (12.9)
宮古空港横ひろば。ブルーインパルス反対集会に全国から150人
(12.11)
宮古島市役所から旧役所へのデモ行進。赤嶺・伊波・高良・糸数の現元   
陸自保良訓練場入口ゲート。連日続く抗議行動(12.12)

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