G7広島サミットを批判的世論で包囲し岸田軍拡・増税政権を打倒しよう

久野成章

G7サミットとは、どんな仕組みなのか?

 世界資本主義が危機に陥った1970年代(ニクソン・ショック=ブレトン・ウッズ体制の崩壊〈1971年〉や第1次石油危機〈1973年〉など)に、マクロ経済、通貨、貿易、エネルギーなどに関して政策協調をしないと彼らは持たなくなった。1975年11月、パリ郊外において、戦勝国帝国主義(米・英・仏)と敗戦国帝国主義(独・日・伊)の6カ国による第1回サミットが開催された。1976年にカナダを加えてG7、ソ連崩壊の1991年からの過渡期を経て1998年ロシアを加えてG8となり、2014年のロシアによるクリミア併合以降、ロシアが排除されG7と変遷した。
 最大の特徴は、トップダウンで物事を決めていくスタイル。「自由、民主主義、人権」を前面に出しながら、その本質こそは、徹底的な反民主主義なのである。対立・競争・闘争を本質とする帝国主義国の首脳=ボス交の仕組み(小倉利丸)がサミットである。議長国は1年間役割を担う。すなわち、日本は、2023年1月1日から12月31日までの1年間議長国である。閣僚級会合や臨時会合、緊急会合もある。情勢に応じて柔軟に仕掛けてくる。戦後外交政策の大転換、すなわち2022年12月16日の岸田内閣による安保3文書の閣議決定も、このタイミングを見計らったものである。
 サミットとは、そもそも恒常的組織ではない。恒常的事務局がない。IMF、世界銀行、WTOの国際経済機関とともに、一国一票制度を根幹とする国連総会をけん制して、グローバルな政治のイニシアチブで国連よりも優位に立つことを画策している。国際法的根拠が全くない非合法サークルがその本質である。
 「シェルパ」と呼ばれる首脳の補佐役が中心になって、事実上、内容を詰めていく。「シェルパ」とは本来、「登山者が山の頂上(サミット)にたどり着くための手助けをする案内人」という意味の登山用語。G7各国のシェルパが「頂上」=「会議の成功」を目指し、緊密に連絡を取り合って、入念に事前準備が進められる。2008年洞爺湖サミットでのシェルパ=河野雅治の裏話はインターネットでの検索でも読める。「各国の首脳が議論する激しい場面は、報道されない」など。政策提言型NGOは、このシェルパとの会議を持つことで影響力を行使しようとしている。Civil Scoiety7(C7)による各分野での政策提言。G7の欧米諸国は市民社会に影響力を行使するために意識的にNGO、NPOを取り込んでいくことを追求している。

アウトリーチがかなり広い

 G7サイエンス学術会議は、学術会議のプロジェクトでG7と連動している。例えば、共同声明「脱炭素化:国際的な行動の緊急的必要性」では原発も容認している。レイバーサミットには「連合」も参加している。労働側からの政策提言として。このアプローチは妥当であろうか?
 サミットとは、7カ国の首脳を頂点としたグローバル資本主義のイニシアチブの枠組み。頂点に首脳会議があり、その下に閣僚級会合があり、その下に「シェルパ」=官僚団がおり、その下に各省庁がおり、その下に政策提言と対話の枠組みの中に組み込まれた「市民社会団体」などが組み込まれる仕組みである。どこにも民主主義の仕組みはない。
 最近のサミットは「G7対その他の国」という構図の印象を与えないようにしている。国連、G20を念頭に置いて、他の有力な国を取り込んでいく。特に、2022年は、ロシアのウクライナ侵略戦争という局面を利用して、最大限、G7が仕切る世界(ロシア、中国、朝鮮国を敵にした)に統合していくことに注意を向けている。この延長線上に、広島サミットが位置付けられている。広島サミットにはインドをも呼ぶ、すなわち、核保有国4カ国首脳が、核抑止論を大手に振って核武装の正当化を持って被爆地入りする。日本は、2023年1月から2年間、国連安保理非常任理事国に数年ぶりになる。国連安保理改革=ロシアと中国を封じ込めて、米英仏と日独で仕切っていこうと言うのだ。外務省の悲願=国連安保理常任理事国入りのために広島サミットはある。NATO並みの軍事費倍増=大軍拡・憲法秩序の破壊に広島サミットは貢献する。

「G7広島サミットを問う市民のつどい」に結集しよう


 このような動きに対して、被爆地広島の運動は、次のようなことを考えている。
 2022年の8月6日に広島に集まった首都圏・関西・広島の有志を核にして、その後、9月25日に「G7広島サミットを問う市民のつどい実行委員会」を結成した。12月17日は、「G7広島サミットを問う市民のつどい」キックオフ集会 「No War No G7 戦争と軍隊は最大の人権侵害・環境破壊だ」との集会を100人で開催した(会場に44人、オンラインでの視聴に60人)。
 内容は以下。「戦争、貧困、差別、環境破壊を招くG7――民主主義を殺すボス交の仕組み」◦小倉利丸さん(JCA―NET)、「G7サミットと共に人類は滅ぶのか それとも、すべての生き物が生き残れる道を選ぶのか!」◦田中利幸さん(歴史家)(オンライン)、「北海道をエネルギー『植民地』にさせない」◦七尾寿子さん(元G8洞爺湖サミットキャンプ実行委員会)(札幌・オンライン)、「首都圏からG7を問う」◦京極紀子さん(首都圏ネットワーク)(オンライン)、「多国間安保の拠点となりつつある横須賀・厚木基地」◦木元茂夫(「自衛隊は何をしているのか」編集委員会)(オンライン)、「茨城に三度も来るな!やめろ、内務・安全担当大臣会合!」◦加藤匡通さん(戦時下の現在を考える講座)(オンライン)、「気候変動と途上国債務の被害はG7が賠償すべき」◦稲垣豊さん(ATTAC Japan 首都圏)、「戦時下のG7外相会合を問う」◦鵜飼 哲さん(一橋大学元教員)(長野・オンライン)、「五輪・万博・G7、民衆不在のイベントはもうたくさん」◦喜多幡佳秀さん(関西共同行動)、「米国の原爆投下の責任を問う」◦松村高夫さん(米国の原爆投下の責任を問う会、慶應大学名誉教授)(東京・オンライン)、「広島が世界にとってヒロシマであるために」◦西岡由紀夫さん(被爆教職員の会会員、ピースリンク広島・呉・岩国)、「G7広島サミットに向けて、原発反対から岸田政権にサミットで原発推進を持ち出すな!」◦溝田一成さん(ヒロシマ・エネルギー・環境研究室)。
 この12人の発言を基盤にして、2023年5月13日(土)屋内集会を500人で開催する。そして、5月14日(日)に原爆ドーム前での屋外集会を1000人で開催する。そこで「広島宣言」もしくは「広島アピール」を発表し、広島市内デモを行う。すでにマツダはサミット開催日の3日間を挟む5日間の休業を発表した。関連企業にも波及する。交通量の半減の強制、カープのホームゲームはなし、フラワーフェスティバルは6月に延期、警備当局の人員用の宿確保のためにホテルは市民の予約を受け付けないなどの影響が出ている。都市型サミットが久しぶりに戻ってくるのだが、広島サミット開催1週間前までに、「サミットはいらない」、「サミットはおかしい」との批判的な世論をどうつくるのか、被爆地広島を戦争の正当化や核抑止論の正当化に決して利用させてはならないとの声をどう高めるのか、創意工夫こらして大衆運動をつくっていくつもりである。
 「週刊かけはし」読者の皆さんも、ぜひ、注視し、協力していただきたい。

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