台湾有事を想定した九州・南西諸島の軍事配備
12.6 米国と一体となった日本の軍拡政策を批判
【愛知】12月6日午後、名古屋市のイーブル名古屋で飯島滋明さん(名古屋学院大学教授、平和・憲法学)講演会「九州・南西諸島で何が起きているのか」があいち総がかり行動の主催で行われ50人が参加した。11月に行われた日米合同軍事演習である「キーンソード23」の実態や自衛隊、各種兵器の配備状況、アメリカの思惑などが講演で明らかにされた。
「最大規模」の
実戦想定訓練
飯島さんはまず「キーンソード23」の概要を紹介し、「南西諸島などで行われたこの軍事訓練は日本とアメリカから3万6000人が参加した。艦艇は約30隻、航空機370機が参加するなど過去最大規模で今まで以上に実戦的な軍事訓練だった。与那国島ではC2輸送機から16式機動戦闘車が降車し、島の公道を市民の前で走るなどの攻撃を想定した訓練を行った。16式機動戦闘車は「タイヤで走る戦車」とも呼ばれ74式戦車に匹敵する砲撃力と時速100㎞で走行する能力を持つ。与那国島を戦場にすることを想定した訓練だ」と述べた。
さらに各島で行われた訓練では「徳之島でアメリカ軍の揚陸艦と自衛隊強襲水陸両用車が浜への上陸訓練を展開し、沖縄本島では各基地で訓練を行ったが普天間基地ではオスプレイが伊仙町のグラウンドで着陸訓練を行った。日本とアメリカのオスプレイが南西諸島で共同訓練をするのは初めてのことだ」と述べた。またその前には「オリエントシールド22(意味は東洋の盾)」という軍事訓練が行われ奄美大島ではアメリカ陸軍火力戦闘部隊(ウクライナに大量に供与したハイマースを使用)と陸上自衛隊(12式地対艦誘導弾を使用)との共同対艦戦闘訓練を行った」と報告した。
自衛隊の生き残
り戦略と一致
次に南西諸島への自衛隊の配備についてアメリカの思惑を分析した。「冷戦期(1945年~1989年)は対ソ連戦略で日本を防波堤として利用するものだった。しかしソ連が崩壊し冷戦が終わると対中国シフトになった。自衛隊の南西諸島配備は『尖閣諸島』防衛を名目にしているが実際にはアメリカの軍事戦略『エアシーバトル構想』の一環だ。ソ連が崩壊して敵がいなくなった。軍隊にとって最大の敵は『敵がいなくなる事』といわれている。自衛隊の生き残り戦略と一致したものだった」。
「この配備のアメリカの目的は中国を太平洋に進出させないために代わりに自衛隊がこの役目を負い戦闘も行うというもの。そしてアメリカ軍は中国のミサイル攻撃を避けるためにハワイに撤退するというもの」。
九州に配備の
「無人偵察機」
続いて九州が出撃拠点として強化される実態について解説した。
「鹿児島県では鹿屋基地に無人偵察機MQ9リーパーが8機、暫定配備された。リーパーとは『死神』『暗殺者』という意味。2020年にはイランのソレマイニ将軍を殺害し、2015年にはイランのISジハーディ・ジョンを殺害した。ヘルファイアミサイルを搭載し単なる偵察機ではない」。「馬毛島ではアメリカ海軍空母艦載機離着陸訓練が移転し、自衛隊基地建設が強行された。台湾有事がおきれば南西諸島だけではなく九州もただでは済まないだろう。」
軍事は抑止力
にはならない
さらに飯島さんは軍事力が「抑止力」になるという論理を批判し「台湾有事になれば最初に攻撃対象になるのは与那国島のレーダー基地だ。軍事拠点は真っ先に攻撃対象になる」と危機感を強めて述べた。
また11月30日に松野官房長官が中国・ロシアの爆撃機が日本周辺で共同飛行したことで懸念を述べたことについて「日米共同演習が『抑止』ではなく反発と軍事的緊張を生み出しているのではないのか、あまりに自分勝手な内容だ」と厳しく批判した。
そして今回の南西諸島の配備や共同訓練はアメリカ側の要求に沿う形で進められている。「オリエントシールド」とはその名の通り日本と自衛隊がアメリカのための「東洋の盾」にされるためであり、自衛隊をアメリカのための「鋭い剣」にするための訓練が「キーンソード」なのだと批判した。
そして「東洋の盾」「鋭い剣」になった結果、どのような未来が待ち受けるのだろうか。これについてアメリカ軍関係の新聞「STARS」には「沖縄の基地は中国との紛争では生き残れないだろう」「第1列島線、とりわけ嘉手納基地には中国との紛争で生き残るものは何もないだろう」と書かれていることを紹介した。
またアメリカ空軍はF15戦闘機を段階的に沖縄から撤退させるという。まさに沖縄はアメリカのために使い捨てにされるのだと批判した。
平和を構築
するために
最後に平和を構築するための提起が述べられた。まず、11月30日に与那国島で住民避難訓練が行われたがミサイルが飛んで来たら市民を守ることはできないと述べ、武力紛争に至らない取り組みが最優先だと提起した。
具体的には「自衛隊基地建設反対・撤去」だけでは多くの市民の共感は得られない。攻撃されれば助からないのだということを強調し、自衛隊強化ではなく平和的な外交交渉を求めながら敵基地攻撃能力保持反対の運動を進めること、交流による経済発展と地域活性化をめざすことが重要だと述べ講演を終了した。
大軍拡・改憲
阻止しよう
この講演でアメリカの戦争政策と一体になって日本が戦争のできる国へと突き進んでいることが明らかにされた。台湾有事になり台湾が戦場となり火の海に包まれれば必然的に沖縄も同じようになるだろう。アジア太平洋戦争の時と同じことを絶対に繰り返してはならない。
あいち総がかり行動は12月19日に「わたしたちに戦争はいらない!あいち総がかり行動・集会デモ」を行う。参加者はこの集会とデモを成功させ大軍拡、改憲阻止の決意をあらたにして講演集会を終えた。(越中)
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