1.22東海第2原発運転差止め訴訟
東京高裁で勝利判決を!
原告団・弁護団の要求で裁判長交代させた
裁判勝利にむけ
て支援体制強化
1月22日、原告団が主催する「東京高裁勝利!決起集会」とデモが行われ、約200人が参加した。集会は日比谷図書文化館で行われ、原告団共同代表の大石光伸さんの主催者あいさつ、弁護団の報告、茨城県外の原告の決意表明、首都圏の支援者のアピールが行われた。
デモは日比谷公園西幸門を出発して東京駅梶橋駐車場で解散するコースで行われ、日曜日でにぎわう有楽町付近では、岸田政権による原発政策の転換や1月18日の東電刑事裁判の高裁判決報道もあり、沿道の歩行者らの注目も大きかったようだ。
2021年3月、差止訴訟は水戸地裁で「画期的」とも評された勝利判決をかち取った。判決は、東海第2原発の施設の問題ではなく、敷地外の住民の避難計画ができていないため、運転は認められないという内容。電力会社の敷地外の課題も原発運転では重要な要素としたのが「画期的」だった。関係自治体の避難計画はでき上る見通しはない。この地裁判決を高裁でも維持することを目指し、早期の公判開始を求めてきたが、担当部署の裁判長の定年による交代などで進行協議がまとまらなかった。昨年9月の最高裁人事で新たな裁判長が決まり、1月31日の初回公判に向けた支援体制を再構築するため、決起集会として集会とデモが計画された。
辞任しなけ
れば「忌避」
訴訟当事者は裁判長を選べない。そのため「裁判所は判断する裁判長が中立公正であることが極めて重要」だ。集会で、鈴木裕也弁護士は「水戸地裁判決の判断の維持・定着に向けて」と題した講演で「永谷(ながや)典雄裁判長」の経歴を、海渡雄一弁護士は人物像についてそれぞれ紹介した。
永谷裁判長の経歴は次のようなものだ。1989年に判事補として大阪地裁に赴任。これまで1997年から2014年までの間で14年以上国の訟務担当のポストにあり、青森県六ケ所村の日本原燃の施設の差止訴訟や、国が被告だった時期の東海第二訴訟にも、訟務担当審議官として関与していたという。
原告側はこの経歴から、「職権を利用して早々に審理を終了させ、地裁判決をひっくり返すのではないか」と警戒していた。昨年12月に開かれた裁判の進行協議で初顔合わせするはずだったが、当人は病気を理由に欠席し、右陪審の判事に代理させて日本原電が求めていない意見陳述をやってほしいと伝えたという。
原告側は東電刑事裁判が開催された1月18日、永谷裁判長に対して20日までに辞任するよう勧告した。しかし22日の決起集会までに辞任しなかった。原告側は回答期限を26日までに延ばし、辞任しなければ31日の公判開始直後に「忌避」を申し立てることを明らかにした。茨城では、自衛隊の合憲性を問いただした百里基地訴訟で、被告側の国が合憲性を審理する方針の裁判長を忌避した経過があった。官民共用の航空自衛隊百里基地では、反対する農民らの共有地が誘導路を「くの字」に曲げている。
1月25日、東京高裁は弁護団を呼び出し、「諸般の理由により、この事件の担当部署を変更する」旨を伝えた。原告側は「裁判長が忌避理由を認めて担当を降りるということを回避するために、表向き、この事件を別の部に移すという形をとった」と受け取っている。これにより、1月31日の初回公判は延期となり、「水戸地裁判決の判断の維持・定着」は先延ばしとなった。
「国が前面に
立つ」とは
「国が前面に立って」というフレーズは、政府はバックエンド(使用済み燃料の管理や核燃料サイクル、廃棄物など)にかぎって使用、慎重に使われてきた。国策民営と評されてきた日本の原子力政策でさえである。それを西村経済産業相に至っては、「原発立地地域の皆さまのご理解を得ることです。そのためには、地元の皆さまへの丁寧な説明が欠かせません。避難経路の確保など様々な不安や懸念があると思いますので、国が前面に立って、地元の理解を得ていきます(中央公論11月号)」と、自治体が策定する避難計画にまで「国が前面に」を使っている。
岸田政権がGX実行会議で原発の60年以上の運転延長や新増設に舵をきったのが参院選が終わった昨年8月。偶然かもしれないが、最高裁人事で国の訟務担当が東海第二原発差止訴訟の控訴審裁判を担う部署に就く。櫻井よしこら右派は、かねてから安部ら自民党右派に向かって原発の「訴訟リスク」対策をとるように叫んでいた。この叫びが、聞く政治家の岸田が首相になって、やっと実現したのだろうか。先述の西村発言は、櫻井ら右派へのシグナルになっているのは事実だろう。
水戸地裁での勝利は、原告団をはじめ原発周辺の住民や市民団体が周辺自治体との協議を重ねてきた成果でもある。周辺自治体と多くの住民は、1999年のJCO臨界事故での避難、屋内退避を経験しており、この事故を契機に原子力防災体制が強化された。2人の死者をはじめ被害者をだし、現場責任者は刑事責任を負った。100キロ前後離れた福島第一原発の事故によって、東海周辺の住民はあらためて東海第二原発や東海再処理工場の危険性を知った。原告らは「原発の死亡事故はゼロ」発言をいまだ発する永田町には負けない決意を持っている。この決意と控訴審での闘いを支えていこう。
(1月29日KJ)
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