1.29リニア市民ネット大阪・学習会

投稿

高速交通よりも地域の交通・環境・循環型まちづくりへ
喜多幡 佳秀(ATTAC関西グループ)

 リニア中央新幹線に反対するリニア市民ネット大阪では、JR西日本が計画している北陸新幹線の京都・大阪への延伸もリニア新幹線と同様の問題があることから、一昨年後半から北陸新幹線新大阪延伸の沿線となる枚方市、寝屋川市などで駅頭の宣伝活動を月1・2回のペースで継続し、昨年後半からは地域での運動づくりの手がかりとして枚方市のカフェカジョで「リニア・カフェ」を開催してきた(これまでに4回)。

ずさんの極み
リニア新幹線
 今年最初の企画として、1月29日、高槻市のクロスパル高槻で第18回リニア学習会「地域の『交通の権利』と、緑と水のまち」が開催された。サブタイトルの「リニア・北陸新幹線・気候危機を乗り越えるコミュニティーの現在・未来」が示すように、新しい世代が中心で企画した未来指向の集まりである。
 最初の発言は国際環境NGOのFoE Japanでリニア中央新幹線の問題点や沿線住民の声を映像等で発信している柳井真結子さん。もともと気候変動の問題に関心を持っていたが、排出量の数値だけを問題にするのでなく、それぞれの地域での自然環境や人々の生活への影響から考えようとしてきた。
 リニア新幹線というのは1962年から研究が始まっていて、50年以上を経て、いまだに多くの問題が解決されていないプロジェクトで、「国家的事業」と言いながら肝心のことは国とJRと地元自治体で責任の押し付け合い、「現行新幹線の代替ルート」や「経済の活性化」というイメージだけが先行して、環境への影響や収支の見通しなどの情報は不透明、トンネル工事がもたらす環境・生態系の破壊、水や残土の問題、地域の分断などトンデモないプロジェクトである。そして何よりも公共性、これからの地域社会を考えていく上での課題に逆行している。
 柳井さんはリニア新幹線の事業計画や環境影響評価のずさんさを詳しく説明しながら、米国のワシントンDC・ボルチモア間のリニア新幹線計画についても紹介し、その中で沿線住民たちが専門家による調査と情報共有、対案(既存の鉄道の活用や地域住民のニーズに沿った交通手段の拡充)の提示、各級議会の議員への働きかけ、活動資金調達などの地道な活動を通じて、「環境正義」のための広範な人々の運動を作ってきたことを紹介した。

各地の運動と
連携して闘う
 質疑の中では、現在の活動として、沿線の大鹿村での住民への聞き取りをもとに現地の状況を映像によって全国に知らせることや、各地の反対運動の連携のための活動などについても報告した。
 次にリニア市民ネット大阪の仲間で、2021年春から長野県大鹿村に移住して、農作業の傍ら現地の状況を発信している北川誠康(もとやす)さんからのメッセージ。初めてのオンライン中継で技術的問題もあったが、工事が始まり残土を運ぶトラックが行き交う状況や、予定されている長野駅周辺の用地買収の状況など厳しい現実がリアルに伝わった。開発の経済効果への期待が煽られ、反対の声を上げることも勇気が必要という状況の中、大都市で生活する者としてどう考えていくのかが問われるメッセージだった。

気候変動と
代替案提示
 2人の発言を受けて、大阪からは「気候を考える市民の会 高槻」の吉本草蔵(そうぞう)さんと「環境・歴史・景観 しまもと」の末岡友行さんが問題提起を行った。吉本さんは気候危機への対策が切迫した課題である時に、大量のエネルギーを消費するリニア新幹線など問題外であると訴えた。末岡さんはリニアや北陸新幹線に投入する何兆円ものお金を、地域の交通の権利や生活環境の改善のために使うべきという観点から、海外の事例も紹介しながら、もっと便利で乗りやすい(無料の)地域循環型バス、自転車専用道路や無料駐輪場の拡充、在来の鉄道の安全対策の強化などの具体案を例示した。また、現在、高槻・島本で進んでいる大型開発で田んぼの中に大型の流通施設が次々と建っているが、地域社会への影響を考える必要があると指摘した。
 参加者は会場に約30人とオンライン参加が約10人で目標を下回ったが、沿線住民と都市住民の分断、世代間の断絶を超えてつながってゆくための確実な一歩となっただろう。  

自然環境や生活破壊をやめさせようと訴える柳井真結子さん(1.29)

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社