沖縄はアジア諸国との平和交流の架け橋こそふさわしい

沖縄報告 2月12日

自衛隊ミサイル基地建設を断念せよ

沖縄 K・S

 与那国町議会は昨年12月、「一刻も早いシェルター設置を求める意見書」を賛成7、反対2で採択した。2月9日、賛成町議らが国会や防衛省を訪れ、松野博一官房長官や浜田靖一防衛相に意見書を手渡し「与那国町に最優先でシェルターを造ってほしい」と要請した。昨年来声高に叫ばれる「台湾有事」に対して、台湾から約110kmしか離れていない与那国島での対処策が、与那国町当局が想定する住民の島外避難とこのシェルター設置なのである。
 与那国町の糸数健一町長は2月7日、共同通信のインタビューに答えて、陸自与那国駐屯地へのミサイル部隊配備を「容認する」と述べた。軍隊の駐留と戦場化を想定した住民避難―1944年の第32軍設置に続く飛行場建設・陣地壕構築による「全県要塞化と10万人疎開」と同じことが進められている。違いは、現在想定されている戦争が米海兵隊と自衛隊のミサイル部隊によるミサイル戦争だということであって、沖縄が戦場となり、住民の命と生活が根底から破壊されることには変わりがない。町長や町議は軍隊や政府と同じ土俵で物事を考えてはいけない。住民の命と安全を守るという自治体行政の役割は、戦争が起こることを前提とするのではなく、戦争を起こさないために全力を尽くすことにある。
 天皇制明治政府は琉球併合ののち、琉球列島の島々を「南西諸島」と命名し「帝国の南門」と位置付けた。沖縄は本土を守る防波堤、軍事の道具とされた。沖縄戦の歴史を決して繰り返してはならない。与那国から石垣、宮古、沖縄、奄美の島々には150万を超える人々が暮らしているのだ。避難訓練もシェルター設置も必要ない。必要なことは戦争をしないこと、ミサイル部隊を配備しないことである。

琉球新報社による県民世論調査

 沖縄が再び戦場になりかねない岸田内閣の強引で横暴な軍事外交政策に対し、沖縄県民の危機感と反発が強まっている。
 琉球新報社とJX通信社による県民世論調査(1月28~29日実施)から、6項目の質問と答えを以下、ピックアップしてみよう。

【質問3】政府は昨年12月、敵のミサイル発射基地などをたたく反撃能力の保有や防衛力の強化を盛り込んだ「安保関連3文書」を決定しました。あなたは、防衛力強化の方針を支持しますか。
①支持する(24・4%)②支持しない(51・9%)③どちらとも言えない(23・7%)
【質問4】岸田首相は、来年度から5年間の防衛費を、現在の1・5倍にあたる43兆円に増額する方針です。あなたは防衛費の増額に賛成ですか。
①賛成(21・3%)②反対(61・4%)③どちらとも言えない(17・3%)
【質問5】岸田首相は、防衛力強化に向けた財源を確保するため、増税する方針を打ち出しています。あなたは防衛増税を支持しますか。
①支持する(12・4%)②支持しない(74・0%)③どちらとも言えない(13・7%)
【質問6】あなたは、他国のミサイル発射基地などをたたく反撃能力を日本が持つことに賛成ですか。
①賛成(25・1%)②反対(55・6%)③どちらとも言えない(19・4%)
【質問8】政府は南西諸島への自衛隊配備を強化する方針です。あなたは、南西諸島へ自衛隊の配備強化に賛成ですか。
①賛成(28・7%)反対(54・2%)③どちらとも言えない(17・1%)
【質問11】あなたは、政府が進めている名護市辺野古への新基地建設に賛成ですか。
①賛成(21・2%)②反対(64・1%)③どちらとも言えない(14・6%)

 「防衛増税」の支持・不支持の比率は約1:6。軍拡・軍事費増額・反撃能力の保有・南西諸島の自衛隊増強に対しても、「反対」「不支持」の比率は「賛成」「支持」の約1・9~2・9倍に達する。これが県民の意思だ。

沖縄の反発と抵抗の動きが急速に広がっている

 元学徒の会や平和ガイド団体などは、安保3文書・軍拡・ミサイル基地化に反対する声明をいち早く発表した。地元二紙の「読者の声」蘭や「論壇」には連日、反戦を訴え平和を求める投稿が掲載される。
 第32軍司令部壕の保存・公開を求める会の役員6人は2月6日、「自衛隊の司令部地下化を支援するかのように誤解した受け止めが広がりかねない」と県庁で記者会見し、次のような声明(抜粋)を発表した。
 「琉球列島に戦雲が広がりつつある。その背景にはロシアの宣戦布告なきウクライナ侵攻や台湾をめぐる米中の対立がある。世界の国々はそのいずれかに与し、武器を提供し、戦争に加担し、まさに第二次世界大戦または沖縄戦前夜の様相を呈している。それは第二次世界大戦中、枢軸国と連合国の対立と酷似している。第三次世界大戦に発展しないと誰が言えよう。いかなる形の戦争であれ、戦争は悪であり、勝者も敗者もない。我々は戦争への道を歩むことに対しては断固として反対する。……
我々が第32軍司令部壕を〝負の遺産”として保存、公開を訴えているのは、それを平和発信の砦にするためである」。
 2月8日、東京で開かれた県主催の復帰50年記念シンポジウムで、玉城デニー知事は、安保関連3文書に対し「国政でのしっかりした検討や国民的議論が必要だ」と指摘し、敵基地攻撃能力は「憲法の意思とは違うと明確に反対する」「外交による緊張緩和と信頼醸成を求める」と述べた。
 国連の「先住民族の権利に関する専門家機構」(EMIRP)が「軍事化が先住民の権利に与える影響」をテーマに情報提供を呼び掛けていることを受け、宜野湾ちゅら水会・南西諸島ピースプロジェクトなど市民団体6団体がそれぞれ、軍事基地による騒音・PFASなど環境汚染・辺野古新基地建設・住民の自己決定権の蹂躙などをテーマに、今年7月スイスのジュネーブで開催される国連の会議に訴えることを2月8日、県庁で発表した。
 2月10日には、「沖縄の『基地と行政』を考える大学人の会」が主催して、「平和的解決をめざして―『ウクライナ問題』から『台湾問題』へ―」と題する孫崎享さんの講演とカテリーナ・グジーさんによるウクライナの民族楽器・バンドゥーラのコンサートが開かれた。
 孫崎さんは、「歴史を振り返ると、敵基地攻撃が成功した典型例は真珠湾攻撃だが、その結果どうなったか。成功は一時的なものであり、さらに戦争は相互攻撃の連鎖に入り、大きな惨禍を生み出して終戦を迎えた。敵基地攻撃はとんでもない。紛争の解決には対話しかない。ウクライナや台湾に関し、国家間で結ばれた約束事を守ることが戦争を回避する道だ。相手を非難・攻撃するだけでは問題は解決しない。東西ドイツの統一・旧ソ連の崩壊にあたってのソ連と欧米との確認、日中国交回復後の一連の共同声明・確認事項に沿って交渉のテーブルに着かなければならない。日米が問答無用で南西諸島をミサイル基地化する現状の中、沖縄のみなさんが問われてくる。沖縄から声をあげ行動して行くことが大事だ」と提起した。
 「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」は2月12日、那覇市内でシンポジウムを開催し、台湾からそれぞれ国民党・民進党に属する論客二人を招いて冷静に台湾問題を考え、対話と外交で衝突を回避することを訴えた。
 来る2月26日には、様々な団体・個人を糾合した「島々を戦場にするな!沖縄を平和発信の場に!2・26緊急集会」が開催される。県庁前ひろばでの集会のあとデモ行進も予定されている。
 
 このように、米軍と一体化した日本政府の軍拡・南西諸島のミサイル基地化の強行に対し、沖縄では、様々な反発と抵抗の動きが急速に広がっている。沖縄をめぐる情勢に最大限の注目をしてほしい。この2、3年が歴史的に決定的に重大な攻防の局面になるだろう。全国の読者のみなさんには、沖縄の動きに密接につながるために、『琉球新報』『沖縄タイムス』の地元二紙のWEBをいつも閲覧し、可能ならグループ・団体で定期購読をしてみていただければと思う。この重大局面を最大限の英知とエネルギーをもってともに闘い抜くことを呼び掛けたい。

2・4辺野古ゲート前集会に600人

 維新の馬場代表は1月末来県し、辺野古の埋立工事現場などを視察した後、県庁で記者会見を開いた。新報2023年1月31日によると、「あそこまで進んだ工事の中止は経済的にも、沖縄・日本の安全保障にも非常にマイナス」と述べたという。なんという軽薄・独断。自民・公明だけでなく、このような無責任な政治家たちが日本の政治を動かしていることが日本の悪政の根源にある。
 辺野古埋立工事は、政府の見積り通りにいっても、知事の埋立変更申請の承認を得てから10年以上かかる。現在の埋立の進捗の割合は、投入土砂ベースで十数%に過ぎず、大浦湾の埋立予定海域の大部分を占める軟弱地盤の改良工事のめどは立たない。工事費用はすでに当初の数倍となり、県の試算によると最終的には10倍を超えると予測されている。沖縄県は埋立変更申請を不承認にし、裁判が継続している。玉城知事は常々「県民の反対の意思がある限り何年たっても辺野古の工事は完成しない」と述べている。県民の辺野古NO!埋立ストップ!の意思は不変だ。
 2月4日(土)キャンプ・シュワブゲート前で、オール沖縄会議主催の第一土曜日県民大行動が開催され、約600人が参加した。テントの中は各地の参加者で埋まり、フェンス寄りの歩道には、「辺野古の海に土砂を入れるな!サンゴを殺さないで!」(ヘリ基地反対協)、「うるま市が標的にされるミサイル配備反対」(ミサイル配備から命を守るうるま市民の会)、「NO WAR 戦争反対」(県退職教職員会)、「基地・爆音をなくそう」(嘉手納爆音訴訟団)、「やんばるの森が哭いている!」(やんばる統一連)などの横断幕やのぼりが並んだ。
 主催者のあいさつ、国会議員のあいさつ、各地の発言などの中で、ひときわ注目を集めたのは、韓国からの平和ツアー一行、メディアプロジェクト団体「난리 법석(ナルリポプソク)」の11人だった。一行はコロナ終息への動きに合わせて、最初の国外訪問地として沖縄を選び、辺野古のクッションに宿泊しながら戦跡と軍事基地の現場を精力的に訪れた。平和の礎、韓国人慰霊の塔、魂魄の塔、熊野鉱山、山城本部壕、辺野古ゲート前、嘉数高台、佐喜真美術館、嘉手納道の駅、恨の碑、チビチリガマ、安和・塩川、伊江島、健堅の彦山丸追悼の場、辺野古ガラスボート、県民大行動参加、さらに、その後二手に分かれて、一方は石垣島のミサイル基地建設現場、他方は勝連の陸自とホワイトビーチ、PFAS市民連絡会との交流、浦添軍港予定地、と疲れ知らずの足跡を印した。

突貫工事が進む石垣島ミサイル基地建設現場

 私は石垣島に同行した。「基地いらないチーム石垣」の上原正光さんの案内で、丸一日半をかけて、自衛隊と海保の現状をつぶさに観察した。陸自石垣駐屯地の3月開設に向けて、突貫工事が続いている。これまで、自衛隊基地にはダンプや生コン車など工事車両が出入りするゲートしかなかった。正面ゲートと軍車両ゲートは現在、赤土がむき出しのままで、猛烈な勢いで造成中だ。弾薬庫は4棟のうち3棟が完成、隊舎A、B、Cのうち、地下1階地上2階の隊舎(A)は外観からはほぼ出来上がっているように見えた。覆土式訓練場は依然として工事中。一戸あたり4500万円という豪華な隊員用アパートも市内3カ所に建設中である。
 於茂登(おもと)岳の麓に広がる緑豊かな自然と農地を壊して造られていく自衛隊基地は、県民を蹂躙する日本政府の強権そのものだ。周辺4集落公民館(於茂登、開南、平得、大俣)の反対決議を無視し、市民の40%に及ぶ住民投票要求署名を踏みにじり、まともな住民説明会を開くことなく強行されていくミサイル基地建設のどこに正当性があるのか。強権には迎合がつきものだ。石垣市長や市議たちは、地域住民の命と生活・人権にではなく、東京の政権に目が向いている。
 石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会は、3月4~5日に開催する現地抗議集会・フィールドワーク・交流会に結集することを県内外の諸団体に呼び掛けている。呼びかけに全力で応えよう! 石垣市民とともに、日本政府の米軍と一体となった危険極まりないミサイル戦争準備に反対する声を力強くアピールしよう。

2023.2.4 辺野古ゲート前集会に600人。ゲート側で横断幕・ノボリを掲げる参加者
2023.2.5 石垣島。陸自駐屯地建設現場では突貫工事が続く。韓国からの訪問団と
2023.2.4 辺野古ゲート前集会に600人。韓国からの平和ツアー一行も連帯のあいさつ
2023.2.8 琉球セメント安和桟橋。ゲート前では連日屈しない抗議行動が継続する。

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社