資料 海上自衛隊の「特定秘密」漏えい問題について

改めて秘密保護法の廃止を求めます
「秘密保護法」廃止へ!実行委員会 共謀罪 NO!実行委員会

 2022年 12月26日、海上自衛隊で「特定秘密」を漏えいしたとして、井上高志一佐が懲戒免職され、横浜地検に秘密保護法違反、自衛隊法違反で書類送検されました。この事件は2013年に制定された秘密保護法の初の適用事件として、しかも海上自衛隊中枢がかかわった事件として大きく報道されています。しかし、海上自衛隊、メディアの報道を読んでも、事実関係などが明らかではありません。これは、秘密保護法制定をめぐる議論で指摘されたさまざまな問題点が明るみにでたものといわざるをえません。私たちは、改めて市民の知る権利、報道の自由を侵害する秘密保護法の廃止を求めます。

事件の経過

 今回の事件の経過は、防衛省の報告、メディアの報道を総合すると次のようなものです。元海上自衛艦隊司令官が2020年1月はじめに現役の艦隊司令官、その部下の情報主任幕僚、井上一佐の三名に講演などのために「安全保障にかかわる最新の情報を知りたい」と個別に働きかけたことがはじまりとされています。現役の艦隊司令官は、部下の艦隊司令部情報主任幕僚を通して、情報業務部門のトップの井上一佐に元海上自衛艦隊司令官に情勢についてに説明するよう指示しました。井上一佐はその指示に従い、元海上自衛艦隊司令官に2〜3回にわたり情勢を説明し、最後の説明のときに「特定秘密」を漏らしたとされています。この最後の説明後、防衛省に情報提供があり、自衛隊の捜査機関といわれる警務隊が捜査に乗り出し、事件が明るみにだされ、今回の処分になったということです。

捜査、発表も秘密!?

重要なことは、防衛省の報告、メディアの報道を総合的に検討してみても経過もふくめ、事実関係がよくわからないということです。井上一佐による元艦隊司令官への説明は2回か3回あったとされていますが、防衛省の報告では一回です。更に、井上一佐が「畏敬する」元上司の艦隊司令官に、勝手に「特定秘密」を説明したとされていますが、現役の艦隊司令官から「安全保障にかかわる最新の情報」を説明するよう求められたら、井上一佐が 「特定秘密」含め、詳しく説明することが必要あると判断しても不思議でもなんでもありません。井上一佐が勝手に「特定秘密」を説明した、という防衛省の説明は信用することができません。断言できることは、防衛省が井上一佐にすべての責任を押し付け、事件の収束を図ろうとしているということです。これは事実関係そのものを隠蔽しようとするものであり、実に重大な問題です。ここに、秘密保護法の問題性が鋭く示されています。漏えいされたとされる「特定秘密」を公にしない、そのために捜査などを秘密裏におこなう、処分も、発表も恣意的に行うことが可能、それが秘密保護法です。
 「何が秘密、それは秘密」の行き着く先はすべてが秘密。秘密保護法は「特定秘密」の指定の範囲が曖昧であり、恣意的な運用が行われるのではないか危惧されてきました。同法は「何が秘密、それは秘密」を本質とするものです。今回の事件は、そのことを満天下に明らかにしました。海自は、記者会見でどういう情報が漏えいしたのかとの質問にさえ回答しませんでした。どういう情報が漏えいしたかも明らかにできないというのです。「特定秘密」とそれ以外の情報の区別がわからない以上、報道も市民も怖くて秘密保護法の対象である防衛、外交などの4分野の情報については知ることもできません。知るために関係者に聞こうとすれば、秘密保護法違反で厳罰で処罰されるからです。これは、戦前戦中の大本営発表のように、政府や自衛隊の発表が全てであり、報道も市民もそれを信じろということに等しいです。そのことを海自の漏えい問題は鋭く突き出しました。

戦争は秘密からはじまる

 なぜ、漏えいから3年にもなるこの時期に事件の発表があったのでしょうか。それは、 岸田政権の安保関連3文書改悪により、日本が安保防衛政策において専守防衛から「敵基地攻撃能力保有」「反撃能力保有」という安保防衛戦略の大転換がおきようとしていること、そのなかで、自衛隊内部から動揺がおき防衛情報が「漏えい」されるのではないかと恐れ、政府・自衛隊中枢がこの事件を利用し、情報統制に入ったとしか思えません。
 ロシアのウクライナ侵略を契機に世界は激動の只中にあります。アジアでは北朝鮮脅威、中国脅威が叫ばれ、日本は大軍拡へと突き進もうとしています。多くの市民が戦争の足音が近づいているのではないか不安を感じ、先行きを危惧しています。こうした情勢だからこそ、防衛、外交などに関して、市民は真実を知る必要があります。いま、私たちは「戦争は秘密から、情報統制からはじまる」という意味を真剣に考えなくてはなりません。
 海自の「特定秘密」漏えい問題は、改めて秘密保護法の違憲性、悪法性を明らかにしました。私たちの平和、人権、暮らしを守るために、改めて秘密保護法の廃止を求めます。
 2023年1月22日

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