「建国記念の日」反対集会に200人
改憲・大軍拡NO! 競争・強制でなく、命と人権を守る教育を!
天皇制賛美はゴメンだ
【大阪】2月11日、大阪・港区民センターホールで、2・11「建国記念の日」反対!改憲・大軍拡NO! 競争・強制でなく、命と人権を守る教育を!集会が開かれた。主催は「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク(ひのきみ大阪ネット)で、約200人が参加した。
この集会は、ひのきみ大阪ネットとその前身の「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪によって2001年から毎年開催されてきたが、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止され、2年ぶりの開催となる。また、オンラインでの配信も行われた。会場には、多くの団体がブースを並べ、参加者に書籍・パンフなどの販売、署名活動、支援の呼びかけを行ってていた。
集会は、司会の開会あいさつに続き、寺本勉共同代表の主催者あいさつで始まった。
寺本代表は「この2年間で、2つの大きな勝利をかちとった。一つ目は、梅原聡さんの再任用拒否国賠裁判に対する大阪高裁勝利判決が最高裁で確定し、大阪府教委による再任用拒否が裁量権の逸脱・濫用にあたるとされ、大阪府に賠償金を支払わせたこと、もう一つは、国連自由権規約委員会の第7回日本審査で『締約国は思想良心の自由の実質的な行使を保証し、規約18条で許容された制約の厳密な解釈を越えてその自由を制約するいかなる措置をも控えるべき』『締約国は自国の法律とその運用を規約第18条に適合させるべき』との画期的な勧告が出されたこと」と述べた。そして「ZAZAのメンバーである山田肇さんが昨年3月に、東豊中高校の2002年の卒業式で『君が代』斉唱時に生徒とともに退席したことで戒告処分を受け、裁判闘争を戦った中野五海さんが昨年12月にそれぞれ亡くなった」ことを紹介し、「先人たちの思いも受け継ぎながら、今後も粘り強くとりくみを進めていきたい」と決意を語った。
資本主義の現
実と天皇制
集会のメインは、酒井隆史さん(大阪公立大学教授)の「資本主義の『略奪的段階』と天皇制」というテーマでのオンライン講演だった。酒井さんの講演は「解釈労働」という切り口から、資本主義が「略奪的段階」に入る中での天皇制の果たす役割について分析したもので非常に示唆に富む内容だった(講演要旨は別掲)。
講演のあと休憩に入り、集会再開に先立って増田さんと福山さんによる「不起立バンド」の演奏と歌が披露された。
集会後半の冒頭、全日建連帯労組関西生コン支部の武谷新吾さんからのアピールがあり、反弾圧裁判闘争への支援が訴えられた。そして、司会から関生支部へのカンパ要請があり、寄せられた5万円を超すカンパは集会の最後に武谷さんに手渡された。
闘争報告として、グループZAZAの梅原聡さん、松田幹雄さんが発言(奥野泰孝さんは別の集会参加のため文書報告)、続いて、東京の根津公子さん(オンライン発言)、青木茂雄さん、小野政美さん(オンライン発言)が東京や愛知の状況について報告した。
続いて連帯アピールに移り、「表現の不自由展」について岡田大さん、朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪の大村和子さん、子どもたちに渡すな!危ない教科書・大阪の会の伊賀正浩さん、子どもをテストで追いつめるな!市民の会の志水博子さん、南西諸島への自衛隊配備に反対する大阪の会の根本博さん、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの方清子さん、大阪の未来は府民が決める舞洲カジノを止める会の大垣さなゑさんからそれぞれ闘争の報告や共に戦っていこうという呼びかけがおこなわれた。
最後に、集会まとめが山田光一事務局長から提起され、集会を終えた。 (A)
酒井隆史さんの講演(要旨)
「資本主義の『略奪的段階』と天皇制」
今日のお話では、4点について考えてみたい。①人々が天皇や皇室を愛していると考えすぎないように、天皇制をこのように捉えてみてはどうか、②そう考えてみると、どのような人々の欲求が見えてくるか、③いま私たちはどのような状況にいるのか、資本主義の現在はどこに向かっているのか、④そのことと①②で考えてきたことがどう関連しているのか。
天皇制は本当に人々から愛されているのか? 竹内好は「日本では一木一草に政治(=天皇制)が感じられる」と言った。本当にそうなのか?
ここで「解釈労働」という概念を導入してみたい。「解釈労働」はフェミニズムや人類学が発展させてきた、人間社会における支配・被支配、上位者・下位者のありよう、ヒエラルヒキーの仕組みを説明する概念で、他者が何を考えているか、何を感じているか、何を望んでいるかをいろいろな手がかりから考えることを指している。日本語の中にも、このことを表す表現がある。たとえば、「顔色をうかがう」「空気を読む」とか、「忖度」とかいうことばがそれだ。人はこういう労働を遂行することで社会関係を構築している。
問題なのは、この「解釈労働」は不均衡に配分されていて、絶え間なく「解釈労働」をしなければならない人もいれば、ほとんどしなくてすむ人もいることである。「解釈労働」が重くのしかかるのは、ヒエラルキーの下位の人であり、免れる程度の大きいのはヒエラルキーの上位の人だ。たとえば、アニメ『ドラえもん』の「ジャイアン・リサイタル」がその例になる。男性と女性との間でも「解釈労働」の負担は女性の方に重くのしかかっている。
ヒエラルキーの上下が「解釈労働」の不均衡配分につながるのは、暴力の存在によるところが大きい。官僚が「解釈労働」をしなくてもよく、人々は役人の顔色をうかがわなければならないというのは、国家が暴力を独占しているから可能になることである。
「一木一草」に
宿る天皇制?
そうすると、「一木一草に天皇制が宿る」とはどういうことなのか? 天皇制への順応の調達には「解釈労働」が強力に作用している。天皇の「お気持ち」をおもんばかるというのは「解釈労働」そのもので、天皇や皇室は決して大衆の「お気持ち」をおもんばかるとは言わない。私たちは、天皇への愛着を誰よりも示し、誰よりも「解釈労働」を遂行しているのは大衆だというイメージをなんとなく持っているが、2010年代に見えてきたのはそれを遂行するのが保守や右翼政権に批判的な知識人であったということだ。
日本の新しい右翼ヒエラルキーは天皇制と距離を置くようになっている一方で、知識人は天皇制ヒエラルキーを右翼政権を批判することに転用可能と考えている。しかし、天皇制には常に暴力がつきまとっていて、天皇制批判を難しくさせている。天皇制をテロリズム環境が取り巻いていて、そのことを知識人も人々もよく知っている。「天皇を敬愛している」とされているのは、こうしたテロルへの恐怖への歪曲された表現ではないのか。
大衆の天皇制への「自発的隷従」がクローズアップされるのは、知識人が自らの恐怖を封印し、怖いことを怖いと言えずに、それを隠すために理屈を考えるからではないのか。もしこうした恒常的なテロルの環境がなくなったと想像すれば、それでも人々は天皇制をこのままにしたいと考えるだろうか。
略奪性深める
資本主義の今
いま私たちが置かれている状況について考えてみると、資本主義は自らの正当性を担保していた「次世代はより豊かになっている」「テクノロジーが豊かさをもたらす」「中産階級を分厚くすることで社会を安定化させる」という三つの約束を果たせなくなっている。気候変動、パンデミック、世界的な格差の極端な拡大などによって、資本主義の持続可能性が問われる事態となっている。
そのために、資本主義はますます「略奪的」になり、社会の富の動きをくまなく監視して、あらゆる隙間から税金を吸いあげようとしている。人々はますます丸裸にされ、支配層はますます黒塗りの闇の中にいるようになっている。そして、オリンピックや万博のようなメガイベントの中で、社会の下位にいるエッセンシャル・ワークを担う人々は低賃金か無償で動員され、そこから得られる富は上位層の中で分配される仕組みを作っている。
それでは、ネオリベラリズムとは何だったのか? ネオリベラリズムは表向きの経済の面では、「生産性」でも「効率性」でもすべて失敗続きだ。それは実は、いまとは異なる世界を希求する可能性の感覚を麻痺させるための「政治プロジェクト」なのである。「服従しない人々」「服従しない世界」をつぶしていくという意味では、日本はネオリベラリズムの最優等生だ。中曽根の国鉄民営化が「国労をつぶすため」だったのはその一例。
暴力による
階級の格差
暴力によるヒエラルキーの保全、そうしたヒエラルキーへの日常的な慣れや自明化という点で、一見すると「包摂・人道・非暴力」として提示されている天皇制ヒエラルキーは、分極化・排除・暴力というネトウヨ的ヒエラルキーに基盤を与え続けている。
それは、暴力的雰囲気の蔓延によってヒエラルキーを作ることで、「切り捨てて良い人間」「死んでいい人間」をふりわけていく。その結果、マイノリティーへの暴力の激化や「高齢者は自死すべき」といった論調の出現を生み出している。タブーを作り、テロル環境を恒常的なものとし、こうしたヒエラルキーを自明のものとするように天皇制は機能している。
しかし、このことは限界に直面した現代世界の亀裂を直視しない、あるいは先延ばしすることで生まれた過渡的な現象である。世界的には、若い世代の気候危機への強力な危機感にもとづく行動が展開されている。アメリカでも、若い世代の半数以上がポスト資本主義、つまり社会主義を望んでいる。また、「アンチワーク」や中国の「寝そべり族」のようなコロナ禍を契機とした現在のシステムから逃避していく動きが見られる。暴力に裏打ちされないヒエラルキーのない世界を率先して実現させ、ありうるものとして提示していくことこそが必要である。
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