2.12総がかりKANSAI集会
軍拡・改憲よりくらし・平和を!
【大阪】戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会とおおさか総がかり行動実行委員会主催の関西集会が2月12日、大阪市中央公会堂で開かれ、500人を超える市民が参加した。
五野井郁夫さん(政治学者・高千穂大学経営学部教授)が講演し、立憲野党(立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組)からアピールがあった。
初めに中北龍太郎さん(しないさせない戦争協力!関西ネットワーク共同代表)が主催者あいさつをし、「本集会は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会が全国を8つのブロックに分け、各地で開かれる集会だ。昨年暮れ岸田政権は『安保3文書』の改訂を発表し、大増税に踏み切った。これは専守防衛原則を完全に破棄し、先制攻撃に道を開くもの、日本を戦争する国にする危険なものだ。大増税で日本は世界第3位の軍事大国になって行き、日米安保の下で、集団的自衛権・敵基地攻撃能力の行使を日米共同で行う。台湾をめぐり米中の緊張が高まる中、南西諸島での軍事要塞化が進められている。ことが起きれば、沖縄・本土が戦場になることは避けられない。岸田政権は平和憲法を死文化しようとし、明文改憲の動きも強めている。この危機の時代であるからこそ、平和憲法に基づく平和外交が何より求められている」と述べ、「戦争の準備ではなく平和の準備を!『3文書』の撤回、大軍拡反対の声を大きな世論に!」と訴えた。
続いて、五野井郁夫さんが、「『安保関連3文書─防衛費倍増』をどう考えるか」と題して講演をした。五野井さんは、今の日本は戦後最大の危機に陥っている、それが『安保3文書』と台湾有事だと述べ、戦後日本の安保政策の変化を話した。 (要旨別掲)。
立憲野党から
立憲民主党:森山浩行衆院議員(大阪府連代表)「安全保障問題については、我々の知識が足りないのが大きな問題。大きな戦略の中で何が問題かを国民・市民が知って対処していくことが大切。国会では防衛3文書の問題をきちんと論議し、許せないことはしっかり主張していく。最初から防衛のために増税をするという発想は、考えられない。」
日本共産党:山下芳生参院議員(副委員長)「抑止力は超髙音速誘導弾のようなものが本命だとの話があった。航続距離が2000~3000キロ。自分で方向を変えながら飛んでいく。中国がすでにもっている。防衛省はこれを脅威と言っている。日本がもったら脅威にならないかと国会で聞いたら、日本は各国に説明しているから脅威でないとの答弁。敵基地攻撃能力は日本のためにではなく、米国のために使う。そして日本が攻撃される。これが安全保障政策か」。
社民党:大椿裕子副党首、「2月10日のニュースによると、関西空港などが武力攻撃される恐れが高まったとの想定で、大阪府が訓練を行った。訓練には府下の自治体が参加、兵庫県や京都府へ避難させる訓練だった。大阪でもこういうことが前のめりに行われているのか、激しい怒りを覚えた。子どもたちが聞いたら、戦争が起きるかもしれない国に生きていると思うだろう。そんな不安を与えるのが政治家の役割なのか。核共有を主張するような政治家を国会議員にしてはいけない」。
れいわ新選組:山田さほ豊中市政策委員、「れいわ新選組は、日本を守るとは、あなたを守ることだと訴える。守るとは、一人一人の生活安定のための経済策を打ち出すこと。10万円の賃上げ。物価高対策として消費税の廃止と一律給付金の支給。防衛3文書では敵基地攻撃能力の保有を明記したが、国民に何の説明もないままでの安全保障政策の一大転換は受け容れることはできない。国民の生活第一の政策を!」。
各政党のあいさつの後、みんなでポテッカーをかかげる。
東京総がかり行動実行委員会(戦争をさせない1000人委員会・東京)より行動提起があり、最後に丹羽徹さん(大阪憲法会議幹事長)がまとめをして集会を閉じた。
(T・T)
五野井郁夫さんの講演から
日本を戦場にするCSISレポート
ポツダム宣言の受諾により、日本軍は武装解除された。日本の主権は「本州、北海道、九州及び四国ならびに我々の決定する諸小島に限られる」ことになった。敗戦国日本に対する占領政策は、再軍備をさせないことが柱だった。その後、1949年に中国共産党が内戦に勝利し中華人民共和国がつくられ、ソ連の存在と合わせ状況は大きく変わった。本来、連合国にとって日本の再軍備は怖い。しかし米国は共産主義と直接対峙したくない。そこで1048,9年頃、防火壁・タテの役を日本にやらせたいという発想が出てくる。しかしそのときはすでに日本国憲法ができていた(戦争放棄、軍隊の不保持、交戦権の否認)。中国共産党が内戦に勝つ前は、日本の安全保障は国連に委ねることになっていた。
日本は9条をもっている。それは、非武装日本をつくるという連合国(米国)の考えと、戦争犯罪での天皇の訴追を避けたいという日本の考えによる合作だった。
日米安保条約は片務的だとよくいわれるが、そんなことはない。基地を提供する日本と軍隊を提供する米国が共同して日本を防衛するとなっている。問題は、安保条約が適用される範囲だが、5条に【日本の施政権の及ぶ範囲(日本の領土・領海・領空)】とある。ところが6条に【基地を使用する米軍の行動の範囲は極東】となっている。この二つの条文の不一致が、日本が戦争に巻き込まれるのではという不安の原因になった。極東という言葉は、アジアという意味だ。中国内戦と朝鮮戦争停戦後の軍事境界線は、38度線と台湾海峡であり、その保全が米国の安全保障の柱になった。
日本は、日米安保条約を結んで米国に基地・兵站を提供する一方で、米国から政治経済強化策を獲得した。吉田政権は、国民の強い反軍感情を背景にして、再軍備の経済負担を回避したかったから、米軍の軍事的コミットメントがあれば、日本の軍事力構築は不要と考えた。米国は、日本の非武装での独立に反対だった。
このような日米対立は、日本国憲法9条は維持し、日本領域での自衛に特化した実力組織の保有は可能という解釈で、防衛庁と自衛隊が発足した。日米安保はANZUS(オーストラリア・ニュージーランドと米国)・米韓・米比・米華同盟とは表裏一体のものである。それぞれの同盟を米国が個別にたばねているが、各国を見捨てられる不安からから解放し、巻き込まれる不安おも払拭することができるか。ある地域から、米軍が抜けると他の地域が不安定になる。ある地域で米軍がコミットを強めると、他の地域も舞い込まれることになる。同盟のジレンマだ。一例として、サンフランシスコ講和会議のとき、日本が再び攻撃に転じるような場合には米国は自分たちの側に立ってくれと、オーストラリア・ニュージーランドが米国に要求したと言われている。当然、白色人種が優先である。
日米安全保条約が締結された際、憲法上の制約(日本国憲法第9条)によって十分な自衛力を持つことが出来ないとされ、同条約を批准する米国議会は、日本側に自衛力の漸増を要求することになった(上院バンデンバーグ決議)。国家間の合意が決議によって制約されたわけだ。
新日米安保条約が締結されときは、新条約6条の実施に関する交換公文が交わされ、米軍の装備や作戦行動、施設・地区の変更については、事前協議の主題とすることが申し合わされた(1960年1月19日、岸・ハーター交換公文)。「巻き込まれる」ことを恐れた日本側の不安を払拭する意図でつくられたと思われる。しかし、事前協議は申し出なければいけないこと、また申し出ても、日本の要求が通るとは限らず、この公文が機能しているかどうかは定かではない。また、新安保条約の調印と同時に「朝鮮議事録」なる密約が交わされた。朝鮮半島において、停戦協定違反の攻撃など緊急事態が発生した場合、日本の施設と地域は国連軍の反撃のために使用できるとするものである。
沖縄の施政権が日本に返還され、事前協議制が沖縄に適用されることになったが、朝鮮半島や台湾海峡における米軍の行動の自由が制約されるかどうか?もし制約されれば、例えば台湾・韓国に見捨てられるという不安が生じる。
実際、沖縄返還に際しては、その不安を払拭するため、日米共同声明の発表前に佐藤栄作首相が朴正熙大統領と蒋介石総統に親書を手交している。
日米安保では、日本も負担を求める米国の要望に応えなければ米国のコミットは揺らぎ、見捨てられるリスクが増大する。米国の要求に応えると、国民の主権者意意識による「対米依存批判」を引き起こす。平和主義や反軍感情、憲法との整合性、日米同盟による「巻き込まれる」意識の増大が生まれる。
事前協議制度は憲法と日米安保の乖離を浮き彫りにした。平和憲法の「理想」と安保体制の「現実」とは矛盾している?事前協議制における拒否権は曖昧であり、核持ち込みや朝鮮半島や台湾有事のときの基地使用をどうするのかという問題が、少なくとも表向きは残ったままであった。
1970年代の石油危機以降、軍事的脅威に限らず経済や自然災害などの脅威から、国民を守る幅広い安全保障という考え方が生まれた。1972年には、現憲法では集団的自衛権は行使できないとする法理論、武器輸出制限政策、ODAの推進も大きくは総合安全保障に含まれる。
ソ連解体に伴う冷戦構造の解体で、戦後日本の軍事的安全保障の根幹である地球規模の恐怖の均衡の前提が崩れた。天安門事件後強権政治が現れ、中国が台頭、1990年代日本は国際平和維持法をつくりPKOに参加するが、「人間の安全保障」に注目。
その後安倍政権の登場で、「米軍だけが血を流す」のではなく、「日本の青年も血を流す」体制をつくりたいと表明。2006年防衛大綱の「基盤的防衛力」を「動的防衛力」に改めると提案し、日米安保協議2+2でそれを確認。
2013年防衛大綱改定では、「総合機動防衛力」を導入、2015年に安保関連法成立、2017年には護衛艦「いずも」が米補給艦の防護のため出動を発令された。
敵基地攻撃能力・反撃能力はこの流れで出てきたものであり、敵の領土にあるミサイルや関連施設を破壊し攻撃を阻止する能力のことである。2020年6月に当時の安倍首相がこれの保有の検討を表明した。
自民党は2022年4月、これは先制攻撃には当たらないと提言し、反撃能力に名称変更し政府も「反撃能力」を使用している。この「反撃能力」は台湾海峡危機時には日本にとって致命傷になり得る。
「反撃能力」は我が国の判断で・・トマホークは抑止力にならず
『国家安全保障戦略の全文』では、必要な抑止力の強化によって我が国に直接的な脅威が及ぶことを阻止するとしているが、いじましく「我が国自身の判断」と自主性を強調している。誰かに強く言われたのか?『防衛整備計画』で、五年間の防衛費の総額を43兆円程度にすることを明記し、これを閣議決定しているが、撃ち合いになる通常戦争への抑止力と称して、トマホーク・ミサイルを買う政府の説明はごまかしの範囲を飛び越えている。なぜなら、トマホークのような【遅いミサイル】は、互いに撃ち合う古典的な戦争向けのもので、現在政府がかかげている「抑止力」としてはグレーゾーン事態のような現代戦では役に立たない。政府は、トマホーク・ミサイルの本来の用途、つまり通常戦争の主体になることをしっかりと国民に説明すべきだ。
2010年以降、FMS調達(FMSは米国が外国等に装備品等を有償で提供する安全保障援助。米国政府が示す条件を受諾することが必要)による契約額は、2011年は547億円、安倍政権になってどんどん伸び、2015年は4406億円、2019年は6869億円でピークを記録。会計検査院は、前払い金が過大になりすぎていると指摘し、政府に改善を求めている。
シーレーン防衛に関して、中東から日本への原油輸送の主要航路は約12000キロ、所要時間は20日程度だが、防衛の任務分担のため共同演習が増加しており、対米技術供与を認めることで関係強化が図られている。原油についての中東依存度は世界全体では4割だが、日本は9割と圧倒的に高い。
CSISレポートは自衛隊参戦が前提、日本が戦場に
米国のシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)は2023年1月9日、中国軍が2026年に台湾へ上陸作戦を実行すると想定し、独自に実施した机上演習(シミュレーション)の結果を公表した。この机上演習には、重要な与件がある。台湾は徹底攻戦し、絶対に降伏してはいけないこと。
もう一つは、米国が中国に反撃すると日本は米軍に従って参戦する、本土は攻撃しないなどだ。このとき、日本は国内の軍事施設の使用を米軍に認める。つまり、日本が戦争に巻き込まれることが前提になっている。結果、台湾は米国や日本の支援を受けて中国軍を撃退するが、高い代償を払い、3週間の戦闘で米軍の死者は3200人(アフガン・イラク戦争での20年間の米軍の死者の半数にほぼ等しい)。
日本の死者は?
安保3文書と防衛費の増額は、CSISレポートとセットである。もはや、【巻き込まれる】ではなく、【一体化】であり、米国本土を標的にせず日本が防火壁の役を果たす。CSISレポートは、「オーストラリアや韓国も何らかの役割を果たすが、要は日本。日本の米軍施設が使えなければ、米軍の戦闘機は効果的に戦闘に参加できない」と主張している。なお、自衛隊との非公式協議の中で、米軍は自衛隊に対して2025年までに継戦能力の整備を求めているとのことだ。政府はこの一体化シナリオを、隠さず有権者に説明すべきだ。
以上。
少し間を置いて、立憲野党からのあいさつがあった。
ポツダム宣言受諾
と日本の武装解除
ポツダム宣言の受諾により、日本軍は武装解除された。日本の主権は「本州、北海道、九州及び四国ならびに我々の決定する諸小島に限られる」ことになった。敗戦国日本に対する占領政策は、再軍備をさせないことが柱だった。その後、1949年に中国共産党が内戦に勝利し中華人民共和国がつくられ、ソ連の存在と合わせ状況は大きく変わった。本来、連合国にとって日本の再軍備は怖い。しかし米国は共産主義と直接対峙したくない。そこで1048~9年頃、防火壁・タテの役を日本にやらせたいという発想が出てくる。しかしそのときはすでに日本国憲法ができていた(戦争放棄、軍隊の不保持、交戦権の否認)。中国共産党が内戦に勝つ前は、日本の安全保障は国連に委ねることになっていた。
日本は9条をもっている。それは、非武装日本をつくるという連合国(米国)の考えと、戦争犯罪での天皇の訴追を避けたいという日本の考えによる合作だった。
日米安保条約と
吉田ドクトリン
日米安保条約は片務的だとよくいわれるが、そんなことはない。基地を提供する日本と軍隊を提供する米国が共同して日本を防衛するとなっている。問題は、安保条約が適用される範囲だが、5条に【日本の施政権の及ぶ範囲(日本の領土・領海・領空)】とある。ところが6条に【基地を使用する米軍の行動の範囲は極東】となっている。この二つの条文の不一致が、日本が戦争に巻き込まれるのではという不安の原因になった。極東という言葉は、アジアという意味だ。中国内戦と朝鮮戦争停戦後の軍事境界線は、38度線と台湾海峡であり、その保全が米国の安全保障の柱になった。
日本は、日米安保条約を結んで米国に基地・兵站を提供する一方で、米国から政治経済強化策を獲得した。吉田政権は、国民の強い反軍感情を背景にして、再軍備の経済負担を回避したかったから、米軍の軍事的コミットメントがあれば、日本の軍事力構築は不要と考えた。米国は、日本の非武装での独立に反対だった。
「巻き込まれる不安」・
「見捨てられる不安」
このような日米対立は、日本国憲法9条は維持し、日本領域での自衛に特化した実力組織の保有は可能という解釈で、防衛庁と自衛隊が発足した。日米安保はANZUS(オーストラリア・ニュージーランドと米国)・米韓・米比・米華同盟とは表裏一体のものである。それぞれの同盟を米国が個別にたばねているが、各国を見捨てられる不安から解放し、巻き込まれる不安をも払拭することができるか。ある地域から、米軍が抜けると他の地域が不安定になる。ある地域で米軍がコミットを強めると、他の地域も巻き込まれることになる。同盟のジレンマだ。一例として、サンフランシスコ講和会議のとき、日本が再び攻撃に転じるような場合には米国は自分たちの側に立ってくれと、オーストラリア・ニュージーランドが米国に要求したと言われている。当然、白色人種が優先である。
自衛力の増強を求め
る米国と事前協議制
日米安全保条約が締結された際、憲法上の制約(日本国憲法第9条)によって十分な自衛力を持つことが出来ないとされ、同条約を批准する米国議会は、日本側に自衛力の漸増を要求することになった(上院バンデンバーグ決議)。国家間の合意が決議によって制約されたわけだ。
新日米安保条約が締結されときは、新条約6条の実施に関する交換公文が交わされ、米軍の装備や作戦行動、施設・地区の変更については、事前協議の主題とすることが申し合わされた(1960年1月19日、岸・ハーター交換公文)。「巻き込まれる」ことを恐れた日本側の不安を払拭する意図でつくられたと思われる。しかし、事前協議は申し出なければいけないこと、また申し出ても、日本の要求が通るとは限らず、この公文が機能しているかどうかは定かではない。また、新安保条約の調印と同時に「朝鮮議事録」なる密約が交わされた。朝鮮半島において、停戦協定違反の攻撃など緊急事態が発生した場合、日本の施設と地域は国連軍の反撃のために使用できるとするものである。
沖縄の施政権返還
沖縄の施政権が日本に返還され、事前協議制が沖縄に適用されることになったが、朝鮮半島や台湾海峡における米軍の行動の自由が制約されるかどうか?もし制約されれば、例えば台湾・韓国に見捨てられるという不安が生じる。実際、沖縄返還に際しては、その不安を払拭するため、日米共同声明の発表前に佐藤栄作首相が朴正熙大統領と蒋介石総統に親書を手交している。日米安保では、日本も負担を求める米国の要望に応えなければ米国のコミットは揺らぎ、見捨てられるリスクが増大する。米国の要求に応えると、国民の主権者意識による「対米依存批判」を引き起こす。平和主義や反軍感情、憲法との整合性、日米同盟による「巻き込まれる」意識の増大が生まれる。
事前協議制度は憲法と日米安保の乖離を浮き彫りにした。平和憲法の「理想」と安保体制の「現実」とは矛盾している?事前協議制における拒否権は曖昧であり、核持ち込みや朝鮮半島や台湾有事のときの基地使用をどうするのかという問題が、少なくとも表向きは残ったままであった。
「総合安全保障」
という考え方
1970年代の石油危機以降、軍事的脅威に限らず経済や自然災害などの脅威から、国民を守る幅広い安全保障という考え方が生まれた。1972年には、現憲法では集団的自衛権は行使できないとする法理論、武器輸出制限政策、ОDAの推進も大きくは総合安全保障に含まれる。
ソ連解体と冷戦後の「人間の安全保障」から日米軍事一体化へ
ソ連解体に伴う冷戦構造の解体で、戦後日本の軍事的安全保障の根幹である地球規模の恐怖の均衡の前提が崩れた。天安門事件後強権政治が現れ、中国が台頭、1990年代日本は国際平和維持法をつくりPKОに参加するが、「人間の安全保障」に注目。その後安倍政権の登場で、「米軍だけが血を流す」のではなく、「日本の青年も血を流す」体制をつくりたいと表明。2006年防衛大綱の「基盤的防衛力」を「動的防衛力」に改めると提案し、日米安保協議2+2でそれを確認。2013年防衛大綱改定では、「総合機動防衛力」を導入、2015年に安保関連法成立、2017年には護衛艦「いずも」が米補給艦の防護のため出動を発令された。敵基地攻撃能力・反撃能力はこの流れで出てきたものであり、敵の領土にあるミサイルや関連施設を破壊し攻撃を阻止する能力のことである。2020年6月に当時の安倍首相がこれの保有の検討を表明した。自民党は2022年4月、これは先制攻撃には当たらないと提言し、反撃能力に名称変更し政府も「反撃能力」を使用している。この「反撃能力」は台湾海峡危機時には日本にとって致命傷になり得る。
「反撃能力」は我が国の判断で・・トマホークは抑止力にならず
『国家安全保障戦略の全文』では、必要な抑止力の強化によって我が国に直接的な脅威が及ぶことを阻止するとしているが、いじましく「我が国自身の判断」と自主性を強調している。誰かに強く言われたのか?『防衛整備計画』で、5年間の防衛費の総額を43兆円程度にすることを明記し、これを閣議決定しているが、撃ち合いになる通常戦争への抑止力と称して、トマホーク・ミサイルを買う政府の説明はごまかしの範囲を飛び越えている。なぜなら、トマホークのような【遅いミサイル】は、互いに撃ち合う古典的な戦争向けのもので、現在政府がかかげている「抑止力」としてはグレーゾーン事態のような現代戦では役に立たない。政府は、トマホーク・ミサイルの本来の用途、つまり通常戦争の主体になることをしっかりと国民に説明すべきだ。
2010年以降、FMS調達(EМSは米国が外国等に装備品等を有償で提供する安全保障援助。米国政府が示す条件を受諾することが必要)による契約額は、2011年は547億円、安倍政権になってどんどん伸び、2015年は4406億円、2019年は6869億円でピークを記録。会計検査院は、前払い金が過大になりすぎていると指摘し、政府に改善を求めている。
シーレーン防衛に関して、中東から日本への原油輸送の主要航路は約1200キロ、所要時間は20日程度だが、防衛の任務分担のため共同演習が増加しており、対米技術供与を認めることで関係強化が図られている。原油についての中東依存度は世界全体では4割だが、日本は9割と圧倒的に高い。
CSISレポートは自衛隊参戦が前提、日本が戦場に
米国のシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)は2023年1月9日、中国軍が2026年に台湾へ上陸作戦を実行すると想定し、独自に実施した机上演習(シミュレーション)の結果を公表した。この机上演習には、重要な与件がある。台湾は徹底攻戦し、絶対に降伏してはいけないこと。
もう一つは、米国が中国に反撃すると日本は米軍に従って参戦する、本土は攻撃しないなどだ。このとき、日本は国内の軍事施設の使用を米軍に認める。つまり、日本が戦争に巻き込まれることが前提になっている。結果、台湾は米国や日本の支援を受けて中国軍を撃退するが、高い代償を払い、3週間の戦闘で米軍の死者は3200人(アフガン・イラク戦争での20年間の米軍の死者の半数にほぼ等しい)。
日本の死者は?
安保3文書と防衛費の増額は、CSISレポートとセットである。もはや、【巻き込まれる】ではなく、【一体化】であり、米国本土を標的にせず日本が防火壁の役を果たす。CSISレポートは、「オーストラリアや韓国も何らかの役割を果たすが、要は日本。日本の米軍施設が使えなければ、米軍の戦闘機は効果的に戦闘に参加できない」と主張している。なお、自衛隊との非公式協議の中で、米軍は自衛隊に対して2025年までに継戦能力の整備を求めているとのことだ。政府はこの一体化シナリオを、隠さず有権者に説明すべきだ。
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