2.19あいち総がかり行動 中野晃一さん講演会
対米追従による「安全保障」で平和はつくられない!
【愛知】2月19日、名古屋市教育館であいち総がかり行動が主催する中野晃一さん講演会「平和構想提言会議発―平和の作り方 軍事力・抑止力によらない平和・安全保障政策の実現を!」が行われた。
講師の中野晃一さんは上智大学の教授で平和構想提言会議のメンバー。同会議は日本の平和・安全保障政策を総合的に構想し研究する研究者、ジャーナリスト、弁護士、NGO関係者ら有志のグループで2014年5月に発足した「集団的自衛権問題研究会」を引き継ぐ形で2021年10月に発足した組織。
この日の集会参加者は主催者の予想を上回り、集会開始前から満員となって資料が足りなくなり、あわてて増刷するほどであった。参加者数は会場参加が169人。オンライン参加が21人で合計190人であった。
対米追従のため
に替わる安保
講演ではまずポスト冷戦期における日米安全保障政策の変遷を解説し、1991年のソ連邦崩壊以後、1992年PKО法から自衛隊の海外派兵、日米同盟の強化路線への転換で日米安保条約を次々に改悪し、第2次安倍政権では歯止めのない対米追随路線を繰り返したことを批判した。
さらに安倍が射殺された後も軍事、経済、科学技術においてアメリカの覇権(自由主義秩序)を支え中国を封じ込めるための「同盟」政策の強化にひた走っていると批判した。また岸田首相が1月14日に行った日米首脳会談でバイデンが提唱する「統合抑止」の理念を受け入れたことについても批判した。
「同盟」と
「抑止」の意味
続いて「同盟」と「抑止」は何が問題なのかについて述べた。まず「同盟」とは戦争になったら同盟国も参戦するぞと威嚇することによって安全保障を保とうとする考えだが失敗すると戦争の拡大につながり世界大戦にもなりかねないと述べた。次に「抑止」という言葉はもともと英語からくる表現で(deter = de (away))+ ter (fear)恐怖を与えることによって未然に戦争を防ぐという意味であると解説した。
しかし威嚇することで戦争が未然に防げるとは限らず、かえって戦争を惹起する可能性もあると述べ、もともと冷戦期に核抑止論として発達したものであるが核戦争や大戦は起こってはいないものの「小さい」戦争や代理戦争は防げていないと指摘した。
安全保障は誰の視
点で考えるのか
ロシアのウクライナ侵攻と米中対立の激化のなかでの「同盟」と「抑止」に依存する安全保障政策は「民主主義」同盟対「専制主義」同盟としてフレームし、「台湾有事」として北東アジアに持ち込むリスクを高め、最悪の場合、核戦争に至りかねない世界大戦をひきおこす危険なものだと述べた。際限のない「同盟」「抑止」強化では戦争を回避できない。世界史を踏まえても、戦争回避のための日本の責任は重いとし、問題は意見の異なる他者との共存を探るのか(平和外交による集団安全保障)それとも、威嚇と恐怖による強者の支配を信じるのか(同盟と抑止)であり、誰の視点で考えているのか、誰が戦争をすることを決め、誰が戦争で殺されるのかを考えなければならないと述べた。
アメリカの戦争に
まきこまれるな
次に「戦争回避」の外交戦略についてどう考えるかを述べた。台湾有事については、日米の軍事的威嚇で台湾を独立させるなど無理である。台湾にとっては現状維持がベストシナリオではないかと述べた。
日本も政府の現行の憲法解釈からして「専守防衛」(個別的自衛権)までで集団的自衛権の行使(「同盟」)や無制限の「抑止」強化は無理 であり、集団的自衛権の行使容認は、「自由」「民主主義」「法の支配」を守るためと言いつつ、まさにこれらの価値規範を破壊する本末転倒の暴挙であると厳しく批判した。
アメリカも自国内で「自由」「民主主義」「法の支配」が危うくなっている一方、経済、軍事、科学技術において中国に覇権を奪われるのを恐れ、米中対立が高まっている。非対称な日米「同盟」の実態と「同盟のジレンマ」を踏まえると「自由」と「民主主義」を守るという「大義名分」のもとアメリカの挑発による「極東」における「台湾有事」に「巻き込まれ」しかも事実上「置き去り」にされる(代理戦争をやらされる)可能性さえある。
大切なことは日中双方が日中共同声明の遵守を再確認し、外交関係を立て直すことであると指摘した。
アジアの安全
保障にむけて
憲法9条は、中国などアジア近隣諸国に対する最大の「安心供与」として機能してきたし、アメリカの戦争に巻き込まれるのを防いできた。13条とともに、戦争ではなく国民の生命と自由と暮らしを国政上最優先させてきた。「同盟」「抑止」一辺倒の対米追随路線は今ならまだ避けられる戦争を引き起こし「国を守れ」と米中の覇権争いの渦中に日本国民を追い込むことになりかねない。戦争を回避し、国民の生命、自由及び幸福追求権を守るために、リアルな外交安全保障戦略を市民社会からつくりあげようと述べて講演を終えた。
雨あがりの中、
元気にデモ行進
講演集会が終わり、参加者は栄の街を縦断するデモ行進を行った。朝から降っていた冷たい雨も止み、青空が見えるさわやかな天気の下で元気にデモ行進が行われた。参加者は大きめのプラスチックボードを手に「敵基地攻撃能力いらない」「止めよう軍拡・大増税」「岸田政権の暴走止めよう」と元気よくコールを挙げて行進した。沿道からは多数の市民から手を振られるなどの光景が見られ、多くの人々が岸田政権の政治に怒りを持っていることが伝わった。次回のあいち総がかり行動は3月19日に行われる。さらなる闘いを巻き起こそう。(越中)
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