統一自治体選挙で問われているもの

草の根からの民主主義の復権を
大森敏三

はじめに

 4月には統一自治体選挙がおこなわれる。多くの自治体においてさまざまな要因で選挙時期がずれてしまったことにより、かつてのように全国津々浦々でもれなく選挙が実施されるという形ではなくなったが、それでも前半(4月9日投開票)には北海道、大阪など9道府県の知事選挙、大阪市など政令指定都市6市の市長選挙、そして41道府県議会選挙、17の政令指定都市議会選挙が予定されている。また、後半(4月23日投開票)には政令指定都市以外の市町村区長、市町村区議会選挙がおこなわれ、大きな政治的イベントであり続けているのは間違いない。とりわけ今回の統一自治体選挙は、岸田政権が軍事費拡大、増税をはじめとして、労働者民衆に対してさまざまな攻撃をかけてきている最中での選挙であり、国政にとっても重要な意味を持っている。また、地方自治体においても、大阪の維新政治に見られるような権威主義的でトップダウンの行政が幅を利かすようになっている。そうした状況をふまえて、統一自治体選挙に問われているものは何か、われわれの考え方を提起してみたい。

統一自治体選挙が持つ三つの側面


 今回の統一自治体選挙は、岸田政権によって軍拡・先制攻撃能力保持、軍事費増額のための増税、原発の新増設・老朽原発の稼働、生活破壊、医療・福祉の切り捨てなどが次々と打ち出されている中での選挙であり、岸田政権そのものへの信任投票という性格を持っている。昨年参院選以降、岸田政権の支持率は依然として低迷を続けているが、その原因の一つは、こうした軍事費増額のための増税政策にあることは明らかであろう。したがって、自民党という看板を掲げて選挙を戦うことは、この岸田政権の政策に対する信を問うていることを意味する。つまり、自民党公認候補の当落によって、岸田政権への信任の度合いをある程度はかることができる。
 岸田政権に対する不信任の前兆は、すでに昨年末の選挙でも現れている。その具体例として、昨年12月4日投開票の東京・品川区長選(再選挙)で「自民推薦」を公然と掲げた候補が、1回目の選挙(このときは「無所属」を強調し「自民推薦」を表に出さなかった)よりも3千票以上減らして大敗したこと(「都民ファースト」の候補者が当選)があげられる。また、12月11日投開票の茨城県議選でも自民党公認候補45人のうち県連幹事長を含む現職10人が落選し、代わりに保守系無所属や維新公認候補が当選した。直近では、2月5日の北九州市長選でも自民党推薦候補が別の保守系候補に敗れている。
 統一自治体選挙での候補者選びにおいても、とりわけ首長選挙において、保守・自民党の分裂状況があちらこちらで生まれている。こうした現象は、国政はいざ知らず、地方自治体レベルでの自民党組織の混乱と「自民党」という金看板の衰退を示すものだ。
 統一自治体選挙では、この流れをさらに加速させて、自民党公認候補を落選させ、岸田政権に明確にノーを突きつける選挙にしていくことが必要である。これが統一自治体選挙の第一の側面である。
 二番目の側面は、われわれの側から積極的に仕掛けていくべき性格のものになるが、草の根からの民主主義をめざす運動・ネットワークを再構築していく契機として、この選挙を位置づけることである。大阪での維新支配に見られるように、地方自治体でも民主主義破壊が進み、首長主導による権威主義的な地方行政が勢いを増している。それにともない、地方議会の空洞化、形式化も進行している。大阪では、大阪府議会がその典型で、少数会派には質問の機会すらほとんど与えられない状況が続き、さらに維新が一党支配を固めるために選挙区はそのままにして議員定数を大幅に削減してきている。
 その一方で、地域の草の根の運動やネットワークとともに、それに依拠して、地方自治や民主主義を実現していこうという動きも出てきている。それがもっとも端的に表現されたのが、昨年6月の杉並区長選での区民のとりくみと岸本聡子さんの勝利である。岸本さんを中心とした杉並区長選の戦いは、地域に根ざした政策づくりを草の根からのとりくみの中で実現し、選挙戦でも候補者よりは区民みずからが訴えの先頭に立った選挙だった。統一自治体選挙を一つの契機として、こうした戦いを多くの地域に広げ、地域から民主主義の復権をめざすことが必要だ。
 三つ目の側面は、旧統一教会の影響下にある首長・議員に対して、ノーを突きつける選挙だということである。予定候補者に対して、旧統一教会との関係を明らかにするように求めるとりくみも各地でおこなわれている。旧統一教会の影響下にあることが明らかな首長・議員には行政や議会の場から退場してもらわなければならない。また、旧統一教会の働きかけによって「家庭教育支援条例」を制定したり、「家庭教育支援法」の制定を求める意見書を採択したりした自治体議会に対しては、その撤回を求めていくことも選挙後の課題となろう。

市民の力結集した杉並区長選

 杉並区長選の戦いについて、選対本部長を務めた内田聖子さんの講演を聞く機会があった(昨年12月3日の「いばらき(茨木)総がかり行動」主催「市民でつくろう 新しい政治を!」集会)。非常に示唆に富む内容だったので、講演内容を紹介したい。

 岸本さん当選前の杉並区政は、民主主義という観点からは後退してきた20年間だった。前々区長(山田宏参院議員)は、排外主義的な改憲派で、新しい歴史教科書をつくる会の教科書を杉並区の学校に導入しようとしただけでなく、区の職員を減らし、公共サービスの民営化を進めた。前区長もはじめは良かったが、政治手法に問題が出てきた。利権がらみで議会の自公とつながり、都市開発、インフラ建設の方向を向くだけになった。そして、6千人の区職員のうち、非正規が20年前は3割くらいだったが、今は半分になった。その非正規の8割が女性である。図書館、保育園などの公共サービスの民間委託も進んでいる。
 しかし、杉並は原水禁運動の署名が始まったところで、それは私たちの誇りとなっており、今もいろいろな住民運動がある。区長選の候補者が決まっていない段階から、地域の中で課題を出し合い、それをチラシにして、区長選挙があるのを伝えるところから始めた。
 岸本さんが候補者に決まると、政策を頑張って作って、訴えていきたいとの思いを前面に出して、「さとこビジョン」をサイトに上げた。そうすると、いろいろな意見が届けられ、街頭宣伝でも声が寄せられ、さまざまな問題を教えてもらった。それで、選挙中に3回アップデートして、サイトに載せていった。政党の力を十二分に借りつつ、若い人たちと一緒にやるために、みんなで広場を作る、対話を作ることを意識した選挙だった。
 世界を見渡すと、新自由主義に抵抗して、住民の暮らしと命を守る自治体が出てきている。グローバル経済のもとでは生きられなくなってきているのが世界共通の現象で、それに対する砦が自治体で、杉並区はそうした「恐れぬ自治体」に連なっていきたい。

「区政を住民に」のプロセス

 内田さんによれば、区長選挙のプロセス全体が杉並区政を住民の手に取り戻すとりくみそのものだったのである。そして、こうしたローカルな取り組みをグローバルな視点の中に位置付けている点も注目すべきである。岸本さんは「水道民営化」に対する戦いなど、新自由主義的なグローバリゼーションに対して「ミュニシパリズム」の立場から地域主権を提唱してきた(岸本さんの近著『地域主権という希望 欧州から杉並へ、恐れぬ自治体の挑戦』を参照のこと)。この「恐れぬ自治体」(フィアレスシティ)は、公共サービスの民営化など国家の新自由主義的政策に反旗を翻し、水道事業をはじめとしてさまざまな公共サービスの再公営化や新たな公営化にとりくみ、ヨーロッパを中心にネットワークを形成している。
 この講演会を主催した「いばらき総がかり行動」のメンバーが呼びかけ人となって結成された「茨木から未来をつくる会」は、本紙既報のとおり、大椿ゆうこさんの大阪府議選・茨木選挙区での当選を目指して活動を展開している。その中でも、大椿さんが選挙で掲げる政策を市民自身の手によって作成し、アップデートし、訴えていくとりくみがすすめられている。こうした実践を多くの地域に広げていく契機として、統一自治体選挙のとりくみをすすめていくことが重要だろう。

問われるべき政策は何か


 前述したように、今回の統一自治体選挙は、岸田政権に対する信任投票としての性格を持っている。そうである以上、岸田政権のすすめる軍拡、沖縄・南西諸島への基地建設、原発推進、増税、医療・福祉・教育切り捨てに反対する候補者に投票を集中することが重要である。
 その上で、草の根からの民主主義の復権と地域に根ざした「地域主権」をめざす住民参加型の選挙にしていくことが大きなキーポイントとなる。その中で問われなければならない政策として、次のような点が挙げられよう。
① 地球温暖化を地域から食い止めるために、エネルギー・食料の地産地消・循環型地域社会をめざす。
 温暖化に起因する気候危機は、異常気象の日常化という形で地域社会に大きな打撃を与えている。地域からゼロエミッション・脱炭素社会の実現に向けたとりくみを創り出すことで、グローバルな課題にローカルにとりくむことが求められている。また、地域で収穫された有機食材を用いた安全・安心な学校給食を実現することで、食料の地産地消の第一歩としていこう。
② 公共サービスの民営化反対。医療・水道・子育て・コロナ対策・高齢者・公共交通・教育など公共サービスを住民の手に取り戻す。
 新自由主義政策のもと、地方自治体はさまざまな公共サービスについて、公立病院・学校園・保育所などの民営化や統廃合、公共施設運営の民間委託などがすすめられてきた。ヨーロッパでは再公営化がすすむ水道事業についても、民営化を推進しようとする動きが止まらない。こうした公共サービスを住民自身の管理と統制のもとにおき、市場メカニズムに委ねないという選択が問われている。
③ 自治体職員の非正規化をやめる。自治体が委託する事業(保育園など)を含め、自治体職員の非正規職員を正規雇用に転換する。
 総務省の調査(2020年)によれば、非正規の地方公務員は69・4万人であり、非正規率は30・0%、そのうち女性が8割を占めている。また、自治労連の調査によれば、非正規公務員の6割が年収200万円未満である。しかも、非正規の地方公務員には最低賃金が適用されず、年度途中で最低賃金が改定された場合には最低賃金を下回ることもあるくらいの低賃金である。また、民間とは違って無期限雇用への転換が義務付けられておらず、毎年度末には雇い止めに怯えなければならない状況にある。こうした状況を変え、安定した雇用と賃金を実現することで、より充実した公共サービスを提供することができるだろう。
④ 地域から多様な生き方を尊重し、差別を許さない社会をつくる。自治体として、女性、LBGTQ、外国人などに対する差別に反対し、共生をめざす施策をすすめる。地域で生活し、働く外国人に対して、定住外国人の地方参政権を見すえ、住民投票への参加も含めた自治体としての施策や権利保障をすすめる。

 こうした政策を掲げながら、地域住民とともに草の根からの民主主義と地域主権をめざす候補者の当選のために奮闘しよう。

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