2.23共同テーブル近畿 第1回シンポジウム

9条守れ!「安保3文書」改定許すな!近畿集会

 【大阪】共同テーブル近畿主催のシンポジウムが2月23日大阪PLP会館で開かれた。山元一英さん(共同テーブル近畿)の司会で進められ、池田直樹さん(共同テーブル近畿の呼びかけ人)が主催者あいさつをし、「共同テーブルはどのような団体なのか聞かれるが、立憲野党の応援団として活動していく」と述べた。
 続いて、纐纈厚さん(山口大学名誉教授)が、「敵基地攻撃は即戦争への道」と題して講演をした。以下に要点をまとめる。

『安保3文書』は対米従属文書の極み


 『国家安全保障戦略』のⅣで次のように記述されている、「現在の中国の対外的な姿勢や軍事動向は、我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり・・・法の支配に基づく秩序を強化する上で、これまでにない戦略的挑戦である」と。日本の『国家安全保障戦略』を大きく規定したのは、米国の国家安全保障戦略(2022年10月12日発表)である。これは、中国・ロシアが米国の国益を侵す恐れがあるときは、戦争発動に訴える覚悟と用意があることを示したものである。インド太平洋同盟を履行するため、日本・韓国・フィリピン・タイとの鉄壁の関係を再確認し、これからも同盟を継続していくことを述べている。日本の『国家安全保障戦略』は、この米軍戦略の日本バージョンンに過ぎないと言える。事実上の中国敵視論と軍事ブロックに参入することの宣言だ。
 中国は軍事的脅威なのか。米国は軍事費100兆円、世界の800カ所に軍事施設を持ち、日本・韓国と軍事同盟をつくり、OUADやAUKUSなどと準軍事同盟を結んでいる。一方、経済力の停滞・衰退で持続性には陰りが見える。一方中国は米国を凌駕する経済大国であり、個別事象では疑似軍事的対応をするも、経済的安定を最優先しており、軍事力を前面に押し出して、国際秩序を先導する戦略は採らない。
 従って中国を脅威対象国とすることには多くの疑問がある。だから、我が国周辺の有事、現状変更の試みの発生を抑止するのではなく、米国であれ中国であれ日本の主体的・自主的な立場を堅持し、平和憲法の理念の実践に全力を挙げることが必要だ。中国を仮想敵国とし、あえて脅威論のなかに国民を放り込むのは、安全保障にとって逆に危険な環境に身を置くことを意味する。

◆『安保3文書』は国家総動員体制をめざす

 国家安全保障戦略の17ページにそのように記述されている。これは軍事的安全保障戦略である。平時の軍事化であり軍時の平時化が射程に据えられており、明らかに政治システムとしての国家総動員体制に低通する。

◆『安保3文書』は『国防3文書』と同質のもの

 戦前の『国防3文書』とは帝国国防方針・国防に関する兵力・帝国軍の用兵綱領である。帝国国防方針には、「一朝有事ニ際シテハ機先ヲ制シテ速ヤカニ戦争ノ目的ヲ達成スルニ在リ」と、先制攻撃を明記している。『国防3文書』によって軍事国家日本が自己規定されたように、『安保3文書』が新軍事国家日本の創出を意図していると考えても、そう外れたものにはならないだろう。

◆自衛隊統合司令部の設置が明記されている

 3自衛隊の統合指令部が設置されれば、戦前の参謀本部の復活となる。現在自衛隊には3自衛隊をまたぐ統合幕僚長が存在しており、その役割は、総理大臣や防衛大臣との連絡役であるが、米軍の野戦指揮官と一体となって作戦指導を担う統合司令官が設置されるだろう。現在、陸上自衛隊は五方面隊を一括統制する総司令部が設置されている。統合作戦指揮権を保持する統合司令部を設置することで、米軍との共同作戦を円滑にし、作戦と立案の権限を統合司令官の下に集中させる目的がある。

◆膨らむ防衛費

 防衛予算は民主党政権の頃まではほとんど横ばいだったが、安倍政権になってから毎年伸びていき、岸田政権もそれを踏襲している。その伸びが日本経済力の困窮化に拍車をかけている。ロシアのウクライナ侵攻以降の各国の軍事費の伸び率を見ると、日本が26%でダントツ、ドイツは17%、台湾14%、英12%、米10%、仏と中国が7%、韓国5%だ。防衛費のこの伸びは、貧しい人々を死に追いやるともいえる。

◆反撃能力論の非憲法性・非軍事合理性

 反撃能力に充当される計画でラインアップされたのはスタンド・オフ・ミサイルとされるが、スピードの遅いトマホークはこれには当てはまらず、敵基地攻撃には適さない。トマホークは通常戦争での撃ち合い用のミサイルだ。このミサイルは国民の安全を守らないどころか、むしろ相手の警戒心を刺激する。攻撃能力保持は憲法違反であり、南西諸島へのミサイル配備は、軍拡の連鎖を招き、軍事的にも合理性を欠いており、軍事的緊張を高めるだけだ。南西諸島の自衛隊基地の地下要塞化や与那国町危機事象対策基金条例など、実際の危機事態に先行した島民の追い出し計画は、島全体の要塞化計画の方向が顕著になってきている。

◆虚構としての中国脅威論

 デビットソン米軍インド太平洋軍司令官の米国上院軍時委員会の公聴会での証言「中国の脅威は6年以内に明らかになる」(2021年3月)が、台湾有事論の拡散の契機だったが、 ミリー米軍統合参謀本部議長は米国上院歳出委員会の公聴会で、「中国が台湾全体を掌握する軍事作戦を遂行するだけの本当の能力を持つまでにはまだ道のりは長い・・・中国には現時点で武力統一の意図や動機はほとんどないし、そうしなければいけない理由もない」(2012年6月)と証言した。中国の台湾武力侵攻論の背景には、その姿勢を示すことで、台湾での独立派の台頭を牽制する狙いがある。中国は、一帯一路などの経済力による覇権を優先しており、軍事的対応は非合理的な選択だとしている。

◆自立した外交防衛政策の提言

 憲法平和主義で現状を変えるべく、非武装の徹底追求が必要だ。「東アジアの安全保障環境は変わった」とする認識の虚構性を突こう。政府や保守政治が説く「脅威論」の信憑性は極めて疑わしい。それは日米同盟強化と自衛隊の装備拡大防衛費増額の口実とされている。
 今こそ自衛隊軍縮に取り組むことで、アジア地域で拍車がかかる軍拡の連鎖を断ち切ることが重要だ。以下、提言をまとめる。
①憲法平和主義で非武装の徹底追求。
②グローバル社会の非軍事化の提唱。戦争なき社会を構想する。
③抑止力論が幻想であることの普及。抑止力強化は軍事力強化である。中国を含むアジアの国々との人事交流、教育・文化面の一層の深化をめざす。
④非武装国家日本の構築。戦後出発時が日本の原型である。
⑤ 「敵をもたない安全保障」政策の構築。「専守防衛」論は死語になった。

『Drコトー』の島から―」


 引き続いて山田和幸さん(与那国町民)が、「東アジアンの緊張緩和を求めて―映画『Drコトー』の島から―」と題して、報告と問題提起をした。

自立・自治の与那国


 以前辺野古に行って南西諸島の軍事化の状況を訴えても相手にされなかった。今は理解されている。与那国から台湾の台北まで158キロ、那覇まで508キロ、マニラまで1117キロ、北京まで1823キロ、東京までは2023キロだ。台湾の花蓮と姉妹都市になって40年、交流が続いている。中国の留学生なども来る。お隣に住む人たちともめ事があっても知恵を出し合って仲良く暮らしていきたい。
平成の大合併は八重山でも石垣市・竹富町・与那国町を一つにする動きがあったが、与那国町は全島民大会で拒否して、「自立・自治宣言」を採択した。与那国島民が生きる方向を【平和の国境と近隣諸国との友好関係に寄与する〈国境の島守〉として生きる】と確認した。

島づくりビジョン

 そのための島づくりを〈辺境の島〉から〈交流の島〉への転換とし、『2050与那国自立ビジョン』が策定され、台湾とのアクセスを重視する国際交流特区申請を内閣官房に提出した。不許可だった。翌年再び申請した。その頃から、与那国防衛協会が創られ、自衛隊基地誘致を画策し始めた。在沖縄総領事と130人の米軍を乗せた米軍掃海艇がやって来て、与那国を重要拠点と位置づけた。そして、申請は2009年6月正式に不許可とされた。そのことに合わせるように防衛協会が自衛隊配置要請書を提出し、2011年5月防衛省は、与那国への陸上自衛隊配備を発表した。

自衛隊と米軍がやって来た

 2015年2月住民投票では、直前の自衛隊配備反対署名が賛成を上回ったが、投票は反対544票、賛成632票だった。そして、2016年3月28日陸上自衛隊与那国駐屯地に沿岸監視部隊が編成された。北海道2カ所につぐ3番目の部隊だ。そしていつかやって来ると心配していたが、10月20日の日米合同委員会の合意にもとづいて、米軍が使用する期間と場所が図示され、2022年11月3日最新の機動戦闘車が空輸され、島に陸揚げされた。11月5日海兵隊がやって来て、11月30日弾道ミサイル避難訓練が島内の小中学校で、保護者に事前連絡なしに実施された。
 土地利用規制法に基づく規制対象区域が12月16日に確定した。短期間に現れた変化は、与那国町の自治権を奪い、町の主権者である島民の生活を根本から否定する事態である。1994年の春から夏にかけて、硫黄列島は、住民の強制移住により民間人のいない軍事要塞に変えられ、元島民はいまだに帰島が許されていない。与那国がそうならない保障はあるのか。町費を使って島外避難を計画するというのは、あまりにも理不尽だ。
 島の人口は、自衛隊基地ができる前の2016年2月が男775人、女715人が、基地ができた3月が男894人、女752人となり、2023年1月は男946人、女781人である。5人に1人が自衛隊関係者。問題をストレートに持ち出すと会話が成り立たない。しかし、緊張緩和では立場を超えてつながることができると思う。

何も知らされなかった!


 米軍のことは何も聞かされていなかったが、過去にも同じことがあった。1881年明治政府が、島民に何の連絡もなしに、先島諸島を中国に割譲する代わりに中国の港を使用させるよう取引したこと。もう一つはサンフランシスコ条約で、何の連絡もなしに日本から切り離された。安保3文書の場合でも、一方的に全島要塞化され、戦場にされるかも分からない。
 だから、琉球独立も含め日本との関係が真剣に話され始めている。デニー知事にも沖縄外交戦略を明らかにしてほしいと要望している。暮らしに役立つことを通じて、特産物を持ち寄り中国・台湾の人と交流していきたい。敵基地攻撃などを考えている時ではないはずだ。
 休憩を挟んで、パネルディスカッションがあったが(コーディネーター西谷文和さん〈ジャーナリスト〉・纐纈さん・山田さん・木戸衞一さん〈大阪大学教授〉・大野京子さん〈I女性会議奈良事務局次長〉)、省略する。
 最後に、服部良一さん(社民党幹事長)が、安保3文書の学習会を連続して開催したいとのまとめをした。
      (T・T)

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