3.5さよなら原発関西アクション

原発・核燃サイクルやめて

 【大阪】福島原発事故から12年の今年の関西アクションは3月5日大阪エルシアターで開かれ、450人を超える市民が参加した。多くの被災者は苦難の人生を強いられ、300人を超える子どもや若者が甲状腺ガンに苦しんでいる。
 しかし政府は、国民の命と健康を蹂躙し、原子力回帰政策を進めようとしている。原発の新増設、リプレース、再稼働、運転延長などとんでもない! 30兆円を浪費して、無益な核燃料サイクル政策を何故続けるのか?超危険な高レベル廃液や1万9000トンの使用済み核燃料、46トンのプルトニウムをどうするの?巨大地震や噴火に襲われたら日本は破滅。この愚かな政策を一刻も早く終わらせるために、力を合わせ、反対の声を上げよう!(集会宣伝チラシより)。

甲状腺ガン裁判が始まる


 池島芙紀子さんの主催者あいさつに続いて、白石草さん(放送局勤務を経て、2001年非営利のネットメディアOurPlanet・TV設立)が、「誰にも言えなかった甲状腺ガン患者の現実」と題して講演をした。
 甲状腺ガン裁判を知っている人、手を上げてくださいと言うと、多くの人が手を上げた。この裁判は、原発事故が起きたとき6歳~16歳だった福島県民6人が、甲状腺ガンを発症し、その原因が事故による被曝であるとして、2022年1月27日東京電力に損害賠償を求めて提訴したのだ。その後一人が追加提訴し、原告は7人(18歳~28歳、男性2人女性5人)である。片葉切除3人、再発し全摘4人、肺転移の子もいる。請求額は手術の程度で8800万円~1億1000万円。この訴訟の弁護人に福島の人はいない。

237人の甲状腺ガン見つかる

 甲状腺ガンは、チェルノブイリ事故後に小児の多数にガンが見つかり、国際機関が原発事故とガンの因果関係を認めている唯一の病気だ。福島事故後、甲状腺検査が原発事故当時18歳以下であった福島県民38万人を対象に2011年10月から実施された。エコー検査が2年で1巡するように行われている。現在は5巡目。今までで、296人に悪性の疑いがあり、そのうち237人にガンが見つかり手術を受けた。国立がん研究センターの津金さんによると、ガン罹患率(全国推計値)に基づいて、福島県において18歳までに臨床診断される甲状腺ガンは2・1人だ。
 甲状腺検査の1巡目で甲状腺ガンが見つかり手術を受けた子どもは102人である。異常に高い数値だ。これは、津金さんによれば、過剰発生か過剰診断かのいずれかということになる。日本での甲状腺ガンの羅患統計から推定される有病数の数十倍である。県民健康調査検討委員会は、被曝による過剰発生か過剰診断のいずれかであり、被曝線量はチェルノブイリ事故と比べてはるかに少なく、事故当時5歳以下の子どもからは発見されていないとし、現時点(1巡検査終了時)では検査で発見された甲状腺ガンが被曝によるものとは考えにくいと判断した。

患者たちの現状は


 2巡目で甲状腺ガン8例がわかった段階で、国際環境疫学学会もこの数値に注目し、これは異常な増加であると勧告している。2巡目の検査で甲状腺ガンと診断された症例は最終的に71人だった。検査を縮小し、解析を中断すべきだとの意見が出て中断された。2016年3月甲状腺検査評価部会の報告書が出るが、それから3年後の19年6月に突如、一度も素案を議論していない方法で解析された結果を基にした「二巡目の報告書」が公表され、座長一任となりそのまま甲状腺検討委員会に提出された。
 それによると、地域差があり10万人当たりの患者発見数は、避難区域13市町村では49・2人、中通り25・5人、浜通り19・6人、会津15・5人の順である。この二巡目に分かった甲状腺ガン71人の評価をめぐって、ガン発見率と線量との関係を検討するためには、年齢や検査時期などを解析する必要があるとされる。報告書については、検討委員の間で意見の違いがあった。そして五巡目に向けた「お知らせ文」には、[一生気づかずに過ごすかもしれない無害の甲状腺ガンを診断治療する可能性や、治療に伴う合併症が発生する可能性・・・]の文言が現れた。福島県で多くの手術を執刀している鈴木眞一さんは過剰診断を強く否定している。

 2巡目でガンと診断された71人の内1巡目でA判定だった子どもが9割を占める。2年で腫瘍が3・5cmに成長している子どももいる。ガンの治療にはアイソトープ治療が使われている。患者は2週間個室に隔離され、見舞客などと接触できない。患者は声を上げられない状態で苦しんでいる。患者たちが知りたいことは①予後②発症の原因・情報・将来のこと。心配なことは①結婚②治療費・学費・就職。ガンと診断されたことを知らせる範囲については、①家族②親しい友人・親戚・学校の担任。就職・仕事については、4人に1人が進路を変更した、具体的には、就職内定取り消しになった・勉強の意欲を失った・勤務時間が一定の会社に転職した・術後実家に戻ったなどだ。就職先に話していないので不安という人や就職を遅らせた人もいる。また、高校を中退した人、大学を休学した人、肌を露出する服を着られなくなった人、成人式の写真撮影を手術前に変更した人もいる(ビデオが上映されたが、真っ暗な画面に音声だけが流れた)。
 白石草さんは、「二人以上の方に今日の話を伝えてください」という言葉で結んだ。
 休憩を挟んで、アカリトリバさんの歌のライブ。高く澄み切った美しい、少し民謡的な感じで情緒のある歌声にとても感動を覚えた。

森松明希子さんのアピール


 原発賠償関西訴訟の原告団長である森松さんは、福島原発事故のときは郡山市に住んでいた。原発から60キロ離れていて、避難地域には指定されたことがない地域だ。家族4人で住んでいて、ゼロ歳と3歳の子どもを連れて大阪に母子避難して来て12年が過ぎた。大阪地裁に国と東電を相手に集団訴訟を起こした。白石さんの話にあった6歳から18歳の当時学齢期であった子どもたち、自分たちが病気になったのは福島原発事故のためだと訴えたとき、国はその原因が分かるまでは原発を止めるとかを考えて政治を行っているだろうか。私の子どもは避難しているが、福島にいる子どもと同じように甲状腺検査を受けていて、今裁判を起こした子どもたちの年齢にさしかかっている。子どもは社会の宝だとかきれいな言葉はよく聞くが、原発がひとつあることでどれだけ多くの子どもたちが平等に命や健康を守られていないかは明らかだ。子どもを守るその一点で一致できるはずだ。一緒に脱原発・脱被曝で、健康を享受する権利を守る闘いを応援してほしい。顔や名前は出せないけれども被害を訴える子どもたちとともに私たちも歩んで行きたい。

再処理工場の危険な実態


 澤井正子さん(元原子力資料情報室)が「六ヶ所再処理工場が危険な理由」と題して講演をした。雪に覆われている時期に、六ヶ所再処理工場で事故が起きたら、どうなるのだろうか?想像するとぞっとする、と語った。
 六ヶ所核燃料サイクル基地には、再処理工場を中心に、ウラン濃縮工場・モックス燃料加工工場・国際熱核融合炉、海外返還廃棄物貯蔵管理センター・低レベル廃棄物埋設センターそして国家石油備蓄地が集中して設置されている。上空から見える施設と同じぐらいのものが地下にもある。再処理工場にある配管は1300キロ、うちプルトニウム系配管は60キロだ。稼働すれば、使用済み燃料の処理能力は年間最大800トン、プルトニウムの生産量は年間7トンである。

再処理工場が危ない訳

 再処理工場と原発の違いはどこに? 六ヶ所再処理工場は1992年に事業認定されたが、過酷事故は起きないとの想定で造られたという点だ。敷地にある建屋は洞道と呼ばれる地下トンネルで結ばれていて、この地下トンネルの内部には高レベル放射性廃液、プルトニウム溶液、ウラン溶液、硝酸溶液、廃硝酸溶液、電源ケーブル、信号ケーブル、検査用資料、希ガス・ヨウ素・ルテニウム・トリチウムなどの気体廃棄物配管、トリチウム・テクネチウム・アメリシウム・プルトニウムなどの液体廃棄物配管などが設置されている。(澤井さんは、「電源ケーブルもここにある。ここが壊れたらおしまいです」、と言った)

使用済み核燃料はこれ以上増やすな!

 昨年7月、高レベルの放射性廃液を保管するタンクの1つで、廃液を冷却する設備の機能がおよそ8時間にわたり停止した。原因は、冷却用の水を循環させる配管は2つの系統があり、1つは工事中で、その配管の弁を閉じるよう指示された作業員が、誤って稼働している配管の弁のバルブを閉じてしまった可能性があるとのこと。(バルブには表示が明確ではなく、どの系統なのか区別するのが難しい状態であることや、指示が口頭のみであったことも原因ではないのか。再処理工場は今まで100回を超える事故を起こしている。日本原燃の杜撰さが浮き彫りになったといえる)。
 再処理施設は本来軍事的な施設であるが、日本だけが民生用だと言って造った。どこの国でも原発をもっている国ではプルトニウムは余っている。使用済み核燃料の受け入れ施設と貯蔵施設である燃料貯蔵プールには現在3000トンの使用済み核燃料が貯蔵されていて、プールは満杯状態。古くなったものは冷却15年で剪断が可能になるとしているが、持ち込むことは限界に達している。従って、それぞれの原発が自分のプールに保管するしかない。稼働を続ければ、増えていく使用済み核燃料の保管場所が満杯になる。

ドイツの場合

 そのような状況にもかかわらず、老朽原発の稼働を40年越えで延長し、原発増設・原発立て替えに舵を切ったが、ウクライナ戦争を契機に原発回帰したかに見えるドイツはどのような状況か。使用済み核燃料の中間貯蔵施設は原発の敷地内につくることにしている。世界の各国は強い岩盤を探索している。どこでもいいから造れるところに造ると言っているのは日本だけだ。ドイツの原発では、もう新たな燃料は入れないことになっている。これ以上使用済み核燃料を増やさないことが絶対必要だ。そして全てを止め、しかる後に廃棄物の議論をやるべきだ。地層処分するか、地上所蔵するか。原子力資料情報室でも意見が一致していない。
 集会のまとめは近藤さん(大阪髙協組)が行い、集会後扇町公園までデモを敢行した。    (T・T)

甲状腺がん患者の実状を訴える白石草さん

講演する澤井正子さん

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