湯川委員長他5人への不当判決糾弾
3.2関西生コン・コンプライアンス事件判決
労働組合の権利否定を許さない
【大阪】全日建連帯労組関西地区生コン支部が滋賀県地域で、組合員が工事現場に赴き法令違反や危険行為を指摘し相手に改善を促す取り組み(コンプライアンス活動)を行っていたことを検察は、「軽微な不備に因縁をつけ、その対応を余儀なくさせ、その間業務を中断させる嫌がらせを繰り返した」と見なし、3月2日大津地裁は有罪判決を行った。湯川委員長:懲役4年(求刑懲役8年)、S組合員:懲役3年・執行猶予5年(求刑懲役4年)、K組合員:懲役2年6月・執行猶予4年(求刑懲役4年)、Y組合員:懲役2年・執行猶予3年(求刑懲役3年6月)、N組合員:懲役2年・執行猶予3年(求刑懲役2年6月)、I組合員:懲役1年・執行猶予3年(求刑懲役1年6月)。
3月2日判決を出す大津地裁前には、多くの労働者が集まり集会がもたれ、小谷野さん(全日建連帯労組中央本部書記長)があいさつをした。
コンプライアンス活動は国際標準
「今日の裁判は、コンプライアンス活動が事件にされ、いくつもの事件が合併され審議されてきた。その最たるものは、フジタという建設会社の労働安全法無視、汚水垂れ流しを指摘した活動が恐喝、つまり企業にゆすり・たかりをしたというのが警察検察の見立てだ」。
「コンプラ活動は、世界で港湾・海員・建設など屋外の労働者の運動では当たり前に取り組まれている。なぜなら、現場の不備は労働者の命に関わるからだ。生コンの場合は、品質劣化で建物が倒壊する恐れがあるから、住民や消費者の安全に関わる。安売り競争は安全を無視し、法令違反・安値買いたたきで成り立っている。これをなくすために取り組むのがコンプラ活動だ」。
「海員組合の場合は、コンプラ活動と言わず、査察と言っている。港に船が着くと査察のチームが乗り込んで、船長に面会を求め、海難条約を守っているか、船員にきちんと休憩を与えているか、残業代をきちんと払っているかを問いただし、船内をくまなく調査する。このような活動は、世界の労働運動では当たり前、国際標準だ」。
「フジタの場合は、3人一組でコンプラ活動をごく短時間やった。その映像が全て残っている。併合されたセキスイハイム・日本建設・東横インデックスの場合も同様に、警察検察・ゼネコンが仕立て上げた事件だ。5年がかりでこの裁判をやって来たが、この裁判ではどう考えても有罪判決が書けるはずがない。裁判所がこの事件をどう判断するかが見物だ。もし有罪なら、裁判所が労働者に喧嘩を売ってきた・憲法28条に喧嘩を売ってきたことになる」。
「もう一つ湯川委員長については、タイヨー生コンで恐喝とされた事件がある。でも、彼は現場にいなかった。この件では、武元委員長は恐喝の主犯とされたが、2021年7月に無罪判決が出ている。湯川委員長は無罪以外にあり得ない。今日は長い一日になると思うが、この日に起きた出来事を脳裡に刻んで闘いの輪を広げよう」と訴えた。
引き続いて、この日の行動の呼びかけ団体である反弾圧京滋実行委員会(服部さん)からのあいさつ、各地の実行委員会からとして大阪実行委員会(全港湾大阪支部小林さん)、労組つぶしの弾圧を許さない東海の会(近藤さん)、弾圧を許さない東京の会(山口さん)からアピールがあった。
労働組合からとして、千葉動労(関さん)、大阪全労協(竹林さん)、大阪港合同(中村さん)、なかまユニオン(小山さん)、ケアワーカーズユニオン(南さん)、滋賀ユニオン(木戸さん)、関西合同労組(佐々木さん)から連帯のあいさつがあった。休憩を挟んで市民運動のアピールが続いた。
弁護団の主張を一切無視
判決は、主文を後回しにして、判決理由が延々と読み上げられたという。裁判長は下を向いたままひたすら読み上げ、表情がなかったという。主文が読み上げられ、判決言い渡しが終わると、「お前懲役に行け」とのヤジが飛んだ。引き続いて近くの教育会館で判決報告会が開かれ、弁護団の森博行弁護士が報告した。
「弁護団の主張はことごとく排除された。湯川委員長は実刑4年だが、(武委員長だけ切り離して裁判されたため)同じ事件で武委員長が無罪だから、湯川委員長も無罪が当然。彼は(当時副委員長で)お金のやり取りのときは席を外すように言われ、事後報告を受けただけ。懲役4年とは、とんでもないことだ。この裁判は5年になるが、裁判長が3人変わった」。
控訴して闘う
「判決理由を聞いていると(タイヨー生コン事件で)、横川さんというタイヨー生コンの社長に対して関生支部がお金を要求(恐喝)したのか、検察はこれを実証しなければいけないが、実行行為が存在しない。武委員長は事実が認定できないと無罪になったのに、今回は事実を認定した。つまり、金銭要求に直接証拠はないと言いつつ、関生支部の意向を無視して1000万円という金額は決められないというのだ。横川さんはコンプラ活動に畏怖していたので、それに乗じてお金を要求したと推認できるとした。信じられないことだ」。
「湯川さんの実刑4年にすべてが表現されている。偏見と予断による判決以外のなにものでもない。断固として控訴して闘う。フジタ事件、セキスイハイム事件、三井東横事件で、こちらが主張したかった最大の点は、コンプラ活動は啓蒙活動だということ。同じ業界ではあるが労使関係がない労働組合が何を手段に訴えるか。団体交渉・ストライキはできないのだから、コンプラ活動でしか要求は実現できない。些細で軽微なことが恐喝になったと裁判所はいうが、何故そうなのか。法律に違反していることを指摘することが何故違法なのか。根本的なところを裁判官は考慮していない。残念だ。裁判官もコンプラ活動のビデオ映像を見ているはずだが、実際にはどこを見ていたのか。控訴審は大阪高裁だ。完全無罪を勝ち取るべくガンバリマス。支援お願いします」。
当該組合員から
Sさん、「事実関係については文句はない。僕たちはコンプラを行うことによって、業界をまとめていく。アウト企業をインに入れる。業界を安定させる。そのために威力を発揮した。これをしなければ何も獲得することはできない。労働運動とはそういうものだ。それがすべてお金のことに収斂されていく。契約を変えるためにやったのだから、それは犯罪だとまとめられる。だが間違ったことはやっていないと確信している」。
Yさん、「判決の後、みなさんが『裁判官、お前懲役に行け』といったのを聞いて胸がすっとした。コンプラ活動を軽微な不備や法律違反をネタに恐喝と下を向いて判決文を読むだけの裁判長。怒りがこみ上げてきて、涙が出た」。
Nさん、「私はコンプラの活動現場に行ったこともないし、ビラを撒いたこともないし、コンプラに行くメンバーと意思統一したこともない。誰がどこでどんなコンプラをしていたのかも知らなかった。Kから何か連絡があったのかと聞かれたので、協同組合の出荷センターに行って聞いたら、あった、これから共同組合で取引さしてもらうのでよろしくといわれた。そのことをKに伝えただけ。今日は、自分だけは無罪になると思っていた。高裁では良識の裁判官に当たってほしい」。
湯川委員長が収監されたので、支部を代表して坂田さん(副委員長)が、「弁護団の主張が一切採用されていないのが不思議でしようがない。コンプライアンスは1995年の阪神淡路大震災以降継続してやっている。価格を上げ生コンの品質を上げることで創ったパイを、生コン労働者の賃金・労働条件の向上に使う運動を愚直にやって来ただけだ。最悪でも執行猶予が付くと思っていた。仲間の奪還と無罪を勝ち取るまで闘う。これからも支援をよろしく」と述べた。
共謀について
短時間質疑応答があった。一点だけ記しておく(判決で、計画的・組織的に動いたと言われたが、それは共謀ということか)。タイヨー生コン事件以外は事実関係に大きな違いがなかった。全部映像が残っているし、組合の内部文書も押収されているし、われわれもそれを否定する意志はなかった。違法か適法かの評価が問題だった。違法なら共謀でもっていかれる。組合活動が計画的・組織的であるのは当然のことであり、それを認めているのが憲法28条だ。
(T・T)
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