平和外交に乗り出した県に支援と連帯を
沖縄を二度と戦場にしてはならない!
沖縄報告 3月19日
沖縄 K・S
辺野古新基地を押し付けミサイル基地網の配備を強行する日本政府に対し、沖縄県は明確に県独自の地域平和外交に踏み出した。
玉城デニー知事は2月県議会で、「アジア・太平洋地域における平和構築に貢献する独自の地域外交を展開するため」知事公室内に地域外交室を設置することを表明した。4月から稼働する。北京、上海、台北などにある県の海外事務所の業務を束ね、当面3人体制でスタートし将来的には一つの課への昇格をめざすとのことだ。
玉城デニー知事がアメリカ訪問
3月6~11日の6日間、知事は基地問題の解決を直接訴えるため訪米し、政府、議会、メディア、大学や知識人、労組などとの会談を積極的にこなした。タイムス・新報の地元2紙は連日現地の様子を伝えた。
まずワシントンで、国務省のジョエル・エレンライク日本部長、国防総省のグレース・パーク日本部長代行に会い、PFAS汚染問題での基地内立ち入り調査や辺野古新基地に反対する県の姿勢を伝えた。その後、ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ准教授ら5人の有識者グループと会談し、日本政府の安保3文書、日米地位協定の改定などに関し意見交換した。さらに、ジム・ウェッブ元上院議員ら30人との晩餐会が持たれた。米連邦議会で2011年の辺野古移設計画見直しを主導したジム・ウェッブ元上院議員は「辺野古新基地が不要との考えは今も変わらない」と述べたという。
また知事は、アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(民主党)、トッド・ヤング上院議員(共和党)、沖縄系3世のジル・トクダ下院議員(民主党)や補佐官と面談し、沖縄の在日米軍専用施設の比率を50%以下にすることや、「台湾有事」への懸念をめぐり平和外交・対話で緊張緩和に取り組むよう求めた。APALA(アジア太平洋系米国人労働者連合)幹部の3人とも会い連携を呼び掛けた。APALAは今年8月の総会で再度、辺野古反対決議を採択するように動いていきたいと述べたという。
軍事メディアを招いた記者朝食懇談会には、担当記者15人が出席した。「ディフェンス・ワン」は、玉城知事が米中貿易が過去最高を更新した事実に触れ、軍事面だけでなく経済交流などの必要性を強調し「平和外交こそ抑止力」と述べたと報じた。「ミリタリー・タイムズ」は、玉城知事が日米地位協定の見直しを訴えたと報じた。さらに、CRS(米連邦議会調査局)のコリン・ウォレット研究課長らとの面談では、米側が「在沖米軍基地数25%」という数字を使っていることに対し、「米軍専用施設面積70・3%」がより正確で基地問題の在り方を表していると指摘したという。知事はまた、ナショナル・プレスクラブでの記者会見で「軟弱地盤により工事は困難」と指摘し、埋立工事の中止と計画の見直しを訴えた。
このように、県民の意思を顧みない日本政府・国会に対して、辺野古NO!ミサイルNO!という県民の意思を体現して、玉城知事の訪米活動が展開された。今後、国連への参加プランもある。
アジアの平和と未来を語る県主催シンポジウム
3月14日には、県主催のシンポジウム「交流・対話で創るアジア太平洋地域の平和と未来」が、那覇市ぶんかテンブス館テンブスホールで開催され、会場200人、オンライン400人が参加した。玉城知事はビデオレターによるメッセージを寄せ、「アジアの平和のために沖縄は何ができるか。文化、経済、学術交流の活発化へ。交流と相互理解が大事」と呼びかけた。
基調報告とシンポジウムの進行は、元外交官で日本地域国際化推進機構顧問の高橋政司さんが務めた。基調の要旨は次の通り。
【基調報告要旨】
国と国とのあつれきはいつの時代にもある。戦争になるのは交流・対話がなくなり断絶したときだ。私の経験から言えることは、交流・対話を止めてはならないという事。私は子供のころ、当時の西ドイツ・バイエルン州に住んでいた。ナチスの強制収容所跡があった。東ドイツからの亡命者の話を聞いたこともある。十代に東ドイツを旅行した経験もある。子ども心に戦争は二度とあってはならないと、平和の大事さについて強く感じた。
沖縄はユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界文化遺産と世界自然遺産の両方を有している稀有な地域だ。ユネスコ憲章の前文は「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった」と指摘している。この憲章に立ち戻ることが必要だ。
日本の歴史教科書は他国の教科書とは内容が異なる。それぞれの国の学生は違うことを身につけて育つ。ギャップが広がる。日本とアジア諸国とのあつれきは歴史認識の違いが大きい原因となっている。ドイツとフランスも歴史観が違っていたが、統一した教科書をつくる過程で議論を交わし互いの理解が進んだ。
沖縄が地域外交室を設けることはものすごく価値がある。国と国とに違いがあっても自治体や民間の交流は進めることができる。期待している。沖縄は有形の文化遺産だけでなく無形の文化遺産を持っている。たとえば組踊がそうだ。交流の中でつくりあげられた文化遺産は国境を越えて広がる。アジアや太平洋の島々には根底に共通の価値観があるのではないか。
アジアの地図をいろいろな角度から見てみると新しい発見がある。沖縄はいろいろな国・地域とつながりが持てるヘソのようなところだ。そこに日本列島がくっついている。沖縄にしかできない地域外交を展開してほしい。私は、国の政権が関与しない地域・民間を中心とした地域外交会議を開く、世界遺産の価値を未来に伝えアジア各地の子ども達がオンラインで交流するネットワークをつくる、などを提言したい。
独立した行政主体として
日本政府に対抗する沖縄県
そのあと、パネル討論が行われた。韓国延世大学の白永瑞(ペク・ヨンソ)名誉教授、金門島出身で台湾海洋大学海洋文化研究所の呉俊芳助教授が会場の舞台上から、フィリピン大学ディリマン校のアリエス・アルゲイ教授、中国社会科学院の孫歌研究員がスクリーンを通してオンラインで報告し、意見交換をした。
内容のあるいいシンポジウムだった。独自の地域外交に踏み出す決意を述べた県知事のメッセージは力強い響きを持っていたし、経験豊富な高橋さんの基調報告や各国からの参加者のパネル討論も具体的で県の今後の地域外交室の活動に多くの示唆を与えるものであったと思う。
辺野古埋立変更申請を不承認とした沖縄県は、日本政府との間で地方自治法第25条に基づく違法な国の関与2件の取り消しを求める裁判を闘ってきた。3月16日の福岡高裁那覇支部(谷口豊裁判長)の判決は、「却下」「棄却」で、全面的に政府の言い分を認めた不当なものだった。撮影は2分、判決言い渡しはたったの1分。裁判所を行政の従順な末端機構としているダメな裁判官が多い。県は上告し最後まで裁判を闘い抜く予定だ。
沖縄県は事実上、辺野古新基地建設反対の闘いにおいて日本政府に対し独立した行政主体として行動してきた。地方分権一括法が「国と地方公共団体は対等」とうたっているように、県民の総意に依拠した県の自主行政は地方自治の精神を体現するものだ。そして、沖縄県は外交においても、独立した行政主体としてアジアの友好と平和を旗印に地域外交に打って出た。まさしく万国津梁の実践に他ならない。沖縄は県という既成の行政の衣をまとったまま、日本本土と対等の行政権限を有する未来の沖縄に向かって歩み始めたのである。沖縄県の奮闘に最大限注目し支援と連帯の輪を大きく広げてほしい。
陸自石垣駐屯地へのミサイル弾薬搬入反対
3月18日 石垣港八島人工島で果敢な抗議行動
3月16日に開設された陸自石垣駐屯地に、3月18日午前、ミサイル弾薬類が搬入された。午前7時前、海自輸送艦おおすみが石垣港の人口島大型クルーズ船桟橋に接岸し、ミサイル弾薬を積載した陸自トラック18台を陸揚げした。弾薬コンテナを積んだトラックは前面に「火」と書いた赤布を貼り付けており、一目で弾薬運搬車であることが分かる。「石垣島に軍事基地を造らせない市民連絡会」「基地いらないチーム石垣」「いのちと暮らしを守るオバーたちの会」など市民60人が、「ミサイル基地いらない」などのノボリを手に抗議を続けた。警察機動隊が立ちふさがるデモ隊を排除した後、自衛隊車両の列はパトカーに先導され、午前9時半ごろ、市街地を通過し陸自駐屯地へ向かった。
抗議団はその後、桟橋から駐屯地ゲート前に移動して抗議集会を開き、自衛隊ミサイル基地に反対していくことを確認した。
搬入された弾薬類は、警備隊が装備する中距離多目的誘導弾・81ミリ迫撃砲、地対艦誘導弾部隊の12式地対艦ミサイル、地対空部隊が装備する03式中距離地対空ミサイルなどであるが、防衛省は自衛隊の能力に関わるとして数量を公表していない。吉田陸幕長は3月16日、「南西防衛体制の強化はまだまだ途上だ」と述べさらなる軍備増強の考えを示した。政府・自衛隊は今後、反撃能力(敵基地攻撃能力)向上のためミサイルの長射程化など石垣をはじめ沖縄全体の軍拡を進めていくつもりだ。
沖縄を対中国軍事対決の最前線に押しやる南西諸島のミサイル基地化に反対する。沖縄を軍事政策の捨て駒として利用してはならない。
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