3.19福島原発事故から12年 県民集会
汚染水を海に流すな!
原発のない福島を!
【福島】3月19日福島市飯坂町で、県民大集会が開かれた。2020年以来、コロナ禍の下で小規模の集会を余儀なくされてきたが、ようやく大集会が開けるようになり、900人が集まった。
子どもたちの歌声でオープン開会に先立つアトラクションとして「子どもに音楽を贈る会 福島しあわせを運べるように合唱団」による歌が披露された。
同合唱団は、全町避難を余儀なくされた浪江町と避難先の二本松の有志の呼びかけにより小学生と中学生で編成され、仮設住宅などで歌う活動を続けてきた。「幸せを運べるように」は、阪神淡路大震災の直後に生まれ、当地の方々を支えてきた歌で、福島の人々の生き方にも示唆する扉があるはずと名付けられたという。「いつかまた浪江の空を」「「私たちの子どもたちへ」「幸せを運べるように」の三曲の歌声が集会参加者を迎えるなかでのオープニングとなった。開会あいさつの後には、震災と原発事故による犠牲者への黙とうがささげられた。
被害者救済の継続を
角田政志実行委員長は、地震・津波、原発事故によって今なお生活再建もままならない人々の救済と生業・生活と医療保障支援の継続を訴えた。そして福島の全原発の廃炉が決定されてきたにもかかわらず岸田政権がGXとして原発回帰路線に転じたことを糾弾し、原発との決別、汚染水放出反対運動の継続をよびかけた。
連帯のあいさつには、さようなら原発1000万人アクションの藤本泰成さんが立ち、帰還できぬままに林地となり朽ちていく浪江町津島地区の人びとの「ふるさとを返せ、きれいにして返せ、だんらんの日々を返せ」の声に応えねばと語るとともに、汚染水の海洋放出の是非を端的に表す坂本龍一さんの「汚染水を海に流すことで何かいいことがあるのか」との言葉を紹介した。
福島の地からの発信
「福島からの発信」として、二本松市東和町の有機農家菅野正寿さん、DAPPE(平和と平等を守る民主主義アクション)の七海栞里さん、飯舘村の菅野哲さんが発言した。
東和町は、放射能に強く汚染された双葉郡、相馬郡の町村に隣接しており、事故後は3000人の避難民を受け入れていた。正寿さんはゆうきの里東和ふるさとづくり協議会によるセシウムを移行させない稲作、里山復興プログラムを紹介するとともに、豊かな自然と生活を奪った原発事故の罪の大きさ、住民参加のないイノベーションコースト構想を強く批判した。七海さんは、安倍のアンダーコントロール宣言、汚職にまみれた東京五輪、統一協会との癒着、そして岸田政権の原発回帰の一連の動きに対して、若者を結集し、ロシアのウクライナ侵略、汚染水放出のプロパガンダに反対の声を上げる運動に取り組んできたことを報告し今後の決意を語った。
飯舘の菅野さんは、事故から一カ月を経てからの全村避難となり、避けられたはずの被ばくを強制されたこと、面積231km² 、人口6200人の飯舘村で厳しいながらも自然の恵みが沢山あって楽しく生きられたコミュニュティが崩壊させられた。今なお放射能の影響を受ける中、多くの村民ががんで亡くなった、風評ではない、ごまかしは許されない、責任を問い続けると怒った。そして、安心して暮らせる村づくり、原子力損害賠償制度を国の責任で行うよう見直しを求める活動、軍拡ではなく、世界平和と食糧の安定供給を進めることを求めていく活動を進めていくと力強く語った。
高校生平和大使
4人が発言
若者からの訴えとして4人の高校生平和大使が自らの活動について報告。いずれも女性であった。
第25代の平和大使は17都道府県31名で構成されている。核兵器廃絶と平和を求める高校生独自の署名を広めながら、広島、長崎、東京、外務省、国会、丸木美術館への研修に加え、メキシコ、オーストラリア、オランダ、カザフスタンの各大使館などを訪問して、原発の稼働停止や平和教育の各国の状況の把握と交流を進めてきた。その中で、日本ではとても低い女性の政治・行政への参画を高めることの重要性を学んだ。そして今、汚染水の海洋放出とGX推進に賛成が増える中にあって、声を上げ、経験を知らせ、次世代にツケを押し付けないよう活動を進めて行くことを表明した。
この素晴らしい発言の数々に、参加者の多くは希望の光明を感じ、万雷の拍手を送った。
原発回帰、
海洋放出反対
集会は、最後に、「原発事故の反省と教訓を反故にする原発活用方針に反対し…・再び人々が犠牲となることがないよう、福島の現状と課題を訴え続けます」との2023県民大集会のアピールを全体で採択、参加者全員が「処理水を海に流すな!」のカードを頭上に掲げて終了した。
運動は、人々が集まって交流し学び、励まし合ってこそ前進させることができる、とあらためて感じた久方ぶりの大集会であった。この結集を、汚染水放出とGX推進を止める具体的な運動へと発展させていかなければならない。
(世田達)
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