福島原発事故12年いわき市でシンポジウム開催

だめなものはだめ、行動で明確に

 【福島】福島第一原発事故から12年が経った。同原発の廃炉工事期間は当初40年とされたが、最早同原発用地が更地化されると思っている人は誰もいない。法的要件からも、使用済燃料の搬出や、汚染状況の調査及び除染が必須な原発からの切り離しがなされ、既に「特定原子力施設」と変更された。稼働中であった1~3号基の装荷燃料は燃料デブリと化し、その取り出しが全量なされると、信頼する人も又不在である。他方放射能汚染ごみの拡散が進行し、その未来は不透明である。福島原発の現状は、原発利用回帰を進める政府には「不都合な真実」であり、政府・東京電力は現状を隠ぺいしあまつさえ、暴利を貪り廃炉工事は便乗ビジネスと化している。「放射性廃棄物を如何に管理するのか?」核災害の拡大防止の観点からも必須の課題となっている。それは工学的観点に加えて廃炉工事を如何にして社会的監視の下に置くのか?この論議が不可欠なのである。

これからどう
生きるのか?
 福島原発事故12年、拡散する放射性廃棄物と私たちの未来、と題してシンポジウムが開催された。同シンポジウムは脱原発ネットワークが主催し3月12日いわき市文化センターで開催された。
 シンポの冒頭福島原発事故及び津波による物故者に対して、犠牲者追悼の黙祷を捧げた後、最初に「事故処理から廃炉の課題、私たちはどう生きるか」をテーマに主催者があいさつした。
 主催団体のあいさつに立った佐藤和良さんは、集会の目的について、事故後12年を振り返り、今後どう生きるか、を共に考えるためとした。次に「脱原発ネットワーク」について事故前は原発事故を起こさせない取り組みだった、事故直前の1年はプルサーマルを許さない取り組みの真っ最中。しかし事故は起きてしまった。その意味で責任はある。事故後は、刑事裁判放射能測定、被害者救済と補償等が取り組まれている。現在、実行中の廃炉工事達成は可能か?サイト内外は放射性廃棄物で満杯。汚染水は直にデブリと接触した、液体放射性廃棄物。安価を理由に放出強行を進めている。固化等代案も存在する。
 そして、放流強行は約束破り、漁連は反対を堅持している。ミクロネシア諸国も懸念。強行により新たな問題を惹起する。更に政府・東京電力は汚染水放流を「廃炉達成には不可避」と言うが、1Fの特定原子力施設廃炉達成に至る過程は不明。「廃炉実施計画」は作成できない状況だ。政府・東京電力は7月実施予定だがこれを止めたい。一緒に考えようと述べた。

「廃炉の現状」
をどう見るか
 その後、三者による報告及び3名をパネラーとするディスカッションが行われ最後にアッピールを発した。
 報告の最初に、「12年目の報告、廃炉の現状をどう見るか―汚染水、放射性廃棄物」をテーマに石丸小四郎さん(双葉地方原発反対同盟)が東京電力は「保管用地がない」として汚染水放出を進めているが、用地はまだある!と指摘、「福島第一原発を襲った地震動、津波、水素爆発は原発に深刻なダメージを与えた」、またメルトダウンにより、圧力容器と土台はダメージを受け、崩壊の恐れが存在する。ドロドロの状態にある高濃度放射性廃棄物の保管容器が逼迫等を上げ、放射性廃棄物保管は危機的状況と報告した。

拡散し続ける
放射性廃棄物
 次に「拡散する放射性廃棄物をどうするか」として和田央子さん(放射能ゴミゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)が便乗ビジネスだ!と廃棄物事業を指弾、遂行はゼネコン、原発建設で潤った企業が廃炉工事でも同様に暴利を貪っている。続いて「増え続ける放射性廃棄物、原発回帰でいいのか」として澤井正子さん(元原子力資料情報室・核燃料サイクル担当)が日本の放射能廃棄物区分は国際基準と齟齬―フランスは使用済み燃料も含める。日本は使用済み燃料を別枠―使用済みは有価物(核燃料サイクル前提)と評価。しかし六ケ所(リサイクル工場)は満杯、サイト内も同様この現状を無視し原発回帰でいいのか!と問いかけた。

「廃炉便乗」
のビジネス
 パネルディスカッションは「たまる放射性廃棄物、どうする汚染水の海洋放出を、テーマに3名のパネラー(織田千代さん―これ以上海を汚すな!市民会議、鈴木薫さん―いわき放射能市民測定、たらちね、満田夏花さん―国際環境NGO FOE Japan)が行った。
 ディスカッションは佐藤和良さんのコーディネートで遂行され、満田さんは実証実験を除染で回収した物を再度拡散それは不条理!と指弾、鈴木さんは大熊町で行われている帰還事業を、高線量土壌が点在する、除染未達成地域に帰還者の子供たちの通う学校の増設が進んでいる。汚染水の放出も同様で科学的根拠もなく一貫性無く場当たり的対応だ。織田さんは、「これ以上海を汚すな!市民会議」の結成からこれまでの経過を報告し、汚染水放出は強引かつ一方的、東京駅で発見した汚染水放出容認広告塔の存在を例に指摘、政府は反対の声を無視、強引に進めている。原点に立ち返り「いやな物はいや!」という気概でアクションを続けるのが大事、と発言、最後にアッピールを採択し集会を終了した。廃炉便乗ビジネスを許すな!廃炉工事に社会的監視を!廃炉を理由とした復興の歪曲を許すな!
         (浜西)

集会アピール
福島原発事故12年 拡散する放射性物質のゆくえと私たちの未来


 福島第一原発事故の始まりから12年、私たちは今も原子力緊急事態の中にいます。
 廃炉の最終形態も法的に定義されず、被曝を伴う困難な事故収束作業が続いています。政府はたった12年で原発事故の反省や教訓を手放し、原発の再稼働、リプレイス、運転期間の実質延長など原発推進政策に舵を切りました。また、復興の名のもとに、軍事利用転用可能な技術開発などをおこなう福島国際研究教育機構に巨額の予算をつぎこみ、さらに軍備拡大のために、復興税を防衛費に転用しようとしています。
 事故後増え続ける小児甲状腺がんや災害関連死、切り捨てされる避難者、放射性物質汚染防止法や廃炉措置に関する法の未整備など、問題は山積しています。
タンク貯蔵汚染水の海洋放出問題も重大な局面を迎えています。政府と東京電力は『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』という約束を反故にして、今夏にも海洋放出を実施するために、多額の費用をかけテレビ等のメディアを使って安全宣言を行っています。さらに除染によって集められ、中間貯蔵施設に運び込まれた汚染土を「再生資材」と名を変えて、全国に拡散しようとしています。
 住民が関与できないところで、さまざまな政策や方向性が決められていることに、大きな疑問と憤りを持つ私たちは、今日、拡散されていく汚染水や放射性廃棄物、事故処理と廃炉の現状に向き合い、どうしたらよいのかを話し合いました。
 私たちは、未曽有の核災害が生態系と人間社会にもたらしている重い現実を目の当たりにしています。私たちの選択が、すべての人々、とりわけ子供たち、生態系、そして未来の世代に対して、原発事故による負荷を可能な限り小さくすることを真剣に考え、最善を尽くす責任を自覚し、以下の点を呼びかけます。
 1、脱原発:核廃棄物を大量に生みだし、戦争や地震によって破局的な事故を起こす危険性のある原子力発電を、次世代のエネルギーとして選択しません。
 2、可能な限りの被ばく低減:世界中の核被害者の犠牲を忘れることなく、内部被ばく、外部被ばくの可能な限りの低減をめざし、被ばく防護方策をとることが必要と考えます。被ばくに脆弱な人に対しての特別の支援と、被ばくを伴う作業に従事する人への徹底した被ばく防護を求めます。
 3、環境汚染の防止:これ以上深刻な放射能汚染が生態系に影響を与えないよう、放射性物質を環境中に投棄することに反対し、厳重な管理を求めます。
 4、未来世代への責任:現在の世代には、健全な地球を未来世代に手渡す責任があります。にもかかわらず、人類が核を使用してしまったことを深く反省し、未来世代が、拡散され残された、夥しい放射性物質によってこれ以上健康被害や環境汚染にさらされないように、賢明な選択ができる議論の場をつくり、参加していきます。
 5、発生責任と国の責任:これまで放射性物質を発生させてきた事業者および原子力を推進してきた国の責任が果たされるよう求めていきます。
 6、民主主義:これらを達成するために、政策決定・実施・検証への市民の参画や、情報公開、公正な手続き、透明性の確保など、民主主義的プロセスの実現を求めていきます。
 7、平和:原子力を利用することで生み出される危機を回避するために世界の平和が何よりも重要であることを認識し、日本の軍備拡大に反対し、日本が武力によらない紛争解決に貢献することを求めていきます。
 私たちは、広大な宇宙に抱かれる奇跡の星、地球に生きています。
 この有限な美しい星が、これからも豊かな生命を育んでいくことができるよう、100年、200年、300年後の未来の人々が幸せに生きることができるよう、私たちは対立や分断を乗り越え、協力して、これからも努力し続けることを宣言します。
2023年3月12日

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