袴田巌さん再審開始確定

3.21東京高裁差戻審判決報告集会

びあふれる会場、涙ぐむ人も

「よくぞがん
ばったの声」
 【静岡】3月21日、静岡市の県労政会館で再審開始決定3・21 報告集会が袴田弁護団、袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会が主催して開催され、約150人が参加した。3月13日の差戻審の再審開始決定判決と20日の検察の特別抗告断念を受けて再審開始が確定したことから集会は喜びあふれる集会となった。
 冒頭、司会者の袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会事務局長の山崎俊樹さんは「皆さんと再審開始を喜び合いたいと思います」と発言し集会が始まった。袴田救援議員連盟事務局長の鈴木宗男議員は、「巌 よくぞ頑張った!」と書かれた北海道新聞を掲げ紹介し、2014年の静岡地裁再審決定判決から9年は何だったのか?「巌さんに謝りたい」と述べた。娘の鈴木貴子議員からも電話が入る。「特別抗告断念は当然の結果だが、巌さんはまだ死刑囚のまま、再審法改正を!」と訴えた。
 差戻審の東京高裁第2刑事部は有罪の決定的証拠とされていた「5点の衣類」について、味噌の高い塩分と弱酸性が血痕の色調を黒褐色化させるとの科学的知見を明らかにした旭川医科大学法医学教室の清水・奥田鑑定書などの新証拠によれば、1年以上みそ漬けされた衣類の血痕の赤みが消失することが科学的機序(しくみ)として合理的に推測できるとした。その上で、同刑事部は、「5点の衣類」の血痕には赤みが残っていたことから、それらが1年以上みそ漬けされたものとの認定には合理的な疑いが生じたと判断し、新旧証拠の総合評価を行えば、「5点の衣類」が犯行着衣であり袴田巌氏のものであることには合理的な疑いが生じ、その結果、袴田巌氏を犯人だとした確定判決の有罪認定に合理的な疑いが生じることは明らかだと判断した。さらに、「5点の衣類」は事件から相当期間が経過した後に袴田巌氏以外の第三者によって、味噌タンク内に隠匿された可能性が否定できないとも指摘し、その第三者とは、事実上、捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる旨も言及している。

1日も早い
無罪判決を
 袴田弁護団事務局長の小川秀世弁護士は、本決定が袴田巌さんの無実を再び明らかにしたものとして正当であること。検察官がやったことは「味噌漬けが1年2カ月たっても赤みが残る」と言っただけで、特別抗告の条件は、本決定が憲法違反で判例違反に限ることから、とても特別抗告の理由が書けないことは当然だと厳しく指摘した。
 本集会には、映画「それでもボクはやってない」の監督である周防正行さんが特別ゲストとして見えた。周防さんは刑事司法制度特別部会委員として、証拠開示など司法制度改革の提言をされている。また「再審法改正をめざす市民の会」共同代表として活動されている。周防さんは日本の刑事裁判に触れて被疑者を拘留し続け、自白すれば釈放すると騙す、「人質司法」や「証拠隠し」などについて語った。
 姉の秀子さんが近況を報告した。「巌は相変わらずニコリともしませんが、『再審開始になったよ』『安心しな』と伝えましたら、少し様子がかわりましてね。自分の写真が載った新聞を食い入るように見ているんです」と話す。秀子さんは、「弁護士の皆さま、もうしばらくお付き合いを。支援者の皆さま、もうしばらくご支援をお願い申し上げます」と訴え、「本当にうれしい。ありがとうございました」と述べた。
 袴田巌さんが会場に到着、姉の秀子さんと登壇した。「えぇー。私が袴田巌でございます」巌さんは、何時ものことだが話は手短だ。長期拘留と死刑確定囚としての恐怖から拘禁反応による症状で意味不明、支離滅裂な発言が多かったがこの日集会では、話しこそ短かったが「竜(検察)との闘いでありますので、みんなの協力があって勝ち抜ける。よろしくお願いします」と一気にしゃべり、さっさと壇上から降りてしまった。
 東京からシンガーソングライターのコバケンさんが登壇、巌さんの歌でもある「春、待ちわびて」などを披露、また浜松の竹内さんも自作の歌を参加者を交えて歌った。
 続いて登壇したのは弁護団の7人。それぞれが発言、再審開始の垂れ幕を持って満面に笑みを浮かべて高裁から駆け出した西沢弁護士(2018年には不当判決を持っていた)メイラード反応を担当した間弁護士、不当決定の折に一度弁護士を廃業し、再び弁護団に加わった田中弁護士は、「巌さんはすでに1982年の上申書に5点の衣類は捏造だと書いている。ようやくそれが認められた」と述べた。血液の色変化で旭川と静岡の連携を果たした笹森弁護士、田中弁護士と司法修習生時の同期という角田弁護士、写真担当の白山弁護士、元裁判官の水野弁護士は「新しい証拠が支援者と作り上げられることを初めて知った」その上で「裁判所さえしっかりしていれば、このようなことにはならなかった」悔いるように述べた。
 最後に登壇したのは日本ボクシング協会袴田支援委員会の元・現ボクサー3人。「うれしくてうれしくてうれしくて」で始まった話は、会場のみんなの気持ちを表して思わず涙がこぼれる。「秀子さんは最高のセコンドです」最後に「フリー袴田NOW」のシュプレヒコールを全員で唱和した。
 3月23日、毎日新聞によれば検察は静岡地裁の再審公判において有罪立証を見送る方向で検討していると報じた。報道のとおりなら、大きな争点がなくなることから審理が短縮され、袴田さんへの無罪判決が早まることになる。(S)

喜びに湧く会場に姿を見せた袴田巌さんと秀子さん(3.21)


     

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