4・7けんり春闘中央総行動
労働組合の存在意義示す行動を今こそ
労働者すべてを支える大幅賃上げを
格差当たり前の社会終わりに
急速な消費者物価上昇が止まらず多くの人々の生活が日々脅かされている。メディアは、大企業労組が満額回答で妥結と大書し、あたかも春闘は生活危機に歯止めをかけ終わったかのように報じている。しかしそれが多くの労働者の実態とかけ離れていることは誰もが分かっている。大企業の満額回答ですら、ベースアップを見れば消費者物価上昇に追いついていないことはメディア自身も分かっているはずだ。生活破壊に歯止めはかかっていない。
新しい労働者の運動潮流を
この現実に労働組合こそがはっきりと異を唱え、行動で立ち向かわなければならない。労働組合には特に、日本の労働者の圧倒的多数を占める中小企業労働者、非正規労働者の賃上げ置き去りや格差温存に正面から挑む闘いが求められている。それはまた、先の責任を放棄して久しい連合に代わる運動を現場から積み上げ、日本に新しい労働者の運動潮流をつくり出す闘いでもある。
まさにそのような挑戦のひとつとして、23けんり春闘が、同春闘全国実行委員会呼びかけの下に4月7日中央総行動を行い、同春闘に参加する労組から多数の労働者が結集、一連の行動を通して格差当たり前の社会を終わらせる闘いの強化を共に確認した。設定された行動は、午後1時からピードアグループのホテルに対する抗議行動、午後2時半からのキステム本社に対する抗議行動、午後4時半からの日本経団連に対する抗議行動、午後6時半からの国労会館における総決起集会。
この集会の後には銀座デモが予定されていたが、あいにくの強風と強雨という大荒れの天候で残念ながら中止された。また午前には、東京労組バス部会による厚労省と国交省への申し入れ・意見交換が行われた。課題は、交通運輸部門での時間外労働規制が特別に緩められていること、および細切れ休息、などの抜本的な是正だ。この交渉については、前記決起集会で当局が業界に配慮し依然消極的であることが報告された。
いずれも格差と差別の温存にはっきり異議を突きつける行動だが、以前よりも若い労働者の参加が見られるなど、新たな可能性も垣間見えた取り組みになった。
移住労働者差別を絶対許さない
全統一労組ピードア分会の闘いは、有限会社のピードアが同グループのホテルの清掃業務に従事していた多くがフィリピン出身の移住労働者全員を解雇したことへの反撃だ。会社の行為は明らかに労働者が労組を結成し権利主張を行ったことへの報復と労組破壊であり、移住労働者差別に貫かれていた。したがって今年2月20日、東京地裁はこの解雇を不当解雇と断じ、現時点までの賃金23ヵ月分全額(労組の資産では3億円を超える)を払うよう命じた。ところが会社は、社名と住所地を変更した上で社長は逃げ回り、裁判所命令にもしたがわない。
この日の行動は、このような会社には絶対負けないと決意しているピードア分会の労働者を支援する当該ホテル前集会。全統一労組から前記の経過報告を受け問題を全体で共有すると共に、23けんり春闘全国実行委員会共同代表の渡邉全労協議長を皮切りに、東京労組、全国一般なんぶ、郵政ユニオンの仲間から連帯のアピールが行われた。
またピードア分会を代表して長谷川ロウェナさんが、会社には私たちの尊厳を潰す権利などない、間違いを認めるまで闘う、と力強く決意を表明した。そしてロウェナさんの音頭で、会社は判決にしたがえ、賃金を払え、私たちを職場に戻せ、などのシュプレヒコールを全員で一帯に響かせた。
名称を変更されたホテル前に結集した多くの労働者と林立する組合旗は明らかに人目を引き、力溢れるアピールも相俟って宣伝効果は十分。中には手渡されたチラシを見て、こんな会社は許せない、などと話しかけてくる人もいた。
非正規差別の当然視打破へ
次はキステム本社への抗議行動。この企業では同じ仕事をしているのに正社員ではないというだけで一時金ゼロという不条理があった。これに敢然と異議を突きつけ、全国一般全国協宮城合同労組に加入し「パートタイム・有期雇用労働法」に基づきその法に謳う「同一労働同一賃金」の実現を求めて提訴した契約社員の高橋さんに連帯する行動だ。
集会ではまず宮城合同労組の星野委員長が、午前中に申し入れを行い一定の交渉を行ったことを報告した上で、裁判の現状と具体的争点を説明した。特に、会社の言う格差の根拠に事実の裏付けがないことを具体的に突きつけていることを明らかにし、労契法20条裁判で最高裁が下した非正規差別温存の壁を何としても打ち破りたい、と決意を表明した。
この日の行動に高橋さんは参加できなかった。年度末会計業務のためであり、それ自体が処遇差別の根拠の薄弱さを示して余りある。高橋さんからは代わりに、「不平等に声を上げることができる社会にするためにも必ず勝利しなければならない」との決意溢れるメッセージが寄せられ、宮城合同の仲間から読み上げられた。
連帯のアピールは、渡邉全労協議長、メトロコマースの非正規差別に対し労契法20条裁判を闘った後呂さん、郵政ユニオン、全国一般なんぶ、東京労組、全統一労組の仲間から。いずれも各々が直面する格差との闘いを訴えるものだったが、2つだけ紹介すればまず渡邉さん。直前の中央最低賃金審議会が全国一律要求に背を向け目安のランク区分を4区分から3区分への変更でお茶を濁したことを格差の温存として厳しく批判、最賃闘争がますます重大になった、先頭に立って中心課題に押し上げようと強く訴えた。一方後呂さんは、大椿ゆう子さんという非正規の仲間が国会議員になったこと、そして高橋さんが非正規差別への闘いに続いたことに心からの喜びを明らかにした。
4つの重要テーマ
日本経団連前でも、23けんり春闘全国実行委員会共同代表の平賀雄次郎さんを皮切りに、東京清掃、宮城合同の代表、また移住連の代表と、紛れもなく日本の格差社会の張本人であるこの団体に強い抗議を込めた闘いの宣言が続いた。
そしてこの日中の行動を集約する決起集会が、日中の行動に参加できなかった仲間も交え国労会館で行われた。岸田政権の大軍拡も含め生活危機への反撃に向け力のこもった発言が続いた集会だったが、ここでは4つだけ紹介したい。
まず渡邉全労協議長の基調的提起。大企業労組の満額妥結について、満額と言いながら実質賃下げである事実、そして日経新聞の100社アンケートでは物価上昇に見合った賃上げ検討が20%未満だった事実を指摘し、要求の作り方がそもそもおかしかった、このような状況を受け入れることを拒否することから闘いを立て直そうと強調した。
次いで全日建関西生コン支部の西山さんの、6年続く同支部に対する大弾圧に関する特別報告。和歌山事件の控訴審で完全無罪を勝ち取り検察に控訴も断念させたことの報告だ。判決では、産業別労組の争議行為を正当と認め、地裁判決が批判され、労組活動に対する裁判官の感覚が麻痺している実態も浮き彫りになった、と指摘した。一方でこの弾圧で組合が弱体化したこと、その点で支配側が狙った弾圧の目的は成果を上げたとも率直に認めつつ、しかし6年屈せずに闘ったことで反撃への足掛かりもつかみ徐々に挽回に向かう態勢を作っている、と力強く決意を述べ、共に現場行動から勝利をめざそうと呼びかけた。
3つ目は移住連の鳥井さんの、4月13日に衆院本会議上程が予定されている改訂入管法を廃案にする闘いの訴え。2年前に廃案になったものをほとんど変えずに再度もち出した入管庁のごり押しが特に卑劣だとして2点を厳しく批判した。
1点は、「送還忌避者」の半分が前科者との入管庁による悪どいイメージ操作。前科者とは刑期を終えた人だが、前科者との差別視が社会復帰の障害となっている現実に対し法務省自身がその差別払拭を呼びかけているのに、同じ法務省管轄の入管庁が差別を煽っている、と入管庁の差別体質を糾弾した。
2点目は、「送還忌避者」とは帰れない事情がある人だが、それは家族関係も含め日本社会に深いつながりをつくっている人たちでむしろ大事な人たちではないかと指摘、その人たちを排除しようとすることには何の道理もないとその支離滅裂さを明らかにした。
そして在留資格整備こそまずやるべきこと、今回の法案も絶対廃案にしなければならないと決意を述べ、4月14日からの国会前座り込みへの参加を呼び掛けた。
最後は、集会を締めくくる決意表明に立った東京労組の若い女性の発言。自身の経験も踏まえ中小では何年も賃上げがない実態の中で賃上げは切実な必要と訴えた。そしてこの日の行動に向けたチラシ宣伝では300枚のチラシが15分でなくなった、「労働組合です」との呼びかけに振り向いて受け取りにくる若い人も目立ち最賃への関心の強さを感じた、など若者にとって生活の問題が切実であり労働組合の役割の重大さをあらためて感じていると決意を語った。飾らない言葉でのはつらつとした発言は明らかに全体を元気づけ、労働運動が新鮮なエネルギーを必要としていることをあらためて感じさせた。
そしてこの日を闘い抜いた仲間たちは、団結ガンバローで23けんり春闘はこれからが本番の思いを共にし、翌日からの闘いに向け会場を後にした。 (神谷) 、
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