3.19はむねっと発足2周年 ハイブリッド集会
動かしてきたこと・見えてきた課題・あきらめずに声をあげよう!
【東京】3月19日、東京・中央区新川の日本図書館協会で、非正規で公務労働を担う女性たちの集会があった。会場となった研修室には40人ほどが集まり、パソコンでつながったオンライン(ZOOM)で、全国各地からも当事者の発言があった。
主催したのは、「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」。同ネットの発足2周年を記念して開かれた。
3年目の様々な取り組み
2022年は「会計年度任用職員制度」が始まって3年目に当たり、「3年目公募」の問題に直面。この課題へのさまざまな取り組みが行なわれた。2021年、22年と連続して公務非正規現場で働く当事者へのアンケートを実施。その分析を基に昨年11月、院内集会を開き国(省庁)に訴えた。さらに全国の自治体に「3年公募」を行わないよう求める要望書も届けた。
その成果もあって、昨年末には総務省が地方自治体に「公募は必ずしも必須ではない」旨の通知を出した。また今年3月3日には会計年度任用職員に対する「勤勉手当支給」の閣議決定がなされた。この日の集会は、「動かしてきたこと、見えてきた課題、あきらめずに声をあげよう!」と掲げた。
根の深い非正規労働問題
第一部では司会者が前記の活動を紹介。そして「はむねっと」が昨年調査した結果を1冊にまとめたパンフレットを、全国の図書館に送付。配架を依頼したところ、複数の図書館で実現したことが報告された。同ネットのMLには約130人が登録し「語り場」になっているという。ハローワークで働く職員は「声をあげることで自身も励まされた。非正規の問題は根が深い社会的な問題だ。今後も上に向けてムーブメントを起こしていく。できる限りみなさんとつながりたい」と話した。
はむねっとは昨年12月18日付で、渡辺百合子代表名による「要望書」を全国1789の自治体に送った。「1789プロジェクト」と名付けたこのアクションでは、①継続を希望する職員については、一律の「公募」を止め、安心して働ける方策をとること。②年度末に向け30名以上の離職者が生じる時は、厚労相向けに「大量雇用変動」を通知すること。③報酬や諸手当など、常勤職員との処遇格差の是正など、「同一労働同一賃金」の原則に向け取り組むこと。④国に対して、会計年度任用制度の抜本的な見直しに関する提言を行うこと、の4点を求めた。
特別区人事委員会に要望
渡辺代表はさらに、「1788+1」として、特別区の人事委員会にも要望。3月17日までに134の自治体から回答があったことを報告した。司会者は、「公務非正規労働は民間委託の問題にも直結する。はむねっとは緩やかにつながっている。地域の中に思いを共有する場を増やしていきたい」と述べた。
第二部 リレートーク
以下は箇条書きによる各々の発言要旨。
消費生活相談員Aさん
(ZOOM)
結婚を機に仕事を辞め、子育て後に消費生活相談員の資格を取った。法テラスで週2─3回、1年更新で働き始めたが8年後(2018年3月)に一方的な雇い止めがあった。現在は別の市役所で働いている。「消費生活相談員」の資格を持っているが、市役所では「社会福祉士」「保健師」の方が地位が上だ。現職の待遇が悪く「やる気の搾取」だと感じている。悔しい思いの時「はむねっと」を知った。
横の連帯ができない理由
婦人相談員Bさん
(ZOOM)
非正規歴8年。市役所で働いていた。大学卒業後結婚し、やがてシングルマザーになった。役所は働きやすく「社会福祉士」の資格を取った。しかし実務経験がなく婦人相談員になった。上司からは「ずっと働ける」と言われたが、いざ解任の制度が導入されると待遇が悪くなり、モチベーションが下がった。
来年度から別の自治体で正規職員として働ける。同じ公務の職場で待遇差があることは異常である。それでも議論が深まらないのはなぜか。会計年度任用職員同士で連帯ができていないからだ。お互いの待遇を知らない。他人の契約条件を知らないからだ。「知ることは悪いこと」と思われている。正規職員の特権意識もある。適正な待遇で人を雇うことが地域サービスの向上につながる。
指定管理図書館長・下吹越かおるさん(ZOOM)
地域で図書館を支える会を作ろうと声をあげた。それがNPO法人「本と人をつなぐ─そらまめの会」の結成につながった。鹿児島県指宿市の小さな図書館を、全国でも著名な図書館にした。市長は私たちが「好きでやっているだけだ」と発言した。
役所の威圧的な対応は弁護士を介することで変えさせた。地元の女性たちの奮闘記「小さな町の奇跡の図書館」(ちくま新書)は、さまざまな賞を受賞した。
このかん図書館は多様化してきた。職場での事故、利用者との深刻なトラブルが起きたらどうするのか。職員の安全と館の運営を健全に守っていくには、指定管理制度では無理がある。社会的教育を指定管理に託していいのか。
公募審査を民間丸投げで
ALT職・トニー・ドーランさん(ZOOM+通訳者あり)
2015年から英語教師として都立高校で日本人と一緒に働いている。フルタイム勤務だが低賃金で社会保障もない。1年間の有期雇用だ。今の学校で7年。「来年更新はない」と言われた。全国一般労組のメンバーで、組合を通じて交渉したい。
これまで都教委には無期雇用への転換、組合の配布物や掲示物を認めること。懲戒処分の際の事前交渉などを求めてきた。ところが会計年度制度の導入で団交を拒否され、雇い止めになった。私たちは日本の将来を担う人々の教育をしているのに。
勤続2年。「3年公募」で雇い止めの専門職(文書代読)
地方自治体のフルタイム会任職員。社会教育の専門職として22年間働いてきたが、今月一杯で雇い止めになる。職場では全員が「公募」のふるいにかけられ、しかも一次試験の書類審査は民間企業に丸投げされた。昨年末の総務省の「通知」が出る前に、私たちはすでに解雇を言い渡されていた。人事評価で過去2年高い評価だったにもかかわらずだ。
さらに制度導入前まで掛けていた雇用保険期間に、制度導入後期間を加えると20年を超える。ところが退職後に支給されるのは、制度後の支払い分より退職金が少ない場合だと告げられた。これでは、制度前の総額の半分にも満たなくなる。あまりにも理不尽だ。勤務実績も正しく評価されず、モチベーションが下がるばかりだ。
自治労連非正規公共評議長・小川裕子さん
会計年度任用職員制度とは、これまでの非正規職員がひとつにまとまったにすぎない。待遇は当局任せである。制度前の非正規の雇用契約は1年限定ではなかった。
昨年12月23日に総務省は「会計年度任用職員制度の適切な運用等について」という通知を、各自治体のトップ宛に出した。ここでは、「給与決定」や「勤務時間」について触れられているが、そもそも次年度に継続して任用されなければ意味がないものである。私たちは「公共を取り戻す」という自治労連のスローガンの通り仲間を増やし運動を続けていく。
場の公平さ求める運動
学労神奈川・全学労連・京極紀子さん
私は正規職を退職した学校事務職員。「非正規学校事務職員」の「無期雇用転換」を川崎市に求めた。全学労連には8つの組合がある。学校で働く職員は圧倒的に女性が多い。教員ばかりに焦点が当たり、それ以外が見えない。給食調理員や用務員もかつては正規職だったが、現業から民営化が始まり今では最初から非正規になる。これは労組の問題でもある。民間のように5年で無期雇用に転換するべきだ。
同じ職場に雇用条件の違う人がいると「横の連帯」が作れずに分断される。職場の公平さを求める運動を本気でやっていきたい。労組の取り組みに注目を。
休憩を挟んで第3部
日本労働弁護団の取り組み・木下徹郎弁護士
会計年度任用制度は2020年の4月から開始したが、運用面での申し入れを行っている。恒常的な業務を担わせるなら雇用も無期にすること。業務をあえて細分化しないこと。常勤職員との間に格差があることは地方公務員法で禁止されている。均等均衡待遇にすべきである。格差是正――任期の定めのない雇用の制度化――を求めるネット署名も7千筆を超えた。実効的に闘う道を求める。公務員制度を理論面で分析し運動の力強い担い手になりたい。
図書館友の会全国連絡会代表・阿曾千代子さん
私は鎌倉の「友の会」に所属している。全国各地で指定管理化など図書館の厳しい状況が続いている。鎌倉市では1993年を最後に、司書資格を持つ正規職員の新規採用を止めるという事態に直面している。会では行政サービスの劣化をもたらす流れに反対する署名を行い、図書館職員が真っ先に届けてくれた。
今日の集会で全国各地の厳しい状況を知った。いかに不勉強かを知った。これからも決してあきらめない。正規職員と非正規職員と市民が助け合い、粘り強く闘っていく。
非正規雇用に関心持たず
福岡市議会議員・成瀬穫美さん(ZOOM)
1期目の4年間、非正規雇用の問題に取り組んできた。福岡の場合、社会人採用枠に厳しい条件を課し、当局はこれを変えようとしない。市議がこの問題に気がつかず関心ももたない。非正規出身の議員がいない。今月末から選挙が始まるが、私が言わないと誰も言わない。
パリテキャンペーン・西川有理子さん(ビデオメッセージ)
日本では女性議員が圧倒的に少なすぎる。1人もいない議会すらある。毎年4月10日に女性の参政を進めるイベントを開いている。今年は「女性参政権行使77周年」のオンラインイベントで「棄権するな女性~私たちには明日を変える力がある」と題した。一緒により良い社会をめざしましょう。
集会への賛同メッセージが紹介された後、会場からの発言を受けた。
首都大学東京の非常勤講師の男性は、「年度毎に更新を繰り返している。『雇い止め』ではなく『契約終了』という言い方は労働契約法からも排除されている。体制側が40年をかけて作ってきたこの慣習をひっくり返すことだ。いいことはひとつもなく、社会の活力を奪っている。闘って勝ちましょう」。
学校司書の女性は「役所は一般行政職中心の考え方で、専門職を低く見ている。専門職差別であり女性差別だ。女は育児と介護をしてから『活躍』する。自民党の考え方だ」。I(アイ)女性会議の池田幸代さんは生活保護の民営化について批判した。
長丁場の集会に、ネットの視聴は60人がカウントされた。
(桐丘進)
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