4.12全労協脱原発集会
放射能の海洋放出強行許さない
放出阻止へ具体的行動を提起
岸田政権の原発回帰の阻止へ
【東京】4月12日午後6時半から、東京・全水道会館で「放射能の海洋放出強行を許さない!4・12全労協脱原発集会」が開かれた。
渡邉洋全労協議長が開会のあいさつをした。
「自分は大学生の時、公害問題の反省の上に立って衛生工学を学んだ。公害物質を海や川に捨てればなかったことにできる。それが水俣病・イタイイタイ病を生んだ。今回は漁民や地元住民との約束を反故にして汚染水を放出する。国際的にも問題にされている。岸田政権になって原発推進が強まっている。ロシアのウクライナ侵略戦争によってエネルギー危機が深まった。そして、ウクライナの原発が攻撃の的にされた。岸田政権の軍事費の増大と増税、原発推進を止めさせなければならない」。
政府・東電との
交渉経過も報告
全労協脱原発プロジェクトの大江俊男さんが海洋放出にいたる経過について、詳しく報告した。ほんの一部を紹介する。
一、放射能汚染水をめぐる主な経過。事故直後から大量の放射能汚染水が流出し続けた。放出も続いた。2015年8月25日、東電が漁協の質問に対して回答した。「サブドレン、地下水ドレンの運用にあたっては、運用目標以上の一時貯水タンクの水は排水せず、運用目標未満になるまで、くり返し浄化を行います。ただしトリチウム濃度が運用目標以上の場合は、海洋への排水はせず、構内のタンク等へ移送します」とし、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず」とした。
2021年4月13日、政府は「ALPS処理水の海洋放出に当たっては、浄化処理や希釈等を行うことを前提に、福島第一原発において実施する」と表明した。
二、この間の全労協と対政府・東電との話し合いをうけて。①同じ放射能汚染水であるのに、約束違反の放出を強行すると居直る国・東電。②本音はいくら汚染しても平気な国と東電。危険な放射性核種の海洋排出を、これからさらに長期にわたって強行し、そうした行為を世界で通用させようとするもので、世界の海洋汚染を悪化させるものだ。③生態系全体への汚染(食物連鎖に伴う生体濃縮の進行)の拡大④政府の「基本方針」にいう海洋放出―パイプラインによる投棄は、ロンドン条約・同議定書および国連海洋法条約に違反している。⑤第5次環境基本計画の「予防的取組方法」をも踏まえ、予防原則に基づき海洋放出を止めろ。他の方法(大型タンクでの長期保管・モルタル固化保管等)、雨水・地下水の流入の阻止、デブリの空冷、トリチウムの除去技術など、可能な限り早く判断し実行せよ。
三、文科省が2021年10月に公表した『放射線副読本』(小学生、中学生用)およびチラシの「全国の学校に無償で配布」を撤回させよう。
『放射線副読本』は「廃炉に向けた課題」で放射能汚染水の海洋放出を取り上げ、①放射性物質を取り除き②大幅に薄め③健康や環境への安全を確保するための基準を満たして、海に放出される。そして2枚のチラシを紹介している。①復興のあと押しをまず知ること②アルプス処理水について知ってほしいこと。イ、トリチウムは身の回りにたくさんある。ロ、トリチウムは健康への影響はない。ハ、トリチウムは世界でもすでに海に流している。
まったく許せない。撤回を求めよう。
私たちはすべての職場と地域から、国と東電による放射能汚染水の海洋放出強行を決して許さない闘いを全力で推し進めよう。
「放射線副読本」
いわきは不使用
続いて、狩野光昭さん(いわき市議、福島原発労働者センター代表)が福島現地からの訴えを行った。
「『放射線副読本』について、いわき教育委員会に使わないよう申し入れをし、教育委として使わないと表明した。労働相談センターで行っていた過労死裁判は終結した。重傷の労災事故も起きている。コロナ感染もものすごくまん延した。コロナ感染の影響もあるだろうが、年4回新聞折り込みチラシを入れているが相談が減ってしまっている。作業員は1日3~4千人が就労している。熟練労働者が減っている。宣伝活動を強めていきたい」。
「汚染水の海洋放出について。2023年3月、岸田総理は汚染水海洋放出を自らが決断すると表明。海底トンネル工事や希釈試験を実施し、6月末を目途に放出の準備を進めている。放出用のトンネルは9割出来ている。魚が売れるのか。海水浴場を開くことができるのか。県の態度、知事は反対と言わない。夏には放出が強行される可能性がある。凍結・中止のためには世論の力しかない」。
「汚染水海洋放出の問題点。燃料デブリに触れた汚染水をタンクに保管しているが、約7割が基準超え。汚染水発生量は毎日約100㎥が発生。汚染水はエンドレスで増え続け、放出は約30~50年続くと言われている。薄めて放出しても総量は変わらない。原発団研の柴崎直明福島大教授は①サブドレンの増強②集水井③広域遮水壁の設置を要請している」。
「県内の世論は説明が分かりにくい、不十分だという意見で、放出反対が多数を占めている。燃料デブリは取り出せない。空き地にタンクをつくれ。トリチウムは100年間保管すればリスクがなくなる。圧力容器を支える台座が溶けて倒壊する可能性も出ている。放射能汚泥、作業員の被ばく、東電は綱渡りで処理作業をしている。科学的立証が出来ていない。反対運動の現状について。トリチウム海洋放出反対の署名は37万余筆集まっている。みやぎ生協、福島生協、宮城県漁連などの署名が24万筆集まっている」。
「これ以上海を汚すな!市民会議」は毎月13日スタンディングを行い、ハガキ運動も行っている。孫たちの世代の人たちになぜ反対しなかったのか言われないようにしたい。福島だけの問題ではない、世界の問題でもある。がんばろう。
宮城県漁協も
反対姿勢堅持
次に、宮城全労協の大内忠雄さんが宮城での取り組みを報告した。
「宮城では漁協が強力に反対している。陸地では稲わらや牧草が汚染された。地方自治体は仮放置していたが、それを一般ごみに混ぜて焼却するとした。それに対して差し止めを求めて裁判を起こして闘っている。宮城県は日本第3位の水産県。カキやホタテなど年間25万トンの水揚げがあった。震災直後は船もいかだも流された。ようやく震災前に近づいている。国や県のデータは信用できず、自分たちで独自に調べている」。
「風評被害が出ている。県は漁業・農業・環境・県議会などを集めて処理水対策会議を開いているが、知事が国の施策を受けているので、有効な施策を示していない。国は風評被害で福島県に補償をしているが宮城県や茨城県への補償を認めていない。野党共闘・市民連合は脱原発でいっしょにやっている。3月25日、女川原発再稼働反対などで集会を開き400人が集まった。そこには福島の漁民が参加し『東京湾に放射能汚染水をなぜ流さないのか。海はゴミ箱ではない』と怒りのアピールを行った。ともにがんばっていこう」。
続いて、行動提起が行われた。5月16日午後6時半、「汚染水を海に流すな!5・16東京集会」日比谷野外音楽堂。新たな署名「トリチウム汚染水の海洋放出に反対する署名」を取り組むなど。トリチウム海洋放出問題もまったなしに近づいている。放出阻止のためにがんばろう。 (M)
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