4.21入管法の改悪に反対する大集会

日本政府は難民条約を守れ
国会正門前で2000人が廃案訴え

 【東京】4月21日午後7時から、国会正門前で「入管法の改悪に反対する大集会」が開かれ、延べ2000人が集まった。
 先週から衆院法務委員会で入管法改悪法の審議が始まった。日本維新が「適切な難民認定を行うための情報収集や職員育成などの規定を設ける」修正を求めた。自民党が修正に応じる姿勢を示し、来週にも採決をしたい意向だという緊迫した状況の中、本質的問題を棚上げにする「修正」などありえない、廃案のみだと、委員会の開かれた日に午前11時から夕方まで、衆院議員会館前で抗議の座り込みが続けられた。
 21日の国会前集会には、子ども連れなどの外国人の姿や日本人の若者たちが多く集まり、スピーチに対して大きな声で同意を示し、法案の廃案を求める熱気あふれるものとなった。

修正では解決
にならない!
 国会議員の本村伸子さん(共産党、衆院議員)が、自民党から来週にも裁決の要求が出されていると報告があり、山添拓さん(共産党、参院議員)も駆けつけ発言。その他、鎌田さゆりさん (立憲、衆院議員)、石橋みちひろさん(立憲、参議院)、岸まきこさん(立憲、参議院議員)、大椿ゆうこさん(社民、参院議員)が文書でアピールした。
 石橋さんは「難民等保護法案」を参議院に提出する準備をしていることを明らかにした。大椿さんは、夫が外国人であることを明らかにし、「入管事務所に行ったとき、テーブルにいろんな言語の落書きがあり、収容された人たちのいらだち、心の叫びを感じた。難民申請3回目で強制送還の可能性が強まることを強く批判し、維新の修正では何も解決しない、廃案のみだ」と訴えた。

許されない
レイシズム
 スピーチでは、難民を支援してきた多くの団体、参加した外国人、作家やジャーナリスト、ディスクジョッキーなど多彩な人々がそれぞれの思いを語った。一部のみ紹介する。 日本のレイシズムに反対する学生。「強制送還に反対するアクションを行い、入管施設で収容者への面会を行ってきた。ある外国人が中学生で来日し、半年間収容された。ある日、収容所で体をぐるぐる巻きに縛られ、バスに乗せられ空港に連れていかれ強制送還された。外国籍というだけで、こうした扱いを受けるのは許されないレイシズムだ。難民申請を3回もしたら、犯罪者扱いで送還をどんどん行うことになる。戦争・気候変動で、自由を求めて移動する人たちを止められない。入管のレイシズムにノーの声をあげ、がんばろう」。
 安田さん菜津紀さん(フォトジャーナリスト)。「国家が命の簒奪をする。残忍な法案で、差別の法制化だ。シリアを取材した。『日本は安全だから子どもだけでも日本に連れて行ってくれ』と言われた。しかし、日本は難民として認めないし、いつまで収容されるか分からない。こんな絶望に歯止めをかけ、希望に向けてがんばろう」。
 移住連。「入管法改悪反対の署名18万余筆が集まっている。今回の法案では、難民認定中でも強制送還させる、処罰を与える。2000年代には30万人のオーバーステイ者がいたが、今のように追いつめられることはなかった。2015年から一斉排除するようになった。在留資格がないと尊厳と命を奪う。来週大詰めになる、廃案に向けてがんばろう」。
 つくろい東京ファンド。「仮放免の難民を支援している。仮放免者は働けない、社会保障がなく、ホームレスになるしかない。亡くなってしまった人や自殺した人もいる。あるオーバーステイ者は食べるものがない、電気・ガスが止まってしまった。絶望して首・手首を切った。廊下に血が流れて病院に緊急搬送された。退院したが保険に入っていないので15万円かかった。警察も来たが、何もできないのでこのままで居てくれという対応だった。路上生活していたが、何とか我々の支援で生活できるようになった。赤ちゃんが病院に行くと2~3万円かかる。いとも簡単にホームレスになる。生きていけない環境だ。入管のえらい人にこういう状況を知っているかと聞くと『状況は承知している』と答えたのに何もしない。2022年11月、国連が日本の入管行政・仮放免者について懸念するとし、①収容者のケア②就労を認めるように改善を求めた。今回の法案には収容者の待遇の改善についてどこにも書いていない。国連の勧告を踏まえていない。仮放免者が生きていけない状況が続く。百害あって一利なしの法案は廃案しかない」。

何も反省せぬ
法務省・入管
 参加した外国人の発言。「13歳の時来日し、31歳になる。仮放免中だ。東日本大地震の時、気仙沼に3週間行き支援した。熊本地震の時も支援に行った。難民者として感謝を伝えるためだ。税金を払って、ルールを守って生きている。母国といってもよその国だ。そこに強制送還されたら生きていけない。子どもたちを守ってほしい」。
 指宿弁護士が「ウィシュマさん死亡事件について、点滴をしていれば助かった。法務省・入管は何も反省していない」と指摘し、「法案に反対している野党は少なく、維新が成立させようとしている。それでも国会には市民がいる。反対の声が広がれば入管法改悪は止められる。2年前も止められた。SNSで反対の声を集めよう。修正協議、合意に絶対にのらない。廃案一択だ。廃案にむけて頑張ろう」と話した。
 作家の中島京子さん、BAND、沖縄の榎森耕助さん(ユーチューバー)などの発言が続いた。最後に、反貧困ネットワークの瀬戸大作さんが、「ネットワークの予算の3分の1が外国籍の人のために使われている。家を失い、今日行くところがない。公園で暮らしている。在留資格がなく仮放免だ。14世帯がシェルターで暮らしている。腸閉塞で今日退院した人は35万円かかった。私たちの支援に国籍は関係ないからだ。本来は国の責任だ。就労資格を与え、医療費を保障しろ。15年前アフリカから逃れてきた人がいる。帰りたくないのではなく、帰れないのだ。国に帰るより日本の刑務所にいた方がよいという。入管法改正案が通ったらどうなるか。どういうことをしなければならないか。体を張って守っていきたい。仲間だ共に生きていく」。
 ミャンマーから逃れてきたミョーさんが「イスラム教にとって今が年末だ。ミャンマーでは人が苦しんでいる。毎日子どもたちが死んでいる。仮放免者は命をかけて助けを求めている。私に支援がなければ入管で死んでいたかもしれない。80㎏あった体重が46㎏になった」と発言し、「日本政府は難民条約を守れ、人殺しの入管を許すな」と全体でコールした。入管法改悪法案を絶対に廃案へ。さらに行動を強めよう。           (M)

外国人差別の入管法改悪に怒り(4.21)

資料

困窮者支援団体・平和・人権団体による
「入管法改定案の廃案を強く求める共同声明」
233人もの基本的人権を剥奪する「入管法改正案」に強く反対し、廃案を強く要求します

 私たちは、生活困窮者を支援する市民団体、難民移民支援団体・平和・人権団体です。私たちが支援する人たちのなかには、今回の「入管法改正案」が「送還忌避者」として強制送還の対象にする外国人が多く存在しています。入管庁によれば4233人存在するという「送還忌避者」は、在留資格がないがゆえに、基本的人権すら剥奪されています。それゆえ私たちは、仮放免許可を得て地域社会で生活する「送還忌避者」の生活支援をしています。就労を禁止され、収入を絶たれているがゆえに、すべてを他人の支援に依存せざるをえない生活が、数年間、人によっては十数年にわたって続いています。難民であるがゆえに出身国に帰れない人もいれば、バブル経済期に出稼ぎで来日し、滞在が30年に及ぶ人もいます。日本生まれで、公立の小中高校に通っている人もいれば、すでに大学を卒業した人もいます。
 現在国会で審議されている「入管法改正案」は、これら在留資格がない外国人のうち、「保護すべき者を確実に保護」するためとして、新しい制度の創設を提案しています。しかし、私たちは、「保護すべき者が保護されていない」ことに問題の本質があるとは考えていません。問題にすべきは、帰国できない理由が何であれ、現在の日本に、何年にもわたって基本的人権を政府によって剥奪された人が存在する事実ではないでしょうか。
 法案は、「退去を拒む外国人」、つまり「保護しなくてよい」とみなした外国人を「強制送還」すれば問題が解決するかのごとくですが、政府は、これまでもずっと「帰国を促すため」として、在留資格がない外国人に対して暴力を行使してきました。私たちが支援している仮放免者たちは、長期にわたる入管制度の暴力で、心身ともに深く傷ついています。入管の制度の暴力で、心身を病み、命まで落とす人がいることは周知の事実です。それだけの暴力をもってしても、帰国させることはできないのです。ということは、政府が提案している「送還忌避問題の解決」とは、それを上回る暴力的な制度でしかありえず、到底容認することはできません。
 法案では、長期収容をなくすために、監理措置の導入も提案されています。しかし、監理措置下で基本的人権を剥奪されている事実は変わらず、何の解決にもなりません。そもそも市民団体は、入管の下請け機関ではありません。市民に入管の役割を肩代わりさせ、仮放免者を監視、監理させる制度導入に強く抗議します。
 民主主義国家において、人権を剥奪された人がひとりでも存在する事実は深刻であり放置できません。ましてそれが、何年間にもわたって、数千人に及んでいるのが現状です。しかもそれを、政府が故意につくりだしているのです。「送還忌避者」の側に問題があるのではなく、入管制度の理念が根本において破綻していることに問題があることは明らかです。
 人間であれば誰もが生まれながらにして持つ基本的人権が、外国人については、「在留制度の枠内でしか保障されない」、という政府の解釈を私たちは到底受け入れることはできません。しかし政府がその解釈を譲らないのならば、基本的人権を奪われる人が存在しないようにするためには、すべての外国人を「在留制度の枠内」に入れるしかありません。つまり「送還忌避者」に在留資格を付与するしか解決策はありません。
 私たちは、グローバル化した現代社会に適合した、すべての外国人の人権を保障する制度の創設を求めます。私たちは「送還忌避者」が在留資格を認められ、人権を取り戻す日まで支援を続けます。
2023年4月19日
 
【提出団体】
一般社団法人反貧困ネットワーク/一般社団法人つくろい東京ファンド/特定非営利活動 法人北関東医療相談会/特定非営利活動法人 TENOHASI/一般社団法人あじいる/四ツ 谷おにぎり仲間/NPO 法人さんきゅうハウス/ひとさじの会/府中緊急派遣村/こまえ派遣村/蒲田・大森野宿者夜回りの会/寿医療班/NPO 法人サマリア/特定非営利活動法人わかちあい練馬/コロナ災害対策自治体議員の会/生活保護費大幅削減反対!三多摩アクション/反貧困ささえあい神奈川/津久井やまゆり園事件を考え続ける会/反貧困ささえあい千葉/ポレポレ 佐倉/宗教と平和を考える市川宗教者の会/ZENKO 千葉/いいね狛江/月末食堂委員会 /「なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワーク世話人会/NPO 法人 移住者と連帯する 全国ネットワーク/外国人人権法連絡会/マイノリティ宣教センター/アトゥトゥミャン マー支援/クルドを知る会/在日クルド人と共に/クルド難民デニスさんとあゆむ会/ク ルド人難民 M さんを支援する会/牛久入管収容所問題を考える会/多文化共生プロジェク ト/エルクラノの会(日系ブラジル人エルクラノ君集団殺害事件を忘れない!)/NPO アデイアベバ・エチオピア協会/収容ではなく安心安全な暮らしを/仮放免者等の在留資格 を求める日本人配偶者の会(イマジン)/反差別国際運動/あなたの公―差―転 kosaten/入管収容問題を考えるソーシャルワーカーネットワーク/パレスチナ連帯・札幌/BOND(外 国人労働者・難民とともに歩む会)/START〜外国人労働者・難民と共に歩む会/ #FREEUSHIKU/入管を変える!弁護士ネットワーク/Save Immigrants Osaka/入 管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合/TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)/ 平和フォーラム/ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク「のりこえねっと」/TransgenderJapan/AWCYouth(アジア共同行動関西青年部)/市民の意見 30 の会・東京/だめ連/東京・地域ネットワーク/希望のまち東京をつくる会/市民自治 をめざす三多摩議員ネットワーク/全国フェミニスト議員連盟/困っている人に寄り添う 小金井の会/部落解放同盟東京都連合会/部落解放同盟東京都連合会練馬支部/NPO 法人 練馬人権センター/避難の協同センター/ヘイトスピーチ許さない・練馬/NPO 法人ウィズ・ザ・スモール/I女性会議練馬支部/I 女性会議板橋支部/市民フォーラムよの/杉並 から差別をなくす会/むさしのから差別をなくす連絡会/暮らしささえあいネットワー ク・よりそい北杜/研究所テオリア/医療と福祉の戦争協力に反対する連絡会議/自治市 民/平和カフェ/Mamademo/株式会社橋本新企画/シニアも活き活きはとにプロ/消 費者問題を考える会/にいざしみんホーキの会/くめがわ電車図書館/NPO 法人エコ・コ ミュニケーションセンター/認定 NPO 法人世界の医療団/安保法制の廃止をめざす中野アピール実行委員会/ほしのいえ/反差別国際運動/もの申す女性たち/労働と生活を守る会/日本山妙法寺/平和をつくり出す宗教者ネット/基地のない沖縄をめざす宗教者の集い/特定非営利活動法人 日本ソーシャルワーカー協会/反貧困埼玉/フリーター全般労働組合
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