「ウクライナ現地報告と身勝手な米国の外交」
4.22志葉玲さん(ジャーナリスト)講演会
市民憲法講座
【東京】4月22日午後6時半から、文京区民センター会議室で「志葉玲さん(ジャーナリスト)講演会」が主催:許すな!憲法改悪・市民連絡会で開かれた。志葉さんは昨年4月と今年の2月に、ウクライナの戦争現場を訪れ取材した。そして、20年前の米軍によるイラク侵略戦争、パレスチナについても現地を取材している。そうした戦争現場の取材の中から、日本・世界の反戦運動に何が問われているのかを取材映像を交えながら語った。
志葉玲さんの講演から
ウクライナ人は猫・犬など動物好きだ。避難所にも連れていっている。人柄は素朴で親切で酒好き。(どんな人がいるかで、映画俳優やユーチューバー、ミュージシャンを紹介)。18~60歳の男性は兵役につかせるために出国が禁止されている。これを逃げる権利を奪っているという批判が日本の中にあるが、現地ではどうだろうか。キーウで音楽活動をしているミュージシャンは、残って音楽活動をすることが抵抗のあかしだ。ウクライナ侵攻をテーマに歌を作っている。ウクライナ戦争は米ロの対決というパワーゲームではなく、ウクライナの人々のことを知ってほしい。戦意高揚の歌が多い中で、「とにかく恐い、つらい、戦争へのものすごい怒り、どうなってしまうのか、負けてたまるか、屈しない、希望を持つ」といった歌詞だ。
NATOの東方拡大がウクライナ戦争の原因で、ロシアが追いつめられたという意見がある。ウクライナ人・当事者不在の陰謀論がある。バイデンが戦争を仕掛けたというものまで。ロシアを擁護し、ウクライナにも戦争の原因があるかのような意見。
プーチンは偉大なロシアの復活を目指している。決してウクライナという国家名を使わずキーウ政権という言い方をする。ウクライナを国家として認めていない。ロシア人とウクライナ人とは同じとして、ウクライナ人を認めていない。2014年、汚職がひどいどうしようもないヤヌコビッチ政権を50~80万人の民衆が蜂起して倒した。ヤヌコビッチはロシアに亡命した。プーチンはクリミアを併合し、ドンバス2州でウクライナ軍と戦争した。戦況が危うくなり、ロシア軍が入った。ウクライナ戦争はすでに2014年のドンバス戦争から始まっていた。ドンバス戦争はロシアの軍人が指導して戦争をやっていた。私はウクライナ戦争はロシアの侵略と見なす。
ロシア系住民
も反ロシアに
去年4月に、ロシア国境に近いハルキューに入った。中央子ども病院など建物がすべて、ミサイルなどで壊されている。地下鉄は臨時の待避所になっている。取材中にも爆撃を受ける。民間人に対する攻撃は戦争犯罪で許されない行為だ。この地域はロシア語話者が多い。ロシア系住民が弾圧されているから助けるために侵攻したというプーチンの言い分はまったく理屈に合わない。
街の至る所攻撃している。1日18回攻撃、どんどん爆弾が降り注いでいる。どこにも安全な所はない。ウクライナ人だけれど、ロシアに住んでいた。ロシア人の女性と結婚。ロシア大好きだった。今年の2月にも会ったが、自分の中に、ロシア人を憎む心が起きている。どうしていいか分からないと言っていた。プーチンだけでなくロシア人が悪いと思うようになった。ロシア人は戦争を支持している。反ロシア感情が強まっている。今後にこの感情は後を引くだろうし懸念される。
在日ロシア人が渋谷で反戦デモをやっている。勇気ある行動だ。ロシアにいる家族が逮捕されるかもしれないのに。ロシアで苦しい思いをしている人を忘れてはならない。
バフムトでは
無差別の破壊
今年2月、東部の激戦地のクラマトスクとバフムトを取材した。クラマトスクは工業都市・交通の要衝だ。その前線がバフムト。村々が完全に廃墟になっていた。病院が完全に破壊されている。アパートが攻撃され、20人が死傷した。ロシアはイスカンデルという精密誘導ミサイルを使っているというのにだ。工場が閉鎖され、仕事がなく困っている。スーパーマーケットは閉まっている。食料調達することがたいへん。ボランティアが危険を顧みずに、段ボールに入れて食料を配っている。ウクライナはとても寒い。
バフムトは本当に厳しい。後、数日で陥落すると言われていたが、それ以後2カ月以上持ちこたえている。人道支援団体も入れない。私は奇跡的に入れた。水道が破壊されているので、水を配っていた。電気・ガス・水道がダメになっている。がれきの山、砲撃音。1時間ほどの滞在だった。大砲の音、本当に厳しい状況だ。
即時停戦は
非現実的だ
日本の有識者が即時停戦を呼びかけた。このことについて受け入れるか、ウクライナ人に聞いてみた。「戦争は早く終わってほしいがロシアと妥協するつもりはない。2014年のドンバス戦争で停戦合意したが守られなかった。停戦しても①結局はまたロシアは攻めてくるだろう②ブチャのロシア軍による大虐殺が大きい。1カ月占拠され、住民虐殺が起きた。ロシア側はウクライナ側の自作自演と主張した。しかし、私は遺族に事細かく話を聞き、遺体なども見た。検視を行っている。後ろから撃たれた。拷問の痕がある。子どもの射殺死体も確認した。虐殺がなかったというのには無理がある。自分はウクライナ当局の協力を得ていない。独立した立場で取材した。
即時停戦というが、ロシアに占領されている所の人権侵害をどうするか。ロシア軍はウクライナ人に対して拷問、性的暴行などあらゆることを起こした。占領地を取り戻さないと平和は訪れない。
性的暴力の取材は難しい。それでキーウの警察報道官に聞いた。夫を殺し子どもを人質にとり、抵抗できないようにして何度も妻をレイプした。15~16歳の少女たち、5歳の子どもも被害にあった。金品を強奪し、広範にレイプを行った。
ロシア批判を
全世界の声に
欧米の武器供与をどう考えるか。ウクライナ人に戦うのをやめろ、ウクライナ人に和平を受け入れろというのか。それはウクライナ人に聞いてもらえない。
では、どうするか。あくまで非暴力ということなら、「国連憲章を守れ」、中国等「中立国」に対し、「ロシアをかばうのはやめろ」と批判を続けること。ロシアの継戦能力を奪うには、対ロ制裁に参加していない中国やインドにも厳しい姿勢で臨むことが必要。岸田政権のウクライナ戦争を利用した軍拡を許さず、東アジアの緊張緩和を。東アジアの平和とウクライナの平和はつながっている。米国政府はイラク侵略戦争を反省し、国連憲章、国際人道法を守れと言いたい。9条を世界に広めるべきだ(イラク戦争、パレスチナ、イラン核合意問題などの後半部分、質疑応答は省略した。発言要旨、文責編集部)。
(M)

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