5.16汚染水を海に流すな!東京行動
福島から急きょ駆けつけ抗議
これ以上、私たちを苦しめるな
【東京】5月16日、「汚染水を海に流すな!東京行動」が行われた。これ以上海を汚すな!市民会議とさよなら原発1000万人アクション実行委員会の呼びかけで、のべ1000人が参加した。
現在、政府と東京電力は、福島第一原発事故により発生したタンク貯蔵汚染水を、「ALPS処理水」として「海洋放出」しようとする動きをしているが、そうした流れに反対する行動だ。「海洋放出」の時期は今年の「夏頃」とされている。言うまでもなくこの海洋投棄の動きは「被害者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という政府・東電からの福島県漁連や全漁連に対する約束(2015年)を完全に反古にするものだ。
この日は早朝からバスでかけつけた福島の仲間たちを先頭に、朝10時半から東京電力本店前で抗議と要請の行動を行い、12時からは国会議員とともに「汚染水を海に流すな!国会前集会」を衆院第2議員会館前で開催し、さらに午後2時から3時までは衆院第1議員会館多目的ホールで「政府と国会に要請・院内集会」、さらに午後6時半から7時15分までは日比谷野外音楽堂で「汚染水を海に流すな5・16集会」、そして午後7時半から銀座デモ、という文字通りの全1日行動となった。
東電本店前で
怒りの訴え!
10時半からの東電本店前アピール要請行動では、国内外、マスコミを含めて多数が集まった。「これ以上海を汚すな市民会議」の佐藤和良共同代表が「4月のG7環境相会合で、西村経産相に対しドイツのレムケ環境相が記者会見で『処理水の放出を歓迎できない』と語ったことを紹介し、海洋放出反対の声が全世界で広がっている」と訴えた。ここでは、汚染水の海洋放出の中止を求める要請書を「これ以上海を汚すな」共同代表の織田千代さんが読み上げ、東電社員に手渡し、6月16日までの回答を東電に求めた。この東電行動には150人が参加した。
12時からは衆院第2議員会館前で、国会議員も参加して「汚染水を海に流すな!国会前集会」に320人が参加し、立憲民主党の山崎誠衆院議員、近藤昭一衆院議員、川田龍平参院議員、社民党の福島みずほ参院議員、共産党の岩淵とも参院議員が連帯のアピール。また講談師の神田香織さんも発言。さらに韓国の環境運動連合からの「汚染水の海洋放出は国家の暴力・陸上で長期保管を」というアピールも紹介された。
衆院議員会館
でアピール
午後2時からの衆院第1議員会館多目的ホールでの院内集会では、主催者あいさつに続いて内閣総理大臣と衆院議長あての要請書が読み上げられ、原子力規制庁と衆議院事務局の担当者に手渡された。
また山崎誠衆院議員(立憲民主党)、笠井亮衆院議員(共産党)からのあいさつと、福島から放射能市民測定室「たらちね」の藤田医師、古市三久県議などがあいさつした。いわき市から京都に避難のAさん、南相馬から神奈川に避難した村田さんがスピーチした。
第1議員会館前で入管法改悪反対の抗議集会をしていた参加者の人たちと共にがんばろうとエール交換をした。
こんな政治を
やめさせよう
日比谷野外音楽堂で午後6時半から「汚染水を海に流すな!5・16東京集会」が行われた。
主催者を代表して「さよなら原発1000万人アクション」実行委員会呼びかけ人の鎌田慧さんは「岸田内閣の下で、今までやってきた原発政策のすべての悪事が進んでいる。それはまさに『カネの亡者による原発強行』以外の何ものでもない。放射能をバラまき、汚染水を流し続ける人類にとって最もひどい政治だと言っていい。自分たちで失敗を抱き込んでまわりに迷惑をかけつづけているのだ。山も海も地球全体を汚染してきた政治だ。『危険物を海に流すな』ということは重要な結節点なのだ」と怒りをこめてアピールした。
基調報告を行った「これ以上、海を汚すな市民会議」共同代表の織田千代さんは、「放射能汚染水の海洋放出をしない」という約束を守らなかったことを絶対に許さないとアピールし、海洋放出を私たちの手で進めていくことなどあってはならない」と強調した。社民党の福島みずほ党首・参院議員は、「海はみんなのもの。汚染水を海に投棄し、汚染土を新宿御苑に埋めるなどということがあってはならない」と訴えた。また川田龍平参院議員も駆けつけあいさつした。
銀座デモで
人々に訴え
会津若松から参加した片岡輝美さんは「一人ひとりの思いを知事や町長に届ける活動を呼びかけ、県議会に1300通が届けられた。その中で小学校4年生の子どもが、『魚の住む海に汚染水を流さないで下さい』と書いていた」ことを紹介した。アメリカからも「核のない世界を作ろう」と訴える葉書が寄せられた、という。
4月13日にグローバルアクションを、という訴えには思いを超える広がりがあり、フィリピンの若い漁師たちがマニラの日本大使館前で訴えたり、南西諸島から若者が「連帯して海を汚さない行動を」との訴えがあったという。
さらに「東電には知識がないようだ。共に問題を考えよう。海は東電のものではない」という発言、南西諸島に住む若者からのアピールが届けられた。
福島県漁連の柳内孝之さん(小名浜機船底引網漁業協同組合)は漁業者の立場からの訴えを行った。その中では現在は震災前の2割ほどに回復しているが、試験操業中に汚染水がタンクから漏れる事態もあった、という。
首都圏の報告は大束愛子さん(放射能汚染水の放出に反対する北区の会)と環境まちづくりNPО元気力発電所からのアピール。集会の最後に佐藤和良さん(これ以上海を汚すな!市民会議)からの行動提起を受けて参加者500人が銀座デモを行った。 (K)
理解と合意なき汚染水の海洋放出の中止を求める要請書
2023年5月16日 内閣総理大臣 原子力災害対策本部本部長
岸田 文雄 様
政府は、福島第一原発事故により発生したタンク貯蔵汚染水を「ALPS処理水」として、海洋放出しようとしています。
事故から12年、政府の原子力緊急事態宣言は未だ解除されていません。政府の「1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」は30〜40年で廃炉としてきましたが、2021年実施の燃料デブリ取り出しも延期されて見通しが立たず、福島第一原発の廃止措置の完了形態も法的に定められていません。
にもかかわらず、政府は「復興と廃炉の両立」の美名のもと、「廃炉を計画的に進める必要」「デブリ取り出し等に大きなスペースが必要」があるとして、一昨年4月13日、汚染水の海洋放出処分を決定し、本年1月には、「ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議」が、「設備工事の完了、工事後の規制委員会の使用前検査やLAEAの包括的報告書を経て、海洋放出の時期は、本年春から夏頃と見込む」と放出ありきの強行姿勢を続けています。
これは、『関係者の理解なしには如何なる処分も行わない』という政府と東京電力の福島県漁連や全漁連に対する2015年の文書約束を反故にするものです。
政府は、漁業者はじめ福島県内農林水産業・消費者の協同組合による共同声明や福島県内自治体議会の海洋放出反対・慎重の意見書、宮城県など周辺自治体の反対意見などの国内の声を無視し、アジアの近隣諸国はじめ昨年の国連総会で大統領が反対演説を行ったミクロネシア連邦やオーストラリアなど16ケ国が加盟する太平洋諸島フォーラムや全米海洋研究所協会などからの安全性への懸念など、世界の声を軽視しています。
翻って、約132万トンを超えるタンク貯蔵汚染水を、年間22兆ベクレルを上限に30年を超えて放出する計画は、トリチウムや炭素14を含めた核種を、告示濃度限度以下にして流すものですが、海水で薄めても放射性核種の総量は同じです。放出水に含まれる全ての放射性核種の定量確認もないまま、多量の放射性核種を福島の海から流せば、太平洋に広がり海洋環境が汚染されていきます。
東京電力は、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮は「1年以内で平衡になる」と放出による放射能の蓄積とフィードバックを過小評価しており、政府は不十分な放射線影響評価を東京電力に見直させるべきです。また、被害の発生を前提にした「風評対策」は、廃炉を優先して復興を犠牲にするもので、多くの福島県民が不信感を抱いています。
まず、『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』という福島県漁連等との文書約束を守ることが、福島第一原発事故対策を進める政府の責任であり、信頼関係の前提です。このまま強引に放出を強行すれば将来に大きな禍根を残します。
ふるさとの海、日本の海、世界の海を放射能でこれ以上汚してはなりません。
私たちは、放出の中止を強く要請し、6月16日までに誠意ある回答を求めます。
記
1、海洋放出について、福島第一原発事故及び汚染水発生の原点に立ち返り、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする福島県漁連等との文書約束を守り、理解と合意のないまま汚染水の海洋放出は行わないこと。
2、情報公開と放射線影響評価の見直しについて、政府は東京電力に対し、放出する全放射性核種の濃度、総量などの全情報を公開し、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮による放射能の蓄積とフィードバックを再評価して、原子力規制委員会に改めて補正書を提出するよう求めること。
3、汚染水対策について、地下水の止水、大型タンク長期保管案やモルタル固化保管案等の検討、トリチウム分離技術の実用化など、汚染水についての抜本対策を早急に確立すること。
4、説明・公聴会について、福島県はじめ全国で本件の説明・公聴会を東京電力とともに開催し、汚染水対策について国民的議論を行うこと。
以上
これ以上海を汚すな!市民会議 共同代表 織田千代 佐藤和良
さようなら原発1000万人アクション実行委員会
呼びかけ人 鎌田 慧
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