5.23狭山事件の再審を求める市民集会
石川一雄さんの再審無罪かちとろう
袴田さんに続こう
東京高裁は事実調べを開始せよ
無実を叫び60年
【東京】5月23日午後1時から、東京・日比谷野外音楽堂で「無実を叫び60年!袴田再審に続け!東京高裁は事実調べ・再審開始を!」狭山事件の再審を求める市民集会が同集会実行委の主催で開かれた。あいにくの冷たい雨と風の吹き荒れるなか、全国から集まった部落解放同盟員や労組・市民などがなんとしても、石川一雄さんの再審・無罪を勝ち取るという強い意志により、集中した集会を成功させた。
集会の前に、プレイベント「獄友イノセンスバンド(小室等、うじきつよしなど)」によって、素敵な歌が披露され、集会を盛り上げた。
51万筆の署名集まる
西島藤彦さん(部落解放同盟中央本部委員長)が「昨年8月に、11人の鑑定人尋問と万年筆インクの鑑定を行うよう裁判所に要請した。そして、要求実現のために署名運動を行い、いままでに51万筆が集まった。大野裁判長は今年12月に退官する。その前になんとしても鑑定人尋問を実現し、再審の展望を開く。袴田再審に続け、ギリギリの闘いに入っている。時間をのばせない」と開会のあいさつをした。
次に参加した福島みずほ参議院議員が「何としても再審無罪を。充分無罪の証拠がある。再審法の改正をしなければならない。①全面的な証拠開示②検察官の抗告の禁止などが必要だ」と述べた。遅れてきた近藤昭一さん(立憲、衆議院議員)と大石あきこさん(れいわ新選組、衆議院議員)が連帯のあいさつを行った。
続いて、再審請求人の石川一雄さんが「逮捕から60年、無実を叫び続けた60年だった。悪夢の毎日だったが、今も元気でいる。勝利するまで、えん罪がはれるまで闘っていく。ご支援をよろしくお願いしたい」と力強く述べた。
連れ合いの早智子さんは「マスコミが狭山を取り上げている。60年間、権力にやられっぱなしではない。50万の署名が集まったように狭山の運動は動いている。万年筆のインクの鑑定をやってほしい。そうすれば無実は明らかだ」と話した。
インク鑑定が突破口
参加した狭山弁護団を一人ひとり紹介した後、中北龍太郎さん(狭山弁護団事務局長)が弁護側の主張の要点を語った。
「万年筆のインクの鑑定を突破口にして再審の扉を開けよう。脅迫状の筆跡が石川さんのものと違う。脅迫状には石川さんの指紋がついていない。犯人の足跡と石川さんの地下足袋が違う」。
「被害者が当日書いたペン習字の浄書の文字インクと被害者の使っていたインク瓶のインクからはクロム元素が検出されるが、石川宅鴨居から発見された万年筆を使って被害者のインクからはクロム元素が検出されないことを下山鑑定で、科学的に明らかにしたものである。これは、石川さん有罪の決め手となっている自宅から発見された万年筆は、被害者が使っていたインクとはいえないことを明確にしたもので、有罪の根拠を根底からひっくり返すものだ」。
「取調べテープには、一方的に自白を迫る取調べが録音されている。石川さんは警察官に教えてもらいながら字を書き、すべてひらがなで書いているにもかかわらず、誤字だらけだ。部落差別により教育を奪われ非識字者であり、脅迫状を書いていないことは明らかだ」。そのほか、中北さんは殺害方法についても検察側を批判した。
中北さんは「検察は2、3月に採用の必要はないという意見書を出した。弁護団として反論を書き裁判所に提出したい。鑑定人の証人尋問をすれば真実が明らかになる。袴田再審に続け」と結んだ。
差別された人の希望の灯
片岡明幸さん(部落解放同盟中央本部副委員長)が「逮捕から60年は何であったのか。決してムダな闘いではなかった。意義が3つある。①差別を受けている民衆に勇気と希望を与えた②労働組合での狭山の取り組みは70年代に全国に広がった。賃金要求などが組合活動の中心だったが、人権や差別問題を取り組むようになった③部落解放同盟にとっても重要であった。学校に行っても文字を奪われていた。そこで解放学校を作ってきた。教育、生活を安定させた。国家権力はひどいことをする、決してだまされないことを、狭山闘争を通じて自覚できた。しかし、狭山闘争に勝たなければならない。そうでないと意義は半減する」と話し、「万年筆のインクの実験をやってほしい。最後の決戦の時だ」と話した。
袴田さんの姉が激励
次に連帯アピールが行われた。袴田秀子さん(袴田巌さんの姉)が「57年闘いをやり、やっと再審開始になった。お礼を言いたくて来た。えん罪被害者の皆さんに再審を。今度は石川さんの番だ」と石川さんを激励した。
山崎俊樹さん(袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会)が「5点の衣類、味噌樽に浸かって変化した血液の色について、科学的な解明ができた。検察側も実験をしたのに、特別抗告できず、再審が確定した。その後の三者協議で、検察は検察側の立証について7月10日まで待ってくれと言ってきた。検察は有罪の立証を放棄すべきだ。裁判所はただちに無罪の判決を下すべきだ。石川さんと袴田さんは巣鴨刑務所時代に死刑囚として励ましてあったと聞く。狭山再審を実現しよう」と述べた。
菅家利和さん(足利事件えん罪被害者)は「私は13年前に、新たなDNA鑑定で無罪になった。検察官は取調べの時、『君は人間性がない』と非難したが、検察こそ人間性がなく、ずるい、絶対に許さない。石川さんの実家の鴨居から被害者の万年筆が出てきたとされているが三度目の家宅捜索で見つかった。それはインチキだ。証人尋問を一日も早くやってほしい」と訴えた。
青木惠子さん(東住吉事件えん罪被害者)が「2016年に再審無罪になった。21年かかった。石川さんはすべてをかけて闘っているし、多くの人が励まし支えている。石川さんの無実のために私も闘う」と激励した。
2005年に栃木県今市市(現・日光市)の小学1年生、吉田有希ちゃんが失踪し、他殺体で見つかった「今市事件」。勝又拓哉さんは裁判で無実を訴えたが、2020年に無期懲役刑が確定。客観的証拠が乏しく、有罪の根拠が事実上、自白のみだった。集会に参加した家族の人は「殺人事件で息子が逮捕されて9年目になる。えん罪事件です。支援をお願いしたい」と訴えた。桜井昌司さん(布川事件えん罪被害者)が連帯のアピールを寄越した。
真実は必ず勝つ
鎌田慧さん(狭山事件の再審を求める市民の会事務局長)が「石川さんはどれだけ涙を流してきたのか。でも、次は晴れる。正義を取り戻そう。一件でもえん罪事件があってはならない。被害者が乗っていた自転車が家にあった。石川さんがそこまで持っていくことはありえない。部落差別によって、石川さんを犯人としてでっちあげた。苦しみを感じ、生きようとする人間のことを裁判官は分かろうとしなかった。それは人間を殺していく裁判だ。狭山事件を解決していく」と語った。
集会アピール、閉会のあいさつの後、日比谷公園から東京高裁・外務省を回り、日比谷公園に戻るデモを行った。狭山再審を実現し、石川一雄さんに無罪判決を。 (M)
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