6.3キステム裁判勝利! パネルディスカッション

最高裁判決乗り越え
賃金・一時金差別の温存を突破しよう

非正規労働者に対する差別やめろ

 【東京】6月3日午後、「キステム裁判勝利! 非正規差別を打ち破る 6・3パネルディスカッション」が行われた。キステム東北支店の契約労働者であるTさんが「同一労働同一賃金」を求めて立ち上がった闘いを、全国の力で押し上げ、非正規労働者に対する基本条件(賃金・一時金・退職金)の差別を温存している最高裁判決の突破につなげるため、闘いの現状を確認した上で課題を共有し、今後の闘いの態勢を整えようとする取り組みだ。会場は港区立学習センターだったが、ズームを通して全国各地とも繋がれた。なお当日司会を務めた京都ユニオンの仲間は、前日の豪雨で新幹線が止まったため会場に来られず、京都から司会を行うという想定外のハプニングもあった。

差別のない社会
未来に残したい
 裁判報告、それを受けたパネルディスカッション、という基本構成の集会ではまず平賀雄次郎全国一般全国協委員長が主催者あいさつに立ち、物価高が続く現状で権利、処遇の同一性確立が中小・地域運動の重大課題になっていると強調し、労働契約法20条裁判での最高裁の不十分な判決を運動の力で何としても克服したいと決意を述べると共に、その力を結集しキステム闘争を押し上げようと呼び掛けた。
 続いて当該のTさんが支援へのお礼と共に、闘いへの思いを語った。そこでは特に、基本条件の差別を禁じた「パートタイム有期雇用労働法」(以下新法)ができて希望が生まれたこと、会社は希望に応えなかったものの支援が得られたことで希望がつながっていることが語られ、裁判が始まったことで辛くなったこともあるがこの機会を逃さず、差別のない社会を未来に残したい、不平等をなくしたい、と強い思いを語った。

差別の禁止か
不合理是正か
 次いでこの日の最初の主要テーマとして、Tさんの代理人である霜越優弁護士がキステム裁判の争点などを報告。ここでまず指摘されたことは、労契法20条の場合格差の不合理性の是正を対象として、不合理性の程度が問題になり比率判断が行われるのに対し、新法では第9条で業務が同等である労働者に対し「短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇それぞれについて、差別的取り扱いをしてはならない」と定められ差別禁止規定になっていること。このため今回の裁判では、主張の重点をこの新法9条に置いたと報告された。
 そしてその場合当然業務の同等性が問題になり、現にそれが争点であることが報告された。またこの問題に関連して、大阪医科薬科大学、メトロコマースの最高裁判断の問題として、比較対象の正社員が一定の上級管理者まで大幅に広げられ同等性のハードルが引き上げられていること、賞与や退職金の支給目的に優秀な人材の確保が挙げられ、不合理性判断を狭めていることが指摘された。
 そして霜越さんは、これらの最高裁判断があるとしても、裁判所は新法で一時金ゼロを維持できるのか、新法での判例がない中で何としても勝ちにつなげたいと決意を語った。
 この報告を受けていくつか議論が交わされた。ひとつは業務の同一性の問題。企業側も研究し業務に細かく差をつけたりし始めていることなどが今後対処が必要な問題として提起された。また新法9条でもなおハードルはかなり高いことも確認された。
 2点目は今後の裁判の進め方。これまでの公判整理のやり方では運動として難しい、何としても傍聴ができる公開裁判に、との強い要求が出された。

社会運動推進の
重要性を再確認
 パネルディスカッションは、霜越弁護士、郵政ユニオン本部顧問の中村知明さん、ヤマトウンユ20条裁判当該の畠山健治さん(宮城合同労組)がパネラーとして各々問題意識を提起することから始まった。
 霜越さんは、先の報告を踏まえて最高裁の枠組みをどう崩すか、その中での勝ち筋を見つけたいと提起。
 中村さんは非常に整理されたレジュメにそって郵政20条裁判の経緯、およびこれまでの最高裁判例比較を丁寧に辿り、先の霜越弁護士の裁判報告をあらためて理解しやすくする提起を行った。そして郵政の裁判においては、郵政ユニオンは正規社員も組合員であるため、正規の仲間が証言に立ち業務の同一性証明を具体的にできたことが大きな力になった、と特徴を述べた。
 畠山さんは、自分の裁判が敗訴になった経緯を振り返りつつ、会社がグレーゾーンを活用していること、および多数派労組(畠山さんの場合は連合傘下の運輸労連)が締結している一時金協定も差別温存の根拠にされていること、を克服すべき課題として指摘した。また畠山さんはその後正社員になったが、業務自体は非正規の時と全く変わっていないことも強調した。
 これらの提起を受け率直な意見交換が行われ、いくつかの課題が明らかにされた。まず、社会運動として法廷の外での闘いの重要性。この点では、闘いが会社を制度改善に向かわせている場合があることも含め、少数派労組が大きな役割を果たし得ることが確認された。また正規登用に関して、郵政ユニオン労組員への絶対排除を崩さない郵政労務の例が示され、労組差別との闘いを視野に入れる必要があることも明らかにされた。
 これらの討論を受けて星野憲太郎全国一般全国協副委員長が集約と決意表明に立ち、仕事の取り上げなどの職場での圧力をはね返す闘いも含め、署名運動や社前行動など外での闘いを強め、20・10・13最高裁判決(大阪医科薬科大学、メトロコマース)を何としても突破しようと呼び掛けた。そして、キステム闘争の勝利に向けた全国的押し上げへの決意を込めこの呼びかけが全体で確認された。
(神谷) 

非正規差別を打ち破ろう!パネルディスカッション(6.3)

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