沖縄戦から78年たたかう人びとに学ぶ
6.11共同テーブル近畿集会
共同テーブル近畿主催の、沖縄の闘いから学ぶ集会が6月11日、大阪PLP会館で開かれた。
呼びかけ人のひとり西尾慧吾さん(学生)が、日常の中に軍事基地がない大阪の市民にとって、沖縄のように基地が生活の中にしみこんでいることはどういうことなのか。直接聞いて学んでいこうとあいさつをした。
大椿裕子参議院議員は国会で前泊さんに出会って、社民党がんばって!と励まされたエピソードを披露。
初めの講演は明有希子さん(宜野湾市出身、東京在住)。明さんは「基地のそばで暮らすということ」と題して、娘さんが通っていた宜野湾市のみどりヶ丘保育園の庭に米軍のCH53ヘリコプターの部品が落下した事故の話をした。みどりヶ丘保育圓は、普天間飛行場のクリアーゾーンにある。(T・T)
明有希子さんの講演から
事実を認めない米軍、何も言えない防衛省
落下部品は数十センチで、重さ213g。上空から落下すれば相当の破壊力がつく。明さんは、主婦としてこの事故の原因糾明と再発防止として保育園上空の飛行禁止を求める行動に関わった。海兵隊は、落下物と同型の部品がCH53のものであることは認めたが、上空から落下したら破損するはずだと述べ、要するに落下を認めなかった。 防衛省と交渉すると、米軍が守ってくれていることを強調された。守ってもらっている立場での事故の糾明自体が不当であるというような態度で、逆に沖縄の政治家は何をしているのかと、矛先を変える始末だった。
普天間飛行場は、ここPLP会館から大阪城の噴水広場までの長さである(そう言われると相当の広さであることが分かる)。普天間飛行場は宜野湾市の中央の一番平坦な所に位置し、市面積全体の24%を占めている。さらに、米軍施設はこれ以外に、キャンプ瑞慶覧、陸軍貯油施設、海軍病院もある。
退避で中断する
体育の授業
普天間飛行場の周辺には、小学校10,中学校5,高等学校4,沖縄国際大がある。みどりヶ丘保育園に落下した事故の後、今度は別の場所にヘリコプターの窓が落下している。この場所の上空の飛行中止を要求しても米軍は無視をするので、普天間第2小学校にはシェルターが作られ、ヘリが飛んでくると、防衛局の職員の「逃げてください」の声に従い、子どもたちはシェルターに逃げる。こんな学校は全国でここだけだ。このようなことが年間700回以上という。飛行場の東側に隣接する市道11号(全長3500メートル)は、41年もの長い期間をかけて整備され共用となった。道路のガードレールは飛行場側歩道にのみについていて、人びとが利用する反対側歩道にはついていない。今まで不思議に思っていた。
PFOSのこと
PFOSは有機フッ素化合物の一種で、撥水剤や消化剤に使われている、分解されにくく、発がん性や生殖機能障害の原因になることが分かっている。米本国では今は使用していない。普天間飛行場の格納庫の地下貯水場からドラム缶1136本分のPFOS汚染水が流出、このうちフェンス外には719本分が流出した(PFOSはどこでも使っているから、同じ問題が本土でもあちこちにある。東京多摩地区では。住民運動が起きている)。
海兵隊から公共下水に放出すると連絡があった。PFOS汚染水を保管していたが、災害などで流出する不安があるからというのが放出の理由。防衛省が税金9200万円を使って回収して焼却処分した。汚染から市民の生命を守る連絡会が6市町村で387名の血液検査を行った結果、有機フッ素化合物が高い濃度で検出されたという。
前泊博盛さんの講演から
休憩を挟んで、前泊博盛さん(沖縄国際大学教授)が「沖縄から民主主義を考える・安保3文書と沖縄」と題して、リモートで講演をした。以下要旨。
沖縄で起きていることは沖縄のことではなく、日本全体のこと。また沖縄で起きていることは日本でも起きている。沖縄から見ると日本政府のことがよく見える。今や日本の貿易量は、対米を超えて対中国が第1で全体の25%だ。そのような関係の相手と戦争するのか。食料の輸入が止まれば、自給率40%に満たない日本はどうなるのか。
嘉手納は宇宙一危険
普天間基地は世界一危険だと言われるが、復帰から50年間の事故数は普天間18件、嘉手納602件。なぜ嘉手納の危険除去は論議しないのか。嘉手納がなくなると米国は日本を守ってくれなくなるのではと考えられている。『見捨てられる恐怖』がある。もう一つ『巻き込まれる恐怖』、この2つが日本の安全保障の基本になっている。嘉手納では、基地外での事故は戦闘機事故が202件、ヘリコプター事故が112件起きている。
日本の航空法では普天間基地は使ってはいけないが、地位協定上、日本の航空法は免除されている。危険なのにオスプレーの配備まで決めた。普天間に停まっている軍用車両は以前は黄色(中東の砂漠仕様)だったが、今年の3月には緑色(ジャングル仕様)に変わっている。基地の内部が見えないように重要地規制法で規制する。普天間では、大きな工事が進んでいる。大規模で、時間をかけて作ってる。地下施設があるのではないかと思う。
辺野古弾薬庫の工事
辺野古新基地建設の外に、辺野古弾薬庫がある。1958年の台湾有事の時は、米国は中国が金門島所有の主張を取り下げないなら、核を使うと考えていた。当時のソ連は、米国が核を使うならあらゆる手段で報復をすると主張した。米国はこの場合、台湾が消えても報復を受けいれると言っていた。沖縄は攻撃の拠点になるから、米国は報復を受けいれ、沖縄が消え去ってもやむを得ないと考えていた。沖縄は、米国にとって消耗品だ。今は、沖縄を日本に置き換えるとよく分かる。
米国にとって日本は、大事な国なのか。米国との最大の取引相手国は中国だ。中国と有事でことを構えようとしていることは、軍事的にはともかく、経済的には日本が破綻することを意味している。2014年の段階で、米国は13の辺野古弾薬庫を取り崩し12の新たな弾薬庫を作ると決め、2019年琉球新報がドローンを飛ばして調べて見たら、すでに建設が始まっていて、深いところまで工事が進んでいることが明らかになった。ところが、今のところ運動側は核武装のことについて無関心だ。辺野古の山手の部分に土砂崩れが起きている。深いところの工事を行っている可能性がある。
県民投票までして辺野古の埋め立てに反対が72%だった。にもかかわらず、基地建設は止まることなく強行されている。民意を示しても守られないのなら、民主主義はすでに崩壊している。憲法に合わないような軍拡をすすめ、自衛隊を補強し、空母をもつことを閣議決定ごときで決められてしまう。これでは日本は法治国家ではなく人治国家だ。
名護市の県民投票も反対が73%、宜野湾市も反対が66%。ところが両市で保守系の市長が誕生し、民意と政策の乖離が起きている。2014年の総選挙結果を見ると、選挙民主主義は危うい。投票率52・6%、自民党得票率25%、議席の占有率は76%を占めている。選挙に行かない人が有権者の半分、選挙に行った人のうちの25%を占めてしまえば、政権を掌握できるということ。沖縄の選挙の結果は名護市、宜野湾市、沖縄市でも、民意は反対なのに選挙では無視される。あとは県民投票しかないが、県民投票の民意を無視されるなら、基地の前に座って反対運動することしか残っていない。
半主権国家日本と旗国法原理
地位協定第2条には基地提供の義務がある。プーチン大統領は、北方領土の返還後に米軍基地が置かれる可能性について日本が決められるか、と懐疑的に語った。日本がどの程度主権を持っているのか分からないと。安倍さんの頑張りが実を結ばなかった背景がここにある。日本が基地問題で主権を行使できていない実例としてプーチンが上げたのが普天間飛行場の辺野古移設問題だった。北方領土2島返還は棚上げになった。
日本の法律は米軍には適用されない、国際法上もそうなっていると外務省が説明していたがことが2019年1月に暴露された。外務省の説明は事実とは違う。ドイツもイタリアも、韓国でも国内の米軍にして国内法が原則適用されている。イタリアの米軍基地の管理権はイタリアの軍司令官にある。旗国法原理と領域主権論があって、日本は旗国法原理だ。
例えば、【米国人は世界のどこにいても米国の法律を適用される】これが旗国法原理だ。領域主権論は、その国に行けばその国の法に従うということ。日本の地位協定は旗国法の原理で成り立っている。領域主権論を主張してこそ主権国家と言える。このことを覚えておいてほしい。米国国防総省の資料を調べると、受け入れ国・またその地方のレベルの法律は全て、一般的には米軍に適用されると書いてある。それが国際法上のルールだと言っている。なぜ日本でそれができないのか。韓国では有事と平時を分けて、平時には米軍にも韓国の法律が適用されている。日本も倣って、米軍との付き合い方を変えていった方がいい。
有事では沖縄(日本全体)はEXPENDABLE
なぜ今南西シフトをとっているのか。日本は、中国を第1列島線、第2列島線の外に出したらいけないと言っている。出したら何がいけないのか、それについての議論はない。外交は国の専権事項としているが、この国に外交を任せて大丈夫なのか。
天皇メッセージ(占領について1947年9月22日に天皇が考えを述べたもの)で、『米国による琉球諸島の軍事占領の継続を望む・前記占領は日本の主権を残したままで長期租借によるべし』という内容が連合国軍最高司令官に伝えられた。象徴天皇になったはずの天皇がこんな政治的な発言をしていた。このことが、1952年の講和条約で沖縄が切り捨てられていく根拠に利用され、沖縄差別維持の原因になった。EH・カーは著書『沖縄の歴史』で、沖縄が犠牲になって本土が助かるのなら、沖縄は日本にとってEXPENDABLE(消費していい)だ、日本は台湾有事にはあらゆる方法をを駆使して沖縄を利用するだろうと書いている。
今後の台湾有事の際、沖縄がターゲットになるだけでは済まない。日本全体がEXPENDABLEになり、国民が犠牲になる。ネットの情報だが、中国は戦略上、核ミサイルは使わない。通常兵器で原発を攻撃するとのことだ。でも首都圏は原発がないから守られている。守られる国民と守られない国民に分かれている。
国を守るために闘いますか。日本の民は、増税には反対だが予算は通った。台湾有事の時は非軍事的手段で対応してほしいが56%だが、反撃能力保持には賛成というこの国民の曖昧さ。安保3文書は知らないが76%。この国の多くが傍観者的国防論だ。いざとなったら自衛隊は国民を守ってくれる・敵基地攻撃能力は必要であり・いざとなったら日米安保は必要で、米国は守ってくれると思っている国民が多い。
石破茂さんは、米軍が守ってくれると思わない方がいいといった。沖縄は、当事者的非戦論だ。憲法9条による歯止めがなくなった段階で、憲法22条(住居移転・国籍離脱の自由など)を重視している。戦争では、軍が民を盾にするのが常識だ。軍は民を制圧する。そのとき民は何もできない。ウクライナでもロシアでもその点は同じだ。軍に入るか刑務所に入るかしか選択肢はない。
なぜ軍拡ですか、米軍の方針転換
76%が知らない安保3文書の内容紹介しておきます。(省略)。米国に見捨てられる恐怖と米国の戦争に巻き込まれる恐怖。見捨てられる恐怖から、この安保3文書がでてきた。見捨てられる恐怖は、すでに沖縄で始まっている。嘉手納基地には常駐させないで戦闘機を置く巡回方式にする。滑走路を攻撃されたら戦闘機は跳べなくなるから、ミサイルのターゲットにならないように巡回型にする。ウクライナ戦争を見て、米軍は方針を変えた。
そのため見捨てられる恐怖を味わうようになってきている。力による一方的な現状変更、侵略戦争をどうはじくか。抑止対象が早期にはじかれた場合に、どう対処するか。これがこれからの新しい安保体制だ。一番目(日米同盟の抑止力)にあったものが壊れ、2番目(防衛体制の強化、自前で防衛力を持たらざるを得ず)が1番目に。2番目に日米同盟。日米同盟が壊れ、見捨てられた場合の3番目が同志国、同盟国候補だ。豪州・インド・韓国・ニュージーランド・EU諸国・カナダ・ASEAN。
復帰後55施設・8200人の自衛隊
復帰前にはゼロだった沖縄に、今や55施設、8200人の自衛隊が配備されている。自衛隊は何を守るのか。国民保護法では国民保護は自治体の責務、自衛隊は忙しくてできない。自衛隊の任務は敵の殲滅、島民はシェルターに逃げろ、海を渡るのは時間がかかりすぎると言われている。でも本土も同じだろう。
沖縄にいると日本が見える。米軍機の飛行ルートすら変えられない日本をどこまで信用できるのか。自衛隊は民を守らない。日本は沖縄を見捨てる。政府は国民を見捨てる。政府は民を犠牲にする。皆さんも当事者的非戦論に動いていただけないか。政権交代は民主主義のバロメーターだ。メディは風前の灯火。庶民が手にする新聞はなくなっていくかもしれない。そのような時代を迎えようとしている。
最後に、浦添西海岸とその沖に広がる珊瑚礁を軍港建設とリゾート開発のために埋めないでください。インターネットの電子署名にご協力を!の訴えがあった。若干の質疑応答は省略する。
(文責編集部)
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