6.5女川原発2号機再稼働差止訴訟 原告らが控訴

女川原発2号機を動かすな!
1審判決の誤りを正す!
「具体的危険性」は明白だ

 【宮城】仙台地方裁判所は、「原告らが、大事故の危険性の具体的立証を行わなければ避難計画の不備を判断しない」と結論づけ、原告らの女川原発2号機の再稼働差止請求を門前払いし、原告らが求めた避難計画の不備について司法判断を放棄した。それに対して、原告らは、6月5日、仙台高等裁判所に一審判決の取消しと避難計画の実効性に対する判断を求め控訴した。
 一審判決の誤りについて、原告らは、第1に「大事故の発生を否定出来ないこと」を前提に深層防護第5層(避難計画)があるのに、それに向き合わず第5層自体を否定していること。第2に「大事故の危険性の具体的立証」することを第5層(避難計画)の不備の判断要件とし、判断対象から外したこと。第三に、人格権侵害の捉え方が誤っていて、原告が主張していないことを棄却の理由にしていること。これらを控訴理由とし、一審判決の誤りを明らかにして、仙台高裁に対しては、再稼働される前に判決を出すよう求めていくことにしている。

 「大事故の危険性の具体的立証」と「大事故の発生を否定出来ないこと」とは別なもの


 原告らは「大事故の危険性の具体的立証」と「大事故の発生を否定出来ないこと」とは別なものであることを一審でも主張してきた。地震や津波など自然災害に対する深層防護第1から第4層(原発の安全対策やテロ攻撃への対策)までは、あくまでも「大事故の発生を否定出来ないこと」に基づくものであり、「大事故の危険性の具体的立証」の結果ではない。
「大事故の危険性の具体的立証」を避難計画の不備の判断要件として持ち出すことにより、「大事故の発生を否定出来ないこと」を間接的に否定し、避難計画の不備を判断対象から外し、原告らの請求を退けるためにあえて持ち出してきた判断である。
 原告らが求めている人格権の侵害の主張は、「避難計画の不備から直接発生するもの」であり、「大事故の危険性の具体的立証」は人格権侵害の背景にすぎない。従って、避難計画の不備から生じる人格権の侵害の有無について裁判所は、判断する必要がある。

判断の遺漏と理由不備を指摘


 原告らは、2021年3月18日に水戸地裁判決が示した「深層防護第1層から第5層の防護レベルのいずれかが、欠落しまたは不十分な場合には、発電用原子力施設は安全ということはできず、周辺住民の命、身体が害される危険性がある」としたこと、また札幌地裁判決(2022年5月31日)でも「防災計画が安全性に欠ければ、それのみで人格権の恐れが認められる」と判断したこと、2021年4月8日の国会原子力問題調査特別委員会での更田規制委員会委員長(当時)の発言「どれだけ対策を尽くしたとしても事故は起こるものとして考えるというのが防災の基本。プラントに対する安全性の責任と防災対策を策定する責任は、独立して考えるべきこと」などを示し、これらは「大事故の発生を否定出来ないこと」に基づくものであることを主張してきた。
 一審判決は、原告らのこれらの主張に触れていない。「調査嘱託」までやっておいて証拠調べや事実認定さえしなかったことも含めて、控訴理由書のなかで「判断の遺漏と理由不備」を強く指摘している。
 あのような一審判決を書くのであれば、水戸地裁や札幌地裁、国会での更田委員長答弁に対する判断は不可欠である。

防護措置を必要とすること自体が『具体的危険性』にあたる


 「原子力災害対策指針によれば『所在市町村において震度6弱以上の地震が発生した場合』『同・大津波警報が発令された場合』は原子炉の運転・停止を問わず『警戒事態』に該当し『PAZ内の住民等の避難準備、及び早期に実施が必要な住民避難等の防護措置を行う』とされる。医療機関・福祉施設等においては移動あるいはその準備自体が『具体的危険性』に他ならない」と上岡直見氏は、一審判決に対する「意見書」で指摘している。

 避難計画の実効性の有無判断は不可避!

 「核物質を燃料とした原発は、内部に多量の人体に有害な放射性物質を発生させるものであり、生命・身体等が侵害される具体的危険性を内包していること」は、語るまででもない。
 GX脱炭素電源法(原発回帰束ね法)が通常国会で可決成立したが、そのなかで原子力基本法に第2条3項(※)が追加された。福島第一原発事故を経て、どんなに注意を尽くしても、大事故の可能性を否定できないこと、この事故を前提として、原発の運転に関するすべての法、制度が構築されたことは明らかである。このことの中核を為す考え方が深層防護の概念であり、この訴訟でもこれらの法構造を無視することは許されないのである。
 「第5層を含む深層防護が完備されて初めて、人格権侵害の具体的危険が、抽象的危険にまで緩和される」のであり、「従って避難計画(第5層)の実効性の有無の判断は不可避であり、実効性があると判断されて初めて、原発の運転は、人格権侵害の具体的危険性がないものと判断されるべきである」ということを仙台高裁に求めて、来年2024年2月再稼働される前に運転を差止める判決をもぎ取るために控訴人ら(住民側)は、控訴審を闘う決意だ。 (m)

※【原子力基本法 (基本方針)第2条第3項】
 エネルギーとしての原子力利用は、国及び電気事業者が安全神話に陥り、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故を防止することができなかったことを真摯に反省した上で、原子力事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って、これを行うものとする。

女川原発再稼働差止めを!(6.5)
危険に満ちた女川原発動かすな!(6.5)

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