関東大震災100年隠蔽された朝鮮人虐殺

呼びかけ 高麗博物館の企画展と各地の催し

歴史の事実に向かう

 7月5日から12月24日までの5ケ月半、東京・新大久保の高麗博物館で企画展「関東大震災100年―隠蔽された朝鮮人虐殺」が開催されている。
 高麗博物館は11年の準備期間を経て2001年、「市民がつくる日本とコリア交流の歴史博物館」として現在地(新宿区大久保1─12─1)に開館した。02年にはNPOとして法人資格を取得している。
 高麗博物館は、次の3つの目的を実現するため、常設展示、企画展示、講演会、連続在日講座、文化講座、ハングル講座、韓国旅行などの活動を続けてきた。
 ①日本とコリア(韓国・朝鮮)の間の長い豊かな交流の歴史を、見える形であらわし、相互の歴史・文化を 学び、理解して、友好を深めることを目指す。②秀吉の2度の侵略と近代の植民地支配の罪責を反省し、歴史の事実に真向かい、日本とコリアの和解を目指す。③在日韓国朝鮮人の生活と権利の確立を願いながら、在日韓国朝鮮人の固有の歴史と文化を伝え、民族差別のない共生社会の実現を目指す。
 関東大震災から100年の今年、数多く催しや行動が行われている。その中から、高麗博物館が主催する企画展と並行して開かれる催しを紹介する。(7月24日 KJ)

「関東大震災絵巻」の初公開

 関東大震災をテーマとした企画展は03年開催の「描かれた朝鮮人虐殺」04年の「パネルと写真で見る関東大震災 朝鮮人虐殺と新聞報道」など、過去3回開催してきた。今回は、元専修大学教授で高麗博物館前館長の新井勝紘さんが、オークションで2年前に落札した全2巻の「関東大震災絵巻」が初展示されている。
――「関東大震災絵巻」2巻は2年半後の大正15年の作だが、これまで一度も公開されたことがなく、100年を待っていたかのごとく、はじめて世の中にでてきた。2巻合わせて32mにもなる長大な巻物の1巻目の最後に、衝撃的な朝鮮人虐殺場面が現れた。作者は雅号「淇谷(きこく)」と記されていたが、誰なのか。最近、福島県西白河郡泉崎村出身で、小学校の教員を長くしていた画家・大原彌市であることが判明した。その画面からは、虐殺行為は警察官と軍人、さらに自警団が官民一体となって行っていたことが読みとれる。他の複数の画家たちが残した虐殺絵と、新資料の虐殺場面を紹介しながら、これまでのいきさつとともに、当時の画家たちが私たちに何を伝えようとしたのかを、皆さんとともに考えてみたい――
 新井さんは東京経済大学で色川大吉(2021年没)のもとで民衆史・色川史学を学び、憲法草案「五日市憲法」を最初に手にし、これを初めて解読、「成田空港・空と大地の歴史館」の名誉館長でもある。
 残念ながら、高麗博物館の展示スペースでは淇谷の絵巻の全体を広げて展示するスペースがない。会場に入ってすぐのガラスの展示ボックスの中に、1巻の終盤に描かれた竹やりや刀で襲われ鮮血を流す犠牲者、在郷軍人らしい軍服を着た人たちが負傷した人たちに向かってなおも刀を振り下ろそうする場面が広げられている。図録は会場で500円で販売、淇谷の絵巻の概要が記されているほか、展示されているパネルの内容がほぼそのまま収録されており、データとして貴重なものだ。
 この企画展は、植民地歴史博物館(ソウル)との連携企画だ。ソウルでは、8月から10月に連携した企画展示「関東大震災虐殺100年―隠蔽された虐殺、記憶する市民たち」を開催する。

関連イベントと講演会

 高麗博物館は、企画展と並行して数々の催しを行う。
 7月31日月曜日の午後6時から新宿区立四谷区民ホールで「関東大震災から100年の今を問う〜過去に学び、未来の共生社会を作るレッスン」を開催する。第1部は「関東大震災 描かれた朝鮮人虐殺を読み解く」と題した新井勝紘さんの講演、第2部は「韓国現代アーティストの映像作品に見る『ルワンダ虐殺の記憶』」と題した徐京植(東経大名誉教授)の講演が行われる。
 徐さんは多くの美術評論を書き、韓国を代表する現代アーティストであるジョン・ヨンドゥが、アフリカのルワンダで取材・制作した映像作品「Kigali, into the night」を「関東大震災朝鮮人虐殺」をむすび、普遍的な文脈で論じる予定だ。チケットは全席自由で一般前売2000円、当日2500円、学生:1000円。
 現在、次の3つの関連講演会が準備されている。いずれも土曜日の14時から16時、会場は高麗博物館展示室(オンライン併用)で参加費は1000円。要予約だ。
9月16日、「軍隊と自警団の朝鮮人虐殺─植民地戦争の経験から─」、慎蒼宇さん (法政大学教授)。
11月11日、「朝鮮人虐殺を無かったことにしたい人たち」、加藤直樹さん (ノンフィクション作家)
12月9日、「関東大震災時の朝鮮人虐殺―証言から見えてくるもの─」、西崎雅夫さん (ほうせんか理事)。

高麗博物館
https:
//kouraihakubutsukan.org/
東京都新宿区大久保1─12─1 第二韓国広場ビル7階/電話03─5272─3510
開館時間:12時から17時(入館は16時30分までにお願い致します)
休館日:月曜・火曜、年末年始(祝日でも月曜と火曜は休館。ただし9月18日と10月9日の月曜は除く)
入館料:一般400円、中・高生200円
最寄りの駅から:地下鉄大江戸線・副都心線東新宿駅A1出口から徒歩4分/西武新宿線新宿駅から徒歩7分/JR新大久保駅から徒歩10分JR大久保駅から徒歩13分

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