STOP! ロシアの侵略 ウクライナに連帯を! 7・16シンポジウム その①
ウクライナへの連帯―その核心的課題を問う
青山正さん(チェチェン連絡会議代表)が講演
【東京】7月16日午後2時から、東京・渋谷区勤労福祉会館で、「STOP!ロシアの侵略 ウクライナに連帯を! 7・16シンポジウム」が開かれた。
青山正さん(チェチェン連絡会議代表)の講演の後に、青山さんも加わり、加藤直樹さん(ウクライナ社会運動への連帯基金の呼びかけ人)、杉原浩司さん(武器取引反対ネットワーク〔NAJAT〕)、原隆さん(ウクライナ連帯ネットワーク)、コーディネーター林克明さん(ジャーナリスト)でパネルディスカッションが行われた(次号に掲載予定)。
「ロシアによるウクライナ侵略から1年半が経とうとしています。しかし、今もなお町の破壊や人々の殺戮が続いています。また最近、ロシア軍によると思われる爆発によりドニプロ川に築かれたカホフカダムが破壊され、多くの町が水没し多くの死者が出ています」。
「ウクライナの人々の抵抗により、ロシアの侵攻はプーチンの思い通りには進んでいませんが、戦火が止む見通しは立っていません」。
「私たちはこの間、ウクライナ社会運動への連帯基金の呼びかけに応え、ささやかな支援の活動を続けてきました。様々な問題提起を受けて、今後のウクライナ連帯の方策を共に考えていきたいと思います」。(呼びかけより)
コーディネーターの林克明さんが「反戦運動の中で、侵略する側に好意的で抵抗する側の非をあげつらうそんな傾向がある。へんな方向に行ってしまうのではないかという危機感を持った人たちが集まった」と話して、集会を進めた。
青山正さん(チェチェン連絡会議代表)が「ロシア軍のウクライナ軍事侵攻で問われる日本の平和主義」と題して、講演を行った。
昨年ウクライナ侵攻が始まって、何とかチェチェンの経験をもとにして、ウクライナ問題に取り組むもうとした。愕然としたのは、どっちもどっちという人たちがいたり、ウクライナに極めて冷淡な意見とかが飛び交っていた。問題点を整理しようということで、昨年3月に、チェチェン連絡会議を入れて、最初の声明を出した。いろんなところで評価を受けたがその後もおかしな意見が続いた。
ウクライナ侵攻が始まって500日と一週間経つ。ここまで続くとは思わなった。すごく難しいことは意見の開きが大きすぎる。何が真実かはなかなか難しい。正解はないのかもしれないが、誰が犠牲になっているのか、明らかにしていかなければいけない。
日本の民衆・社会運動はきわめて大きな危機にきている。特にひどい悪法が次から次へと成立してしまう。軍拡・増税、武器輸出、原発推進、野党の弱体化。そして憲法改悪が進められていく。
事実に基づかない論議
ウクライナのグチャで、虐殺が行ったことが明らかになったが、グチャの虐殺ですらなかったことのように言う。本当に愕然とした。衛星からも明らかになってくる。そういう状況にも関わらず、現実を否定してしまう。近い運動の中でそういう意見が出てくることが現実だ。
立命館大学の平和博物館の終身名誉館長である安斎育郎さんが書いた本を、つい先日紹介された。新版 『ウクライナ戦争論』、これはひどい本だ。「アメリカの戦争であることを説得力豊かにし、反ロシア一辺倒の世論に一石を投じる。何よりも事実を大事にしている」とうたっている。中身はNATOの東方拡大とかネオナチ、ゼレンスキー政権の独裁などなど、でたらめな本だ。そんな本が出ているのが日本の現実だ。
停戦を訴える人たち
今年の4月に、和田春樹さんらが停戦を行えと記者会見した。昨年の3月にも、日本は中国やインドとともに停戦交渉に積極的に役割を果たすべきだという訴えをしている。紛争調停人と自分が言っている、元自衛隊員の伊勢崎賢治さんが語っている。ロシア批判よりアメリカやウクライナを批判する。5月3日に、意見広告としても出されている。反米を超えて嫌米。どうしてロシアの見解をうのみにしてしまうのか。事実に基づかいなことを基にして、ウクライナ批判する。
もちろん、私もアメリカに責任はあると思っている。ウクライナ侵攻が始まった時に、アメリカがその気になれば十分ウクライナ侵攻を止めることはできた。武器支援もだんだんレベルが上がっていった。いたずらに侵攻を長引かせている。その結果、アメリカの軍需産業が潤っている。反米を唱える人たちの主張もそうだと思う。だからといってロシアの責任がなくなるわけではない。アメリカの問題とロシアの問題をきちんと分けて考えるべきだ。
れいわ新選組について。昨年、声明を出しロシアを非難している。その後、ロシアの侵攻を非難する国会決議に賛成していない。G7があった直後に、山本太郎さんがツイッターで、「中立にたち、ロシアからのエネルギーを入れる。それこそが日本の国益にかなう」と投稿している。本当にあきれた。自分たちのことだけを考えて、ウクライナの人たちはどうなってもいいのか。良い活動をしているのに残念だ。
若い世代の保守化
5月18日に、「ウクライナに平和を」の数十人の銀座デモがあった。一見するとウクライナ側に立っているのかと思うけど全然そうではない。即時停戦こそが日本の国益だと訴え。デモの構成員は幸福実現党、参政党、日本会議など極右国家主義者だ。リベラル派と主張がそんなに変わっていない。ツイッターでウクライナ問題を流しているのは保守的な愛国派が中心だ。
これは日本の現状を現われしている。若い世代の保守化、20~30代が自民党を支持している。
漫画家の小林よしのりさんが1998年に「戦争論」を発表し売れた。これがきっかけになり、若者の右傾化が進んだのではないか。その後、イラク戦争が始まる。2004年に、日本人4人が人質になった。渋谷でイラク反戦デモがあった。スクランブル交差点に差し掛かった時に、若者が「自己責任」の横断幕と「日の丸」を掲げた。若者が街頭に出て愛国を訴えるのを初めて見た。その後、中国・韓国・市民運動をバッシングする「嫌韓派」の漫画出て影響が広がる。そして、在特会が出てくる。
われわれが期待する人たちが、ウクライナ問題ではおかしなことを言っている。一方で、保守的・愛国的な人たちがどちらかと言うと、ウクライナに共感を感じている。それをどう見たらいいのか。私もそのへん、すごく迷っている。素朴にウクライナの人たちは可哀そうだと思っている人たちに訴えていく必要がある。そうしないと日本の危機的状況を突破することはできないんじゃないか。日本の民衆運動を立て直すチャンスかもしれない。
(発言要旨、文責編集部)
青山正さんがシンポジウムの当日配布した資料の一部を紹介する。(「かけはし」編集部)
「ロシア軍のウクライナ軍事侵攻で問われる日本の平和主義」
青山正
NATOの東方拡大が侵攻の理由?
ウクライナ側を批判する人々の主張は、結局プーチン大統領のプロバガンダに完全にはまっているとしか思えません。事実を無視し、侵略したロシア側の一方的な主張を鵜呑みにすべきではありません。
しばらく前にはある分野の専門家で、私の尊敬する知人でもある方とウクライナ問題で意見を交換し、私はとても驚いてしまいました。その方は「今回のロシアがウクライナへの攻撃に踏み切った理由として、ソ連の崩壊後ワルシャワ条約機構を解体したのに対して、西側の軍事同盟であるNATOはそのまま生き延びた上、ワルシャワ条約機構に属していた国々を次々と取り込み、ウクライナすらがNATOに加盟しようとしたこと」という指摘をしました。要するにNATOの東方拡大こそが侵攻の理由だと言うのです。さらに「二つ目は、選挙で正当に選ばれた新ロシア政権を2014年の武力クーデターで倒した」ことと、「その親西欧政権が脱ロシア化を進め、国内でロシア語を使うことを禁じた」、「新ロシア人が多く住む地域で抵抗する住民に対して、ウクライナ政府はネオナチの私兵・アゾフ大隊を使って暴力的に弾圧した」というものです。しかも「ドイツとフランスの仲介の下2014年と2015年に成立した『ミンスク合意』をウクライナ政府は守ろうとしなかった。」という主張です。
これらはすべて、ウクライナ侵攻を正当化するためにロシアのプーチン大統領が主張するプロバガンダそのものです。その知人は「ロシアの行為は必ず非難されるべきだ」とも言ってはいますが、それはただの枕詞としか思えません。「しかしウクライナへの侵攻は必要だった」と言わんばかりにウクライナ批判の羅列です。言うまでもなくこれらの主張は、すべてロシア側の一方的な言いがかりに過ぎません。
プロパガンダへの事実に基づく反証
2013年末から2014年にウクライナで起こった「マイダン革命」は、ロシアからの支配を拒否し、腐敗した政権を倒した民主主義のための命がけの民衆革命でした。「武力クーデター」などではなく、武力行使をしたのは親ロシア派の大統領の命令を受けた治安部隊でした。
NATOの東方拡大が、大量の核兵器を保有する核大国ロシアの安全を脅かす現実的な脅威とは言えないはずです。むしろロシアによる西方拡大に対し、脅威を感じたのはNATOに新たに参加した東欧諸国や、参加を模索していたウクライナの側です。現にプーチン大統領は、2014年のマイダン革命の後にクリミア半島にロシア軍を送り込み、名ばかりの「住民投票」を経て強制的に併合しました。そしてウクライナのドンバス地域でも新ロシア派の武装勢力とロシア軍の工作員により、ウクライナ側に攻撃をしかけ、内戦状態にしてウクライナ東部の支配を広げました。
その過程でウクライナ防衛のために立ち上がった愛国主義者などが作った民兵組織がアゾフ大隊です。その後正式にウクライナ国家警備隊に組み込まれており、「ネオナチ私兵」というのはまさにプーチン大統領の一方的なレッテル貼りです。むしろウクライナ占領地での残虐非道な暴力を繰り返したロシア軍の方こそが、「ネオナチの私兵」と呼ぶにふさわしいと私は思います。
また、ロシア語を禁止したという事実もありません。以前より公用語はウクライナ語であり、2017年に原則としてウクライナ語を教育言語とすることが規定されて、国民の一体性を図っただけです。「抵抗する住民に対して弾圧した」というのも根拠がありません。現にロシア軍に占領されていた東部や南部などのロシア語地域が、ウクライナ軍により解放された後、住民はこぞってウクライナ軍を歓迎しています。住民がウクライナ政府に弾圧されていたとすれば、ロシア軍の占領を歓迎したはずですが、その事実はほとんどありませんでした。ロシア語を話す住民への弾圧というのは、事実を大きく歪曲したデマです。
ミンスク合意については、そもそもウクライナ側に不利な条件があり、その後合意の反故に動きました。一方でロシア側も合意で定められた「外国の武装組織の撤退」や「違法なグループの武装解除」を守らず、その後も紛争がやむことはありませんでした。ミンスク合意破綻の責任はウクライナ側だけが負うものではないはずです。
このようにまったく事実に基づかず、侵略の被害者であるウクライナを結果的にバッシングするということは、「平和主義」とは何の縁もないはずです。たとえウクライナ側が自らの信念と違って武装抵抗しているからと言って、事実ではない理由をあげつらって非難するというのは、実におかしなことです。どのような抵抗をするのかは、最終的にはウクライナの人々が決めることです。
停戦=平和にならなかった前例
またウクライナ側に早期停戦や、さらには降伏すら呼びかける人々もいます。しかし第2次チェチェン戦争が起きたのは、まさにロシアとの停戦中でした。実際はロシアの情報機関であるFSBが実行したモスクワのアパート爆破事件を、一方的にチェチェン側のテロだと決めつけて、ロシア軍はチェチェンへの無差別攻撃を開始しました。停戦は決して平和を保証するものでありません。しかもウクライナのロシア軍占領地のブチャなどで明らかになったように、ロシア軍の支配地では無抵抗の住民がむごい拷問の末虐殺されたり、女性たちが性暴力を受けたりする悲惨な事例が相次ぎました。降伏して悲劇が終わるわけではないのです。
私はウクライナ問題を考えるために、プロバガンダに左右されずにまず事実をきちんと確認し、加害者ではなく被害者の側の声を聴くことが大切だと思っています。人道に反する戦争犯罪を決して許さず、侵略に苦悩する側に寄り添う「平和主義」であるべきはないでしょうか。
私は侵略の被害者であるウクライナ側がすべて「善」であるとは必ずしも思いませんが、プーチン大統領とロシア軍による重大な戦争犯罪は絶対に許せないことであり、ウクライナ侵攻を止めることは国際社会の責任であると考えています。
ましてや国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアの今回の蛮行(ママ)は、国際社会の責任でやめさせるべきです。(全文ではなく、一部を紹介した。編集部)
日本におけるウクライナ連帯闘争について講演を行う青山正さん(7.16)
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